オメガファーマ・ロットを引き連れて、アンドレ・グライペル(ドイツ)がオーストラリアに戻って来た。目的は昨年ステージ3勝&総合優勝を飾ったツアー・ダウンアンダーで、大会連覇を達成すること。しかしその前にかつてのチームメイト、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)という強敵が立ちはだかる。

昨年のダウンアンダーでライバルを蹴散らしステージ3勝を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ)昨年のダウンアンダーでライバルを蹴散らしステージ3勝を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ) photo:Kei Tsuji「自分は自分の走りに徹するだけ。彼がステージ優勝を阻止しようとするなら、打ち負かしてやるだけだ」アデレードに到着したグライペルは落ち着いた表情で語った。

グライペルの言う“彼”とは、ツール・ド・フランスでステージ通算15勝を飾り、ツアー・ダウンアンダーに初出場するカヴェンディッシュのことだ。昨年まで同じチームで走っていた2人は、大きな注目を受けながら、ツアー・ダウンアンダーで初めて肩を突き合わす。

昨年ダウンアンダーで2度目の総合優勝を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ)昨年ダウンアンダーで2度目の総合優勝を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ) photo:Kei Tsuji新チームで連覇を狙うグライペルに、今年のツアー・ダウンアンダーにおけるスプリンタートップ10を選んでもらった。まずはグライペル自身とカヴェンディッシュ。それからロビー・マキュアン(レディオシャック)、タイラー・ファラー(ガーミン・サーヴェロ)、マシュー・ゴス(チームHTC・ハイロード)、フアンホセ・アエド(サクソバンク・サンガード)、フランチェスコ・キッキ(クイックステップ)、グレーム・ブラウン(ラボバンク)、マイケル・マシューズ(ラボバンク)、アラン・デーヴィス(アスタナ)の名前が続く。

「目標はステージ優勝。それ以上はボーナスだ。いつだってシーズン初戦は感覚が掴めない。正直言って、自分のコンディションも分からない。特に今年は合流したばかりのチームでの出場だから、最初は互いの走りに気をつけながら走ることになる」

オメガファーマ・ロットに移籍したグライペルの発射台を務めるのは、おそらく、昨年新人賞を獲得したユルゲン・ルーランズ(ベルギー)だ。グライペルと一緒にHTCを離れてオメガファーマ・ロットに移ったビセンテ・レイネス(スペイン)、アダム・ハンセン(オーストラリア)、マルセル・シーベルグ(ドイツ)の3人も手助けになるはず。グライペルはチームメンバーに満足しており、早くレースを走りたい衝動に駆られている。

昨年ダウンアンダーで新人賞を獲得したユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)昨年ダウンアンダーで新人賞を獲得したユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Kei Tsujiオメガファーマ・ロットのメンバーリストの中には、将来有望な21歳アダム・ブライス(イギリス)の名前もある。グライペルはブライスについて「彼は若いのに昨シーズン4〜5勝を飾った。その勢いを持続できれば、数年のうちにトップスプリンターの仲間入りを果たすだろう」とコメントしている。

ブライスはカヴェンディッシュに代わる次世代のライバルになる?

21歳のアダム・ブライス(イギリス、オメガファーマ・ロット)21歳のアダム・ブライス(イギリス、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vos「いや、仮に彼が自分よりも優れた走りを見せるなら、迷うことなく彼に服従する。数年前にカヴが台頭したときも、自分は献身的に彼の発射台役を務めた。だからカヴに悪く言われる筋合いはない。彼の否定的なコメントに対して怒りを感じた」

昨年グライペルはシーズン21勝(最多勝)というカヴェンディッシュの倍近い勝利数をマークした。しかし必ずしもHTCでの活動が順風満帆だったとは言えない。ミラノ〜サンレモに代表されるスプリンター向きのクラシックや、ツール・ド・フランスなどのグランツールで、ことごとくカヴにエーススプリンターの座を奪われた。

「もし自分がHTCの監督なら(カヴかグライペルか)どちらのスプリンターをどのレースに出場させるか悩みに悩んだはずだ。手厚いサポート体制を敷いてくれたHTCには感謝している。でもツール出場のチャンスは一度も与えられなかった。『他のチームなら』と思うことも度々あった」

カヴェンディッシュと同じチームで走っている限り、グライペルは胸を張ってエーススプリンターを名乗れない。自分の居場所を確保するため、グライペルはベルギーのオメガファーマ・ロットへの移籍を決めた。

7月のツールで、グライペルはカヴェンディッシュに勝負を挑む。その勝負の行方を占う上で注目したいのが、ツアー・ダウンアンダーでのファーストバトル。ツアー・ダウンアンダーは日曜日のクリテリウムで開幕。1日の休息日を経て、火曜日から本格的なステージレースが始まる。

text:Gregor Brown in Adelaide
translation:Kei Tsuji in Sydney

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