2011/08/10(水) - 04:57
F1マシンを奧に置いてのセンセーショナルなプレゼンテーションにより登場したスペシャライズドのハイエンドモデル、ヴェンジ。ロード畑でなくともその存在を認知するほどの、近年希に見る話題性を振りまく。レースカーでおなじみ「マクラーレン」社との共同開発によるモデルをラインナップの頂点に据えるラインナップから、今回はスタンダードモデルの実力に迫ってみたい。
スペシャライズド ヴェンジ (c)Makoto Ayano
ヴェンジは話題性に事欠かないバイクだ。まず先に述べたような印象的なプロモーション。それに加え、その写真に登場しているバイクのスタイルも特徴的だ。パッと見から“生粋のレースマシン”である事が窺え、加えて各部に確認できるエアロ形状から、空力的なアドバンテージのある車両であることは想像に難くない。さまざまな妄想を掻き立てるスタイルだと言えるかもしれない。
S-venge-近年のテーパードヘッドに較べればサイズ差は小さいがトップ1-1/8インチ、ボトム1-3/8インチの異形サイズを採る。ウエスト部分を絞る事で空力特性を向上させてもいる
フレームと同型のカーボン素材を使うフロントフォーク。3:1と名付けられた断面形状で空気を切り裂く
フォーク形状は前面がほぼストレートのブレード型で、ハンドリング特性や剛性の向上に寄与しているという
こうした印象はあながち間違いではない。ヴェンジはスペシャライズドが“重量”、“剛性”、“空力特性”の3点において新たなブレイクスルーがなければ世界最速のロードバイクは作れない、という考えから開発に挑戦した最先端マシンなのだ。今回試乗したモデルは12年モデルのノーマルグレード(のプロトタイプ)だが、トップグレードにはマクラーレン・アプライドテクノロジーズ社との共同開発で生まれたバイクも存在する。彼らの協力を得る事で、カーレースで使われる多くの素材やテクノロジー、工法をロードバイクに応用し、よりスパルタンなレースマシンを誕生させてもいるのだ。
ただここでひとつ忘れてはならないのが、そもそもベースであるヴェンジは純スペシャライズド製であり、そもそもこのノーマルモデルのポテンシャルの高さあってのマクラーレン・スペシャルの存在がある、という事だ。ベースが悪いのでは、カスタムしようもない。ここは重要だ。
カーボンエアロとまさに言わんばかりのなめらかなフォルム
ヘッドパーツ上部が専用にデザインされたものになり、トップチューブへの空気の流れをどのようなステアリング角でも最適にする
ヴェンジはその見た目からもわかるように、ひとつに空力特性に優れたマシンを目指したわけだが、従来のバイクはその帰結としての剛性不足や重量増加に悩まされてきた。その点を解決することがスペシャライズドに課せられた命題だった。
その解決策のいくつかはメーカーからのリリースによりいくつか明らかにされている。例えば、FEA(有限要素解析)などのカスタムソフトウェアの利用により、高弾性のFACT 10r(S-WORKSのみ11r)カーボンのレイアップの最適化を果たしつつも優れた軽量性を達成しているという。
剛性面ではBBとチェーンステー、シートチューブをワンピースにしたモノコック構造を採用し、これによりファイバーのアライメントが途切れず連続し剛性の向上に寄与している。さらに強度が必要な部分には内側にリブ加工が施され、剛性が最大限高められている。
ワイヤー類はすべてパイプ内を通るデザイン。Di2などの電動コンポとの互換性も持っている
ヴェンジの特徴のひとつであるインテグレーテッド・トップキャップ。トップチューブにきれいに繋がる
BB規格はオーバーサイズであるBB30を採用する(※)。ヘッド部はテーパード構造になり、トップが1-1/8"、ボトム部が1-3/8"サイズになり、ねじれ方向の剛性を確保しながら、ウエスト部はシェイプされ空気抵抗への配慮も忘れない。
