新発進する世界最強クラスのチーム レオパード・トレックが乗るバイクは、もちろんトレックのマドン6.9SSL、そしてスピードコンセプトだ。マヨルカでのトレーニングキャンプ中に行われたメディアプレゼンテーションの模様をお伝えしよう。



マヨルカ島を走るレオパード・トレックの選手たちマヨルカ島を走るレオパード・トレックの選手たち (c)Makoto.AYANOトレックがレオパード・トレックにバイクを供給することが決まったのは2010年の秋前のこと。チーム立ち上げの話が6月に具体的になり、マネジャーに任命されたブライアン・ニガード氏がすぐさまトレックにコンタクトした。サクソバンクから離脱する主要メンバーを集めた世界最強のチームの足廻りを満たすには、トレックのバイクを置いて他にないという判断だった。

トレックはレディオシャックにもスポンサードしているが、この契約話はトントン拍子で進み、チームのメインスポンサーに名を連ねる規模の契約が交わされた。チームの可能性と将来性、ツール・ド・フランスの勝利を再び勝ち取りたいといった意地があった。

レオパード・トレックはトレックの最高峰マシン マドン6.9SSLをチームバイクとして採用。タイムトライアルは2010年にデビューしたスピードコンセプトを使用する。他にトレックのブランドであるボントレガーのホイール、ステム&ハンドル、サドル、サイクルコンピュータ、ヘルメットなどを使用。

ファビアン・カンチェラーラとフランク・シュレクの声も製品開発に生かされるファビアン・カンチェラーラとフランク・シュレクの声も製品開発に生かされる (c)Makoto.AYANOマヨルカ島でテストライドしたレック・マドンSSLマヨルカ島でテストライドしたレック・マドンSSL (c)Makoto.AYANO

なお、コンポーネントにはシマノデュラエース7970Di2が採用される。
チームウェアはクラフトが製作を担当。シューズにノースウェーブ、ペダルにスピードプレイ、サングラスにはオークリーが、個人でなくチーム全体のスポンサー&サプライヤーとなる。

レオパード・トレックチームモデル マドン6.9SSL ディテール

レオパード・トレックのチームモデルとほぼ同一仕様のトレック・マドンSSLレオパード・トレックのチームモデルとほぼ同一仕様のトレック・マドンSSL (c)Makoto.AYANO
デュラエース7970-Di2シフターデュラエース7970-Di2シフター チームにはデュラエース7970-Di2が供給されるチームにはデュラエース7970-Di2が供給される

マドンSSLのBB下部に取り付けられたDi2のバッテリーマドンSSLのBB下部に取り付けられたDi2のバッテリー ボントレガー製のInformサドル 選手たちも数種の中から選んで使用するボントレガー製のInformサドル 選手たちも数種の中から選んで使用する

シートステーにはメルセデス・ベンツのロゴか燦めくシートステーにはメルセデス・ベンツのロゴか燦めく (c)Makoto.AYANOチームモデルのマドンSSLは、デュラエース7970-Di2を使用することを前提としたケーブル内蔵のモデルで、レオパード・トレックのチームカラーであるライトブルー&シルバーグレーのカラーリングが施されているほかは市販モデルと変りが無い。
チームカーやメカニックトラック、バスなどを提供するスポンサーであるメルセデスベンツのエンブレムがシートステーにマーキングされている。

マヨルカキャンプでチームが使用していたボントレガーの新型カーボンホイールも、まだプロダクションラインナップにはないプロトタイプで、チームと共同開発中のものだ。トレック側からのアナウンスはないものの、ニップルが露出したタイプは今までの製品とは一線を画すものであることは間違いない。
また、チームが採用するボントレガー製の「オラクル」という名のヘルメットについては詳細なプレゼンテーションで発表があった。日本での発売時期は6月を予定しているという。

トレックは2010年11月のうちから、今季チームに所属する選手たちとすでに機材のセッティングと開発リサーチに入っていたというから驚きだ。バイクをパリ~ルーベの石畳の難所アランベールに持ち込み、カンチェラーラらと一緒に実際に走行テストを行った。

