3月6日、いよいよヨーロッパのワールドツアー初戦パリ〜ニースが開幕する。今年で開催69回目を迎えるこの「太陽へのレース」には多くのオールラウンダーが集結。フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)の活躍に期待が集まる。

個人TTが新設 ニースに至る1307kmの旅路

パリ〜ニース2011コース全体図パリ〜ニース2011コース全体図 image:A.S.O.毎年3月に開催されるパリ〜ニースは、ツール・ド・フランスと同じASO(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催。3日後の3月9日にイタリアで開幕するティレーノ〜アドリアティコとともに、春を代表する中級ステージレースだ。

今年から新たに採用されたUCIワールドツアーの第2戦にあたり、クラシックレースに向けてコンディションを整える選手や、グランツールを見据えて調子を確認したい選手が挙って出場する。

「パリからニースまで」という名前が示すように、レースは花の都パリから地中海沿岸のニースまでひたすら南下する。まだまだ寒さの厳しいフランス内陸部をスタートし、比較的温暖な太陽を求めて地中海のコートダジュールに向かうその行程から、ときに「太陽へのレース(La Course au Soliel)」とも呼ばれる。

第5ステージ・コースプロフィール第5ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.今年はパリ西部のウーダンで開幕する。16年ぶりにプロローグ(個人タイムトライアル)が設定されず、第1・第2ステージはカテゴリー山岳無しの平坦ステージ。序盤はスプリンターによるリーダージャージ争奪戦が繰り広げられるだろう。第3ステージのゴール12km手前には2級山岳が設定されており、シーズン序盤でまだ調子の上がらないスプリンターは苦戦を強いられる。

第6ステージ・コースプロフィール第6ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.レース4日目にはフランス中部の中央山塊に到達。2級と3級のカテゴリー山岳が合計7つ設定された第4ステージは、小集団スプリントに持ち込まれる可能性が高い。

第8ステージ・コースプロフィール第8ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.第5ステージも合計7つのカテゴリー山岳が設定された難コースで、ラスト9km地点にはパリ〜ニース初登場の1級山岳ミュール峠が鎮座している。標高800mに満たない山岳だが、平均勾配8.3%が7.6kmに渡って続くという本格的な登りだ。ここでいよいよリーダージャージは本命に手に渡る。

残る3ステージはどれも難コース。高低差約200mの27kmコースで行なわれる第6ステージ・個人タイムトライアルは、総合上位陣をふるいにかける。中盤に1級山岳が2つ設定された第7ステージもアップダウンの連続で気が抜けない。

そして最終日はニースを発着するお決まりの山岳コース。距離は124kmと短いが、後半にかけて2級山岳シャトーヌフ峠、2級山岳カレゾン峠、1級山岳ラ・トゥルビー、1級山岳エズ峠が連続。最後はハイスピードダウンヒルを経てニースにゴールする。

パリ〜ニース2011日程
第1ステージ 3月6日(日)ウーダン〜ウーダン 154.5km
第2ステージ 3月7日(月)モンフォールラモリー〜アミリー 198.5km
第3ステージ 3月8日(火)コスヌクール・シュル・ロワール〜ニュイ・サン・ジョルジュ 202.5km
第4ステージ 3月9日(水)クレッシェ・シュル・ソーヌ〜ベルヴィル 191km
第5ステージ 3月10日(木)サンシンフォリアン・シュル・コワーズ〜ヴァルノー・アン・ヴィヴァレ 194km
第6ステージ 3月11日(金)ロンヌ〜エクス・アン・プロヴァンス 27km(個人TT)
第7ステージ 3月12日(土)ビリニョル〜ソフィア・アンティポリス 215.5km
第8ステージ 3月13日(日)ニース〜ニース 124km

グランツール狙いのオールラウンダー集結 サガンやフィニーにも注目

フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) photo:Cor Vos昨年の第68回大会で2度目の総合優勝を果たしたアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)は欠場する。コンタドールは3月4日に開幕したブエルタ・ア・ムルシアに出場中だ。

そのコンタドールとツール・ド・フランスで総合争いを繰り広げたアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)は、同時期開催のティレーノ〜アドリアティコに出場予定。兄のフランク・シュレク(ルクセンブルク)がこのパリ〜ニースで新生レオパード・トレックを率いる。

ケースデパーニュから移籍したルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)ケースデパーニュから移籍したルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) photo:Cor Vos弟に注目が集まりがちだが、兄フランクもグランツールで総合上位を狙える実力の持ち主。中級ステージレースで強さを発揮し、昨年ツール・ド・スイスで総合優勝を飾っている。シュレクは直前のブエルタ・ア・アンダルシアで総合13位。リーナス・ゲルデマン(ドイツ)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク)、ブリース・フェイユ(フランス)というアシスト勢を率いての出場だ。