※今回の試乗車は製品版に限り無く近いプロトタイプ版で、優先供給されたHTCハイロードがシマノのスポンサードチームであるためにノーマルBB仕様になっている。
そして要の空力特性。このバイクの特徴のひとつにもなっている「インテグレーテッド・トップキャップ」は、ヘッドパーツのアッパー部がトップチューブへ滑らかに繋がる独自の形状をしており、ステアリングをどの角度に切っても空気の流れを乱しにくい構造になっている。
まるでTTバイクを想起させるシートチューブのエアロ処理
エアロ形状を採るシートピラーは、取付け方向を回転させることでセットバックを0か20mmで選択できる
シートステーには空気の流れをコントロールする、キャンバード・エアフォティル断面形状が採用される
他にもシートステーに取り入れられた「キャンバード・エアフォティル断面形状」は、外側表面が平面的に、内側は滑らかな曲面を描くようなウィング状になっており、この部分を交錯する気流がホイールを通り過ぎる前に整流されるようになっている。
エアロバイクといえばお約束になるブレード形状のフロントフォークだが、ヴェンジもその例に漏れず、断面形状の狭いエッジ部が風の当たる側に向けて空気抵抗をいなしながら、肩部からドロップアウトまで直線上に伸びる形状により、優れた横方向剛性とハンドリング特性を得られるという。また細かな点ではケーブル類はすべてフレーム内を通る作りになっていて、空気抵抗を低減。電動コンポーネンツにも対応するフレームワークになっている。
最大の力の入力に対し最高の剛性を得るために、BB部はチェンステー&シートチューブが一体になる作り
絶妙なカーブとカーボン繊維のコントロールでBB部と一体化しているチェーンステー
これだけのフィーチャーを考えると気になってくるのが価格だが、いくつかのグレードが用意され、例えばフレームセット販売ではS-WORKS VENGE OSBB FRAMESETに460,000円というプライスタグが付けられている。カラーリングはプロジェクトブラック、ブラック/ホワイト、カーボン/レッドの3色展開だ。
究極の最高速レースバイクを作ろうというスペシャライズドの思いにより誕生したヴェンジの素性を、2人のインプレッションライダーはどのように感じ取ったのか、話を聞いてみよう。
—インプレッション
「エアロ効果とフレームバランスでオールラウンドに使える」
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
まずは、何よりもエアロバイク好きにはたまらない一台ではないでしょうか? 走行感は、“エアロ追求型の見た目”以上にしっかりした走り心地でした。加速の瞬間は少しフレームのたわみを感じますが、一拍おいてからの「かかり」は良好で、ぐいぐいスピードが乗っていく感じです。巡航スピードに入ってからもまだまだ追い込める余力を感じるのは、空力性能とフレームバランスの高さだと思います。思ったよりも普通に走れました。下りなどで横風が吹くとバランスが持って行かれる感じはさすがにありましたけれど。
ダウンチューブはエアロ形状が強く、トルクをかけたときはたわみを感じますが、バネ感をうまく感じますし、トップチューブの横剛性とBB付近のボリュームでトータルバランスをかなり高く仕上げている印象です。下りや高速巡航では伸びがありますし、風切り音も“エアロ効果が効いてるな”と感じさせてくれます。
「エアロ効果とフレームバランスでオールラウンドに使える」二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
意外なのは上りも難なくこなせ、シッティングでの巡航もダンシングで踏み込んでからもスピードが持続して、さらに追い込める印象を持った事です。戦闘力はかなり高いのではないでしょうか。ただ、加速時のレスポンスや上りで踏んだときの反応は決して早いとはいえず、軽快感で言えばスペシャライズドSL3の方が上かもしれません。実際に選手もSL3とヴェンジを使いわけている光景をよく見るのはそのせいでしょうか?
