青森県は下北半島と津軽半島に囲まれた陸奥湾をぐるり一周する「むついち」。その魅力を身近にする「むついちロゲイニングライド」を2日に渡って堪能してきたレポートをお届けします。



雄大な自然が広がる陸奥湾を自転車で巡る「むついち」を身近にする企画が始動している

5月で30℃を越える真夏日が珍しくなくなってきた2026年。もはや日本において自転車シーズンは良くて6月まで。9月ごろまでは冷房の効いた部屋でインドアライドにいそしみ、遅い秋の到来と共に再び走り出す、というのが健康で文化的な自転車生活ではないだろうか。

しかし、そうはいっても出来れば外を走りたいもの。夏休みやお盆の長期休暇を利用して、ツーリングに行きたい!という方はきっと多いはず。そんな方にぜひ、オススメしたいのが今回取材してきた「むついちロゲイニングライド」だ。

むつ湾フェリーの新造船「かけはし」

舞台となるのは本州最北端の青森県。北海道を支えるように突き出る下北半島と津軽半島に囲まれた陸奥湾をぐるり一周する「むついち」の魅力を分かりやすく伝えるべく企画されたサイクルロゲイニングイベントなのだ。

きっかけとなったのは、下北半島と津軽半島を結ぶむつ湾フェリーの新造船「かけはし」就航。陸路で繋がっているわけではないむついちにとって欠かせない存在がリニューアルし、より快適に楽しめるようになったのだ。

それでは実走レポートに入る前に、改めてむついちロゲイニングライドの概要を説明しよう。

むついちロゲイニングライドマップ (c)むついちアドベンチャートラベル推進協議会

陸奥湾を一周する220kmの中に設定された9つのチェックポイントを巡り、SNS(instagramもしくはfacebook)にハッシュタグ(#むついちロゲイニングライド)と共に投稿することで、むついち達成を証明するというイベントだ。

参加は無料となるが、事前エントリーフォームからの申し込みが必要となる。

完走後には、完走報告フォームにて、発送先の住所などを入力すれば、完走証と「むついち手ぬぐい」がプレゼントされる。

チェックポイントを回る順序やタイムスケジュールも自由で、脚力自慢であれば1日で回るも良し、1泊2日で巡るも良し、更に寄り道しつつもっと時間をかけて周っても問題ない。一度に全てを巡る必要も無く、何度かに分けて走ってもOK。

チェックポイントで写真を撮って、SNSにアップするだけ。完走したら、このむついち手ぬぐいがもらえます!

参加にあたって必要なものは少なく、自由に自分のペースで走ることが出来るロゲイニングライドだが、より深く楽しみたいという方のためにガイドツアーも用意されている。むついちで巡る地域への深い造詣とサイクリングガイドとして高いスキルを有するガイドが帯同することで、安心安全かつ、ただ一人で走るだけでは絶対に気づけないような地域の歴史や文化に触れることが出来るツアーだ。ツアーについて気になる方はオフィシャルページ下部のツアー一覧から

一点、気をつける必要があるのはむつ湾フェリーの運航時刻。1日2往復となっているため、出来るだけ待ち時間を少なく出来るタイミングで港に着けるようなスケジュールを組むのが良いだろう。運航情報はむつ湾フェリー公式サイトにて確認できる。

詳細はむついちロゲイニングライドオフィシャルページも確認してほしい。それでは、実走レポートをお届けしよう。

陸奥湾一周、220kmの旅へ!まずは世界遺産「三内丸山遺跡」をスタート

夜景が美しい青森ベイブリッジ

青森の夜に浮かび上がる青いピラミッド。観光物産館のアスパムなのだとか
迫るねぶた祭に備え、作業が進む



真夏日続く東京から北へ750km。関東近辺とは趣の異なる植生の山々を貫く青森道を走り抜け、車を降りると一際涼やかな空気に包まれる。最高に走りやすそうな気候にワクワクしつつ、初日は移動日ということで、青森市内に前泊。むついちロゲイニングライドの仕掛人である木谷さんの案内で、青森市内の山菜居酒屋で地元の山の幸を堪能する一夜を過ごし、220kmのライドへの英気を養う。

