2011/04/20(水) - 00:17
アルデンヌクラシック3連戦の真ん中に当たるフレーシュ・ワロンヌ。待ち受ける激坂ユイの壁を制し歴史に名を刻むのは、どの選手か。
舞台はベルギー南部のワロンヌ地方
フランス語で「ワロンヌの矢」を意味するフレーシュ・ワロンヌ。ワロンヌ地方はベルギーの南半分の地域で、公用語はフランス語だ。フラマン語が話される北部フランドル地方とは文化的にも大きく異なる。こと自転車競技に関して言えば、フランドル地方の熱狂ぶりは他に比肩する地域は無いほど。
一方のワロンヌ地方のビッグレースといえば、このフレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。つまり、アルデンヌクラシックの後半2戦、平地の独走力を問う北のクラシックと比べて、アルデンヌクラシックは登りでの瞬発性を問うレースになっている。それぞれに特徴的な登り坂があるが、フレーシュ・ワロンヌの代名詞とも言える坂は「ユイの壁」だ。
ユイの壁(ミュール・ド・ユイ)は201kmのコースに3度登場する。3度目の頂上がゴール地点だ。登りは1300m続き、平均勾配は9.3%と厳しいが、「壁」の所以は何と言っても最大勾配26%に達する登りの後半部分。この激坂をこなせるだけの登坂能力が無ければ、ワロンヌの矢にはなれない。
このユイの壁を含めて計10回の登りがフレーシュ・ワロンヌには用意される。32の登りがあったアムステル・ゴールドレースに比べて登りの数こそ少ないが、登りひとつひとつの距離は長く、また勾配も険しいため、アムステルよりもクライマー向けのレースだと言えるだろう。
登場する10カ所の上り(登坂距離・平均勾配)
1 70.0km地点 Mur de Huy(1回目) 1300m・9.3%
2 109.0km地点 Cote de Peu d'Eau 2700m・3.9%
3 115.0km地点 Cote de Haut-Bois 1600m・4.8%
4 140.0km地点 Cote de Groynne 2000m・3.5%
5 146.0km地点 Cote de Bohisseau 1300m・7.6%
6 149.5km地点 Cote de Bousalle 1700m・4.9%
7 160.5km地点 Cote d'Ahin 2300m・6.5%
8 171.5km地点 Mur de Huy(2回目) 1300m・9.3%
9 190.0km地点 Cote d'Ereffe 2000m・5.9%
10 201.0km地点 Mur de Huy(ゴール) 1300m・9.3%
昨年覇者エヴァンス不在 注目は激坂の名手ロドリゲス
それでは注目の選手を見ていこう。昨年アルカンシェルを着て今大会を制したカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)はトレーニング中の落車によるケガの影響でスキップ。ツール・ド・フランスを見越して治療に専念する。
今大会の最注目選手はプロトン屈指の激坂クライマー、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)だ。昨年大会でエヴァンスに敗れ2位となったスペイン人は、3日前のアムステル・ゴールドレースでも最後のカウベルクで飛び出して2位になっている。これでアルデンヌクラシック3戦全てで2位を経験したロドリゲスに最も合うのは激坂の待つフレーシュ。ディルーカ(イタリア)、イワノフ(ロシア)、コロブネフ(ロシア)、モレーノ(スペイン)とフルメンバーが揃うカチューシャに死角は見当たらない。
アムステルを制し破竹の勢いを見せるフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)は、フレーシュにはやや弱気だ。本人曰く「坂が険しすぎる」。昨年の6位が自己ベストだが、進化を続ける当代のワンデイクラシッカーに不可能は無い、と見るのは過度の期待であろうか。
昨年大会に台風の目として登場し、クライマーとしてのポテンシャルを見せつけて3位となったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク)は今年は控えめだ。カスティーリャ・レオンの個人TTで勝利するなどコンディションは悪くなさそうだが、「ジロを目指して、フレーシュではチームメイトをアシストする」とのコメント。チームのエースはクリスアンケル・セレンセン(デンマーク)が務める。
アムステルでは兄フランクが落車し、先手の走りしか選択肢が無く11位に沈んだアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)。もう同じ轍を踏むことはあるまい。軽々と坂を駆けていく兄弟のコンビネーションはアルデンヌクラシック期間中、他チームの脅威であり続ける。