エアロ効果とフレームバランスでオールラウンドに使え、長距離でも楽に走れる。そんなバイクだと思います。形状はTTフレームのようですが、ジオメトリーは一般的なマスドロードから外れていないのでポジションも出しやすいでしょう。ヘッドチューブは専用のトップキャップなので、ジオメトリー表よりもプラス十数ミリ高くなるのに注意です。
フレーム形状が形状だけにワイヤーが内蔵され、各部に特殊形状のパーツが使われるのでメンテナンス性はすこし手間がかかるかもしれませんが、メーカーでライナーやスモールパーツが完備されていれば問題はないでしょう。
「どこから踏んでも進んでくれるし、力を温存しながらでも走れる」
白川賢治(YOUCAN リバーシティ店)
「どこから踏んでも進んでくれるし、力を温存しながら走れる」白川賢治(YOUCAN リバーシティ店) とてもレーシーな味付けで、ただし、だからといって凄くガチガチでスパルタン、というイメージはなくて、どこから踏んでも進んでくれて力を温存しながらでも走れる印象を持ちました。
ハンドリングはスペシャライズドらしいというか、かなり機敏な味付けで、クイックには感じます。ただそれが嫌な、神経質なクイックさがあるわけではなく、上り+シッティングの低速で走るような状態でもフラフラするようなことはなく、むしろ軽快な走行感がありました。これは下りも平坦路も同じ印象です。
最近のロードバイクはフロントフォークの剛性が上がっており、個人的にはいい流れだと感じていますが、ぼくはこのフレームにならもっとフォークの剛性があっていいと感じました。ダンシングをした時の機敏さにやや欠ける印象です。もっとフォークの剛性が上がると、この点はさらにいいのではないでしょうか。これについては、エアロ形状が影響しているのかもしれません。
元々、同社のターマックSL3などが良かったので、そこから抜きん出て大進化を遂げたという感はなかったです。正統進化、と言えるかもしれません。前評判というか期待値が高すぎて、凄く良いものが普通に感じてしまうのは、現代のロードバイクの悩ましい点かもしれません。でも、VENGEが凄く良いバイクであるのは確かです。
ロードの選手が求める味付けというのは、こういった極度に突出していないものなのかしれません。あとは、レースに出ることを考えると、特殊形状を取り入れるばかりに整備性が悪くなってしまったりすると、ぼくは敬遠したくなりますね。ヴェンジは見た限りではでそういったところはなさそうでしたので、やはりレースで使いたい一台ですね。
スペシャライズド ヴェンジ (c)Makoto Ayano
S-WORKS VENGE DI2(完成車)
チューブ:S-Works FACT 11r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 S-Works FACT carbon
カラー:ホワイト/レッド/カーボン
サイズ:49・52・54
価格:1,100,000円
S-WORKS VENGE DA(完成車)
チューブ:S-Works FACT 11r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 S-Works FACT carbon
カラー:カーボン/レッド
サイズ:49・52・54・56
価格:980,000円
S-WORKS VENGE OSBB FRAMESET
チューブ:S-Works FACT 11r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 S-Works FACT carbon
カラー:プロジェクトブラック、ブラック/ホワイト、カーボン/レッド
サイズ:49・52・54・56・58
価格:フレームセット 460,000円
VENGE PRO UI2(完成車)
チューブ:FACT 10r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 Venge Pro FACT carbon
カラー:ホワイト/シルバー
サイズ:49・52・54
価格:650,000円
VENGE PRO EXPERT(完成車)
チューブ:FACT 10r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 Venge Pro FACT carbon
カラー:レッド/グレー、ホワイト/イエロー
サイズ:49・52・54・56・58
価格:450,000円
インプレライダーのプロフィール
二戸康寛(なるしまフレンド立川店 二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
なるしまフレンド神宮店販売チーフを経て現在は立川店勤務。かつて実業団チーム日本鋪道(昨年までのチームNIPPO)に所属してツール・ド・北海道をはじめとした国内外のトップレースを走った経験を持つ。高校時のインターハイ2位を始めツールド北海道特別賞(堅実なアシストに贈られる賞)やツールド東北総合4位等の実績を持つ。なるしまフレンドに入社後もレース活動を欠かさない36歳にしていまだ現役のJPTレーサー。ショップではレースから得た経験を通じ自転車の魅力と楽しさをより多くの人に伝えられるよう日々自分磨きに勤しんでいる。現在の愛車はタイム・RXインスティンクト。
なるしまフレンド
白川賢治(YOU CAN リバーシティ店) 白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)
2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN
ウェア協力:MAVIC
text:Harumichi SATO
photo:Makoto AYANO
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ヴェンジは話題性に事欠かないバイクだ。まず先に述べたような印象的なプロモーション。それに加え、その写真に登場しているバイクのスタイルも特徴的だ。パッと見から“生粋のレースマシン”である事が窺え、加えて各部に確認できるエアロ形状から、空力的なアドバンテージのある車両であることは想像に難くない。さまざまな妄想を掻き立てるスタイルだと言えるかもしれない。
