2010/10/15(金) - 13:30
10月16日(土)、いよいよヨーロッパ最終戦ジロ・ディ・ロンバルディア(UCIヒストリカル)が開催される。開催104回目を迎える今年、「落ち葉のクラシック」と呼ばれる伝統の一戦はミラノをスタート。厳しい上りも追加され、難易度が増した。シーズン最後のビッグタイトルを獲得するのは誰だ?
スタート地点がミラノに変更 「ソルマーノ」が新登場
今年で開催104回目を迎えるジロ・ディ・ロンバルディア。第1回大会が開催されたのは1905年のこと。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント」と称される伝統の一戦だ。
ヨーロッパのレースシーズン最終戦として、例年10月中旬に開催されており、秋色に染まったイタリア北部を駆け抜けることから「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」とも呼ばれている。
レースの舞台となるのはレース名の通り、イタリア北部のロンバルディア州。今年は26年ぶりにスタート地点がヴァレーゼから大都市ミラノに変更。それに伴ってコース全長が242kmから260kmに延長された。
ミラノをスタートした一行は、国際的なリゾート地として知られるコモ湖を時計回りにぐるっと一周。途中いくつもの峠を越え、平坦なコモ湖畔を駆け抜ける。標高500m〜1100mクラスの峠が連続するため、上りをこなせる登坂力が優勝者の必須条件だ。
レースが大きく動くのが、ラスト66km地点から始まる「マドンナ・デル・ギザッロ(標高754m)」の上りだ。サイクリストの聖地として知られるマドンナ・デル・ギザッロ教会に向かって、コモ湖畔から8.6kmかけて高低差511mを駆け上がる。最大勾配14%のこの上りをクリアするとゴールまで57km。ここからレースは激しさを増して行く。
例年はギザッロ通過後、しばらく距離を置いて「チヴィリオ(標高613m)」の上りに突入した。しかし今年はゴール地点コモへのアプローチ方法が異なる。今年はギザッロ通過後、「チヴィリオ」には向かわず、西に針路を取って「コルマ・ディ・ソルマーノ(標高1124m)」を目指す。
1960年代に名物峠として登場した「コルマ・ディ・ソルマーノ」は、登坂距離9.4km・標高差630mの本格的な上り。「チヴィリオ」よりも難易度が高いのは明らかだ。なお「コルマ・ディ・ソルマーノ」に至る上りの中には「ムーロ・ディ・ソルマーノ(ソルマーノの壁)」と呼ばれる最大勾配25%の激坂も存在するが、今回レース主催者はこの激坂を回避し、平均勾配6〜8%ほどの上りを選択した。
この「コルマ・ディ・ソルマーノ」を越えると標高差900mのテクニカルなダウンヒル。コモ湖沿いの平坦路を経て、ゴール5km手前で「サンフェルモ・デッラ・バッターリア(標高397m)」にアタック。この上りは登坂距離は短いが、道が細く、勾配はキツい。前へ前へと積極的な走りを見せない限り、集団後方に埋もれて勝機を失ってしまう。
レース終盤はテクニカルな下りが連続するため、ダウンヒルテクニックに長けた選手が下りでリードを奪う可能性もある。例年同様、今年もレース終盤は慌ただしい展開が繰り広げられそうだ。
好調ジルベールの連覇を阻止するのは誰だ?
シーズン最終戦だけに、選手たちのコンディションには大きな差がある。どれだけ名の通った選手でも、すでにコンディションが低迷している場合もある。
昨年のロンバルディアは、絶好調フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)の独り舞台だった。終盤の上りでサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)と飛び出し、最後は悠々とスプリント勝利を収めたジルベール。今年も波に乗っている。
ロード世界選手権とパリ〜トゥールでは思うような結果を残せなかったが、ジルベールは直前のジロ・デル・ピエモンテで優勝。他の選手たちがシーズン終了に向けてコンディションの“貯金”を切り崩しながら走っている中、ジルベールだけが調子を上げ続けている感がある。今年は優勝候補の筆頭だ。
ジルベールの連覇に待ったをかけるのが、昨年アルカンシェルを着ながらジルベールをアシストしたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)だ。今年エヴァンスはライバルとしてジルベールを攻撃する。コースの難易度が上がったことはエヴァンスに有利に働くはずだ。
ツール・ド・フランス総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク)とロード世界選手権2位のマッティ・ブレシェル(デンマーク)、そしてジロ・デッレミリアで健闘したヤコブ・フグルサング(デンマーク)擁するサクソバンクも侮れない。アンディはラストレースでサクソバンクに置き土産を残すことが出来るか?