また、アンディとフランクのシュレク兄弟らとアメリカはサンディエゴの風洞実験室において、スピードコンセプトのバイクのフィッティングを行った。

パリ~ルーベの難関アランベールで行われたテストパリ~ルーベの難関アランベールで行われたテスト マドンのプロトタイプでパヴェの走行テストを行う選手マドンのプロトタイプでパヴェの走行テストを行う選手


ウインドトンネルでの風洞実験ウインドトンネルでの風洞実験



プレゼンテーションを行うタイラー・ピルガー氏(トレック・プロダクトマネージャー)プレゼンテーションを行うタイラー・ピルガー氏(トレック・プロダクトマネージャー) (c)Makoto.AYANOトレック プレゼンテーション
タイラー・ピルガー(トレック・プロダクトマネージャー)



1ヶ月で120台のチームバイクを用意した

ピルガー氏: チームにバイクを供給することになり、デザインなどを含めて最終的にプロダクションとして製作することが可能になったのは12月15日のこと。たった1カ月も経たないうちに、120台ものバイクを造らなければいけませんでした。ジャーナリストの皆さんに乗っていただいたバイクも、チーム用に作ったのと全く同じものです。フレームから、カラー、デカールに至るまで100%同じバイクです。

Building the LEOPARD TREK 6 Series Madone レオパード・トレックのチームモデル製作 


トレックのカーボンバイクはツール・ド・フランスで9度マイヨジョーヌを獲得しているトレックのカーボンバイクはツール・ド・フランスで9度マイヨジョーヌを獲得している ツール・ド・フランス最多勝のカーボンバイク

トレックのヒストリーを簡単に振り返ると、チームとしてカーボンバイクでツールに参加した最初のバイクメーカーは我々トレックです。我々は幅広いカーボン製品を独自で製造している数少ないメーカーの一つでもあります。それはただ単にカーボンフレームやパーツを選手に供給しているというのではなく、プロ選手もまた開発に大きく携わっています。我々は、プロツールで優勝できる機材というのは、一般のサイクリストにも大きなアドバンテージをもたらすと信じています。




39秒を縮めるテクノロジー

次に説明したいのが「39秒」です。これは昨年のツール・ド・フランスでのコンタドールとアンディ(シュレク)のタイム差です。もちろん選手は自分自身でレベルアップを図り、ベストコンディションで闘うことで、この差を逆転して勝利しなくてはいけませんが、その差をエキップメントの力で埋めることが我々の任務だと感じています。タイムトライアルバイク、ヘルメット、ホイールを含め、少しでもタイムを縮めることができる可能性へのアプローチは惜しみません。

現在はスコット・デュバートがレーシング部門の責任者です。1年ちょっと前までは3人しかいなかった部署ですが、今では担当者が6人に増えました。ここまでレーシングチーム専属のスタッフを配置出来ているのもトレックの強みです。

レオパード・トレックとのリエゾン(調整役)をしているのは、ベン・コーティスです。彼は、年間を通してチームをサポートするためにルクセンブルグに居を移しました。そうすることで、常に選手のフィードバックを得ることが出来、新たな開発にダイレクトに結び付けることが出来るからです。

昨年11月にはパリ~ルーベのコースにも選手数名と行ってテストを行ってきました。先ほどのスコット、そしてエンジニアのドグ・クサックらが現地に行き、数々の走行データを集めました。これをアメリカに持ち帰り、その数値を基にこのコースに適したプロダクションを開発するのが我々の使命になります。

11月のテストからだけでも、かなりの情報を得ることができ、我々も非常にたくさんのことを学ぶことが出来ました。
そしてウインドトンネル(風洞実験)でもかなりの時間を費やしました。ここではトレックのエンジニアだけでなく、空力学のエキスパートも一緒になって、どのようにすれば空気抵抗を最小限に抑えることが出来るかのテストを繰り返してきました。

風洞実験でフォームを煮詰めるフランク・シュレク風洞実験でフォームを煮詰めるフランク・シュレク

マヨルカキャンプには世界の主要メディアのジャーナリストが招待され、選手たちと一緒に走る機会を得たマヨルカキャンプには世界の主要メディアのジャーナリストが招待され、選手たちと一緒に走る機会を得た (c)Makoto.AYANO興味深い点は、アンディーやフランクのタイムトライアルポジションが激変したことです。では、どのように38秒を短縮するかです。

