2011/07/09(土) - 18:32
HTCトレインに牽引され、完璧なスプリントを披露したカヴェンディッシュが初めてツールの勝利を挙げたシャトールーで再び勝利。そして多くの選手にとってリエゾン(つなぎ)になるはずの平坦ステージがまたしても落車の嵐に襲われた。ウィギンズのリタイヤをはじめ、総合を争う選手に大きな影響を及ぼした。
ロワール河を横切って南下するオールフラットコース
24時間耐久カーレースの街ル・マンを発ったプロトンは、ロワール河を横切って一路南を目指す。シルキュイ・ド・ラ・サルトが開催されるサルト県から、中央山塊の入り口のアンドル県へ。
パリ~ツールでおなじみのこのペイ・ド・ラ・ロワール地域圏一帯を通過するコースは、ツールの典型的平坦ステージだ。しかし、今年のツールではようやく、そして唯一ともいえる「ど平坦」ステージ。
テクニカルなコーナーも山岳ポイントもない、海から吹く強風に悩まされることもない。スプリントを狙うチーム以外は一息つけるリエゾン的ステージになる「はずだった」。
道の両脇に麦畑。一直線の道。農業国フランスらしい典型的な風景が続く。ロワール河沿いに古城の点在するこの一帯には外人観光客も多く、にわかツール観戦ファンも多い。
観光とあわせてツール観戦を決め込むアメリカ人。そして2人しか出場していないにもかかわらずフースホフトのマイヨジョーヌとボアッソン・ハーゲンの昨ステージの勝利で嬉しい思いのノルウェー人ファンの姿も目立つ。
でも今日一番目立っていたのはロマン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ)の応援バナーだ。
シャトールーはフェイユ出身の街。応援旗には、ステージ優勝まであと一歩のところにいるフェイユをなんとか勝たせたい!という願いがこもっている。しかしカヴェンディッシュにとっても初めてツールの勝利を挙げた記念すべき街。HTCの意気込みは普段以上に高い。
そしてコースに近いトゥールの街出身のジェレミー・ロワ(FDJ)の応援も目立つ。Roy=ロワはフランス語で「王」=Roiに通じるため、「Allez MISTER KING」のバナーも。絶対にフランス人が作った英語のバナーがちょっと微笑ましい。ロワはコース上で家族に会ったということだが、途中で撮った幾人かの応援団のなかにその家族がいただろうか?
FDJのアタックローテーション
ジャンニ・メールスマン(FDJ)、ミカエル・ドラージュ(FDJ)、ヤニック・タラバルドン(ソール・ソジャサン)、パブロ・ウルタスン(エウスカルテル)の4人を逃がした集団はクルーズ状態で差を保って走る。この日はスプリントポイントがゴール手前28kmという終盤に設定されたのも、このリラックスが長く続いた原因になった。レース後半、余力を残した選手たちによる位置取り争いで、緊張が余計に高くなった。
メールスマンとドラージュの2人を逃げに送り込んだFDJ。ドラージュが逃げるのは、敢闘賞を獲得した第3ステージに続いて2度目。そして連日のジェレミー・ロアやアントニー・ルーとの「シフト制」のようなアタックで、上手に目立つ。チームはプロコンチにひとつ格を下げ、総合を狙える選手もいないから、目標はステージ優勝と目立つこと。ツールでこれだけ目立てばひとまず成功?
補給所に先行していて、レース無線にボーネンがリタイヤしたという知らせが入る。落車の怪我をおして走り、回復をまったが、夜に具合が悪くなったという。「回復したら何かしたい(勝ちたい)」と話していたボーネンに対し、「もはやリタイヤが近い」と話していたシャヴァネルをカメラで追っていたから、まさか先にボーネンが降りるとは思っていなかった。
補給所からコースを離れてゴール地点へ先回りするチームカーの隊列に加わってシャトールーを目指した。クイックステップのチームカーには第1カーから乗り移ったボーネンと、エディメルクスの自転車がルーフキャリアに積まれていた。
完璧なサポートワークを見せたHTCハイロード
レース終盤からシャトールーのゴールスプリントへ向けてトレインを形成し、カヴェンディッシュの勝利をお膳立てする完璧なアシストワークを見せたHTCハイロード。対抗するチームスカイが落車の影響を受けて不在だったのも有利に働いた。
カヴェンディッシュが見せた、ゴールラインを切ってから拳を突き上げ、頭を抱える「勝っちゃった、どうしよう?」とも形容できそうなそのポーズは、シャトールーで初めて勝ったときのポーズそのままの再現だ。喜びを爆発させながらもそれをする余裕があるのがカヴらしい。
カヴはゴールするとすべてのチームメイトが帰ってくるのを待ち、ひとりひとりとハグして感謝の気持ちを表した。そしてポディウムでは女性の招待客にビズー(頬への挨拶のキス)を4度繰り返す大サービス(通常は2回)までみせた。
「チームワークが素晴らしかった。僕はラスト150mまで完璧に運んでもらっただけで、何も努力らしいことをしないで済んだ」。
今日のカヴはエモーショナルだが、ツール17勝目を挙げてなおクールさも保っていた。
「彼らのことを誇りに思う。彼らは今日本当にすごかった。人は僕が他の選手達をリスペクトしていないというけれど、他の選手たちは僕らのチームをリスペクトするべきだよ。彼らは僕らの列車に乗ろうとするけど、彼らは自分のチームの列車に乗るべきだ。結果が欲しかったらそれを達成できるチームを手に入れるべきだ」。
レース後のインタビューのときまでウィギンズの落車を知らなかったカヴ。リタイアを知らされると驚いた。「僕らはスプリントとイエローのジャージをイギリスに持ち帰れると思っていたのに」。
相次いだ落車 総合争いの相関図が変わる
残り48kmと38km、立て続けに起こった終盤の2回の大きな落車ラッシュで、次々と有力候補が傷つき、遅れた。
総合狙いのウィギンズ(チームスカイ)が鎖骨骨折でリタイヤ。クロイツィゲル(アスタナ)、ヘジダル(ガーミン)、ポポヴィッチ&ホーナー(レディオシャック)、ファラー(アガーミン・サーヴェロ)、マイヨヴェールのトーマス(チームスカイ)...。
スピードが上がる中で接触・落車事故が相次いだナーバスな状況を、フースホフトはレース後にこう話す。
「ツールの第1週はいつもナーバスなものだけど、今年は天候、とりわけ風のせいでいっそうひどくなった。みんなが前方に位置取りしたがって、それが落車を引き起こしてしまうんだ。誰もが危険を避けるために集団の前に上がろうとする。それでさらに危険を呼んでいる。道幅が狭いところに、総合(上位を狙う)選手とチームが前に上がる。そうでない(総合上位にいない)選手も前に上がろうとする。極限的にナーバスで、ちょっとしたカオスな状況だ。何かあっても、避けることができない」
「今年のツールは例年に比べてとくにナーバスか?」と訊かれたカヴは言う
「小さな道が多くて、今日みたいにラスト4kmでフランク・シュレクみたいな選手とポジション闘いをするのは普通じゃない。本当に危険だよ。でもそれに適応しなけならない。それがツールだから」
そしてウィギンズもスタート前にTVインタビューにこう応えていた。「毎日誰もが集団の前にいようとする。なかにはライディングのうまくないヤツもいて、落車を引き起こすんだ。悪夢だね。でもそれが自転車レース。闘いの一部分だし、そんな不運に見舞われないように神に祈るしかないんだ」。
ツールを去るウィギンズ ツールの夢は母国開催のオリンピックを上回る?
