2011/02/22(火) - 09:13
アンカーのロングライドを強く意識したモデル「RFA5スポーツ」が今回のテストバイクだ。スポーツ自転車のエントリーユーザーもターゲットに入ったモデルだから、まずはアンカーのブランド紹介から始めよう。
アンカー RFA5 Sport (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
「アンカー」は、広く一般自転車までを含む「ブリヂストンサイクル」のスポーツバイクカテゴリーのブランドだ。スチールやアルミからカーボンといった現在スポーツバイクに使用される素材全般を使ったロードレーサーやマウンテンバイクなどの純競技車からスポーツ志向の強いクロスバイクまで、幅広く生産している。
擁するレースチーム「チームブリヂストン・アンカー」の選手達は、そのアンカーのスポーツバイクと共にトラック、ロード、MTBの多くのシーンにおいて、日本はもとよりオリンピックやワールドカップなどで活躍を見せている。
扁平形状に加えて湾曲させている複雑なチューブ加工。凝ったグラフィックにも注目
ヘッド側が菱形断面からBB部に向かって三角断面になるダウンチューブはさらに上方へ湾曲している
またこうしたレースシーンで活躍する車両を作り続けている一方で、現在ツーリング愛好者を中心に根強い人気を誇るスチール素材「クロムモリブデン鋼」(略称:クロモリ)を使った「RNC」シリーズなどを有し、幅広いシーンとジャンルで実力のあるスポーツバイクを作ることができるブランドとなっている。その上、オリジナルオーダーフレームやカラーオーダーもしやすいことも手伝って、全国にファンが多い国内ブランドだ。
下部の外径を広げたテーパーヘッドチューブでヘッド部の剛性を高める
ベンドさせたカーボンフォークはステアリングコラムまでカーボンで作られる
シートステーを上から見ると細く作られていることがよく分かる
今回テストするRFA5スポーツは、直系上位モデルとして快適性を目指したカーボンモデル「RFX8」を兄貴分に持ち、「RFX8に迫る性能をアルミチュービングで実現する」というコンセプトで作られている。
それは、アルミの剛性と軽さ、加速性能を殺すことなく、アルミ素材の苦手とする振動吸収性を高めるという矛盾を高度なチューブ加工技術でカバーすることを意味する。
完成車に付属するステムにはアンカーロゴが塗装される。細かい部分にも気を遣って統一感あるデザインになっている
シートステーはさらに3次元的に曲げられた凝った形状で構成される
そしてその努力は、複雑な曲線を描くトップチューブと菱形から三角断面になるダウンチューブ、しなやかさを求めてレースモデルより細くされたチェーンステー、安定性や剛性を保つために設計された、下側外径を広げたテーパードヘッドチューブや太いシートチューブなど、フレームの随所に見られる。
また、極端な前傾姿勢を避けられるよう短めに設定されたトップチューブなど、ジオメトリの観点からも快適性能が追求されていることも見逃せない。
ダウンチューブと同じくトップチューブも上方に湾曲する
アンカーのバイクはフレームのグラフィックも美しい
上に弓なりにそして下部に向かって横方向に曲げて作られたシートステー
結果としてフレーム全体のシェイプも特徴的に仕上がったこの「RFA5スポーツ」。はたしてどんな乗り心地なのか、さっそくインプレッションに入ろう。
―インプレッション
「踏み出しの軽さが印象的なツーリングモデル」
流郷克也(ユーキャン)
「踏み出しの軽さが印象的なツーリングモデル」流郷克也 このRFA5は「ロングライド指向のアルミモデル」と聞いていたので、反応の良いアルミらしさをスポイルしてしまっていないか、またその逆に長距離を走るために必要な快適さが不足していないかが気になるバイクだった。この点を気にして乗ってみたのだが、結果としてそれらはまったくの杞憂に終わった。
用途を考えれば、BB部分などを含めて剛性不足を感じるところもなく、下りでのハンドリングも安定している。走りには気になるようなクセも無い。そして完成車で買った場合のアッセンブリパーツも偏重したところもない。
ジオメトリも楽なポジションが取れるような設計になっているので、これならば初心者に安心して薦められるだろう。もちろんパーツのグレードを上げればよりバイクとして完成度が増すポテンシャルも感じられる。
私はロードレースを長年やってきたため、個人的にレーシーな乗り味を好む傾向にあるのだが、RFA5のしなやかで低速・中速域の安定感とともにあるアルミの軽快感に好印象を持った。
たしかに振動吸収性があり、安定した乗り味なのでロングライドに向く造りだが、それだけではなく、最初の踏みだしはレーシーな印象を受けるほどに軽快だ。
