2009/04/09(木) - 13:05
冷たい雨と風に見舞われた第71回ヘント〜ウェベルヘム(UCIプロツアー)は、落車とパンクが連続する過酷なレースとなった。序盤に形成された逃げグループからケンメルベルグで飛び出し、ゴールまで逃げ切ったエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)が、21歳にしてキャリア最大の勝利を手にした。
落車とパンクが有力選手の脚を止める
開催時期をロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれ、平坦なスプリンタークラシックとして知られるヘント〜ウェベルヘム。開催当日、186名の選手たちを出迎えたのは、“いかにもベルギーのクラシックらしい”冷たい雨と風だ。
開幕前から注目を集めていたのはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)だ。直前のKBCデパンヌ3日間レースではケンメルベルグを乗り切ってステージ2勝。しかしそんなカヴェンディッシュは、序盤のパンクで出ばなをくじかれてしまう。
カヴェンディッシュは無事に集団に復帰したものの、集団前方に上がる前に40名の逃げが決まってしまう。マークス・ブルグハート(ドイツ、チームコロンビア)やロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)と言った強力な逃げ。サーヴェロは実に6名を逃げに送り込むことに成功した。
当初はトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)の二大選手も逃げに乗っていたが、ともにパンクによって脱落。
さらにハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)とグレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)は落車によって逃げから脱落。トラブルにより有力選手は次々と姿を消した。
勝負を決めたケンメルベルグ
やがてタイム差は4分を超え、勾配が20%近いケンメルベルグを2007年大会覇者のブルグハート先頭でクリア。カヴェンディッシュは集団を率いてケンメルを上りきったが、タイム差は広がるばかり。最後まで追いつくことは無かった。
先頭グループでは2度目のケンメルベルグに向けてアタック合戦が始まり、2001年優勝者のジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア)を含む14名が先行。ここからアレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)がアタックを成功させ、ケンメルベルグを独走で駆け上がる。その後方では、雨に濡れた非常に滑りやすい石畳の急坂でボアッソンが飛び出した。
上りで飛び出したボアッソンは平坦区間でクチンスキーに追いつき、雨の中を協力しながらペースを上げ、牽制に入った追走グループから1分30秒のリード(ラスト20km)を築き上げた。
追走グループからはアンドレアス・クリアー(ドイツ、サーヴェロ)やマシュー・ゴス(オーストラリア、サクソバンク)、マシュー・ヘイマン(オーストラリア、ラボバンク)の3名が飛び出したが、先頭2名は50秒のリードを保ったままゴールへ。
クチンスキーの付き位置を確保したボアッソンがラスト300mでスプリントを開始。クチンスキーの反撃は届かず、ボアッソン先頭でゴールに飛び込んだ。
53秒遅れの追走グループ先頭は、2005年TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)大阪ステージ覇者&2006年団体追い抜き世界王者のゴスが獲得。表彰台は29歳クチンスキー、21歳ボアッソン、22歳ゴスと、若手〜中堅選手で固められた。
21歳ボアッソン、キャリア最大の勝利
優勝したボアッソンは、これまでノルウェーのTTチャンピオンに輝くこと2回、昨年クリテリウム・アンテルナシオナルの個人TTを制覇するなど、年々力をつけている若きTTスペシャリストだ。今シーズンはチャレンジ・マヨルカの2区間で2位、チームメイトが優勝したモンテパスキ・エロイカで4位に入っている。
カヴェンディッシュというエーススプリンターを擁し、さらにブルグハートとヒンカピーという過去の優勝者を逃げグループに送り込んだチームコロンビア。ボアッソンの役割はあくまでもアシストだった。
「最初逃げグループに入ったとき、ブルグハートとヒンカピーのためにアシストとして働いた。でもレースが進むにつれて調子の良さを実感して、今日は勝負できると思った」
「ケンメルベルグでも脚は回っていたから、アタックして先頭のクチンスキーに合流。チームのオーダーではなくて、ただ自分からチャンレジしてみて、どこまで走れるか試してみたかったんだ」と、流暢な英語で勝者はコメント。
クチンスキーとの一騎打ちを制したことについて「僕ら先頭グループと後続とのタイム差が50秒まで縮まった時はナーバスになったけど、ゴールまでの距離が短かったから、逃げ切るには十分だった。最後のスプリント勝負は100%の力で挑んだよ。小集団のスプリントは本来得意だけど、今日は長いレースだったから不安もあった。でもうまく勝利に持ち込めた」と語っている。
「間違いなくこれは自分のキャリアの中で最大の勝利。でも日曜日に重要なパリ〜ルーベが控えているから、祝賀モードは程々にしないと。今度はブルグハートとヒンカピーをアシストしたい」と、4日後の石畳レースでは悲願の優勝を狙うヒンカピーに身を捧げる。
終わってみれば出走者186名、完走者87名というサバイバルレース。2年連続3度目の出場となった別府史之(スキル・シマノ)は完走を逃している。
選手コメントはチーム公式サイトより。
ヘント〜ウェベルヘム2009
1位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)5h00'15"
2位 アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)
3位 マシュー・ゴス(オーストラリア、サクソバンク)+53"
4位 マシュー・ヘイマン(オーストラリア、ラボバンク)
5位 アンドレアス・クリアー(ドイツ、サーヴェロ)+57"
6位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)+1'49"
7位 マークス・ブルグハート(ドイツ、チームコロンビア)+2'14"
8位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク)
