2010/10/11(月) - 09:32
2010年10月10日、第104回パリ〜トゥール(UCI1.HC)が開催され、混戦の集団スプリントを制したオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)が初優勝を飾った。エーススプリンターとしてレースに挑んだ新城幸也(Bboxブイグテレコム)は5位に入る大活躍。別府史之(レディオシャック)は31位でレースを終えた。
今年で開催104回目を迎える伝統のパリ〜トゥール。秋色に染まるロワール渓谷を駆け抜け、終盤の細かいアップダウンを経てトゥール中心部のグラモン大通りにゴールする。名物グラモン大通りはトラム敷設工事が始まるため、今年で見納めだ。
例年とは異なる点は3つ。1つ目はロード世界選手権の1週間後に開催されるということ。今年の世界選は、オーストラリア開催という事情を考慮して例年よりも1週間遅く開催。そのためオーストラリアから帰国した選手たちは時差ボケが完全に取れない中での参戦となった。
2つ目はスタート地点がシャルトルからラ・ループに変更されたこと。そして3つ目は、ゴール前のレイアウトが変更されたこと。ラスト5km地点の「ポン・ヴォラン」が取り払われ、代わってラスト12km地点に「ボーソレイユ」が追加。上りの難易度が落ち、少しスプリンター向きのコースに生まれ変わった。
レースは追い風の影響で序盤からかなりハイスピードな展開。37km地点でフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)やアレクセイ・サラモティンス(ラトビア、チームHTC・コロンビア)、トラヴィス・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)を含む逃げグループが形成された。
233kmのロングレースだが、逃げに有利な追い風コンディションを考慮して、メイン集団は4分以上のタイム差を与えない。横風区間でソール・ソジャサンがペースアップを図ると、一時的にダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)らが後方集団に取り残されるシーンも見られた。
メイン集団をコントロールしたのはオメガファーマ・ロット、ラボバンク、そしてレディオシャック。タイム差2分ほどの膠着状態が続いたが、ゴール30km手前の「クロシュ」の上りでゴールに向けた動きが始まった。
樹々に覆われた短い上りで先頭グループからサイモン・ゲスク(ドイツ、スキル・シマノ)とニコラス・マース(ベルギー、クイックステップ)がアタックを仕掛け、遅れてフレチャとサラモティンスが合流。
メイン集団ではフレデリック・ゲドン(フランス、フランセーズデジュー)やユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)らが動きを見せるも、ラボバンク勢がこれを封じ込める。
続いてジョフロワ・ルカトル(フランス、レディオシャック)やジェレミー・ロワ(フランス、フランセーズデジュー)がメイン集団を飛び出して4名の先頭グループに合流。ここから「ボーソレイユ」の上りでルカトルが飛び出し、ゴールまで12kmを残して独走を開始した。
30秒のリードを築いて独走するルカトル。一方、メイン集団では続く「レパン」の上りでフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)がアタックを仕掛けたが、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)がマークに入っていることを知るや否やペースを弱める。
結局メイン集団では決定的なアタックが生まれないまま次の「プティ・パ・ド・アーヌ」をクリアし、20秒先のルカトルを追ってペースを上げた。
決死の形相で逃げ続けるルカトル。ラスト3kmを切り、ルカトルが先頭でグラモン大通りにやってきた。しかしその後方からは80名近い大集団が迫り来る。ラスト1kmでルカトルとメイン集団のタイム差は10秒。その健闘虚しく、ルカトルはラスト400mで吸収された。
オメガファーマ・ロットとヴァカンソレイユが主導権を争いながらの集団スプリント。ランプレがこれに加わり、混戦状態を脱してアンジェロ・フルラン(イタリア、ランプレ)が先頭に。しかし勢い良くフルランと抜き去ったフレイレが先頭でゴールを駆け抜けた。
フレイレとフルランの後ろでゴールしたのはヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)。その僅かに後方で、悔しい表情の新城幸也が5位でゴールした。
ロード世界選手権で史上初の4度目の優勝を目前にしながらも、スプリントで敗れて6位に終わったフレイレ。スペイン人選手として始めてパリ〜トゥール制覇を果たした。
「スプリントではマキュアンの後ろに付けていたんだ。でも彼がジグザグに蛇行したから、落車しかけてスローダウンした。今日はラスト200mでスプリント開始。スプリントでは一つにミスも許されない」。熟練のスプリントで大会初制覇を果たしたフレイレはそう振り返る。
