10月16日(土)、いよいよヨーロッパ最終戦ジロ・ディ・ロンバルディア(UCIヒストリカル)が開催される。開催104回目を迎える今年、「落ち葉のクラシック」と呼ばれる伝統の一戦はミラノをスタート。厳しい上りも追加され、難易度が増した。シーズン最後のビッグタイトルを獲得するのは誰だ?

スタート地点がミラノに変更 「ソルマーノ」が新登場

北イタリアのコモ湖畔を駆け抜ける北イタリアのコモ湖畔を駆け抜ける photo:Cor Vos今年で開催104回目を迎えるジロ・ディ・ロンバルディア。第1回大会が開催されたのは1905年のこと。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント」と称される伝統の一戦だ。

ヨーロッパのレースシーズン最終戦として、例年10月中旬に開催されており、秋色に染まったイタリア北部を駆け抜けることから「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」とも呼ばれている。

ジロ・ディ・ロンバルディア2010コースマップジロ・ディ・ロンバルディア2010コースマップ image:RCS Sportレースの舞台となるのはレース名の通り、イタリア北部のロンバルディア州。今年は26年ぶりにスタート地点がヴァレーゼから大都市ミラノに変更。それに伴ってコース全長が242kmから260kmに延長された。

ミラノをスタートした一行は、国際的なリゾート地として知られるコモ湖を時計回りにぐるっと一周。途中いくつもの峠を越え、平坦なコモ湖畔を駆け抜ける。標高500m〜1100mクラスの峠が連続するため、上りをこなせる登坂力が優勝者の必須条件だ。

レースが大きく動くのが、ラスト66km地点から始まる「マドンナ・デル・ギザッロ(標高754m)」の上りだ。サイクリストの聖地として知られるマドンナ・デル・ギザッロ教会に向かって、コモ湖畔から8.6kmかけて高低差511mを駆け上がる。最大勾配14%のこの上りをクリアするとゴールまで57km。ここからレースは激しさを増して行く。

ジロ・ディ・ロンバルディア2010コースプロフィールジロ・ディ・ロンバルディア2010コースプロフィール image:RCS Sport例年はギザッロ通過後、しばらく距離を置いて「チヴィリオ(標高613m)」の上りに突入した。しかし今年はゴール地点コモへのアプローチ方法が異なる。今年はギザッロ通過後、「チヴィリオ」には向かわず、西に針路を取って「コルマ・ディ・ソルマーノ(標高1124m)」を目指す。

1960年代に名物峠として登場した「コルマ・ディ・ソルマーノ」は、登坂距離9.4km・標高差630mの本格的な上り。「チヴィリオ」よりも難易度が高いのは明らかだ。なお「コルマ・ディ・ソルマーノ」に至る上りの中には「ムーロ・ディ・ソルマーノ(ソルマーノの壁)」と呼ばれる最大勾配25%の激坂も存在するが、今回レース主催者はこの激坂を回避し、平均勾配6〜8%ほどの上りを選択した。

この「コルマ・ディ・ソルマーノ」を越えると標高差900mのテクニカルなダウンヒル。コモ湖沿いの平坦路を経て、ゴール5km手前で「サンフェルモ・デッラ・バッターリア(標高397m)」にアタック。この上りは登坂距離は短いが、道が細く、勾配はキツい。前へ前へと積極的な走りを見せない限り、集団後方に埋もれて勝機を失ってしまう。

レース終盤はテクニカルな下りが連続するため、ダウンヒルテクニックに長けた選手が下りでリードを奪う可能性もある。例年同様、今年もレース終盤は慌ただしい展開が繰り広げられそうだ。

好調ジルベールの連覇を阻止するのは誰だ?

直前のジロ・デル・ピエモンテで大会連覇を達成したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)直前のジロ・デル・ピエモンテで大会連覇を達成したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Riccardo Scanferlaシーズン最終戦だけに、選手たちのコンディションには大きな差がある。どれだけ名の通った選手でも、すでにコンディションが低迷している場合もある。

昨年のロンバルディアは、絶好調フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)の独り舞台だった。終盤の上りでサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)と飛び出し、最後は悠々とスプリント勝利を収めたジルベール。今年も波に乗っている。

新旧世界チャンピオン、トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)とカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が握手新旧世界チャンピオン、トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)とカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が握手 photo:Riccardo Scanferlaロード世界選手権とパリ〜トゥールでは思うような結果を残せなかったが、ジルベールは直前のジロ・デル・ピエモンテで優勝。他の選手たちがシーズン終了に向けてコンディションの“貯金”を切り崩しながら走っている中、ジルベールだけが調子を上げ続けている感がある。今年は優勝候補の筆頭だ。

ジルベールの連覇に待ったをかけるのが、昨年アルカンシェルを着ながらジルベールをアシストしたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)だ。今年エヴァンスはライバルとしてジルベールを攻撃する。コースの難易度が上がったことはエヴァンスに有利に働くはずだ。

ジャパンカップ出場予定のダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)ジャパンカップ出場予定のダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ) photo:Riccardo Scanferlaツール・ド・フランス総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク)とロード世界選手権2位のマッティ・ブレシェル(デンマーク)、そしてジロ・デッレミリアで健闘したヤコブ・フグルサング(デンマーク)擁するサクソバンクも侮れない。アンディはラストレースでサクソバンクに置き土産を残すことが出来るか?

昨年スプリントで敗れたサンチェスは、自身初のモニュメント制覇を目指す。得意のダウンヒルでレースをかき乱すはずだ。

シーズン終盤にかけてコンディションを維持しているヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)シーズン終盤にかけてコンディションを維持しているヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Riccardo Scanferlaジャパンカップに出場予定のダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)も、シーズン終盤にかけて好調を維持している選手の一人。他にもアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)らが終盤の勝負どころで動いてくるだろう。

地元イタリア勢としてはヴィンチェンツォ・ニーバリ(リクイガス)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ISD・ネーリ)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)らに注目したい。ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者ニーバリのチームメイト、ペーター・サガン(スロバキア)はダークホースとして危険な臭いを醸し出す。

そして今大会には2週間前に世界チャンピオンに輝いたばかりのトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)が出場。コース的にはフースホフト向きではないが、真新しいアルカンシェルに身を包んだフースホフトが晩秋の北イタリアを駆ける。

ジロ・ディ・ロンバルディア歴代優勝者
2009年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)
2008年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2007年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ミケーレ・バルトリ(イタリア)
2002年 ミケーレ・バルトリ(イタリア)
2001年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2000年 ライモンダス・ルムシャス(リトアニア)
1999年 ミルコ・チェレスティーノ(イタリア)
1998年 オスカル・カーメンツィント(スイス)

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla

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