2010年8月6日、ツール・ド・ポローニュ(UCIプロツアー)第6ステージが行なわれ、6つの1級山岳が設定された厳しい山岳コースの終盤に飛び出したバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)が独走勝利。ステージ7位のダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)が総合首位を守った。

ツール・ド・ポローニュ2010第6ステージ・コースプロフィールツール・ド・ポローニュ2010第6ステージ・コースプロフィール image:www.tourdepologne.pl第6ステージは6つの1級山岳が設定された今大会最難関の山岳ステージ。距離も228.5kmと長く、しかも最後は頂上ゴールが設定されている。実質的に1級山岳を7回登坂。翌日の最終ステージの難易度が比較的低いため、この第6ステージで総合争いは決する。

この日のスタート地点はオシフィエンチム(ドイツ語名:アウシュヴィッツ)。そう、第2次世界大戦中にナチ政権がユダヤ人を始めとする多くの人々を収容し、大量虐殺を行なったホロコーストの象徴「アウシュヴィッツ強制収容所」の所在地だ。

選手たちは正式なスタート前に収容所の跡地を訪れ、1分間の黙祷を捧げた。更に出場34カ国の選手代表と各賞ジャージ着用者が白いバラを一輪ずつミュージアムに捧げるセレモニーも。もちろん日本からは別府史之(レディオシャック)がこのセレモニーに出席した。

34カ国の代表選手が白いバラを一輪ずつ捧げた34カ国の代表選手が白いバラを一輪ずつ捧げた photo:Riccardo Scanferla
アウシュヴィッツ収容所を見学するダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)アウシュヴィッツ収容所を見学するダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス) photo:Riccardo Scanferlaアウシュヴィッツ収容所を通過する選手たちアウシュヴィッツ収容所を通過する選手たち photo:Riccardo Scanferla


レースは山岳賞ジャージを着るジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)やマシュー・ヘイマン(オーストラリア、チームスカイ)ら5名が逃げる展開。遅れてアルベルト・ロサダ(スペイン、ケースデパーニュ)ら3名が追いつき、8名の逃げグループが形成された。

ガーミン・トランジションズがコントロールするメイン集団ガーミン・トランジションズがコントロールするメイン集団 photo:Cor Vos最大勾配が22%に達する1級山岳では歩いてバイクを押す選手も。逃げグループの中で最も積極的に動いたフーガーランドは3つの1級山岳を先頭で通過し、山岳賞ジャージ獲得を確実なものに。フーガーランドは中間スプリントでもポイントを稼ぎ、スプリント賞のトップに立っている。

結局逃げグループはゴールまで距離を残して吸収。ここからウラディミール・グセフ(ロシア、カチューシャ)らがアタックを仕掛け、総合7位のマレック・ルトキェビッチ(ポーランド、ポーランドBGZ)が独走。一時的にバーチャルリーダーに浮上したルトキェビッチだったが、最後の上りでメイン集団に飲み込まれた。

急勾配の1級山岳を上るジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)急勾配の1級山岳を上るジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ) photo:Cor Vosルトキェビッチの吸収後、すぐさまモレマがカウンターアタック。独走態勢を築いたモレマは、後続を寄せ付けない走りで頂上ゴールを駆け上がり、そのまま単独でゴールに飛び込んだ。

7秒遅れのステージ2位にはミハエル・アルバジーニ(スイス、チームHTC・コロンビア)。リーダージャージのダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)は9秒遅れのグループでゴールし、総合首位を守り切った。

頂上ゴールを制したバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)頂上ゴールを制したバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) photo:Riccardo Scanferlaヘーシンクに次ぐオールラウンダーとしてオランダの期待を集めるモレマは23歳。若手プロロード選手の登竜門として知られるツール・ド・ラヴニールで2007年に総合優勝を飾り、プロ1年目の2008年にはブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンで総合6位、ドイツツアーで総合7位。今年ジロ・デ・イタリアでグランツールデビューを飾り、チーム内トップの総合12位で完走。新人賞3位に入った。

「プロキャリア1勝目なので喜びも一入。今日の山岳はどれも勾配がきつかった。総合成績も関係していたので、最後まで力を抜けなかったよ。ジロでの経験が今の走りに活きていると思う。マーティンを逆転して総合優勝に輝くのは不可能だけど、結果にはとても満足しているよ(チーム公式サイト)」

別府史之(日本、レディオシャック)は9分12秒遅れのステージ62位別府史之(日本、レディオシャック)は9分12秒遅れのステージ62位 photo:Riccardo Scanferlaマーティンに次ぐ総合2位につけているのは、今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでスプリント勝利を飾ったグレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ)だ。ボーレはこの日もステージ3位に入る活躍で、アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)からポイント賞ジャージを奪うことに成功している。

この日、別府史之はトップから9分12秒遅れのステージ62位でゴール。総合では53位につけている。

レース内容はレース公式サイト、ならびにストリーミング映像より。


ツール・ド・ポローニュ2010第6ステージ結果
1位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)5h54'30"
2位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、チームHTC・コロンビア) +07"
3位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ)
4位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)
5位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック)+09"
6位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)
7位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)
8位 ラーシュペッテル・ノルダーグ(ノルウェー、チームスカイ)
9位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス)
10位 マレック・ルトキェビッチ(ポーランド、ポーランドBGZ)
62位 別府史之(日本、レディオシャック)             +9'12"

個人総合成績
1位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)26h46'50"
2位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ)               +08"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)+10"
4位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、チームHTC・コロンビア)+20"
5位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)+21"
6位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス)+26"
7位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)+28"
8位 マレック・ルトキェビッチ(ポーランド、ポーランドBGZ)+30"
9位 ディエゴ・ウリッジ(イタリア、ランプレ)
10位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)+33"

ポイント賞
グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ)

山岳賞
ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)

スプリント賞
ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ)

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla

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