まずは製品自体の性能を次のステップへ持ち上げることです。ご存知のようにトレックでは内蔵式のデュオトラップセンサーを採用していますが、これを採用しているのはまだトレックだけです。それからシマノ製Di2電動コンポーネントにも対応するように設計されたフレームであることも大きな特徴になります。

BB90、シートマストの採用

BB90システムを採用することの一番のメリットは、チェーンステー、ダウンチューブを最大限幅広くすることが可能になり、BB周りの剛性を上げることが出来ます。
シートマスト形状を採用しているのも特徴です。ノーマルのシートポストに比べて軽量化出来ると同時に(60~80グラム)、乗り心地も大きく向上させることが出来ます。




ツールレベルの品質を目指したボントレガーの新型ヘルメット オラクル

チームが採用するのはボントレガー製の「オラクル」という名のヘルメットだ。27のエアベンチレーションをもつ空冷に優れたハードシェルヘルメットで、内部にはナノカーボン&グラスファイバー製のロールケージが内蔵され、安全性もツール・ド・フランスレベルのレースにふさわしいクオリティだという。
後部にはダイアル式のヘッドマスター・フィッティングシステムが搭載されている。

チームモデルのボントレガー・オラクルヘルメット チームモデルのボントレガー・オラクルヘルメット  (c)Trekヘルメット断面 カーボン製のロールケージが内蔵されるヘルメット断面 カーボン製のロールケージが内蔵される


ホイール、シューズ等のプロトタイプをチームと共同開発中

選手たちがマヨルカキャンプでチームが使用していたボントレガーの新型カーボンホイールホイールはまだ製品ラインナップにはないプロトタイプ。ZIPPのような断面形状をもち、ニップルが露出したタイプ。おそらく空力性能と振動吸収性を満たすものだと思われる。カンチェラーラのインタビューにも時折登場したため、パヴェ走行にも適応するモデルではないかと推測する。
またシューズのプロトタイプもキャンプに持ち込まれており、実物は非常に軽量でユニークなつくりだった。ここでは写真のみ紹介しよう。

レオパード・トレックに供給されるボントレガーのカーボンホイール 写真以上の詳細は発表されていないレオパード・トレックに供給されるボントレガーのカーボンホイール 写真以上の詳細は発表されていない (c)Trek
ニップルの露出したタイプの新型リムを採用しているニップルの露出したタイプの新型リムを採用している (c)Makoto.AYANOプロトタイプのボントレガー製シューズ サイズ42で199gと非常に軽量だプロトタイプのボントレガー製シューズ サイズ42で199gと非常に軽量だ (c)Makoto.AYANO


プレゼンテーションを行うシマノヨーロッパのスタッフプレゼンテーションを行うシマノヨーロッパのスタッフ (c)Makoto.AYANODi2を供給するシマノによるプレゼンテーション

7970Di2コンポーネントのスポンサードを行うシマノも、今回のマヨルカでのローンチにスタッフを日本、オランダから送り込んだ。
シマノは今年もHTCハイロードやチームスカイ、ラボバンク、エウスカルテル・エウスカディ、フランセーズデジューなどトッププロチームにコンポーネントやホイールを供給するが、コンポに関してはその内の90%がDi2システムになる予定だという。

Di2には手元でも変速操作が行えるサテライトスイッチが用意されているが、このプレゼンテーションではハンドルバーのドロップ部に取り付ける小さなスイッチのSW-7972が発表された。



Di2システムに新たに加わるサブスイッチ。スプリント中にも変速しやすい仕組みで、ハンドルの左右に振り分けて装着するDi2システムに新たに加わるサブスイッチ。スプリント中にも変速しやすい仕組みで、ハンドルの左右に振り分けて装着する SW-7972はスプリンター向きに特化して開発されたスイッチで、ドロップ部を握ってスプリントしながらでも変速しやすいというコンセプトだ。
左右に分けて設置し、それぞれがリアディレイラーのシフトトアップとシフトダウンのスイッチとして割り当てられているという。














Driven: Episode 1. LEOPARD TREK, Fast Faster Fastest レオパード・トレック始動


※LEOPARD TREKチームカラーモデルは今後プロジェクトワンに加わることが決定した。詳しくは2月以降に発表される予定だ。

photo&text Makoto.AYANO
Special Thanks to: LEOPARD TREK, TREK USA, TREK Japan

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