「長年パリ〜トゥールを制したいと思っていた。これまで逃げやアタッカーにチャンスを奪われてきた。でも今回はメイン集団に残ってチャンスを掴めたんだ。本当に良い“旅”だった」。これまでミラノ〜サンレモやヘント〜ウェベルヘムを制しているフレイレが、もう一つビッグな勝利を戦歴に加えた。
この日の平均スピードは47.7km/h。強力な逃げと追い風の影響で、歴代2位のスピードを記録した。そんな中で、Bboxブイグテレコムのエーススプリンターを託された新城幸也は5位という好成績をマーク。もちろん日本人史上最高位。ヨーロッパ最終戦を良いカタチで終えた。次戦は2週間後のジャパンカップだ。
グラモン大通りで集団前方に姿を見せた別府史之はスプリントに絡めず31位。しかし本人は自分の走りに好感触を得ている様子。「今日のレースはチームメイトの仕事が主だったけど、とっても楽なレース展開だったから変な感じ。数年前の情熱大陸の時とは大違い。自分の仕事をしっかりこなして今日を終えた」とTwitterで語っている。
選手コメントはレース公式サイトより。
パリ〜トゥール2010結果
1位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク) 4h52'54"
2位 アンジェロ・フルラン(イタリア、ランプレ)
3位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
4位 クラース・ロデウィック(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)
5位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
6位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ)
7位 ヨアン・オフルド(フランス、フランセーズデジュー)
8位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、クイックステップ)
9位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームHTC・コロンビア)
10位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、フランセーズデジュー)
31位 別府史之(日本、レディオシャック)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
今年で開催104回目を迎える伝統のパリ〜トゥール。秋色に染まるロワール渓谷を駆け抜け、終盤の細かいアップダウンを経てトゥール中心部のグラモン大通りにゴールする。名物グラモン大通りはトラム敷設工事が始まるため、今年で見納めだ。
例年とは異なる点は3つ。1つ目はロード世界選手権の1週間後に開催されるということ。今年の世界選は、オーストラリア開催という事情を考慮して例年よりも1週間遅く開催。そのためオーストラリアから帰国した選手たちは時差ボケが完全に取れない中での参戦となった。
2つ目はスタート地点がシャルトルからラ・ループに変更されたこと。そして3つ目は、ゴール前のレイアウトが変更されたこと。ラスト5km地点の「ポン・ヴォラン」が取り払われ、代わってラスト12km地点に「ボーソレイユ」が追加。上りの難易度が落ち、少しスプリンター向きのコースに生まれ変わった。
レースは追い風の影響で序盤からかなりハイスピードな展開。37km地点でフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)やアレクセイ・サラモティンス(ラトビア、チームHTC・コロンビア)、トラヴィス・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)を含む逃げグループが形成された。
233kmのロングレースだが、逃げに有利な追い風コンディションを考慮して、メイン集団は4分以上のタイム差を与えない。横風区間でソール・ソジャサンがペースアップを図ると、一時的にダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)らが後方集団に取り残されるシーンも見られた。
メイン集団をコントロールしたのはオメガファーマ・ロット、ラボバンク、そしてレディオシャック。タイム差2分ほどの膠着状態が続いたが、ゴール30km手前の「クロシュ」の上りでゴールに向けた動きが始まった。
樹々に覆われた短い上りで先頭グループからサイモン・ゲスク(ドイツ、スキル・シマノ)とニコラス・マース(ベルギー、クイックステップ)がアタックを仕掛け、遅れてフレチャとサラモティンスが合流。
メイン集団ではフレデリック・ゲドン(フランス、フランセーズデジュー)やユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)らが動きを見せるも、ラボバンク勢がこれを封じ込める。
