2010年9月10日、カナダで第1回グランプリ・シクリスト・ド・ケベック(UCIプロツアー)が開催され、ラスト1.2kmで集団から抜け出したトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)が優勝。初代チャンピオンに輝いた。チームメイトの新城幸也は29位だった。

ケベックの代名詞シャトー・フロントナックを背にケベックの代名詞シャトー・フロントナックを背に photo:protourquebecmontreal.comロードレースの国際化を推し進めるUCI(国際自転車競技連合)は、オーストラリアのツアー・ダウンアンダーに続いて、プロツアーレースを北米に持ち込んだ。その第1弾が、9月10日にカナダのケベックで開催されたグランプリ・シクリスト・ド・ケベック(GPケベック)だ。

出場メンバーはリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)という錚々たる顔ぶれ。

ケベック歴史地区として世界遺産に登録された旧市街ケベック歴史地区として世界遺産に登録された旧市街 photo:protourquebecmontreal.comBboxブイグテレコムからはフランスチャンピオンのヴォクレールの他、新城幸也も参戦。ほとんどの選手が2日後に近郊のモントリオール(仏名モンレアル)で開催されるグランプリ・シクリスト・ド・モンレアル(GPモンレアル)にも出場する。

コースは世界遺産に指定された歴史地区とバトルフィールド・パークに設置された12.6kmの周回。歴史地区には勾配のある上りが2カ所設定されており、1周の標高差は186m。ここを15周するため、コース全長は189km、レースの獲得標高差は2790mに達する。ゴール前は上り基調で、ラスト1.2kmから標高差44mを駆け上がる。

山岳ポイントを連取するヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)山岳ポイントを連取するヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク) photo:protourquebecmontreal.comレースは1周目からヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)を含む7名の先頭グループが形成され、これに遅れてヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)やユルゲン・ファンデワール(ベルギー、クイックステップ)、ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス)ら6名が合流。この13名は最大4分のリードを得て逃げ続けた。

先頭グループのフグルサングが毎周山岳ポイントを獲得して山岳賞トップに。メイン集団はエウスカルテルとチームスカイ、ガーミン・トランジションズが牽引し、先頭グループとのタイム差をコントロールした。

逃げグループ内でケベック旧市街地を抜けるセバスティアン・テュルゴー(フランス、Bboxブイグテレコム)やヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)逃げグループ内でケベック旧市街地を抜けるセバスティアン・テュルゴー(フランス、Bboxブイグテレコム)やヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク) photo:protourquebecmontreal.com周回を重ねる毎に人数を減らす先頭グループ。ゴールまで3周を残した13周目でリードは1分。ちょうどその頃、メイン集団では落車が発生し、ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)が巻き込まれてしまう。

先頭ではフグルサングが諦めずに逃げ続けたが、メイン集団の追撃を振り切ることが出来ない。するとゴールまで16kmを残した「コート・ド・ラ・モンターニュ」の上りで本命選手たちが動いた。

最大勾配13%の「コート・ド・ラ・モンターニュ」最大勾配13%の「コート・ド・ラ・モンターニュ」 photo:protourquebecmontreal.com長さ375m・平均勾配10%の上りで地元カナダのライダー・ヘジダル(ガーミン・トランジションズ)がダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)と一緒に飛び出し、これにマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)とファビアン・ウェーグマン(ドイツ、チームミルラム)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が合流。5名の先頭グループが形成された。

最大20秒のリードを得て、ハイスピードで最終周回を駆け抜けた先頭5名。クネゴとヘジダルが懸命に上りでペースを上げ、逃げ切りを目指す。しかしレディオシャックやチームスカイ、エウスカルテル、カチューシャが牽引するメイン集団がハイスピードで迫った。

セントローレンス川沿いの平坦区間セントローレンス川沿いの平坦区間 photo:protourquebecmontreal.com結局クネゴとヘジダルらはゴール1.5km手前の上りで吸収。20名ほどに縮小した集団によるスプリント勝負が予想されたが、歴史地区の曲がりくねったコースが集団の隊列を乱す。その隙を突いて、フランスチャンピオンのヴォクレールが飛び出した。

先頭でラスト1kmのアーチを通過し、ダンシングで緩斜面を駆け上がるヴォクレール。メイン集団は牽制の影響でペースが上がらず、ヴォクレールのリードが広がって行く。最終ストレートに入ってボアッソンらがスプリントを開始したが時すでに遅し。何度も後方を確認したヴォクレールが両手を広げてゴールに飛び込んだ。

地元カナダ出身選手として絶大な注目を集めたライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)地元カナダ出身選手として絶大な注目を集めたライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) photo:protourquebecmontreal.com6月のフランス選手権ロードレースで優勝し、7月のツール・ド・フランスでステージ優勝を飾ったヴォクレール。フランス語を公用語とするケベックで、フランスチャンピオンが栄冠に輝いた。

「トップ10に絡みたいと思っていた。まさか勝利するとは思っていなかったよ。ヘジダルやヘーシンクのように、自分よりもっと強い選手が大勢いたけど、ロードレースは強いだけじゃ勝てない。タイミングが大事なんだ」。

ラスト1200mで抜け出したトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)がスプリンターを振り切って勝利ラスト1200mで抜け出したトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)がスプリンターを振り切って勝利 photo:protourquebecmontreal.comヴォクレールはこれが今シーズン3勝目。Bboxブイグテレコムは今シーズン18勝目。プロコンチネンタルチームながら、並みいるプロツアーチームを打ち負かした意味は大きい。プロツアーライセンス獲得に向けて、UCIに好印象を与えたはずだ。

この日は172名がスタートし、完走者は110名。常にメイン集団内でレースを展開したユキヤは、最終周回の上りで脱落しながらも、29秒遅れの後続集団の先頭でゴールしている。ユキヤは2日後のGPモンレアルにも出場する予定だ。

レース展開はレース公式サイトとストリーミング映像、選手コメントはチーム公式サイトより。


グランプリ・シクリスト・ド・ケベック2010結果
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)    4h35'27"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)      +01"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
4位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)
5位 スタフ・シェイリンクス(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
6位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)
7位 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ、チームミルラム)
8位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームHTC・コロンビア)
9位 フランチェスコ・レーダ(イタリア、クイックステップ)
10位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)
29位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)             +29"

text:Kei Tsuji
photo:protourquebecmontreal.com

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