1月23日〜2月1日にかけて開催されるツール・ド・ランカウイ2011。アジアのステージレースとしては最高カテゴリーのこのレースに、国内外のチームから日本人選手が多数出場する。コースと出場選手からレースの見どころを見てみよう。

マレーシアの国家的スポーツイベントとしての側面ももつツール・ド・ランカウイマレーシアの国家的スポーツイベントとしての側面ももつツール・ド・ランカウイ photo:Yufta Omataアジア最高峰のステージレースとして、難易度、オーガナイズともに高い評価を得ているツール・ド・ランカウイ。今年で16回目を迎え、歴史的にもアジアのロードレースを牽引してきたレースだ。


HC(オークラス)のレースとあって、欧米からからプロコンチネンタルを含む強豪チームが多数参戦する。昨年は3月に開催されたが、有力チームのヨーロッパのレーススケジュールとの兼ね合いから1月下旬に今年はスタートを切る。

沿道には多くの観衆が応援に押し寄せる沿道には多くの観衆が応援に押し寄せる photo:Yufta Omata直近2年は1週間のレースだったが、今年は以前と同じように10日間10ステージが設定された。休息日無しの10連戦は、HCに相応しいハードさ。このレースでシーズンインするチームが多く、狙ってコンディショニングをしてきた選手が活躍する可能性が高い。

とりわけアジアのチーム、アジアツアーを中心に闘うチームにとっては重要なレース。アジア各地の有力チームが一同に会し、アジア人最高順位の名誉をかけたレースの側面も強い。アジアの競技レベルが高まる近年は、「アジア人最高位」から「総合優勝を狙う」ことも現実味を帯びている。アジア自転車界のレベルを見る試金石としても意味のあるレースなのだ。

そこにはもちろん日本人選手の活躍が期待される。今年は国内外のチームから多く日本人選手が参戦する。注目の選手を紹介しよう。

日本のロードレース新時代到来の狼煙を上げる

過去にこのランカウイでステージ優勝を挙げた2人の現役選手は2人とも参戦する。07年大会で劇的な逃げ切りを飾った福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)と昨年大会で集団スプリントを制した西谷泰治(愛三工業)。福島は今期よりチームの拠点をマレーシアに変更。お膝元でのビッグレースにかける想いは強い。西谷は今年はマークされる存在。ランカウイを良く知る別府匠新監督のもと、再度の区間勝利を目指す。

07年大会で区間優勝を飾った福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)07年大会で区間優勝を飾った福島晋一(トレンガヌ・プロアジア) photo:Cor Vos昨年大会で集団スプリントを制した西谷泰治(愛三工業)昨年大会で集団スプリントを制した西谷泰治(愛三工業) photo:Yufta Omata


新ジャージでの初戦となる新城幸也(日本、チームユーロップカー)新ジャージでの初戦となる新城幸也(日本、チームユーロップカー) image:www.teameuropcar.com昨年、ヨーロッパのレースシーンに強烈な印象を残した新城幸也(チームユーロップカー)は、新しくなったチームジャージでの初戦となる。タフさとレース勘を磨いたユキヤは、集団スプリントでも、少人数逃げでも勝利を狙える存在だ。

昨年アジアの2つのHCステージレースで総合上位に入った土井雪広(スキル・シマノ)は、順調にステージレーサーとしてキャリアアップ中。持ち前の登坂力と、まとまったチーム力で総合上位を狙ってくるに違いない。今大会は山岳ステージの比重が大きいため、土井に向くコースだと言えそうだ。

全日本チャンピオンの宮澤崇史(ファルネーゼビーニ・ネーリ)全日本チャンピオンの宮澤崇史(ファルネーゼビーニ・ネーリ) photo:Makoto Ayanoアジアのステージレースで好成績を重ねる土井雪広(スキル・シマノ)アジアのステージレースで好成績を重ねる土井雪広(スキル・シマノ) photo:Sonoko Tanaka


昨年に続き日本のチャンピオンジャージがアジア最高峰の舞台に降り立つ。今期よりイタリアのファルネーゼビーニ・ネーリに移籍した宮澤崇史だ。キレのあるスプリント力で勝利を狙う。

昨年とほぼ同じメンバーで臨む愛三工業レーシングチーム昨年とほぼ同じメンバーで臨む愛三工業レーシングチーム photo:Yufta Omataチームとして昨年に続きマレーシアに乗り込むのは愛三工業レーシングチーム。昨年は選手として走った別府匠が新監督となり、昨年の区間1勝以上の結果を目指す。アジアを中心に闘う同チームにとって、ランカウイはもっとも重要なレース。別府の代わりに福田真平が入った以外は、西谷、盛一大、綾部勇成、品川真寛、鈴木謙一と昨年のメンバーをラインナップし、態勢は整っている。

プロコンチームが攻勢をかける 有力海外選手

昨年の覇者ホセ・ルハノ(ヴェネズエラ)が欠場だが、ISDからファルネーゼビーニ・ネーリに名称を変えたチームは参戦する。しかし若手中心の構成で、チーム最年長となる宮澤のスプリントにかかる期待は大きくなりそうだ。