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こうした印象はあながち間違いではない。ヴェンジはスペシャライズドが“重量”、“剛性”、“空力特性”の3点において新たなブレイクスルーがなければ世界最速のロードバイクは作れない、という考えから開発に挑戦した最先端マシンなのだ。今回試乗したモデルは12年モデルのノーマルグレード(のプロトタイプ)だが、トップグレードにはマクラーレン・アプライドテクノロジーズ社との共同開発で生まれたバイクも存在する。彼らの協力を得る事で、カーレースで使われる多くの素材やテクノロジー、工法をロードバイクに応用し、よりスパルタンなレースマシンを誕生させてもいるのだ。
ただここでひとつ忘れてはならないのが、そもそもベースであるヴェンジは純スペシャライズド製であり、そもそもこのノーマルモデルのポテンシャルの高さあってのマクラーレン・スペシャルの存在がある、という事だ。ベースが悪いのでは、カスタムしようもない。ここは重要だ。
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ヴェンジはその見た目からもわかるように、ひとつに空力特性に優れたマシンを目指したわけだが、従来のバイクはその帰結としての剛性不足や重量増加に悩まされてきた。その点を解決することがスペシャライズドに課せられた命題だった。
その解決策のいくつかはメーカーからのリリースによりいくつか明らかにされている。例えば、FEA(有限要素解析)などのカスタムソフトウェアの利用により、高弾性のFACT 10r(S-WORKSのみ11r)カーボンのレイアップの最適化を果たしつつも優れた軽量性を達成しているという。
剛性面ではBBとチェーンステー、シートチューブをワンピースにしたモノコック構造を採用し、これによりファイバーのアライメントが途切れず連続し剛性の向上に寄与している。さらに強度が必要な部分には内側にリブ加工が施され、剛性が最大限高められている。
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BB規格はオーバーサイズであるBB30を採用する(※)。ヘッド部はテーパード構造になり、トップが1-1/8"、ボトム部が1-3/8"サイズになり、ねじれ方向の剛性を確保しながら、ウエスト部はシェイプされ空気抵抗への配慮も忘れない。
※今回の試乗車は製品版に限り無く近いプロトタイプ版で、優先供給されたHTCハイロードがシマノのスポンサードチームであるためにノーマルBB仕様になっている。
そして要の空力特性。このバイクの特徴のひとつにもなっている「インテグレーテッド・トップキャップ」は、ヘッドパーツのアッパー部がトップチューブへ滑らかに繋がる独自の形状をしており、ステアリングをどの角度に切っても空気の流れを乱しにくい構造になっている。
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他にもシートステーに取り入れられた「キャンバード・エアフォティル断面形状」は、外側表面が平面的に、内側は滑らかな曲面を描くようなウィング状になっており、この部分を交錯する気流がホイールを通り過ぎる前に整流されるようになっている。
エアロバイクといえばお約束になるブレード形状のフロントフォークだが、ヴェンジもその例に漏れず、断面形状の狭いエッジ部が風の当たる側に向けて空気抵抗をいなしながら、肩部からドロップアウトまで直線上に伸びる形状により、優れた横方向剛性とハンドリング特性を得られるという。また細かな点ではケーブル類はすべてフレーム内を通る作りになっていて、空気抵抗を低減。電動コンポーネンツにも対応するフレームワークになっている。
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これだけのフィーチャーを考えると気になってくるのが価格だが、いくつかのグレードが用意され、例えばフレームセット販売ではS-WORKS VENGE OSBB FRAMESETに460,000円というプライスタグが付けられている。カラーリングはプロジェクトブラック、ブラック/ホワイト、カーボン/レッドの3色展開だ。
究極の最高速レースバイクを作ろうというスペシャライズドの思いにより誕生したヴェンジの素性を、2人のインプレッションライダーはどのように感じ取ったのか、話を聞いてみよう。
—インプレッション
「エアロ効果とフレームバランスでオールラウンドに使える」
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
まずは、何よりもエアロバイク好きにはたまらない一台ではないでしょうか? 走行感は、“エアロ追求型の見た目”以上にしっかりした走り心地でした。加速の瞬間は少しフレームのたわみを感じますが、一拍おいてからの「かかり」は良好で、ぐいぐいスピードが乗っていく感じです。巡航スピードに入ってからもまだまだ追い込める余力を感じるのは、空力性能とフレームバランスの高さだと思います。思ったよりも普通に走れました。下りなどで横風が吹くとバランスが持って行かれる感じはさすがにありましたけれど。
ダウンチューブはエアロ形状が強く、トルクをかけたときはたわみを感じますが、バネ感をうまく感じますし、トップチューブの横剛性とBB付近のボリュームでトータルバランスをかなり高く仕上げている印象です。下りや高速巡航では伸びがありますし、風切り音も“エアロ効果が効いてるな”と感じさせてくれます。
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意外なのは上りも難なくこなせ、シッティングでの巡航もダンシングで踏み込んでからもスピードが持続して、さらに追い込める印象を持った事です。戦闘力はかなり高いのではないでしょうか。ただ、加速時のレスポンスや上りで踏んだときの反応は決して早いとはいえず、軽快感で言えばスペシャライズドSL3の方が上かもしれません。実際に選手もSL3とヴェンジを使いわけている光景をよく見るのはそのせいでしょうか?
