2010/10/19(火) - 10:27
ようやく天候が回復し、予定どおり194.6kmで行われた第8ステージ。この日も集団スプリントとなり、それを制したのはケニー・ファンヒュメル(スキル・シマノ、オランダ)だった。しかしチームカーの後ろについて集団に戻ったとしてペナルティタイムが科せられ、ステージ優勝は剥奪されてしまった。
9日間で開催されるツアー・オブ・ハイナンも、残りの日数が少なくなってきた。朝起きるとやはり小雨が降っている。しかし、これまでの嵐のような雨ではなく、雲で覆われた空も心なしか明るい。
「今日は晴れそう!」そんな予感とともに、レースは予定どおり(予定どおり行われるのは第3ステージ以来だ)開催されることとなった。本来当たり前の“予定どおり”が、現場では特別なことのように感じられる。
この日の大きな逃げは29km地点でできた5選手によるもの。この中には総合上位につけるトーマス・マルシンスキ(ポーランド、CCCポルサット・ポルコウィス)、マチエス・ベルトリング(ドイツ、チームクォータ・インデランド)が含まれていた。
逃げグループ5人の中に2選手を送り込んだCCCポルサット。それぞれ3つ設置されていた山岳とスプリントを、すべてマルシンスキが1位で通過する。
マルシンスキは今日だけで11ポイントを獲得し、山岳賞トップのアルカイス・ドゥーラン(スペイン、フットオン・セルベット)にわずか1ポイント差まで迫る。またスプリントポイントによりボーナスタイム9秒を獲得し、総合順位も13位から5位にジャンプアップさせた。
ポイント荒稼ぎ状態の逃げグループは、最後のスプリントポイントを過ぎて総合上位のマルシンスキとベルトリングが集団に戻る。残りの3選手は逃げ続けるが、ゴールまで残り10km地点付近で集団に吸収される。
そして集団スプリントとなったステージ優勝争い。この日も集団を従えて大きく両手を挙げたのはケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)だった。これでステージ4連勝目、その圧倒的なスプリント力に会場が沸いた。
しかし、表彰を待つファンヒュメルにチーフコミッセールがペナルティタイム20秒が科せられているため、今日の勝者ではないことを告げた。
ゴール後、今日のレースについて嬉しそうに話してくれたファンヒュメルの笑顔が鮮明に残っているだけに切ない。「今日はとても厳しいスプリントだったんだ。残り20km地点でパンクしてしまった。時間がかかたったので、そこから追い上げるのは大変だった。今日は疲れているよ……。明日? ラストステージも勝てたらいいよね!」そんな話をしていた。
その残り20km地点のパンクが問題だった。パンクしたタイヤを交換するのに、2分くらいかかってしまったのだという。そしてケニーは集団に戻るためチームカーの後ろについて加速した。このことでペナルティを科せられた。これは本来禁止されている行為だ。しかし、ヨーロッパのレースでは黙認されている行為でもある。
コミッセール側の言い分は「注意したのにも関わらず1.5kmも続けたからペナルティを科した」。しかし、ファンヒュメル側は「レース中に注意なんてされていない!」と主張する。
かなりグレーゾーンであるためその判断は難しい。ただ1つ言えることは、今大会でチームカーによる選手の牽引はかなり厳しくみられている。ヨーロッパの悪しき風習をアジアに持ち込まないというスタンスだ。これまでに失格になった選手もいる。
ただ、残り20km地点での出来事……。ペナルティが科せられるにしても、事前にチームに伝えることはできなかったのだろうか? スキル・シマノはファンヒュメルだけでなくチーム全員の力を使って、ひたむきにゴールをめざした。その努力が無駄になるのはどうなのか?
チーフコミッセールと監督との間で激しい協議が続いたが、ファンヒュメルは「Is this true?」とだけ質問し、コミッセールが深く頷いたところで静かに会場を去った。
今日のステージ優勝者は、繰り上がりでアレクシィ・マルコフ(ロシア、ロシアナショナルチーム)。土井雪広(スキル・シマノ)は総合順位を8位に落としたが、総合2位〜5位がタイム差2秒以内という接戦になってきている。また山岳賞やチーム順位もまだ逆転があり得る。
最終ステージは今大会最長距離の222.5kmで開催される予定。後半にかけて3つのスプリントポイントを通過すると2つの山岳ポイントが用意されるレイアウトだ。多くのチームの思惑がぶつかり合いレースは積極的に動き、愛三工業レーシングチームも見せ場を作ってくれるだろう。そして第8ステージで悔しい思いをしたスキル・シマノも雪辱に燃えて走るハズだ。いいレースを期待したい。
ツアー・オブ・ハイナン2010第8ステージ結果
1位 アレクシィ・マルコフ(ロシア、ロシア・ナショナルチーム) 4h35'37"
2位 チャールス・ハフ(アメリカ、ジェリーベリー・サイクリング)
3位 イヴァン・コヴァレフ(ロシア、ロシア・ナショナルチーム)
15位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
22位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
25位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)
39位 土井雪広(スキル・シマノ)
63位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
91位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) +17"
個人総合成績
1位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) 21h32'57"
2位 ジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット) +19"
3位 アレクシィ・マルコフ(ロシア、ロシア・ナショナルチーム) +20"
8位 土井雪広(スキル・シマノ) +27"
13位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム) +33"
18位 盛一大(愛三工業レーシングチーム) +42"
29位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) +48"
47位 福田真平(愛三工業レーシングチーム) +3'02"
76位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) +4'16"
アジア最高位
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
ポイント賞
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