ヴォルタ・アン・アルガルヴェの最終TTで逆転総合優勝に輝いたトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)ヴォルタ・アン・アルガルヴェの最終TTで逆転総合優勝に輝いたトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) photo:www.voltaalgarve.comケースデパーニュからラボバンクに移籍したルイスレオン・サンチェス(スペイン)は、2年ぶりの大会制覇を目指す。昨年はコンタドールの前に破れて総合2位でフィニッシュ(バルベルデ失格により繰り上げ)。近年最も表彰台に馴染みのある選手であり、現在シーズン最多勝(11勝)を誇っているラボバンクの勢いに乗ることができるか。

もう一人のサンチェス、北京五輪金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)も忘れてはならない。個人タイムトライアルとスプリント、そしてダウンヒルで強さを発揮するサンチェスは、安定した走りで上位に絡んでくるだろう。

チームを移籍したロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)チームを移籍したロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) photo:Cor Vos例年より個人タイムトライアルの距離が伸びたことは、トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)にとって朗報だ。マルティンは先月末のヴォルタ・アン・アルガルヴェで個人TTを制して総合優勝。第6ステージの個人TTでリードを奪うのは間違いないだろう。ここ数年で山岳力を強化しており、2009年大会では山岳ステージで積極的に逃げて山岳賞獲得。チームメイトのタジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)とともに、中級ステージレースで総合上位を狙える逸材だ。

昨年総合3位(繰り上げ)のロマン・クロイツィゲル(チェコ)は、アスタナジャージでの参戦だ。2002年から2年連続でパリ〜ニース総合優勝に輝いているアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)とダブルエースを組んで8日間の闘いに挑む。今シーズンのプログラムとして、クロイツィゲルはジロ・デ・イタリアを、ヴィノクロフはツール・ド・フランスを狙う予定だ。

マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsuji高いチーム力を誇るレディオシャックは、総合力のある選手を3名パリ〜ニースに送り込む。リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)、アンドレアス・クレーデン(ドイツ)、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)の3名は誰が表彰台に登ってもおかしくはない。ライプハイマーは先月末のブエルタ・ア・アンダルシアで総合3位に入っており、調子は上向きだ。昨年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合優勝に輝いたブライコヴィッチにも注目したい。

ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) photo:Cor Vosコンタドールを欠くサクソバンク・サンガードは、昨年のジロ・デ・イタリアでブレイクしたリッチー・ポルト(オーストラリア)がエースを担う。オージー勢としてはマイケル・ロジャース(チームスカイ)にも期待したい。チームスカイからはブラドレー・ウィギンズ(イギリス)も出場する。

2009年大会で3日間リーダージャージを着用し、総合3位に入ったシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)は、現在最も表彰台に近いフランス人選手だろう。個人TTで好タイムを出し、山岳でライバルたちの攻撃を防ぐことができれば、再び表彰台に登ることは可能だろう。

ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:www.ilgirodisardegna.it他にもユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)ら、今年のグランツールで注目のオールラウンダーたちが集結する。

一方、前半の3ステージではスプリンターたちの闘いに注目したい。1月のツアー・ダウンアンダーでステージ優勝を飾り、総合2位に入ったマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)がスプリントの最有力候補か。2月のツアー・オブ・オマーンでもステージ優勝を飾っており、まだまだ好調を維持しているはずだ。

ゴスの前に立ちはだかるのは、ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)やグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)、ヘルト・ステーグマン(ベルギー、クイックステップ)、そしてロバート・ハンター(南アフリカ、レディオシャック)らだ。特にツアー・オブ・カタールでステージ2勝を飾ったハウッスラーは今年注目したいスプリンター。どの選手もミラノ〜サンレモに向けて調子を上げているはず。地元フランス勢としてはロメン・フェイユ(ヴァカンソレイユ・DCM)やウィリアム・ボネ(FDJ)の活躍に期待したい。

また、世界が注目する2人の若手、ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とタイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)がパリに降り立つ。サガンは昨年大会でステージ2勝を飾り、最終的に総合16位に入った。サガンは先月末のジロ・ディ・サルデーニャで、ステージ3勝&総合優勝というズバ抜けた成績をマーク。集団スプリントでスプリンターを打ち負かし、山岳でクライマーと渡り合うこの破天荒は、再びパリ〜ニースで爆発するかもしれない。ワールドツアーレースデビューを飾るフィニーは、集団スプリントと個人TTでの走りに注目だ。

text:Kei Tsuji

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