続いてジョフロワ・ルカトル(フランス、レディオシャック)やジェレミー・ロワ(フランス、フランセーズデジュー)がメイン集団を飛び出して4名の先頭グループに合流。ここから「ボーソレイユ」の上りでルカトルが飛び出し、ゴールまで12kmを残して独走を開始した。
30秒のリードを築いて独走するルカトル。一方、メイン集団では続く「レパン」の上りでフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)がアタックを仕掛けたが、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)がマークに入っていることを知るや否やペースを弱める。
結局メイン集団では決定的なアタックが生まれないまま次の「プティ・パ・ド・アーヌ」をクリアし、20秒先のルカトルを追ってペースを上げた。
決死の形相で逃げ続けるルカトル。ラスト3kmを切り、ルカトルが先頭でグラモン大通りにやってきた。しかしその後方からは80名近い大集団が迫り来る。ラスト1kmでルカトルとメイン集団のタイム差は10秒。その健闘虚しく、ルカトルはラスト400mで吸収された。
オメガファーマ・ロットとヴァカンソレイユが主導権を争いながらの集団スプリント。ランプレがこれに加わり、混戦状態を脱してアンジェロ・フルラン(イタリア、ランプレ)が先頭に。しかし勢い良くフルランと抜き去ったフレイレが先頭でゴールを駆け抜けた。
フレイレとフルランの後ろでゴールしたのはヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)。その僅かに後方で、悔しい表情の新城幸也が5位でゴールした。
ロード世界選手権で史上初の4度目の優勝を目前にしながらも、スプリントで敗れて6位に終わったフレイレ。スペイン人選手として始めてパリ〜トゥール制覇を果たした。
「スプリントではマキュアンの後ろに付けていたんだ。でも彼がジグザグに蛇行したから、落車しかけてスローダウンした。今日はラスト200mでスプリント開始。スプリントでは一つにミスも許されない」。熟練のスプリントで大会初制覇を果たしたフレイレはそう振り返る。
「長年パリ〜トゥールを制したいと思っていた。これまで逃げやアタッカーにチャンスを奪われてきた。でも今回はメイン集団に残ってチャンスを掴めたんだ。本当に良い“旅”だった」。これまでミラノ〜サンレモやヘント〜ウェベルヘムを制しているフレイレが、もう一つビッグな勝利を戦歴に加えた。
この日の平均スピードは47.7km/h。強力な逃げと追い風の影響で、歴代2位のスピードを記録した。そんな中で、Bboxブイグテレコムのエーススプリンターを託された新城幸也は5位という好成績をマーク。もちろん日本人史上最高位。ヨーロッパ最終戦を良いカタチで終えた。次戦は2週間後のジャパンカップだ。
グラモン大通りで集団前方に姿を見せた別府史之はスプリントに絡めず31位。しかし本人は自分の走りに好感触を得ている様子。「今日のレースはチームメイトの仕事が主だったけど、とっても楽なレース展開だったから変な感じ。数年前の情熱大陸の時とは大違い。自分の仕事をしっかりこなして今日を終えた」とTwitterで語っている。
選手コメントはレース公式サイトより。
パリ〜トゥール2010結果
1位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク) 4h52'54"
2位 アンジェロ・フルラン(イタリア、ランプレ)
3位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
4位 クラース・ロデウィック(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)
5位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
6位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ)
7位 ヨアン・オフルド(フランス、フランセーズデジュー)
8位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、クイックステップ)
9位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームHTC・コロンビア)
10位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、フランセーズデジュー)
31位 別府史之(日本、レディオシャック)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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