2011年3月26日と27日の2日間、地中海に浮かぶフランス・コルシカ島でクリテリウム・アンテルナシオナル(UCI2.HC)が行なわれ、土井雪広(スキル・シマノ)が2ステージで逃げを試みて山岳賞3位に。初日の頂上ゴールを制したフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)が総合リードを守り抜き、総合優勝に輝いた。

毎年3月下旬にASO(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催するクリテリウム・アンテルナシオナルは、2日間の日程で開催される短いステージレース。昨年に引き続き、今年もコルシカ島(フランス語でコルス島)を舞台に開催された。レースにはレオパード・トレックやレディオシャック、チームスカイ、ガーミン・サーヴェロといった強豪プロチームが集結。スキル・シマノからは土井雪広が5年連続出場した。

第1ステージ ポルトヴェッキオ〜オスペダル峠 198km

第1ステージ 春めくコルシカ島を走る選手たち第1ステージ 春めくコルシカ島を走る選手たち photo:A.S.O.全3レースはいずれもコルシカ島南部のポルトヴェッキオを起点としたもの。第1ステージはポルトヴェッキオからオスペダル峠までの198km。合計7つのカテゴリー山岳が設定されており、今大会唯一の頂上ゴールが最後に待ち構えている。レースは序盤からアタックが繰り返された。

1つ目のカテゴリー山岳ロッカピーナ峠でアタックを仕掛けた土井雪広は、ヘスス・エッラーダ(スペイン、モビスター)らを抑えて頂上を先頭通過。土井は6ポイントを獲得したが。下り区間でメイン集団に捕まってしまう。

第1ステージ オスペダル峠でアタックするフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)第1ステージ オスペダル峠でアタックするフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) photo:A.S.O.「今年はアレックス(ジェニエ)というエースがいたから、自分は比較的自由に動くことができた。最初から山岳賞狙いで、何度も諦めずにアタック。でも次の逃げにチームメイトが入ったので、それ以降は動けなかった。そこからはエースのアレックスのサポートに徹した」と土井は振り返る。

その後もアタックは繰り返され、60km地点でディミトリ・シャンピオン(フランス、アージェードゥーゼル)ら6名が飛び出すとようやく集団はペースダウン。タイム差は最大6分まで広がった。

第1ステージ 頂上ゴールに独走でゴールするフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)第1ステージ 頂上ゴールに独走でゴールするフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) photo:A.S.O.ゴールまで86kmを残した5つ目のカテゴリー山岳で、5度の総合優勝者イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)がアタックを仕掛け、2分のタイム差を埋めて先頭グループに合流。フォイクトはそれまで逃げていた選手を全員抜き去り、先行したまま最後のオスペダル峠へ。しかし登りが始まるとすぐにフォイクトは吸収される。

この平均勾配6.2%・登坂距離14.3kmという本格的な登りで、まずはレミ・ディグレゴリオ(フランス、アスタナ)が動く。しかしディグレゴリオの加速は決定力を欠き、ゴールまで9kmを切るとアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)がアタック。アンディのペースアップによって絞り込まれた集団から、兄フランクが飛び出した。

フランクにはレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が食らいつき、遅れてヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター)も合流。しかしフランクは軽快なダンシングでターラマエらを引き離し、標高957mのオスペダル峠頂上に独走で飛び込んだ。チームワークで今シーズン初勝利を手にしたフランクは、同時にマイヨジョーヌに袖を通した。


第1ステージ結果
1位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) 5h20'52"
2位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター)         +20"
3位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)         +28"
4位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)         +1'08"
5位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、スキル・シマノ)     +1'10"
64位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)              +16'31"

第2ステージ ポルトヴェッキオ〜ポルトヴェッキオ 75km

第2ステージ 土井雪広(日本、スキル・シマノ)が積極的に逃げをリード第2ステージ 土井雪広(日本、スキル・シマノ)が積極的に逃げをリード photo:A.S.O.2日目は午前中に短いロードレースが行なわれ、午後の個人タイムトライアルで総合争いが決着する。75kmのショートコースで行なわれた第2ステージで、土井が再び動いた。

4km地点で形成された逃げグループに入ったのは、エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)、ルノー・ディオン(フランス、ブルターニュ・シュレー)、ファブリス・ジャンデボス(フランス、ソール・ソジャサン)、ディグレゴリオ、そして土井。23km地点に設定されたこの日唯一のカテゴリー山岳で、土井がディグレゴリオらを破って先頭通過する。