落車したウィギンズの鎖骨骨折・リタイヤという最悪のニュースがチームスカイを襲った。
たった1日前、ボアッソンハーゲンのステージ優勝&チームとしてのツール初勝利に歓喜したチームにとって、エースのリタイアという最悪の事態。
ここまで10秒遅れのタイム差にとどめ、トラブル無く山岳に備えていたウィギンズ。今年見て取れるほど絞られた体つきで、チームが 「"best shape of his life"=彼の人生でもっとも絞れていた」とコメントするとおり、これからの総合争いでシャンゼリゼのポディウムをかけた闘いの主人公のひとりになるはずだと見られていた。
ゼネラルマネジャーのブレイルスフォード氏は言う「彼とチームにとって大きな失望だ。彼の調子には何の疑いも持っていなかった。ブラッドはベスト・クライマーたちと登れ、ベスト・タイムトライアラーと争える。山岳に入ったら彼が総合争いに加わることを信じていた」。
鎖骨骨折ならウィギンズの回復は早いはずだ。次の目標は8月のブエルタ・ア・エスパーニャ? しかしまずウィギンズはチームスタッフに来年のツール出場の意向をさっそく表明したようだ。
もともと2012年はウィギンズが狙うロンドンオリンピックのためにツールを欠場する予定があった。しかしこのままでは引き下がれない。
2009年のツール総合4位、不振に終わった2010年、そして2011年は闘いが始まる前にリタイヤ。オリンピックの影響を受けない今年のツールは、ウィゴにとって最大のチャンスだったはず。しかし来年も、マイヨジョーヌを追いかけて金メダルを逃すリスクを負っても、ツールの表彰台への野望を不完全燃焼のまま心の奥へしまい込むことはできない。
チームスカイは今後、総合狙いからステージ狙いに切り替える。幸い、ウィギンズに頼らなくてもステージ優勝を狙えるタレントがチームスカイにはひしめき合っている。ウィゴのアシストに力を使わずに走れるなら、あらゆるステージでチャンスが出てくる。トーマスは3分以上の遅れを喫して新人賞争いから脱落したが、タイム差を負ったことで逃げに乗ることも可能になる。
ブレイルスフォード氏は言う「チーム戦略を考え直し、ステージ優勝を狙っていく。我々には質の高い選手がいる。ボアッソン・ハーゲン、トーマス、アダム(ハンセン)、スウィフト...いいスプリンターがいる」。逃げに乗れるゲランス、フレチャ、アップヒルスプリントで頭角を表しているウラン。タレント揃いのチームがツールをかき回すかもしれない。
レディオシャックの不運は続く
落車したホーナーは脳震盪と鼻の骨折を負った。そしてライプハイマーはゴール前にパンクに見舞われてまたもやタイムロス。優勝争いから脱落した。
絶対的なエースのアームストロングが引退していなくなり、4人のエースでツールに臨んだレディオシャック。滑り出しこそ好調だったのに、不運が相次ぐ。もはや総合争いはクレーデンに任せるしかない。ひとりのリーダーの質より数で勝負できたチームだけに、総合争いの面白みがまたひとつ減ってしまった。
photo&text:Makoto.AYANO
ロワール河を横切って南下するオールフラットコース
24時間耐久カーレースの街ル・マンを発ったプロトンは、ロワール河を横切って一路南を目指す。シルキュイ・ド・ラ・サルトが開催されるサルト県から、中央山塊の入り口のアンドル県へ。
パリ~ツールでおなじみのこのペイ・ド・ラ・ロワール地域圏一帯を通過するコースは、ツールの典型的平坦ステージだ。しかし、今年のツールではようやく、そして唯一ともいえる「ど平坦」ステージ。
テクニカルなコーナーも山岳ポイントもない、海から吹く強風に悩まされることもない。スプリントを狙うチーム以外は一息つけるリエゾン的ステージになる「はずだった」。
道の両脇に麦畑。一直線の道。農業国フランスらしい典型的な風景が続く。ロワール河沿いに古城の点在するこの一帯には外人観光客も多く、にわかツール観戦ファンも多い。
観光とあわせてツール観戦を決め込むアメリカ人。そして2人しか出場していないにもかかわらずフースホフトのマイヨジョーヌとボアッソン・ハーゲンの昨ステージの勝利で嬉しい思いのノルウェー人ファンの姿も目立つ。
でも今日一番目立っていたのはロマン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ)の応援バナーだ。
シャトールーはフェイユ出身の街。応援旗には、ステージ優勝まであと一歩のところにいるフェイユをなんとか勝たせたい!という願いがこもっている。しかしカヴェンディッシュにとっても初めてツールの勝利を挙げた記念すべき街。HTCの意気込みは普段以上に高い。
そしてコースに近いトゥールの街出身のジェレミー・ロワ(FDJ)の応援も目立つ。Roy=ロワはフランス語で「王」=Roiに通じるため、「Allez MISTER KING」のバナーも。絶対にフランス人が作った英語のバナーがちょっと微笑ましい。ロワはコース上で家族に会ったということだが、途中で撮った幾人かの応援団のなかにその家族がいただろうか?