昨年スプリントで敗れたサンチェスは、自身初のモニュメント制覇を目指す。得意のダウンヒルでレースをかき乱すはずだ。
ジャパンカップに出場予定のダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)も、シーズン終盤にかけて好調を維持している選手の一人。他にもアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)らが終盤の勝負どころで動いてくるだろう。
地元イタリア勢としてはヴィンチェンツォ・ニーバリ(リクイガス)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ISD・ネーリ)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)らに注目したい。ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者ニーバリのチームメイト、ペーター・サガン(スロバキア)はダークホースとして危険な臭いを醸し出す。
そして今大会には2週間前に世界チャンピオンに輝いたばかりのトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)が出場。コース的にはフースホフト向きではないが、真新しいアルカンシェルに身を包んだフースホフトが晩秋の北イタリアを駆ける。
ジロ・ディ・ロンバルディア歴代優勝者
2009年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)
2008年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2007年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ミケーレ・バルトリ(イタリア)
2002年 ミケーレ・バルトリ(イタリア)
2001年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2000年 ライモンダス・ルムシャス(リトアニア)
1999年 ミルコ・チェレスティーノ(イタリア)
1998年 オスカル・カーメンツィント(スイス)
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla
スタート地点がミラノに変更 「ソルマーノ」が新登場
今年で開催104回目を迎えるジロ・ディ・ロンバルディア。第1回大会が開催されたのは1905年のこと。ミラノ〜サンレモ(1907年〜)、ロンド・ファン・フラーンデレン(1913年〜)、パリ〜ルーベ(1896年〜)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1892年〜)と並んで「モニュメント」と称される伝統の一戦だ。
ヨーロッパのレースシーズン最終戦として、例年10月中旬に開催されており、秋色に染まったイタリア北部を駆け抜けることから「落ち葉のクラシック(クラッシカ・デッレ・フォリエ・モルテ)」とも呼ばれている。
レースの舞台となるのはレース名の通り、イタリア北部のロンバルディア州。今年は26年ぶりにスタート地点がヴァレーゼから大都市ミラノに変更。それに伴ってコース全長が242kmから260kmに延長された。
ミラノをスタートした一行は、国際的なリゾート地として知られるコモ湖を時計回りにぐるっと一周。途中いくつもの峠を越え、平坦なコモ湖畔を駆け抜ける。標高500m〜1100mクラスの峠が連続するため、上りをこなせる登坂力が優勝者の必須条件だ。
レースが大きく動くのが、ラスト66km地点から始まる「マドンナ・デル・ギザッロ(標高754m)」の上りだ。サイクリストの聖地として知られるマドンナ・デル・ギザッロ教会に向かって、コモ湖畔から8.6kmかけて高低差511mを駆け上がる。最大勾配14%のこの上りをクリアするとゴールまで57km。ここからレースは激しさを増して行く。
例年はギザッロ通過後、しばらく距離を置いて「チヴィリオ(標高613m)」の上りに突入した。しかし今年はゴール地点コモへのアプローチ方法が異なる。今年はギザッロ通過後、「チヴィリオ」には向かわず、西に針路を取って「コルマ・ディ・ソルマーノ(標高1124m)」を目指す。
1960年代に名物峠として登場した「コルマ・ディ・ソルマーノ」は、登坂距離9.4km・標高差630mの本格的な上り。「チヴィリオ」よりも難易度が高いのは明らかだ。なお「コルマ・ディ・ソルマーノ」に至る上りの中には「ムーロ・ディ・ソルマーノ(ソルマーノの壁)」と呼ばれる最大勾配25%の激坂も存在するが、今回レース主催者はこの激坂を回避し、平均勾配6〜8%ほどの上りを選択した。
この「コルマ・ディ・ソルマーノ」を越えると標高差900mのテクニカルなダウンヒル。コモ湖沿いの平坦路を経て、ゴール5km手前で「サンフェルモ・デッラ・バッターリア(標高397m)」にアタック。この上りは登坂距離は短いが、道が細く、勾配はキツい。前へ前へと積極的な走りを見せない限り、集団後方に埋もれて勝機を失ってしまう。
レース終盤はテクニカルな下りが連続するため、ダウンヒルテクニックに長けた選手が下りでリードを奪う可能性もある。例年同様、今年もレース終盤は慌ただしい展開が繰り広げられそうだ。
好調ジルベールの連覇を阻止するのは誰だ?
シーズン最終戦だけに、選手たちのコンディションには大きな差がある。どれだけ名の通った選手でも、すでにコンディションが低迷している場合もある。
昨年のロンバルディアは、絶好調フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)の独り舞台だった。終盤の上りでサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)と飛び出し、最後は悠々とスプリント勝利を収めたジルベール。今年も波に乗っている。
ロード世界選手権とパリ〜トゥールでは思うような結果を残せなかったが、ジルベールは直前のジロ・デル・ピエモンテで優勝。他の選手たちがシーズン終了に向けてコンディションの“貯金”を切り崩しながら走っている中、ジルベールだけが調子を上げ続けている感がある。今年は優勝候補の筆頭だ。
ジルベールの連覇に待ったをかけるのが、昨年アルカンシェルを着ながらジルベールをアシストしたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)だ。今年エヴァンスはライバルとしてジルベールを攻撃する。コースの難易度が上がったことはエヴァンスに有利に働くはずだ。
ツール・ド・フランス総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク)とロード世界選手権2位のマッティ・ブレシェル(デンマーク)、そしてジロ・デッレミリアで健闘したヤコブ・フグルサング(デンマーク)擁するサクソバンクも侮れない。アンディはラストレースでサクソバンクに置き土産を残すことが出来るか?
昨年スプリントで敗れたサンチェスは、自身初のモニュメント制覇を目指す。得意のダウンヒルでレースをかき乱すはずだ。
ジャパンカップに出場予定のダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)も、シーズン終盤にかけて好調を維持している選手の一人。他にもアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)らが終盤の勝負どころで動いてくるだろう。
地元イタリア勢としてはヴィンチェンツォ・ニーバリ(リクイガス)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ISD・ネーリ)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)らに注目したい。ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者ニーバリのチームメイト、ペーター・サガン(スロバキア)はダークホースとして危険な臭いを醸し出す。
そして今大会には2週間前に世界チャンピオンに輝いたばかりのトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)が出場。コース的にはフースホフト向きではないが、真新しいアルカンシェルに身を包んだフースホフトが晩秋の北イタリアを駆ける。
ジロ・ディ・ロンバルディア歴代優勝者
2009年 フィリップ・ジルベール(ベルギー)
2008年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2007年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ミケーレ・バルトリ(イタリア)
2002年 ミケーレ・バルトリ(イタリア)
2001年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2000年 ライモンダス・ルムシャス(リトアニア)
1999年 ミルコ・チェレスティーノ(イタリア)
1998年 オスカル・カーメンツィント(スイス)
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla
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