第2ステージ 集団スプリントを制したサイモン・ゲスク(ドイツ、スキル・シマノ)第2ステージ 集団スプリントを制したサイモン・ゲスク(ドイツ、スキル・シマノ) photo:A.S.O.「このまま全部取ってしまいたいと思ってスプリントポイントも狙った」と語る土井は、続く34km地点のスプリントポイントも先頭通過。しかしコースの短さと難易度の低さから、タイム差は1分以上に広がらない。

ゴールまで20kmを残してタイム差は35秒。ラスト10kmでタイム差20秒。土井はラスト5kmで吸収され、最後まで粘ったジャンデボスもラスト3kmで吸収された。土井は「全力を尽くしたので集団にもつけなかった。でも日本人はここで頑張っているという姿をいろんな人に見せたかった」と語る。

最後は大集団によるゴールスプリント勝負に持ち込まれ、スキル・シマノのサイモン・ゲスク(ドイツ)が勝利。若いジャーマンスプリンターが嬉しいプロ初勝利を飾った。総合上位陣は動かず、リーダージャージはフランクがキープした。

第2ステージ結果
1位 サイモン・ゲスク(ドイツ、スキル・シマノ)         1h43'10"
2位 ムリロ・フィッシャー(ブラジル、ガーミン・サーヴェロ)
3位 ローラン・マンジェル(フランス、ソール・ソジャサン)
4位 フロリアン・ヴァション(フランス、ブルターニュ・シュレー)
5位 アルノー・モルミ(フランス、ビッグマット・オベール93)
89位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)               +41"

第3ステージ ポルトヴェッキオ〜ポルトヴェッキオ 7.8km(個人TT)

第3ステージ 優勝を飾ったアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)第3ステージ 優勝を飾ったアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) photo:A.S.O.総合争いを決するのは、ポルトヴェッキオを発着する7.8km個人タイムトライアル。標高差30mのコースを8分46秒で駆け抜けたアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)がステージ優勝を飾った。

4秒差でステージ2位に入ったのはブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)。そしてヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)が10秒差のステージ3位に。マイヨジョーヌを着て走ったフランクはクレーデンから24秒遅れのステージ12位にタイムをまとめ、総合リードを守って総合優勝を飾った。

第3ステージ マイヨジョーヌを着て走るフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)第3ステージ マイヨジョーヌを着て走るフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) photo:A.S.O.クリテリウム・アンテルナシオナル初総合優勝を飾ったフランクは「自分たちの走りに満足している。チームで走っていると、苦しい時も楽しいと思える。メンバー全員がこの週末を楽しんだはずだ。この勝利はチームを前に進めてくれる」とコメント。フランクは弟アンディとともにアルデンヌ・クラシックに挑む。

土井は最後の個人TTを97位でまとめ、総合62位でフィニッシュ。ポイント賞25位、山岳賞3位という成績で2日間のレースを終えた。

総合優勝に輝いたフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)総合優勝に輝いたフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) photo:A.S.O.「このレースは内容が濃くて、走りがいがあります。今年はトレーニングデータを見る限り、山岳賞を取れるという自信があった。これは昨年までには感じられなかったこと。集団に残って20〜30位でゴールするより、アタックで山岳賞を狙うことを選びました。結果的に山岳賞は取れなかったけど、トレーニングの成果が出たので良かったと思います。ただ運が足りなかった」。

山形県出身の土井は地元東北への思いを胸にレースを走った。「チームメイトたちは全員Cyclists Pray for Japanのステッカーをフレームに貼って走ってくれた。自分の山岳賞も大事だったけど、『頑張れ東日本!』という思いで、僕が少しでも勇気やパワー、未来への光を与えることが大事でした。そのために全力を出し尽くせたことに満足しています。これからもみんなで頑張っていきましょう!」

土井は4月2日のヘル・ファン・ヘット・メルヘラント(UCI1.1)と4月13日のブラバンツ・ペイル(UCI1.HC)に出場予定。フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)への出場も決まっている。

第3ステージ結果
1位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)     8'46"
2位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)        +04"
3位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)    +10"
4位 デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)  +14"
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)  +15"
97位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)               +1'32"

最終個人総合成績
1位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) 7h13'12"
2位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター)         +13"
3位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)         +30"
4位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、スキル・シマノ)     +1'14"
5位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック)      +1'15"
6位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)  +1'16"
7位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ)      +1'19"
8位 ピエリック・フェドリゴ(フランス、FDJ)           +1'23"
9位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)         +1'25"
10位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)
62位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)              +18'17"

ポイント賞
1位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター)       16pts
25位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)              3pts

山岳賞
1位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)    24pts
3位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)              12pts

新人賞
1位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)

チーム総合成績
1位 モビスター

text:Kei Tsuji
photo:A.S.O.
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