アルミの長所を活かしつつ、しなやかな乗り味を引き出していることに素直に驚いた。素材的に振動吸収は不得手なはずなので、これは「設計の妙」と言わざるを得ない。また30km/h程度の中速域までは軽快感とともに、荒れた路面においても追従性が高く気持ちいい。
ただし中速域から一気にトルクをかけて全開で踏むとバックが跳ねる感じがあるので、さすがに本格的なレースには向かない。とはいえ、アベレージ40〜45km/hなどの“本格的な”レースに向かないだけであり、平均時速が20〜30km/h程度で5〜6時間のエンデューロや、完走が目的なのであれば、長距離レースでも十分役目を果たしてくれるだろう。
もちろんこのバイクの主用途であるロングライドは初心者でも十二分に楽しめる出来映えだ。日本ではサイクリング時に、どうしても信号の多い=ストップ&ゴーの多い街中を抜けなくてはならない。振動吸収性だけではなく、そういうシチュエーションをも快適に走れることを考慮したバイクになっていると感じた。
「ソフトタッチで乗ることが楽しくなるバイク」
若生正剛(なるしまフレンド)
「ソフトタッチで乗ることが楽しくなるバイク」若生正剛 とにかくまず感じたのは「楽しいくて乗っていたくなるバイク」という印象。ソフトタッチで変なクセも無くて、乗りやすい。キャッチフレーズとして掲げられている「エントリーユーザーからロングライドを楽しめる」というコンセプトとメインターゲットをしっかり捉えた作りになっている。
目立った点が、必要な剛性だけを残して、アルミの突き上げるような感覚を上手く取り去った点だ。アルミで快適性を求めると剛性不足になりやすかったり、逆にゴツゴツした感じが取り除けていなかったりと、とかく中途半端になりやすいものだが、このバイクにはそういうところが無い。
口径の大きくないヘッドチューブなどを採用しているが、快適性のためにボリュームを削ぎ落とした分、剛性不足になっているのではないか?
また逆に、剛性が一部分で高くなりすぎてしまってるのではないか?などと邪推したが、まったくそんなことはなく、すべてにおいてバランスのとれた剛性感を感じた。
フォークの曲げや、ダウンチューブ・トップチューブ・シートチューブの特徴的な弓なり形状などが「伊達」ではなく、きちんと役目を果たして、振動吸収性などで効果を発揮していることが分かる。
これらが功を奏して、総合的には芯を残しつつもマイルドな乗り心地を作りだし、ロードバイクに乗るとき身体的に辛くなりやすいポイントを取り除いている。このおかげでロードバイクの楽しい部分が前面にプッシュされて「もっと乗っていたい」という気にさせてくれるのだ。
そしてこのバイクはロングライドやツーリングを楽しむためのアイテムとして見ると、アルミフレームであることのポジティブな面をより引き出してくれる。それは思いのほかシビアな扱いを要求されるカーボンフレームと違い、アルミはある程度のトラブルならば許容してくれるという道具としての頑強さにある。
つまり、クルマに積んでの移動や、飛行機や電車・バスでの輪行などの状況を考えると、このバイクの存在感は一層際立つだろう。トラブルの少なさはアルミフレームの美点だ。
完成車パッケージとしてもまとまっていて過不足無い。ツーリング・ロングライドを考えるなら選択肢に入れて欲しい1台だ。
アンカー RFA5 Sport (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
アンカー RFA5 Sport
フレーム:ST-SHAPE Aluminum A7005
フォーク:カーボンモノコック ベント形状 スーパーオーバーサイズ
ホイール:シマノWH-R500
タイヤ:ブリヂストン EXTENZA PR-2X 700X23C
コンポ:シマノ ティアグラ
カラー:レッド、ライム、スカイ、ピンク、ブラック(レーシングカラー)
シングルカラー32種
サイズ:390,420,450,480,510,540
完成車重量:8.6kg(480mm)
希望小売価格(税込み):150,000円(完成車)90,000円(フレーム)
インプレライダーのプロフィール
流郷克哉 流郷克哉(ユーキャン)
東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。
YOU CAN
若生正剛 若生正剛(なるしまフレンド)
自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。
なるしまフレンド
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda

「アンカー」は、広く一般自転車までを含む「ブリヂストンサイクル」のスポーツバイクカテゴリーのブランドだ。スチールやアルミからカーボンといった現在スポーツバイクに使用される素材全般を使ったロードレーサーやマウンテンバイクなどの純競技車からスポーツ志向の強いクロスバイクまで、幅広く生産している。
擁するレースチーム「チームブリヂストン・アンカー」の選手達は、そのアンカーのスポーツバイクと共にトラック、ロード、MTBの多くのシーンにおいて、日本はもとよりオリンピックやワールドカップなどで活躍を見せている。


またこうしたレースシーンで活躍する車両を作り続けている一方で、現在ツーリング愛好者を中心に根強い人気を誇るスチール素材「クロムモリブデン鋼」(略称:クロモリ)を使った「RNC」シリーズなどを有し、幅広いシーンとジャンルで実力のあるスポーツバイクを作ることができるブランドとなっている。その上、オリジナルオーダーフレームやカラーオーダーもしやすいことも手伝って、全国にファンが多い国内ブランドだ。



今回テストするRFA5スポーツは、直系上位モデルとして快適性を目指したカーボンモデル「RFX8」を兄貴分に持ち、「RFX8に迫る性能をアルミチュービングで実現する」というコンセプトで作られている。
それは、アルミの剛性と軽さ、加速性能を殺すことなく、アルミ素材の苦手とする振動吸収性を高めるという矛盾を高度なチューブ加工技術でカバーすることを意味する。


そしてその努力は、複雑な曲線を描くトップチューブと菱形から三角断面になるダウンチューブ、しなやかさを求めてレースモデルより細くされたチェーンステー、安定性や剛性を保つために設計された、下側外径を広げたテーパードヘッドチューブや太いシートチューブなど、フレームの随所に見られる。
また、極端な前傾姿勢を避けられるよう短めに設定されたトップチューブなど、ジオメトリの観点からも快適性能が追求されていることも見逃せない。



結果としてフレーム全体のシェイプも特徴的に仕上がったこの「RFA5スポーツ」。はたしてどんな乗り心地なのか、さっそくインプレッションに入ろう。
―インプレッション
「踏み出しの軽さが印象的なツーリングモデル」
流郷克也(ユーキャン)

用途を考えれば、BB部分などを含めて剛性不足を感じるところもなく、下りでのハンドリングも安定している。走りには気になるようなクセも無い。そして完成車で買った場合のアッセンブリパーツも偏重したところもない。
ジオメトリも楽なポジションが取れるような設計になっているので、これならば初心者に安心して薦められるだろう。もちろんパーツのグレードを上げればよりバイクとして完成度が増すポテンシャルも感じられる。
私はロードレースを長年やってきたため、個人的にレーシーな乗り味を好む傾向にあるのだが、RFA5のしなやかで低速・中速域の安定感とともにあるアルミの軽快感に好印象を持った。
たしかに振動吸収性があり、安定した乗り味なのでロングライドに向く造りだが、それだけではなく、最初の踏みだしはレーシーな印象を受けるほどに軽快だ。
アルミの長所を活かしつつ、しなやかな乗り味を引き出していることに素直に驚いた。素材的に振動吸収は不得手なはずなので、これは「設計の妙」と言わざるを得ない。また30km/h程度の中速域までは軽快感とともに、荒れた路面においても追従性が高く気持ちいい。
ただし中速域から一気にトルクをかけて全開で踏むとバックが跳ねる感じがあるので、さすがに本格的なレースには向かない。とはいえ、アベレージ40〜45km/hなどの“本格的な”レースに向かないだけであり、平均時速が20〜30km/h程度で5〜6時間のエンデューロや、完走が目的なのであれば、長距離レースでも十分役目を果たしてくれるだろう。
もちろんこのバイクの主用途であるロングライドは初心者でも十二分に楽しめる出来映えだ。日本ではサイクリング時に、どうしても信号の多い=ストップ&ゴーの多い街中を抜けなくてはならない。振動吸収性だけではなく、そういうシチュエーションをも快適に走れることを考慮したバイクになっていると感じた。
「ソフトタッチで乗ることが楽しくなるバイク」
若生正剛(なるしまフレンド)

目立った点が、必要な剛性だけを残して、アルミの突き上げるような感覚を上手く取り去った点だ。アルミで快適性を求めると剛性不足になりやすかったり、逆にゴツゴツした感じが取り除けていなかったりと、とかく中途半端になりやすいものだが、このバイクにはそういうところが無い。
口径の大きくないヘッドチューブなどを採用しているが、快適性のためにボリュームを削ぎ落とした分、剛性不足になっているのではないか?
また逆に、剛性が一部分で高くなりすぎてしまってるのではないか?などと邪推したが、まったくそんなことはなく、すべてにおいてバランスのとれた剛性感を感じた。
フォークの曲げや、ダウンチューブ・トップチューブ・シートチューブの特徴的な弓なり形状などが「伊達」ではなく、きちんと役目を果たして、振動吸収性などで効果を発揮していることが分かる。
これらが功を奏して、総合的には芯を残しつつもマイルドな乗り心地を作りだし、ロードバイクに乗るとき身体的に辛くなりやすいポイントを取り除いている。このおかげでロードバイクの楽しい部分が前面にプッシュされて「もっと乗っていたい」という気にさせてくれるのだ。
そしてこのバイクはロングライドやツーリングを楽しむためのアイテムとして見ると、アルミフレームであることのポジティブな面をより引き出してくれる。それは思いのほかシビアな扱いを要求されるカーボンフレームと違い、アルミはある程度のトラブルならば許容してくれるという道具としての頑強さにある。
つまり、クルマに積んでの移動や、飛行機や電車・バスでの輪行などの状況を考えると、このバイクの存在感は一層際立つだろう。トラブルの少なさはアルミフレームの美点だ。
完成車パッケージとしてもまとまっていて過不足無い。ツーリング・ロングライドを考えるなら選択肢に入れて欲しい1台だ。

アンカー RFA5 Sport
フレーム:ST-SHAPE Aluminum A7005
フォーク:カーボンモノコック ベント形状 スーパーオーバーサイズ
ホイール:シマノWH-R500
タイヤ:ブリヂストン EXTENZA PR-2X 700X23C
コンポ:シマノ ティアグラ
カラー:レッド、ライム、スカイ、ピンク、ブラック(レーシングカラー)
シングルカラー32種
サイズ:390,420,450,480,510,540
完成車重量:8.6kg(480mm)
希望小売価格(税込み):150,000円(完成車)90,000円(フレーム)
インプレライダーのプロフィール

東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。
YOU CAN

自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。
なるしまフレンド
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
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