FDJのアタックローテーション
ジャンニ・メールスマン(FDJ)、ミカエル・ドラージュ(FDJ)、ヤニック・タラバルドン(ソール・ソジャサン)、パブロ・ウルタスン(エウスカルテル)の4人を逃がした集団はクルーズ状態で差を保って走る。この日はスプリントポイントがゴール手前28kmという終盤に設定されたのも、このリラックスが長く続いた原因になった。レース後半、余力を残した選手たちによる位置取り争いで、緊張が余計に高くなった。
メールスマンとドラージュの2人を逃げに送り込んだFDJ。ドラージュが逃げるのは、敢闘賞を獲得した第3ステージに続いて2度目。そして連日のジェレミー・ロアやアントニー・ルーとの「シフト制」のようなアタックで、上手に目立つ。チームはプロコンチにひとつ格を下げ、総合を狙える選手もいないから、目標はステージ優勝と目立つこと。ツールでこれだけ目立てばひとまず成功?
補給所に先行していて、レース無線にボーネンがリタイヤしたという知らせが入る。落車の怪我をおして走り、回復をまったが、夜に具合が悪くなったという。「回復したら何かしたい(勝ちたい)」と話していたボーネンに対し、「もはやリタイヤが近い」と話していたシャヴァネルをカメラで追っていたから、まさか先にボーネンが降りるとは思っていなかった。
補給所からコースを離れてゴール地点へ先回りするチームカーの隊列に加わってシャトールーを目指した。クイックステップのチームカーには第1カーから乗り移ったボーネンと、エディメルクスの自転車がルーフキャリアに積まれていた。
完璧なサポートワークを見せたHTCハイロード
レース終盤からシャトールーのゴールスプリントへ向けてトレインを形成し、カヴェンディッシュの勝利をお膳立てする完璧なアシストワークを見せたHTCハイロード。対抗するチームスカイが落車の影響を受けて不在だったのも有利に働いた。
カヴェンディッシュが見せた、ゴールラインを切ってから拳を突き上げ、頭を抱える「勝っちゃった、どうしよう?」とも形容できそうなそのポーズは、シャトールーで初めて勝ったときのポーズそのままの再現だ。喜びを爆発させながらもそれをする余裕があるのがカヴらしい。
カヴはゴールするとすべてのチームメイトが帰ってくるのを待ち、ひとりひとりとハグして感謝の気持ちを表した。そしてポディウムでは女性の招待客にビズー(頬への挨拶のキス)を4度繰り返す大サービス(通常は2回)までみせた。
「チームワークが素晴らしかった。僕はラスト150mまで完璧に運んでもらっただけで、何も努力らしいことをしないで済んだ」。
今日のカヴはエモーショナルだが、ツール17勝目を挙げてなおクールさも保っていた。
「彼らのことを誇りに思う。彼らは今日本当にすごかった。人は僕が他の選手達をリスペクトしていないというけれど、他の選手たちは僕らのチームをリスペクトするべきだよ。彼らは僕らの列車に乗ろうとするけど、彼らは自分のチームの列車に乗るべきだ。結果が欲しかったらそれを達成できるチームを手に入れるべきだ」。
レース後のインタビューのときまでウィギンズの落車を知らなかったカヴ。リタイアを知らされると驚いた。「僕らはスプリントとイエローのジャージをイギリスに持ち帰れると思っていたのに」。
相次いだ落車 総合争いの相関図が変わる
残り48kmと38km、立て続けに起こった終盤の2回の大きな落車ラッシュで、次々と有力候補が傷つき、遅れた。
総合狙いのウィギンズ(チームスカイ)が鎖骨骨折でリタイヤ。クロイツィゲル(アスタナ)、ヘジダル(ガーミン)、ポポヴィッチ&ホーナー(レディオシャック)、ファラー(アガーミン・サーヴェロ)、マイヨヴェールのトーマス(チームスカイ)...。
スピードが上がる中で接触・落車事故が相次いだナーバスな状況を、フースホフトはレース後にこう話す。
「ツールの第1週はいつもナーバスなものだけど、今年は天候、とりわけ風のせいでいっそうひどくなった。みんなが前方に位置取りしたがって、それが落車を引き起こしてしまうんだ。誰もが危険を避けるために集団の前に上がろうとする。それでさらに危険を呼んでいる。道幅が狭いところに、総合(上位を狙う)選手とチームが前に上がる。そうでない(総合上位にいない)選手も前に上がろうとする。極限的にナーバスで、ちょっとしたカオスな状況だ。何かあっても、避けることができない」
「今年のツールは例年に比べてとくにナーバスか?」と訊かれたカヴは言う
「小さな道が多くて、今日みたいにラスト4kmでフランク・シュレクみたいな選手とポジション闘いをするのは普通じゃない。本当に危険だよ。でもそれに適応しなけならない。それがツールだから」
そしてウィギンズもスタート前にTVインタビューにこう応えていた。「毎日誰もが集団の前にいようとする。なかにはライディングのうまくないヤツもいて、落車を引き起こすんだ。悪夢だね。でもそれが自転車レース。闘いの一部分だし、そんな不運に見舞われないように神に祈るしかないんだ」。
ツールを去るウィギンズ ツールの夢は母国開催のオリンピックを上回る?