チームスカイはアムステル3位のサイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)をエースに送り込む。ユイの壁を攻略できれば勝機はある。トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン)、リゴベルト・ウラン(コロンビア)が展開次第では狙うだろう。
リクイガス・キャノンデールからはイヴァン・バッソ(イタリア)が登場。ツールを見据えるオールラウンダーはこのフレーシュで存在感を見せるか。エウスカルテルはアムステルで4位の軽量クライマー、イゴール・アントン(スペイン)とエースのサムエル・サンチェス(スペイン)で勝負。
母国最大のアムステルを「僕向きの坂じゃない」と言うクライマーのロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)に向くのはユイの壁のような激坂か。長身のヒルクライマーが目覚めるときは今だ。
クラシックとグランツールで揺れ動くダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)にとってアルデンヌクラシックは得意種目。フレーシュでは2度の3位を経験している。
アスタナは昨年のリエージュ覇者アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)をアムステルに続きエースに立てる。エンリコ・ガスパロット(イタリア)の積極的な走りがヴィノを助けるだろう。
ワイルドカードで出場するチームからの注目選手は、ジェローム・コッペルとジョナタン・イヴェール(共にフランス、ソール・ソジャサン)を挙げておこう。なお、出場予定だった土井雪広(日本、スキル・シマノ)はブラバンツ・ペイルの落車で痛めた膝の下部にヒビが入っているのが病院で確認されたため、残念ながらDNSとなっている。
シクロワイアードではフォトグラファー辻啓による現地からのフォト&レポートをお届けする予定です。お楽しみに!
フレーシュ・ワロンヌテキストライブは4月20日(水)21時からお届けする予定です!
text:Yufta Omata
photo:Cor Vos
舞台はベルギー南部のワロンヌ地方
フランス語で「ワロンヌの矢」を意味するフレーシュ・ワロンヌ。ワロンヌ地方はベルギーの南半分の地域で、公用語はフランス語だ。フラマン語が話される北部フランドル地方とは文化的にも大きく異なる。こと自転車競技に関して言えば、フランドル地方の熱狂ぶりは他に比肩する地域は無いほど。
一方のワロンヌ地方のビッグレースといえば、このフレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。つまり、アルデンヌクラシックの後半2戦、平地の独走力を問う北のクラシックと比べて、アルデンヌクラシックは登りでの瞬発性を問うレースになっている。それぞれに特徴的な登り坂があるが、フレーシュ・ワロンヌの代名詞とも言える坂は「ユイの壁」だ。
ユイの壁(ミュール・ド・ユイ)は201kmのコースに3度登場する。3度目の頂上がゴール地点だ。登りは1300m続き、平均勾配は9.3%と厳しいが、「壁」の所以は何と言っても最大勾配26%に達する登りの後半部分。この激坂をこなせるだけの登坂能力が無ければ、ワロンヌの矢にはなれない。
このユイの壁を含めて計10回の登りがフレーシュ・ワロンヌには用意される。32の登りがあったアムステル・ゴールドレースに比べて登りの数こそ少ないが、登りひとつひとつの距離は長く、また勾配も険しいため、アムステルよりもクライマー向けのレースだと言えるだろう。
登場する10カ所の上り(登坂距離・平均勾配)
1 70.0km地点 Mur de Huy(1回目) 1300m・9.3%
2 109.0km地点 Cote de Peu d'Eau 2700m・3.9%
3 115.0km地点 Cote de Haut-Bois 1600m・4.8%
4 140.0km地点 Cote de Groynne 2000m・3.5%
5 146.0km地点 Cote de Bohisseau 1300m・7.6%
6 149.5km地点 Cote de Bousalle 1700m・4.9%
7 160.5km地点 Cote d'Ahin 2300m・6.5%
8 171.5km地点 Mur de Huy(2回目) 1300m・9.3%
9 190.0km地点 Cote d'Ereffe 2000m・5.9%
