2011/04/06(水) - 07:47
2011年4月5日、ブエルタ・アル・パイスバスコ(UCIワールドツアー)第2ステージが163kmの山岳コースで行なわれ、最終山岳通過後の下りで飛び出したヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター)が勝利。ステージ2位のアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)が総合首位に立った。
バスク一周レース2日目は、スマラガから山岳地帯を抜けてレクンベリに至る163km。大小様々の複雑な周回コースが設定され、カテゴリー1級から3級までの山岳を合計7つ越えていく。
中でも注目は、65km地点と160km地点に設定された1級山岳アスピロス峠だ。登坂距離3.2km・平均勾配8.5%という峠の2度目の通過は、ゴールの僅か3km手前。この1級山岳で総合優勝を懸けたアタック合戦が繰り広げられることは容易に想像できた。
この日、逃げを試みたのはアマエル・モワナール(フランス、BMCレーシングチーム)、マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)、ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)、ラファエル・バルス(スペイン、ジェオックス・TMC)の4名。イグリンスキーとバルスが山岳ポイント獲得に積極性を見せた。
先頭4名は、リーダージャージ擁するカチューシャが牽引するメイン集団から最大5分45秒のリードを奪う。しかし、ランプレ・ISDとガーミン・サーヴェロの協力を得たカチューシャは、レース後半にかけて逃げグループとのタイム差を詰めていく。
やがてガーミン・サーヴェロが積極的にメイン集団のペースを上げると、逃げグループはラスト28km地点で吸収。カウンターアタックで飛び出したカルロス・バレード(スペイン、ラボバンク)も封じ込められ、ガーミン・サーヴェロが集団を一つにまとめて最後の1級山岳アスピロス峠へ。
リクイガス・キャノンデールやラボバンクも集団先頭に上がるが、ガーミン・サーヴェロが主導権を握ったまま1級山岳に突入。口火を切ったのはファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)。2008年のU23世界チャンピオンが、頂上まで2.5kmを残して飛び出した。
続いてリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)が攻撃を仕掛けると、ガーミン・サーヴェロの主導権は崩れる。人数が絞られたメイン集団からはアタックが頻発し、キリエンカのアタックにフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)やクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)が反応し、頂上1km手前で先頭のドゥアルテをキャッチ。
一時的にフランクやホーナーを含む強力な先頭グループが形成されたが、リーダージャージのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らも合流し、15名ほどが精鋭グループを形成して頂上を通過。登りでのアタックが決まらないまま、ゴールまでの3kmダウンヒル区間に差し掛かった。
他の選手たちがクラウチングスタイルで空気を切り裂く中、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が下りでトップギアを回してアタック。ヴィノクロフの動きには数名が反応し、ラスト1.5kmでキリエンカがカウンターアタック。
2008年のトラック・ポイントレース世界チャンピオンは、持ち前の独走力で後続を一気に引き離す。キリエンカは最後までそのリードを守り切り、独走のまま両手を広げてゴール。バスクの難関山岳ステージで今シーズン初勝利を掴んだ。
ジュニア時代からトラック競技で活躍し、タイムトライアルを中心に成績を残してきたキリエンカ。近年は山岳力を磨き、山岳コースでの積極的な走りが目立っている。今年のクリテリウム・アンテルナシオナルでは山岳ステージでフランク・シュレクに挑み、総合2位に入った。
「待ちに待った勝利だ。これまでチームメイトのアシストに回ることが多かったけど、やっぱり自分の勝利は格別。最後の山岳を越えた時点でモビスターは3〜4名を先頭グループに残していた。チームには絶対的なエースはいないけど、ロペスガルシア、インチャウスティ、トンドといったステージ優勝を狙える才能が揃っている。僕の最大の目標はジロ・デ・イタリアだ」。
キリエンカは2008年のジロで山岳ステージで優勝を飾り、山岳賞2位でフィニッシュ。昨年のツール・ド・フランスでも山岳コースが設定された第10ステージで逃げ、僅差の2位に入っている。ジロでは再びステージ優勝に絡む走りを見せるだろう。
また、この日ステージ2位に入ったアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)は、着順によって総合首位に浮上。2ステージを終えて、ロドリゲスとサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)がタイム差なしの総合2位と総合3位につけている。まだまだタイム差20秒以内に16名がひしめく混戦状態。難関山岳が連続する第4ステージと、起伏に富んだ第6ステージ・個人タイムトライアルで勝負は決する。
レース展開と選手コメントはレース公式サイト、ならびにストリーミング映像より。
ブエルタ・アル・パイスバスコ2011第2ステージ結果
1位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター) 4h06'39"
2位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) +02"
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
4位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク・サンガード)
5位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)
6位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
7位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ)
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
9位 ファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
個人総合成績
1位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) 8h09'23"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +01"
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ) +06"
6位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
8位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +09"
ポイント賞
アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
スプリント賞
ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)
山岳賞
マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