落車したウィギンズの鎖骨骨折・リタイヤという最悪のニュースがチームスカイを襲った。
たった1日前、ボアッソンハーゲンのステージ優勝&チームとしてのツール初勝利に歓喜したチームにとって、エースのリタイアという最悪の事態。
ここまで10秒遅れのタイム差にとどめ、トラブル無く山岳に備えていたウィギンズ。今年見て取れるほど絞られた体つきで、チームが 「"best shape of his life"=彼の人生でもっとも絞れていた」とコメントするとおり、これからの総合争いでシャンゼリゼのポディウムをかけた闘いの主人公のひとりになるはずだと見られていた。
ゼネラルマネジャーのブレイルスフォード氏は言う「彼とチームにとって大きな失望だ。彼の調子には何の疑いも持っていなかった。ブラッドはベスト・クライマーたちと登れ、ベスト・タイムトライアラーと争える。山岳に入ったら彼が総合争いに加わることを信じていた」。
鎖骨骨折ならウィギンズの回復は早いはずだ。次の目標は8月のブエルタ・ア・エスパーニャ? しかしまずウィギンズはチームスタッフに来年のツール出場の意向をさっそく表明したようだ。
もともと2012年はウィギンズが狙うロンドンオリンピックのためにツールを欠場する予定があった。しかしこのままでは引き下がれない。
2009年のツール総合4位、不振に終わった2010年、そして2011年は闘いが始まる前にリタイヤ。オリンピックの影響を受けない今年のツールは、ウィゴにとって最大のチャンスだったはず。しかし来年も、マイヨジョーヌを追いかけて金メダルを逃すリスクを負っても、ツールの表彰台への野望を不完全燃焼のまま心の奥へしまい込むことはできない。
チームスカイは今後、総合狙いからステージ狙いに切り替える。幸い、ウィギンズに頼らなくてもステージ優勝を狙えるタレントがチームスカイにはひしめき合っている。ウィゴのアシストに力を使わずに走れるなら、あらゆるステージでチャンスが出てくる。トーマスは3分以上の遅れを喫して新人賞争いから脱落したが、タイム差を負ったことで逃げに乗ることも可能になる。
ブレイルスフォード氏は言う「チーム戦略を考え直し、ステージ優勝を狙っていく。我々には質の高い選手がいる。ボアッソン・ハーゲン、トーマス、アダム(ハンセン)、スウィフト...いいスプリンターがいる」。逃げに乗れるゲランス、フレチャ、アップヒルスプリントで頭角を表しているウラン。タレント揃いのチームがツールをかき回すかもしれない。
レディオシャックの不運は続く
落車したホーナーは脳震盪と鼻の骨折を負った。そしてライプハイマーはゴール前にパンクに見舞われてまたもやタイムロス。優勝争いから脱落した。
絶対的なエースのアームストロングが引退していなくなり、4人のエースでツールに臨んだレディオシャック。滑り出しこそ好調だったのに、不運が相次ぐ。もはや総合争いはクレーデンに任せるしかない。ひとりのリーダーの質より数で勝負できたチームだけに、総合争いの面白みがまたひとつ減ってしまった。
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