エアロダイナミクスを追求するサーベロ。2008年のツールドフランス優勝と今季に入ってのサーベロテストチームの目覚しい活躍はこのバイクのおかげといっても過言ではない。エアロ効果と快適性を両立させたS3は、まさに妥協を許さない最強のバイクだ。

サーベロS3 サーベロS3  (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
極端に薄いエアロシェイプのダウンチューブ極端に薄いエアロシェイプのダウンチューブ

エアロダイナミクスと快適性の両立


S3はサーベロのソロイストシリーズで培ったエアロダイナミクス性能とRシリーズで培った快適性を両立したグループであるSシリーズの頂点に立つバイクとして誕生した。

それがもっとも特徴として現れているのが、ソロイストシリーズではおなじみのダウンチューブの扁平加工と、Rシリーズで使われたスーパースリムシートステイを発展させた新型シーステーの採用である。

また、今回はシートステーの改良だけでなく、チェーンステーにもトップグレードのS3ならではの加工が施された。エアロ効果と剛性をアップするために見直を図ったチェーンステイにより、ホイール周りの空気抵抗をさらに軽減することにも成功している。

ICS2システム シフトケーブルをトップチューブ上部に内蔵ICS2システム シフトケーブルをトップチューブ上部に内蔵

ICS2システムの導入


Sシリーズでは新たに、空気抵抗を考慮してハンドルから伸びるワイヤーラインをトップチューブ上部からフレーム内部に通すという新しい取り組みである”ICS2システム”も加わり、更なる進化を遂げている。これは従来タイムトライアルバイクに用いられてきた手法だ。

このシステムの採用により、通常のロードバイクでは考えられないシフトワイヤーの取り回しが実現した。ヘッド周辺のトップチューブ上から内蔵されるケーブルは、ダウンチューブ内に内蔵され、BB周辺で外へ引き出される。

極太でエアロ効果を併せ持つチェーンステイの造形極太でエアロ効果を併せ持つチェーンステイの造形 従来ではワイヤーをフレームに沿わせることによる乱気流の発生は仕方ないものとされていたが、このシステムにより更なる前面投影面積の減少と空気抵抗の軽減が可能となった。

S3はロードバイクでありながら空気抵抗の低減について究極ともいえる対策を施し、コンマ1秒を切る世界をターゲットに設計された妥協を許さないバイクである。

カラーはオリンピックの五輪を模した"リミテッドエディション"と、シルバー/ブラックの2タイプが用意される。

インプレッション


「これほど乗って楽しいロードバイクは少ない」


鈴木祐一(Rise Ride)

S3に乗って一番衝撃を受けたのは、スピードが落ちないこと。見た目の派手さ、薄っぺらさ、また見た目のインパクトから、癖の強いバイクのように思ってしまう方も多いと思うが、実際に乗ってみるととくに癖が強いわけでもなく、ロングライドも行けてしまう「普通さ」を兼ね備えたロードレーサーだと思った。

まるでBMXのような乗り心地。ライダーをやる気にさせてくれる」鈴木祐一(Rise Ride)まるでBMXのような乗り心地。ライダーをやる気にさせてくれる」鈴木祐一(Rise Ride) サーヴェロ全体に言える事だが、フロントセンターが短いような感じがあって、フロントタイヤが自分の手前のほうに来るような印象がある。まるでBMXに乗っているような重心の感覚だ。
そうなると、コーナーリングでは安定するが、路面が荒れているところやシビアなコントロールを要求されるところでは、ハンドリングがクイック過ぎて、上手な人でないとなかなか楽しみづらい印象もある。
初心者の方やまだロードバイクにおぼつかないような人、一台目にピュアなロードレーサーに乗っていて、二台目にサーヴェロの高価なモデルを購入したような人は驚きを感じるだろう。

ただし、上手な人であればそれらの特性は許容範囲内だ。しかもこれほど乗って楽しいロードバイクは少ないほど、小気味良く走る。まぎれもなく「とんがったバイク」だ。

加速に関してはかなりいい印象を持った。踏んでから一瞬遅れたり、半テンポほど反応が遅れてくるフレームはよくあるが、S3は踏んだ瞬間にすぐスッと前に進んでくれる。

それが前に進まないフレームだと、ちょっと足にきたり、フレームが硬いという印象を受けるけれど、このフレームは力の逃げ方が自転車の推進力に活かされているので、前に進むフィーリングがなおさら高いと感じるのだ。