08ジロで大暴れしたエマヌーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)は優勝候補の筆頭だ08ジロで大暴れしたエマヌーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)は優勝候補の筆頭だ (c)Makoto.AYANO総合優勝候補は、2008年ジロ・デ・イタリア山岳王のエマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)。区間3勝と凄まじい勢いを見せた若きクライマーはしかし、その後競技外の検査でCERA陽性が発覚。1年の謹慎処分を受けるとともに、ジロの好成績にも疑惑がもたれた。ランカウイの山岳ステージで再び輝きを見せるか。おそらくは今年のジロも見据えた走りとなるはずだ。

ユキヤのチームユーロップカーはピエール・ロラン(フランス)が総合を狙うエースだ。フランス新世代の選手として期待されるロランは昨年いくつかのプロツアーレースで存在感を示している。スプリンターとして世界に通用する脚を発揮しつつあるユキヤのステージ優勝に俄然期待が集まる。ユキヤはタイで福島らと合宿をこなしてからの参戦。その仕上がりにも注目だ。


昨年大会のゲンティンで2位、総合も2位に入ったゴン・ヒュソク(韓国、韓国ナショナルチーム)昨年大会のゲンティンで2位、総合も2位に入ったゴン・ヒュソク(韓国、韓国ナショナルチーム) photo:Yufta Omata昨年のゲンティンハイランドで区間2位、総合も2位と目覚ましい走りをした当代アジア最強のクライマー、ゴン・ヒュソク(韓国、韓国ナショナルチーム)は総合優勝を懸けて走る。ランカウイにはいまだアジア人の総合優勝者の名前はリストにない。

チーム力としてはアジアチーム随一なのがイランのタブリツ・ペドロケミカルだ。昨年総合3位のホセイン・アスカリ、メフディ・ソフラビ、ガデル・ミズバニのイラン強豪トリオを軸に、昨年区間優勝のトビアス・エルラー(ドイツ)をラインアップする。

昨年大会で念願の1勝を挙げたマレーシア期待の星アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ・プロアジア)昨年大会で念願の1勝を挙げたマレーシア期待の星アヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ・プロアジア) photo:Yufta Omataスプリンターとしては、ロベルト・フェルスター(ドイツ、ユナイテッドヘルスケア)、ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、スキル・シマノ)、パク・スンベク(韓国、韓国ナショナルチーム)、セリス・ヴィダル(スペイン、ルトゥーア)ら強豪が揃う。

とりわけ注目なのはマレーシアの若きスプリンター、アヌアル・マナン(トレンガヌ・プロアジア)だ。母国の期待を一身に背負って遂げた昨年の区間優勝は、国中のサポーターに歓喜をもたらした。将来はヨーロッパで走りたいと公言する彼のスプリントのために、福島もアシストを厭わないだろう。

3つの山岳ステージ含むハードな全10ステージ

レースはマレーシア・ランカウイ島から始まる。1週間開催の頃は移動の不都合から走ることはなかったが、10ステージ構成になって「ランカウイ島を走るツール・ド・ランカウイ」が復活した。第1ステージは起伏の多い94.3km。最初にリーダージャージを着るチャンスはスプリンターだけでなく、パンチャーにも等しくある。

第5ステージ タパ〜ゲンティンハイランド プロフィール第5ステージ タパ〜ゲンティンハイランド プロフィール image:www.ltdl.com本土に上陸する第2ステージからスプリンターのステージが2つ続く。そして最初の山岳ステージが第4ステージ。ランカウイの難所のひとつ、キャメロンハイランド山頂ゴールで総合狙いの選手にふるいをかける。

第4ステージ アエル〜キャメロンハイランド プロフィール第4ステージ アエル〜キャメロンハイランド プロフィール image:www.ltdl.comそして続く第5ステージでランカウイの代名詞にして最大の難所ゲンティン・ハイランド山頂ゴールを迎える。今年のコースは昨年より勾配の揺るい側から登るが、残り5kmは急勾配。ゴールまで残りおよそ30kmから始まるこの登りで総合争いの激しいバトルが繰り広げられるだろう。

山場を終えた第6ステージは行政首都プトラジャヤでのクリテリウム。スプリンターたちが踊る。続く第7ステージは細かいアップダウンの末に待つ頂上ゴール。総合を争う選手の前で、逃げ集団の区間争いも激化しそうなレイアウト。

どの選手にとっても過酷な暑さとの闘いを避けては通れないどの選手にとっても過酷な暑さとの闘いを避けては通れない photo:Yufta Omataスプリンターのための第8ステージを終え、第9ステージは残り30kmに山岳ポイントが設定された中級ステージ。山岳を越えると下り基調でゴールのため、総合で挽回したい選手や区間優勝を狙うパンチャーにとっては無視できないステージ。

最終第10ステージは、恒例の首都クアラルンプールのクリテリウム。近代的な都市を選手たちが猛スピードで駆け抜ける。蒸し暑いタフなコンディションに屈しない、戦略と脚力に秀でた選手が総合の表彰台に登ることになるだろう。


シクロワイアードでは昨年に続き、現地から日本人選手たちの活躍をカバーする写真と現地レポートをお届けする予定です。お楽しみに!


text:Yufta Omata
photo:Yufta Omata,Makoto Ayano,Cor Vos,Sonoko Tanaka

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