エアロ効果とフレームバランスでオールラウンドに使え、長距離でも楽に走れる。そんなバイクだと思います。形状はTTフレームのようですが、ジオメトリーは一般的なマスドロードから外れていないのでポジションも出しやすいでしょう。ヘッドチューブは専用のトップキャップなので、ジオメトリー表よりもプラス十数ミリ高くなるのに注意です。
フレーム形状が形状だけにワイヤーが内蔵され、各部に特殊形状のパーツが使われるのでメンテナンス性はすこし手間がかかるかもしれませんが、メーカーでライナーやスモールパーツが完備されていれば問題はないでしょう。
「どこから踏んでも進んでくれるし、力を温存しながらでも走れる」
白川賢治(YOUCAN リバーシティ店)
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ハンドリングはスペシャライズドらしいというか、かなり機敏な味付けで、クイックには感じます。ただそれが嫌な、神経質なクイックさがあるわけではなく、上り+シッティングの低速で走るような状態でもフラフラするようなことはなく、むしろ軽快な走行感がありました。これは下りも平坦路も同じ印象です。
最近のロードバイクはフロントフォークの剛性が上がっており、個人的にはいい流れだと感じていますが、ぼくはこのフレームにならもっとフォークの剛性があっていいと感じました。ダンシングをした時の機敏さにやや欠ける印象です。もっとフォークの剛性が上がると、この点はさらにいいのではないでしょうか。これについては、エアロ形状が影響しているのかもしれません。
元々、同社のターマックSL3などが良かったので、そこから抜きん出て大進化を遂げたという感はなかったです。正統進化、と言えるかもしれません。前評判というか期待値が高すぎて、凄く良いものが普通に感じてしまうのは、現代のロードバイクの悩ましい点かもしれません。でも、VENGEが凄く良いバイクであるのは確かです。
ロードの選手が求める味付けというのは、こういった極度に突出していないものなのかしれません。あとは、レースに出ることを考えると、特殊形状を取り入れるばかりに整備性が悪くなってしまったりすると、ぼくは敬遠したくなりますね。ヴェンジは見た限りではでそういったところはなさそうでしたので、やはりレースで使いたい一台ですね。
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S-WORKS VENGE DI2(完成車)
チューブ:S-Works FACT 11r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 S-Works FACT carbon
カラー:ホワイト/レッド/カーボン
サイズ:49・52・54
価格:1,100,000円
S-WORKS VENGE DA(完成車)
チューブ:S-Works FACT 11r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 S-Works FACT carbon
カラー:カーボン/レッド
サイズ:49・52・54・56
価格:980,000円
S-WORKS VENGE OSBB FRAMESET
チューブ:S-Works FACT 11r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 S-Works FACT carbon
カラー:プロジェクトブラック、ブラック/ホワイト、カーボン/レッド
サイズ:49・52・54・56・58
価格:フレームセット 460,000円
VENGE PRO UI2(完成車)
チューブ:FACT 10r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 Venge Pro FACT carbon
カラー:ホワイト/シルバー
サイズ:49・52・54
価格:650,000円
VENGE PRO EXPERT(完成車)
チューブ:FACT 10r carbon
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8 ボトム:1-3/8 Venge Pro FACT carbon
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サイズ:49・52・54・56・58
価格:450,000円
インプレライダーのプロフィール
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なるしまフレンド神宮店販売チーフを経て現在は立川店勤務。かつて実業団チーム日本鋪道(昨年までのチームNIPPO)に所属してツール・ド・北海道をはじめとした国内外のトップレースを走った経験を持つ。高校時のインターハイ2位を始めツールド北海道特別賞(堅実なアシストに贈られる賞)やツールド東北総合4位等の実績を持つ。なるしまフレンドに入社後もレース活動を欠かさない36歳にしていまだ現役のJPTレーサー。ショップではレースから得た経験を通じ自転車の魅力と楽しさをより多くの人に伝えられるよう日々自分磨きに勤しんでいる。現在の愛車はタイム・RXインスティンクト。
なるしまフレンド
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2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN
ウェア協力:MAVIC
text:Harumichi SATO
photo:Makoto AYANO
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Specialized(スペシャライズド)
スペシャライズド Bg Ridge Glove Wmn 6717-3292
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スペシャライズド E Cage
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