振動吸収性に関しては、ロングライドでも使えるように感じる。シートステーの部分がやわらかい印象を感じる。しかし、ここでの”やわらかい”という印象は、コンフォート系のバイクのやわらかさほどではなく、レーシングバイクという概念の中でのやわらかさ。心地よい印象を得た。

まとめると、ピュアなレーシングバイクで、クイックなハンドリングや踏んだ瞬間に加速するような感覚とスピード維持力の高さがあるので、乗り手のやる気を出させるバイクだった。

また、その他の部分で、特徴的だったのが、特殊なケーブルのルーティング。これにより、従来のワイヤー抵抗によるハンドリングへの影響が少なくなったように感じる。もちろんサーヴェロが考える空力も考慮されていると思う。

しかしながらフレーム内に通る部分もアウターケーブルになっていると思うので、その分整備が悪いとワイヤーの引きが重くなることがあるのではないかという心配もある。

このバイクにはディープリムが似合う。むしろ「ディープリムじゃなきゃダメ」みたいな感じがする。これだけフレームにボリュームがあってカッコいいと、ホイールにもふさわしいデザイン、負けない性能のものをセットすることが必要だ。

「スピードが伸びて伸びて伸びまくる究極のエアロダイナミクスバイク」


浅見和洋(なるしまフレンド)

「乗りやすさ、振動吸収性ともにハイレベル」浅見和洋(なるしまフレンド)「乗りやすさ、振動吸収性ともにハイレベル」浅見和洋(なるしまフレンド) S3を一言で言い表すならば、「スピードが伸びて伸びて伸びまくる究極のエアロダイナミクスバイク」。Sシリーズはサーベロの中ではエアロ効果を狙ったグルーピングなので、キャラクターがとても明確になっていると感じる。

乗りやすさ、振動吸収性ともにハイレベルで、そのスペシャルなデザインからは想像ができないぐらいの繊細な乗り心地をもっていることにはとても驚かされた。

シートステーが細身で、うまい具合に振動を吸収してくれる。また、それがスピードの伸びにもつながっていて、とても理にかなっていると感じる。

ジオメトリーから考えても、直進性が強く、取り回しはいいほうではない。コーナーリングは低速域ではぶれるような印象があった。しかし、高速域では驚くような安定性を見せた。
まさに高速域をターゲットにしたレーシングバイクであるといえるだろう。

加速感については、重量の軽さによる加速性の良さを十分に感じられた。フィーリングとしてはダイレクトな加速でなく、パワーが「グググッ」と伝わってから加速する感じで、決してパワーのロスを感じさせない。

大きなサイズのフレームでは問題ないと思うが、サイズが54以下になるとフロントセンターが小さく、トゥクリアランス(シューズ先端とタイヤとの距離)が保たれないので、初心者の方には安全面を考慮するとお勧めしづらい面がある。
運動性能を最優先させて設計されているので仕方のない面ではあるのだが、販売者からすればそのことをしっかり説明して理解してもらう必要があると思う。

サーベロS3サーベロS3 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
サーベロS3 シルバー/ブラックサーベロS3 シルバー/ブラック photo:東商会

サーベロS3


フレーム Cervelo True Aero Smartwall High Modulus Carbon
フォーク 3T Funda Team
ヘッドセット Cane Creek Integrated
シートポスト Cervelo aero carbon
カラー リミテッドエディション(※)、シルバー/ブラック
サイズ 48、51、54、56
価格 フレームセット693,000円 (税抜 660,000円)
※2009年4月30日現在、オリンピックカラーのリミテッドエディションは販売終了で店頭在庫のみとなります(東商会)



鈴木祐一(Rise Ride)鈴木祐一(Rise Ride)

インプレライダーのプロフィール


鈴木祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。
2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド


浅見和洋(なるしまフレンド)浅見和洋(なるしまフレンド) 浅見和洋(なるしまフレンド)
プロショップ「なるしまフレンド原宿店」スタッフ。身長175cm、体重65kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質は厳しい上りがあるコースでの活躍が目立つクライマータイプだ。ダンシングでパワフルに走るのが得意。最近の嗜好は日帰りロングランにあり、例えば東京から伊豆といった、距離にして300kmオーバーをクラブ員らと楽しんでいる。
なるしまフレンド


ウェア協力:ゴールドウィン

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