チーム総合成績
モビスター
text:Kei Tsuji
photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com
バスク一周レース2日目は、スマラガから山岳地帯を抜けてレクンベリに至る163km。大小様々の複雑な周回コースが設定され、カテゴリー1級から3級までの山岳を合計7つ越えていく。
中でも注目は、65km地点と160km地点に設定された1級山岳アスピロス峠だ。登坂距離3.2km・平均勾配8.5%という峠の2度目の通過は、ゴールの僅か3km手前。この1級山岳で総合優勝を懸けたアタック合戦が繰り広げられることは容易に想像できた。
この日、逃げを試みたのはアマエル・モワナール(フランス、BMCレーシングチーム)、マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)、ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)、ラファエル・バルス(スペイン、ジェオックス・TMC)の4名。イグリンスキーとバルスが山岳ポイント獲得に積極性を見せた。
先頭4名は、リーダージャージ擁するカチューシャが牽引するメイン集団から最大5分45秒のリードを奪う。しかし、ランプレ・ISDとガーミン・サーヴェロの協力を得たカチューシャは、レース後半にかけて逃げグループとのタイム差を詰めていく。
やがてガーミン・サーヴェロが積極的にメイン集団のペースを上げると、逃げグループはラスト28km地点で吸収。カウンターアタックで飛び出したカルロス・バレード(スペイン、ラボバンク)も封じ込められ、ガーミン・サーヴェロが集団を一つにまとめて最後の1級山岳アスピロス峠へ。
リクイガス・キャノンデールやラボバンクも集団先頭に上がるが、ガーミン・サーヴェロが主導権を握ったまま1級山岳に突入。口火を切ったのはファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)。2008年のU23世界チャンピオンが、頂上まで2.5kmを残して飛び出した。
続いてリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)が攻撃を仕掛けると、ガーミン・サーヴェロの主導権は崩れる。人数が絞られたメイン集団からはアタックが頻発し、キリエンカのアタックにフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)やクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)が反応し、頂上1km手前で先頭のドゥアルテをキャッチ。
一時的にフランクやホーナーを含む強力な先頭グループが形成されたが、リーダージャージのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らも合流し、15名ほどが精鋭グループを形成して頂上を通過。登りでのアタックが決まらないまま、ゴールまでの3kmダウンヒル区間に差し掛かった。
他の選手たちがクラウチングスタイルで空気を切り裂く中、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が下りでトップギアを回してアタック。ヴィノクロフの動きには数名が反応し、ラスト1.5kmでキリエンカがカウンターアタック。
2008年のトラック・ポイントレース世界チャンピオンは、持ち前の独走力で後続を一気に引き離す。キリエンカは最後までそのリードを守り切り、独走のまま両手を広げてゴール。バスクの難関山岳ステージで今シーズン初勝利を掴んだ。
ジュニア時代からトラック競技で活躍し、タイムトライアルを中心に成績を残してきたキリエンカ。近年は山岳力を磨き、山岳コースでの積極的な走りが目立っている。今年のクリテリウム・アンテルナシオナルでは山岳ステージでフランク・シュレクに挑み、総合2位に入った。
「待ちに待った勝利だ。これまでチームメイトのアシストに回ることが多かったけど、やっぱり自分の勝利は格別。最後の山岳を越えた時点でモビスターは3〜4名を先頭グループに残していた。チームには絶対的なエースはいないけど、ロペスガルシア、インチャウスティ、トンドといったステージ優勝を狙える才能が揃っている。僕の最大の目標はジロ・デ・イタリアだ」。
キリエンカは2008年のジロで山岳ステージで優勝を飾り、山岳賞2位でフィニッシュ。昨年のツール・ド・フランスでも山岳コースが設定された第10ステージで逃げ、僅差の2位に入っている。ジロでは再びステージ優勝に絡む走りを見せるだろう。
また、この日ステージ2位に入ったアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)は、着順によって総合首位に浮上。2ステージを終えて、ロドリゲスとサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)がタイム差なしの総合2位と総合3位につけている。まだまだタイム差20秒以内に16名がひしめく混戦状態。難関山岳が連続する第4ステージと、起伏に富んだ第6ステージ・個人タイムトライアルで勝負は決する。
レース展開と選手コメントはレース公式サイト、ならびにストリーミング映像より。
ブエルタ・アル・パイスバスコ2011第2ステージ結果
1位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター) 4h06'39"
2位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) +02"
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
4位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク・サンガード)
5位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)
6位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
7位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ)
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
9位 ファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
個人総合成績
1位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) 8h09'23"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +01"
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ) +06"
6位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
8位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +09"
ポイント賞
アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
スプリント賞
ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)
山岳賞
マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
チーム総合成績
モビスター
text:Kei Tsuji
photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com
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