2011/01/24(月) - 07:27
闘いを終えたマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)は、放心状態でイスに座っていた。僅か2秒差で総合優勝を逃した。もっと正確に言えば、1メートルに満たない僅かな差で総合優勝を逃した。最後の最後まで行方が分からない頂上決戦は、キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)が攻略した。
総合2位のマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)、総合1位のキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)のタイム差は8秒 photo:Kei Tsujiあえて個人的な感情を含めて言うと、ゴスがボーナスタイムで逆転して勝つと思っていた。
2005年のツアー・オブ・ジャパン大阪ステージで優勝したゴスは、昨年年ジロ・デ・イタリア第9ステージとGPウエストフランス・プルエーで優勝し、今や世界的なトップスプリンターに成長した。でも今でも気軽に話すことの出来るナイスガイだ。
逃げるマチュー・ウィルソン(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)やルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)ら5名 photo:Kei Tsuji実質的に最終ステージはHTC・ハイロードとガーミン・サーヴェロの一騎打ちだったように思う。各賞ジャージの着用者がスタートラインの最前列に並んだ時、ゴスはロバーツと、マイヤーはマシューズと楽しそうに会話をする。でもゴスとマイヤーは言葉を交わさないばかりか、顔も合わさない。
レースはHTC・ハイロードとガーミン・サーヴェロの消耗戦。逃げに選手を送り込むことでゴスやマシューズのボーナスタイム獲得を阻止したいガーミン・サーヴェロはアタックを連発する。逃げが吸収されると、カウンターアタックでランカスターやウィルソン、弟トラヴィスらが次々に飛び出す。
スプリント賞ジャージを着るマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsuji対するHTC・ハイロードは、メンバー全員でメイン集団を牽引する。カヴェンディッシュもゴスのサポートに徹する。
総合を争う2チームのおかげで、逃げと言う逃げが決まらず、集団のスピードは落ちなかった。11万9000(サウスオーストラリア州警察発表)の観客が詰めかけたアデレード市街地の周回コースを、予定よりもかなり速いスピードで駆け抜ける選手たち。
8周目と12周目のスプリントポイントはゴールスプリントさながらの迫力だ。スプリンターたちは合計3回ゴールスプリントするようなもの。ゴスは2回ともスプリントに絡んだが、1回目の2番手通過が精一杯だった。
晴れ渡った空の下、130名の選手たちが駆け抜ける photo:Kei Tsuji
スプリントポイントに向かうマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsujiスプリントポイントでボーナスタイム2秒を獲得したゴスは、マイヤーとの総合タイム差を6秒に縮めた。射程圏内に捉えたと言っていい。ステージ優勝、もしくはステージ2位に入れば総合成績が逆転する。
しかし序盤から集団を牽引し続けたHTC・ハイロードは徐々にその勢いを失った。最後の最後で、最強発射台と謳われるレンショーとのタッグは機能しなかった。スプリントポイントですでに脚を使っていたゴスは、レンショーの鋭いスパートに付いていけなかったのだ。
ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)とグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)が先頭でゴールへ photo:Kei Tsuji結果的に、スプリントポイントに興味を示さず、ステージ優勝だけを狙ったチームスカイが勝利した。ステージ2位のヘンダーソンとゴスの差は僅少。
「ゴシィー(マシュー・ゴス)は2つのスプリントポイントで脚を使いすぎたのだと思う」というマイヤーの言葉通り、最初からステージ優勝狙いに徹していれば、結果は違っていたかも知れない。HTC・ハイロードもゴールスプリントに100%の力を注ぐことが出来なかった。
ステージ3位で総合逆転を逃し、呆然とするマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsujiとにかくツアー・ダウンアンダーはマイヤーの総合優勝という結果で幕を下ろした。レースに「仮に」や「〜たら」「〜れば」は存在しないし、チームスカイのワンツー勝利は本当に賞賛されるものだ。
ゴール後、しばらく呆然とした表情でイスに沈み込むゴス。ジャーナリストたちの要望に応えて重い腰を上げ、言葉を選びながら質問に答える。
総合優勝、山岳賞、敢闘賞、スプリント賞を獲得した4名がシャンパンファイト photo:Kei Tsuji「ミスを犯さなければ、コックピット(表彰台の真ん中)に立てていたかもしれない。でも、残念だけど、これがロードレースだ。悪い結果ではないし、チームのサポートは最高だった。」時折照れ隠しのような笑顔を浮かべるが、うつろな瞳の奥には深い悔しさが横たわっている。
「とにかくレースは終わったんだ。」ゴスは何かを忘れ去りたいかのように早口で、力をこめて言った。そして最後に「次のレースが待ち遠しいよ。」と付け足した。
シャンパンファイトでは、ゴスがマイヤーにアタックを仕掛けた(そのとばっちりを受けてカメラがどっぷりと濡れた)。その後がっちりと握手する。熾烈な総合争いを繰り広げたマイヤーとゴスは23歳と24歳。総合4位に入ったマシューズに至っては弱冠20歳だ。
今後これらの若手たちがオーストラリアを牽引するのは間違いない。オーストラリアはヨーロッパ諸国に並ぶ強豪国になりつつある。その勢いを改めて感じさせる大会だった。
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia

2005年のツアー・オブ・ジャパン大阪ステージで優勝したゴスは、昨年年ジロ・デ・イタリア第9ステージとGPウエストフランス・プルエーで優勝し、今や世界的なトップスプリンターに成長した。でも今でも気軽に話すことの出来るナイスガイだ。

レースはHTC・ハイロードとガーミン・サーヴェロの消耗戦。逃げに選手を送り込むことでゴスやマシューズのボーナスタイム獲得を阻止したいガーミン・サーヴェロはアタックを連発する。逃げが吸収されると、カウンターアタックでランカスターやウィルソン、弟トラヴィスらが次々に飛び出す。

総合を争う2チームのおかげで、逃げと言う逃げが決まらず、集団のスピードは落ちなかった。11万9000(サウスオーストラリア州警察発表)の観客が詰めかけたアデレード市街地の周回コースを、予定よりもかなり速いスピードで駆け抜ける選手たち。
8周目と12周目のスプリントポイントはゴールスプリントさながらの迫力だ。スプリンターたちは合計3回ゴールスプリントするようなもの。ゴスは2回ともスプリントに絡んだが、1回目の2番手通過が精一杯だった。


しかし序盤から集団を牽引し続けたHTC・ハイロードは徐々にその勢いを失った。最後の最後で、最強発射台と謳われるレンショーとのタッグは機能しなかった。スプリントポイントですでに脚を使っていたゴスは、レンショーの鋭いスパートに付いていけなかったのだ。

「ゴシィー(マシュー・ゴス)は2つのスプリントポイントで脚を使いすぎたのだと思う」というマイヤーの言葉通り、最初からステージ優勝狙いに徹していれば、結果は違っていたかも知れない。HTC・ハイロードもゴールスプリントに100%の力を注ぐことが出来なかった。

ゴール後、しばらく呆然とした表情でイスに沈み込むゴス。ジャーナリストたちの要望に応えて重い腰を上げ、言葉を選びながら質問に答える。

「とにかくレースは終わったんだ。」ゴスは何かを忘れ去りたいかのように早口で、力をこめて言った。そして最後に「次のレースが待ち遠しいよ。」と付け足した。
シャンパンファイトでは、ゴスがマイヤーにアタックを仕掛けた(そのとばっちりを受けてカメラがどっぷりと濡れた)。その後がっちりと握手する。熾烈な総合争いを繰り広げたマイヤーとゴスは23歳と24歳。総合4位に入ったマシューズに至っては弱冠20歳だ。
今後これらの若手たちがオーストラリアを牽引するのは間違いない。オーストラリアはヨーロッパ諸国に並ぶ強豪国になりつつある。その勢いを改めて感じさせる大会だった。
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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