9位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、リクイガス)
10位 ジェレミー・ハント(イギリス、サーヴェロ)
DNF 別府史之(日本、スキル・シマノ)
落車とパンクが有力選手の脚を止める
開催時期をロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれ、平坦なスプリンタークラシックとして知られるヘント〜ウェベルヘム。開催当日、186名の選手たちを出迎えたのは、“いかにもベルギーのクラシックらしい”冷たい雨と風だ。
開幕前から注目を集めていたのはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)だ。直前のKBCデパンヌ3日間レースではケンメルベルグを乗り切ってステージ2勝。しかしそんなカヴェンディッシュは、序盤のパンクで出ばなをくじかれてしまう。
カヴェンディッシュは無事に集団に復帰したものの、集団前方に上がる前に40名の逃げが決まってしまう。マークス・ブルグハート(ドイツ、チームコロンビア)やロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)と言った強力な逃げ。サーヴェロは実に6名を逃げに送り込むことに成功した。
当初はトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)の二大選手も逃げに乗っていたが、ともにパンクによって脱落。
さらにハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)とグレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)は落車によって逃げから脱落。トラブルにより有力選手は次々と姿を消した。
勝負を決めたケンメルベルグ
やがてタイム差は4分を超え、勾配が20%近いケンメルベルグを2007年大会覇者のブルグハート先頭でクリア。カヴェンディッシュは集団を率いてケンメルを上りきったが、タイム差は広がるばかり。最後まで追いつくことは無かった。
先頭グループでは2度目のケンメルベルグに向けてアタック合戦が始まり、2001年優勝者のジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア)を含む14名が先行。ここからアレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)がアタックを成功させ、ケンメルベルグを独走で駆け上がる。その後方では、雨に濡れた非常に滑りやすい石畳の急坂でボアッソンが飛び出した。
上りで飛び出したボアッソンは平坦区間でクチンスキーに追いつき、雨の中を協力しながらペースを上げ、牽制に入った追走グループから1分30秒のリード(ラスト20km)を築き上げた。
追走グループからはアンドレアス・クリアー(ドイツ、サーヴェロ)やマシュー・ゴス(オーストラリア、サクソバンク)、マシュー・ヘイマン(オーストラリア、ラボバンク)の3名が飛び出したが、先頭2名は50秒のリードを保ったままゴールへ。
クチンスキーの付き位置を確保したボアッソンがラスト300mでスプリントを開始。クチンスキーの反撃は届かず、ボアッソン先頭でゴールに飛び込んだ。
53秒遅れの追走グループ先頭は、2005年TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)大阪ステージ覇者&2006年団体追い抜き世界王者のゴスが獲得。表彰台は29歳クチンスキー、21歳ボアッソン、22歳ゴスと、若手〜中堅選手で固められた。
21歳ボアッソン、キャリア最大の勝利
優勝したボアッソンは、これまでノルウェーのTTチャンピオンに輝くこと2回、昨年クリテリウム・アンテルナシオナルの個人TTを制覇するなど、年々力をつけている若きTTスペシャリストだ。今シーズンはチャレンジ・マヨルカの2区間で2位、チームメイトが優勝したモンテパスキ・エロイカで4位に入っている。
カヴェンディッシュというエーススプリンターを擁し、さらにブルグハートとヒンカピーという過去の優勝者を逃げグループに送り込んだチームコロンビア。ボアッソンの役割はあくまでもアシストだった。
「最初逃げグループに入ったとき、ブルグハートとヒンカピーのためにアシストとして働いた。でもレースが進むにつれて調子の良さを実感して、今日は勝負できると思った」
「ケンメルベルグでも脚は回っていたから、アタックして先頭のクチンスキーに合流。チームのオーダーではなくて、ただ自分からチャンレジしてみて、どこまで走れるか試してみたかったんだ」と、流暢な英語で勝者はコメント。
クチンスキーとの一騎打ちを制したことについて「僕ら先頭グループと後続とのタイム差が50秒まで縮まった時はナーバスになったけど、ゴールまでの距離が短かったから、逃げ切るには十分だった。最後のスプリント勝負は100%の力で挑んだよ。小集団のスプリントは本来得意だけど、今日は長いレースだったから不安もあった。でもうまく勝利に持ち込めた」と語っている。
「間違いなくこれは自分のキャリアの中で最大の勝利。でも日曜日に重要なパリ〜ルーベが控えているから、祝賀モードは程々にしないと。今度はブルグハートとヒンカピーをアシストしたい」と、4日後の石畳レースでは悲願の優勝を狙うヒンカピーに身を捧げる。
終わってみれば出走者186名、完走者87名というサバイバルレース。2年連続3度目の出場となった別府史之(スキル・シマノ)は完走を逃している。
選手コメントはチーム公式サイトより。
ヘント〜ウェベルヘム2009
1位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)5h00'15"
2位 アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)
3位 マシュー・ゴス(オーストラリア、サクソバンク)+53"
4位 マシュー・ヘイマン(オーストラリア、ラボバンク)
5位 アンドレアス・クリアー(ドイツ、サーヴェロ)+57"
6位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)+1'49"
7位 マークス・ブルグハート(ドイツ、チームコロンビア)+2'14"
8位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク)
9位 マヌエル・クインツィアート(イタリア、リクイガス)
10位 ジェレミー・ハント(イギリス、サーヴェロ)
DNF 別府史之(日本、スキル・シマノ)
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