落車頻発、次々とスプリンターが消えるドイツツアー最終日にマシュー・ブレナン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)が2勝目。首位ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)は2位に食い込み総合優勝を達成している。



引退が迫るゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:LIDL DEUTSCHLAND TOUR 2025
ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が登場 photo:LIDL DEUTSCHLAND TOUR 2025



閉幕の地となるザクセン=アンハルト州の州都、マクデブルクを目指すドイツ・ツアー(UCI2.Pro)最終日は真っ平らなスプリンターステージ。総合上位勢のタイム差は僅差だが、スプリントを得意とする首位ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)の総合優勝はほぼ堅い。

そんな最終日に単独逃げたのは、これまでアシストとして貢献したブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツXRG)だった。TTスペシャリストらしい走りでレースを引っ張ったものの、残り60km地点で集団に吸収。その後は激しい牽制とペースアップの連続で、一時的に横風によってエシュロン(横風分断)が発生した。

ラスト60km地点まで単独逃げたブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツXRG) photo:LIDL DEUTSCHLAND TOUR 2025

横風区間ではペースアップによってエシュロンが発生。この後沈静化した photo:LIDL DEUTSCHLAND TOUR 2025

クライマックスはクラッシュの連続だった。ラスト5.5kmではヴァーレンショルトと一緒にポジションを上げていたアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)を巻き込んで落車し、ヴィスマ・リースアバイクの高速牽引によって持ち込まれた最終盤には、ダニー・ファンポッペル(オランダ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が落車。強豪スプリンターが次々と消える荒れた展開のまま、ドイツツアーを締めくくる最終スプリントが始まった。

ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)のリードアウトを受けたマシュー・ブレナン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)が一際低いポジションで発進。対抗するも勝負を諦めたジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)や、リーダージャージを着てもがくヴァーレンショルトを尻目にブレナンが今大会2勝目を掴み取った。

右側からマシュー・ブレナン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)が伸びる photo:LIDL DEUTSCHLAND TOUR 2025

大会2勝目をマークしたマシュー・ブレナン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) photo:LIDL DEUTSCHLAND TOUR 2025
マシュー・ブレナン(イギリス)の勝利を喜ぶヴィスマ・リースアバイク photo:LIDL DEUTSCHLAND TOUR 2025



「ステージ優勝を目標にここに来て、結果的に2勝することができたよ。全員とてもモチベーションが高く、結束力と共にレースを戦うことができた。特に今日のラストの皆の仕事ぶりは凄かった。(普段育成チームに所属する)マティス・ファンケルクホーフェはまだ18歳と思えないほどの素晴らしいパフォーマンスだったよ」と喜ぶブレナンにとっては今季11勝目と、ネオプロと思えない活躍ぶりだ。「今回も選手として成長できたし、クライスヴァイクやワウトのような経験豊富な選手たちに囲まれて本当に良かった。彼らは若手たちに多くのことを教えてくれるんだ。この勢いをツール・ド・ブリテンでも継続していきたいと思っている」と話している。

総合トップスリー。ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がリードを守って優勝した photo:LIDL DEUTSCHLAND TOUR 2025

スプリントで2位に食い込んだヴァーレンショルトは、ボーナスタイムで総合成績をさらに伸ばして総合優勝を確定させる。「総合優勝できて、そしてチームの素晴らしい働きに対してスーパーハッピーさ。スプリントは負けてしまったけれど、あれ以上は無理だった。総合優勝できたことは大きな意味がある。レース中は色々なことが上手くいかないし、油断できないし、調子も完璧でなければいけない。だからこそ、すべてがうまくいって勝利を収めたときの満足感は格別。残るシーズンもこの調子を維持していきたい」と話している。
ドイツ・ツアー2025 第4ステージ結果
1位 マシュー・ブレナン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) 3:29:21
2位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
3位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)
4位 ヨルディ・メーウス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
5位 ザック・エルゼン(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
6位 ルーク・ランパーティ(アメリカ、スーダル・クイックステップ)
7位 ヘンリ・ウーリヒ(ドイツ、アルペシン・ドゥクーニンク)
8位 マリウス・マイヤーホーファー(ドイツ、チューダープロサイクリング)
9位 ローレンス・ピシー(ニュージーランド、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
10位 ファビオ・ファンデンボッセ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
個人総合成績
1位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) 16:29:58
2位 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG) +0:16
3位 ライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) +0:19
4位 マシュー・ブレナン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) +0:25
5位 サムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +0:31
6位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) +0:33
7位 マリウス・マイヤーホーファー(ドイツ、チューダープロサイクリング) +0:35
8位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
9位 マルコ・ハラー(オーストリア、チューダープロサイクリング) +0:37
10位 パスカル・エインコールン(オランダ、スーダル・クイックステップ) +0:41
その他の特別賞
ポイント賞 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
山岳賞 エンゾ・レインセ(オランダ、ピクニック・ポストNL)
ヤングライダー賞 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツXRG
text:So Isobe