山岳賞
アルカイス・ドゥーラン(スペイン、フットオン・セルベット)
text&photo:Sonoko Tanaka
9日間で開催されるツアー・オブ・ハイナンも、残りの日数が少なくなってきた。朝起きるとやはり小雨が降っている。しかし、これまでの嵐のような雨ではなく、雲で覆われた空も心なしか明るい。
「今日は晴れそう!」そんな予感とともに、レースは予定どおり(予定どおり行われるのは第3ステージ以来だ)開催されることとなった。本来当たり前の“予定どおり”が、現場では特別なことのように感じられる。
この日の大きな逃げは29km地点でできた5選手によるもの。この中には総合上位につけるトーマス・マルシンスキ(ポーランド、CCCポルサット・ポルコウィス)、マチエス・ベルトリング(ドイツ、チームクォータ・インデランド)が含まれていた。
逃げグループ5人の中に2選手を送り込んだCCCポルサット。それぞれ3つ設置されていた山岳とスプリントを、すべてマルシンスキが1位で通過する。
マルシンスキは今日だけで11ポイントを獲得し、山岳賞トップのアルカイス・ドゥーラン(スペイン、フットオン・セルベット)にわずか1ポイント差まで迫る。またスプリントポイントによりボーナスタイム9秒を獲得し、総合順位も13位から5位にジャンプアップさせた。
ポイント荒稼ぎ状態の逃げグループは、最後のスプリントポイントを過ぎて総合上位のマルシンスキとベルトリングが集団に戻る。残りの3選手は逃げ続けるが、ゴールまで残り10km地点付近で集団に吸収される。
そして集団スプリントとなったステージ優勝争い。この日も集団を従えて大きく両手を挙げたのはケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)だった。これでステージ4連勝目、その圧倒的なスプリント力に会場が沸いた。
しかし、表彰を待つファンヒュメルにチーフコミッセールがペナルティタイム20秒が科せられているため、今日の勝者ではないことを告げた。
ゴール後、今日のレースについて嬉しそうに話してくれたファンヒュメルの笑顔が鮮明に残っているだけに切ない。「今日はとても厳しいスプリントだったんだ。残り20km地点でパンクしてしまった。時間がかかたったので、そこから追い上げるのは大変だった。今日は疲れているよ……。明日? ラストステージも勝てたらいいよね!」そんな話をしていた。
その残り20km地点のパンクが問題だった。パンクしたタイヤを交換するのに、2分くらいかかってしまったのだという。そしてケニーは集団に戻るためチームカーの後ろについて加速した。このことでペナルティを科せられた。これは本来禁止されている行為だ。しかし、ヨーロッパのレースでは黙認されている行為でもある。
コミッセール側の言い分は「注意したのにも関わらず1.5kmも続けたからペナルティを科した」。しかし、ファンヒュメル側は「レース中に注意なんてされていない!」と主張する。
かなりグレーゾーンであるためその判断は難しい。ただ1つ言えることは、今大会でチームカーによる選手の牽引はかなり厳しくみられている。ヨーロッパの悪しき風習をアジアに持ち込まないというスタンスだ。これまでに失格になった選手もいる。
ただ、残り20km地点での出来事……。ペナルティが科せられるにしても、事前にチームに伝えることはできなかったのだろうか? スキル・シマノはファンヒュメルだけでなくチーム全員の力を使って、ひたむきにゴールをめざした。その努力が無駄になるのはどうなのか?
チーフコミッセールと監督との間で激しい協議が続いたが、ファンヒュメルは「Is this true?」とだけ質問し、コミッセールが深く頷いたところで静かに会場を去った。
今日のステージ優勝者は、繰り上がりでアレクシィ・マルコフ(ロシア、ロシアナショナルチーム)。土井雪広(スキル・シマノ)は総合順位を8位に落としたが、総合2位〜5位がタイム差2秒以内という接戦になってきている。また山岳賞やチーム順位もまだ逆転があり得る。
最終ステージは今大会最長距離の222.5kmで開催される予定。後半にかけて3つのスプリントポイントを通過すると2つの山岳ポイントが用意されるレイアウトだ。多くのチームの思惑がぶつかり合いレースは積極的に動き、愛三工業レーシングチームも見せ場を作ってくれるだろう。そして第8ステージで悔しい思いをしたスキル・シマノも雪辱に燃えて走るハズだ。いいレースを期待したい。
ツアー・オブ・ハイナン2010第8ステージ結果
1位 アレクシィ・マルコフ(ロシア、ロシア・ナショナルチーム) 4h35'37"
2位 チャールス・ハフ(アメリカ、ジェリーベリー・サイクリング)
3位 イヴァン・コヴァレフ(ロシア、ロシア・ナショナルチーム)
15位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
22位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
25位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)
39位 土井雪広(スキル・シマノ)
63位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
91位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) +17"
個人総合成績
1位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) 21h32'57"
2位 ジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット) +19"
3位 アレクシィ・マルコフ(ロシア、ロシア・ナショナルチーム) +20"
8位 土井雪広(スキル・シマノ) +27"
13位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム) +33"
18位 盛一大(愛三工業レーシングチーム) +42"
29位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) +48"
47位 福田真平(愛三工業レーシングチーム) +3'02"
76位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) +4'16"
アジア最高位
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
ポイント賞
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
山岳賞
アルカイス・ドゥーラン(スペイン、フットオン・セルベット)
text&photo:Sonoko Tanaka
フォトギャラリー