10 201.0km地点 Mur de Huy(ゴール) 1300m・9.3%
昨年覇者エヴァンス不在 注目は激坂の名手ロドリゲス
それでは注目の選手を見ていこう。昨年アルカンシェルを着て今大会を制したカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)はトレーニング中の落車によるケガの影響でスキップ。ツール・ド・フランスを見越して治療に専念する。
今大会の最注目選手はプロトン屈指の激坂クライマー、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)だ。昨年大会でエヴァンスに敗れ2位となったスペイン人は、3日前のアムステル・ゴールドレースでも最後のカウベルクで飛び出して2位になっている。これでアルデンヌクラシック3戦全てで2位を経験したロドリゲスに最も合うのは激坂の待つフレーシュ。ディルーカ(イタリア)、イワノフ(ロシア)、コロブネフ(ロシア)、モレーノ(スペイン)とフルメンバーが揃うカチューシャに死角は見当たらない。
アムステルを制し破竹の勢いを見せるフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)は、フレーシュにはやや弱気だ。本人曰く「坂が険しすぎる」。昨年の6位が自己ベストだが、進化を続ける当代のワンデイクラシッカーに不可能は無い、と見るのは過度の期待であろうか。
昨年大会に台風の目として登場し、クライマーとしてのポテンシャルを見せつけて3位となったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク)は今年は控えめだ。カスティーリャ・レオンの個人TTで勝利するなどコンディションは悪くなさそうだが、「ジロを目指して、フレーシュではチームメイトをアシストする」とのコメント。チームのエースはクリスアンケル・セレンセン(デンマーク)が務める。
アムステルでは兄フランクが落車し、先手の走りしか選択肢が無く11位に沈んだアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)。もう同じ轍を踏むことはあるまい。軽々と坂を駆けていく兄弟のコンビネーションはアルデンヌクラシック期間中、他チームの脅威であり続ける。
チームスカイはアムステル3位のサイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)をエースに送り込む。ユイの壁を攻略できれば勝機はある。トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン)、リゴベルト・ウラン(コロンビア)が展開次第では狙うだろう。
リクイガス・キャノンデールからはイヴァン・バッソ(イタリア)が登場。ツールを見据えるオールラウンダーはこのフレーシュで存在感を見せるか。エウスカルテルはアムステルで4位の軽量クライマー、イゴール・アントン(スペイン)とエースのサムエル・サンチェス(スペイン)で勝負。
母国最大のアムステルを「僕向きの坂じゃない」と言うクライマーのロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)に向くのはユイの壁のような激坂か。長身のヒルクライマーが目覚めるときは今だ。
クラシックとグランツールで揺れ動くダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)にとってアルデンヌクラシックは得意種目。フレーシュでは2度の3位を経験している。
アスタナは昨年のリエージュ覇者アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)をアムステルに続きエースに立てる。エンリコ・ガスパロット(イタリア)の積極的な走りがヴィノを助けるだろう。
ワイルドカードで出場するチームからの注目選手は、ジェローム・コッペルとジョナタン・イヴェール(共にフランス、ソール・ソジャサン)を挙げておこう。なお、出場予定だった土井雪広(日本、スキル・シマノ)はブラバンツ・ペイルの落車で痛めた膝の下部にヒビが入っているのが病院で確認されたため、残念ながらDNSとなっている。
シクロワイアードではフォトグラファー辻啓による現地からのフォト&レポートをお届けする予定です。お楽しみに!
フレーシュ・ワロンヌテキストライブは4月20日(水)21時からお届けする予定です!
text:Yufta Omata
photo:Cor Vos
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