2011/03/17(木) - 10:46
ワンデークラシックの季節がやってきた。海沿いを走るミラノ〜サンレモから、ガタガタのパヴェを走るパリ〜ルーベまで、春のヨーロッパを猛者たちが駆け抜ける。そこで最も注目を集めるのは、サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベで優勝経験のあるファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)だ。
ティレーノ〜アドリアティコでアタックしたファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Riccardo Scanferla近年のクラシックシーズンにおける主演男優賞にカンチェラーラは間違いなくノミネートされる。これまでその持ち前の独走力を遺憾なく発揮し、ミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベを制してきた。
あまりにも強いので、電動モーターをフレームに組み込んでいると唱える懐疑的な人間まで現れた。今週に入っても、カンチェラーラが特殊なボールベアリングを使って摩擦を軽減させているという噂が浮上。彼の強さに恐れを成した人間が、必死にあら探しをしている。
ティレーノ〜アドリアティコ最終個人TTでトップタイムを叩き出したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Cor Vos仮にカンチェラーラがモーターアシスト付きバイクを使用しているなら、4月のアルデンヌ・クラシックでも優勝しているはず。起伏が激しいアムステル・ゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの3レースでは、アンディ・シュレク(ルクセンブルク)のような登坂力に優れた軽量クライマーに有利。カンチェラーラは上位に絡んだことがない。
カンチェラーラが得意とするのは、強靭なパワーが要求されるミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベのような、比較的平坦なレースだ。カンチェラーラはこれらのクラシックレースを見据えてティレーノ〜アドリアティコに出場した。
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック) photo:Riccardo Scanferlaカンチェラーラは「驚くことに、ティレーノではサンレモの話題で持ち切りだった。サンレモはシャンパンのコルクのようなもの。一旦コルクが抜けると、そこからシーズンが堰を切ったように始まるんだ」と語っている。
2008年に総合優勝しているこのステージレースで、カンチェラーラは最終個人タイムトライアルで優勝した。4日後に開催されるサンレモに向けての良い布石。アンディ・シュレクは見せ場を作れなかったが、アルデンヌ・クラシックに向けてコンディションを上げた。
2010年ロンド・ファン・フラーンデレン ミュール・カペルミュールでボーネンを一気に突き放したファビアン・カンチェラーラ(スイス) photo:Cor Vosカンチェラーラとシュレク。サクソバンクを離脱した2人は、新生レオパード・トレックのチームリーダーの座に就き、有力選手を揃えて鳴り物入りでスタートを切った。勝利を手にするまで比較的時間がかかったが、カンチェラーラはチームのスロースタートを問題視していない。
「このティレーノは年間スケジュールに組み込まれたものであり、クラシックシーズンを考えると、全開で走る必要はない。全力でティレーノのタイトルを狙っていたのは、プロトンの中でもごく少数。まだまだシーズンは長い。あくまでも調整レースという位置づけなんだ。でもそこで勝利することができた。これはモチベーションアップに繋がるよ。」
2010年パリ〜ルーベ 観客が詰めかけたパヴェを突っ走るファビアン・カンチェラーラ(スイス) photo:Cor Vosカンチェラーラはロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベで連覇を狙っている。この2つのクラシックをダブルで連覇した選手は過去にいない。
「不可能なことなんてないよ!ダブル連覇に挑戦したいんだ。何も怖くない。調子は良い。強力なライバルは沢山いるけど、トラブル無く勝負に持ち込むことができれば、昨年と同じ走りでタイトルを獲得できると思う。必然的にマークは厳しくなるけど、窮地に陥った場合の代替プランもある。2007年のパリ〜ルーベでオグレディが代わりに勝利したように。」
「確かにハードルは高い。でもハードルを上げているのは自分の野望だ。それを乗り越えたい。」
カンチェラーラに挑戦状を叩き付けるのはトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)、そしてトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)。ローカルライダーのボーネンは2レースで優勝経験がある。
「最優先事項として、調子のピークをレースに合わせる必要がある。前哨戦のセミクラシックで、他の選手のコンディションを確認したい。セミクラシックレースで勝って勢いづく選手もいるから。とにかく今はミラノ〜サンレモだ。」
カンチェラーラは3月18日に30歳の誕生日を迎える。翌19日のミラノ〜サンレモの勝利で自分の誕生日を祝うことができるだろうか。
text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji
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あまりにも強いので、電動モーターをフレームに組み込んでいると唱える懐疑的な人間まで現れた。今週に入っても、カンチェラーラが特殊なボールベアリングを使って摩擦を軽減させているという噂が浮上。彼の強さに恐れを成した人間が、必死にあら探しをしている。
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カンチェラーラが得意とするのは、強靭なパワーが要求されるミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベのような、比較的平坦なレースだ。カンチェラーラはこれらのクラシックレースを見据えてティレーノ〜アドリアティコに出場した。
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2008年に総合優勝しているこのステージレースで、カンチェラーラは最終個人タイムトライアルで優勝した。4日後に開催されるサンレモに向けての良い布石。アンディ・シュレクは見せ場を作れなかったが、アルデンヌ・クラシックに向けてコンディションを上げた。
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「このティレーノは年間スケジュールに組み込まれたものであり、クラシックシーズンを考えると、全開で走る必要はない。全力でティレーノのタイトルを狙っていたのは、プロトンの中でもごく少数。まだまだシーズンは長い。あくまでも調整レースという位置づけなんだ。でもそこで勝利することができた。これはモチベーションアップに繋がるよ。」
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「不可能なことなんてないよ!ダブル連覇に挑戦したいんだ。何も怖くない。調子は良い。強力なライバルは沢山いるけど、トラブル無く勝負に持ち込むことができれば、昨年と同じ走りでタイトルを獲得できると思う。必然的にマークは厳しくなるけど、窮地に陥った場合の代替プランもある。2007年のパリ〜ルーベでオグレディが代わりに勝利したように。」
「確かにハードルは高い。でもハードルを上げているのは自分の野望だ。それを乗り越えたい。」
カンチェラーラに挑戦状を叩き付けるのはトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)、そしてトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)。ローカルライダーのボーネンは2レースで優勝経験がある。
「最優先事項として、調子のピークをレースに合わせる必要がある。前哨戦のセミクラシックで、他の選手のコンディションを確認したい。セミクラシックレースで勝って勢いづく選手もいるから。とにかく今はミラノ〜サンレモだ。」
カンチェラーラは3月18日に30歳の誕生日を迎える。翌19日のミラノ〜サンレモの勝利で自分の誕生日を祝うことができるだろうか。
text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji