第9ステージの31日の朝も、ホテルの窓から見えるのは、雨にけむる町の風景。きのう見た天気予報もたしかに雨マークだった。今日も終日雨かな、と覚悟を決めて雨支度。荷物を持ってロビーへ向かうと、エレベーターの中で会ったどこかの国のスタッフが「今日のレースは1時間延期だよ」という。「雨でコースも変更になると思う。今ミーティングしてる」。

スタート前、にぎやかなリキシャの車列が通過スタート前、にぎやかなリキシャの車列が通過 photo:Yuko Sato11時スタート予定だったレースは正午スタートに変更。冠水のためレースコースにも変更があり、1つの山岳賞ポイントと3つのスプリントポイントが予定されていた151.7kmの当初コースは、2つのスプリントポイントのみの133kmのコースへと変更された。マラカからニライというスタート・フィニッシュ地点は変わらず、間のルートをショートカットしていくコースになるようだ。

スタート地点に着くと、昨日に続いての梅雨のような雨。雨のせいか選手も出足が遅い。到着した選手も昨日同様、商店の軒下で雨宿りをしたりカフェに入ったり。

出走サインに向かう愛三工業レーシングチームの選手たち出走サインに向かう愛三工業レーシングチームの選手たち photo:Yuko Satoしばらくすると、雨のしずくをふりとばしながら、愛三工業レーシングの選手たちが自転車に乗ってやってきた。

「今日のコース変更は後半5kmだけ一緒で、距離も20kmぐらい短くなるようです。どんなコースか、いま手元に情報がなくて。」と綾部。「今日どう行くか決める材料がないので、流れにまかせるしかないですね。今日からはうち、3人ですし」。

「連日雨で楽しいですね~」とガッツを見せる土井雪広(スキル・シマノ)「連日雨で楽しいですね~」とガッツを見せる土井雪広(スキル・シマノ) photo:Yuko Satoたしかに雨宿りしているメンバーには、鈴木の姿がない。昨日風邪で熱を出しリタイアした盛に続き、鈴木も38度5分ほどの熱を出してしまい、雨なので大事をとって出走しないことにしたという。「3月からまたレースが本格的に始まりますし。明日また最終日もあるので、頑張ります!」

続いてスキル・シマノの一群も自転車にまたがってやってきた。「連日の雨ですが…」と土井に聞くと、「雨、楽しいですね!」とタフな笑顔でにっこり。

宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)「渋滞でやっと着きました!」宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)「渋滞でやっと着きました!」 photo:Yuko Sato「今日はコース変更で山岳ポイントがなくなりましたね。うちは山岳ポイントはいま上位で、それに関しては動きません。昨日と同じに、グループ全部一緒にして最後スプリント、でいきます。あとは、転ばないでゴールするだけですね!」

「昨日は、最後、逃げをつかまえる動きが結構大変でした。雨で前は見えないし。無事、最後つかまえてスプリントできたのでよかったです。レースがこのあともあるので、引き締めた気持ちで頑張ります!」

スタート時刻10分ほど前、宮澤らファルネーゼヴィーニ・ネーリの面々が出走サインに現れた。「渋滞にまきこまれて、車おりて自転車で来たんですよ」と宮澤。

今日はどう行きますか?とたずねると「うちのチーム、前半コントロールして来ているからね… いまうちは余裕ある状態。スキル・シマノは自分たちがコントロールしたくないからアタックする、オレがつぶすしかないじゃない? つぶしあいになって、アタック合戦になっちゃう。何人か出してコントロールすればいいんじゃないかって思うけど…」話しているうちにスタート時刻は間近に。宮澤にお礼を言ってあわててプレスカーに走る。

いつものようにスタート5分前に出発したプレスカーは、雨の中を走る。今日も、町とその間をつなぐ田舎道で、多少アップダウンがあるが比較的平坦、という風景だ。

集団前方に位置する宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)集団前方に位置する宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ) photo:Yuko Sato

果敢に逃げた宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)果敢に逃げた宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ) photo:Yuko Satoコース変更がありどの地点になるのかがわからないまま、13時頃、円形ロータリーの脇で車はストップ。ここで撮影して、ハイウエイでショートカットしてフィニッシュへ向かうのだ。選手たちはほぼひとつの前後にのびた集団のまま通過していく。前方に福島、少しおいて宮澤、西谷らの姿も見える。

今日はプレスカーの中で、圏外だった携帯がつながるようになった。大会のツイッターを見ていると、西谷がアタックしたが吸収された、そして宮澤が逃げているらしい。情報が何もないのもやきもきするが、断片的にあるのもまた別の意味でやきもきするものだと思う。

大人気の福島兄弟。写真やサインを次々にせがまれる大人気の福島兄弟。写真やサインを次々にせがまれる photo:Yuko Sato車は14時頃にフィニッシュ地点へ。雨はやんだかと思えばぱらぱらと落ちて来たり、不安定なお天気だ。大会スタッフにフィニッシュ予想時刻を聞くと、14時45分頃だというので、まだもう少し時間がある。フィニッシュの手前を見にいく。平坦でまっすぐな道がずっとのびている。激しいゴールスプリントになるのでは、と思う。宮澤が先頭でくるかもしれない...。

予想に反して、フィニッシュに現れたシルエットは一人だった。後続選手を大きく引き離し、両手を上げて大きくガッツポーズしたシュピレフスキー。続いてユーロップカーのケムヌールがゴールに飛び込み、そのあとを5人ほどの塊が追う。

ステージ優勝を飾ったボリス・シュピレフスキー(ロシア、タブリス・ペトロケミカル)ステージ優勝を飾ったボリス・シュピレフスキー(ロシア、タブリス・ペトロケミカル) photo:Yuko Satoその中に赤白のジャージが見える。宮澤だ。ゴールスプリントで順位は6位。そのあとぱらぱらと3人ほどの選手がフィニッシュすると、大きな集団がやってきた。この集団の前方に綾部、そのすぐ後ろに福田の姿も見える。たてにのびた集団は、大きなひとかたまりとなってフィニッシュラインを次々と超えて行った。

「全部反応して全部行ったけど、残り2kmで、追いつかなくて。昨日と同じで、いっぱいいっぱい。逃げに乗った時点でもう脚がなかった。こんなにいっぱいいっぱいは久しぶり!」と宮澤は語った。

西谷は「アタック合戦で、逃がしてくれるかと思ったけど…」と残念そう。「自分が作った逃げのあと、そのカウンターで行かれちゃったのは悔やまれます 何でこれを逃がすんだよ!みんな脚がいっぱいという感じで。コース変更の影響ですか?。最後ちょっと長い登りだったのできついなあ、と。分かっていたら上げるところを変えていけたかもしれない。今日は全員が疲れたと思います。明日が最後なので、いい形で終わりたいですね。」

明日はいよいよ最終日、UiTMシャアラムをスタートしてクアラルンプールの周回でフィニッシュする104.6kmだ。天気予報は雨模様。選手たちによればクアラルンプール周回コースには雨が降ると水たまりになる箇所、スリッピーな箇所などが出現するらしい。はたして明日はどんなレースがくりひろげられるだろうか。

photo&text:Yuko.SATO

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