今回はフェリーのスケジュールもあり、陸奥湾を時計回りに巡るコースでむついちロゲイニングライドへと挑戦することに。陸奥湾の南側に位置する青森市をスタートし、1日目に津軽半島を走り切り、フェリーに乗って下北半島の大湊まで。2日目に下北半島を南下し、最後のチェックポイントの浅虫温泉に向かうというスケジュールだ。

縄文時代の生活を今に伝える三内丸山遺跡を出発

明くる朝、まず向かうのは青森市街地から6kmほど離れた「三内丸山遺跡」。2021年にはユネスコの世界遺産に「北海道・北東北の縄文遺跡群」として登録されたスポットが、むついちロゲイニングライドのチェックポイントになっている。

国内でも有数の巨大遺跡として知られる三内丸山遺跡で、今回のライドをアテンドしてくれるサイクリングガイドの江利山元気さんと合流。青森初のサイクリングガイドとして、数多くのガイド業務やイベントの主催・運営経験を有するプロガイドの江利山さん。

2日間のガイドを務めてくれた江利山さん。数多くのガイド業務やイベントの主催・運営経験を有するプロガイドだ

JCAやJCGAの公認サイクリングガイドの資格も保持しており、東北でのJCGA講座の講師を務めるなど、その実力は折り紙付きだ。もちろん今回も非常に安心して走れたことは先にお伝えしておきます!

今日はフェリーの出航時間というタイムリミットもあり、三内丸山遺跡を見学することは残念ながら出来なかったけれど、やはり青森に来たのであればぜひとも訪ねたいところ。むついちロゲイニングライド、1泊2日ではなくもっと余裕のある日程で走っても楽しめそうだ。

さて、ここから本格的なライドがスタート!交通量の多い幹線道路を避けつつ、地元ライダーのノウハウが光る走りやすいルートで青森市内を抜けていく。

一見何でもなさそうな道だが、実は線路跡なのだとか

津軽びいどろで知られる北洋硝子の工場
森林鉄道の遺構を巡りつつ北へと向かう



しばらく走ると、なんでもなさそうな道で江利山さんが停車する。何だろうと思っていると、今走っている道路が、実は日本初の森林鉄道である「津軽森林鉄道」の線路跡を利用しているのだという。言われてみれば、確かに真っすぐで、歩道の柵には列車の絵も描かれている。

この廃線跡を辿るようなルートを使うことで、交通量が少なく走りやすいコースにもなっている。今回は自分がロードバイクだったので走れなかったけれど、途中には素敵なグラベル区間もあるのだとか。他にも、津軽びいどろで知られる北洋硝子の工場といった知る人ぞ知るスポットを紹介してもらいつつ、海沿いの堤防道路へ。

霧がかかった八甲田を望む

ホタテ漁の作業小屋が立ち並ぶ。ガラス製のブイは先ほどの北洋硝子が多く手掛けていたのだとか
見渡す限りホタテ養殖用のカゴがうず高く積まれている



交通量も少なく快適な海沿いのルートを走っていく

この日は陸奥湾に靄が立ち込めており、幻想的な光景が広がっていた。遠くには八甲田山系の山々が並び、チェックポイントではないけれど思わず写真を撮ってしまう絶景ポイントだ。

ここからは、堤防沿いを一路北上していく。堤防の脇には、ホタテ漁のための作業小屋が立ち並び、養殖用の網やブイといった漁具がうず高く積まれている。ほんのり磯の香りが漂う中、車通りもほぼゼロの快走路を満喫。

蓬田村の古刹である正法院。

本殿にはシャーマンキングのキャラクターが描かれた札が並ぶ

そうこうしているうちに青森市を抜けだし、隣接する蓬田村へ。この村は、かの有名漫画、シャーマンキングの作者である武井宏之先生の出身地なのだとか。少し堤防道路を外れて、江利山さんがつれてきてくれたのが「正法院」。

300年以上の歴史ある寺院は、気軽に見学可能とのことで本殿にお邪魔すると、そこにはシャーマンキングのイラストが。近くに流れる阿弥陀川は、漫画に登場する阿弥陀丸の由来ともなっていたのではないか、といったエピソードも。こんな話が聞けるのも、まさに地元を知り尽くしたガイドによるツアーならでは。

八甲田をバックに海沿いを北上していく

森林鉄道の橋脚跡。後ろはのJRの線路は現役で、ちょうど電車が通っていった
のどかな田園地帯を抜けていく



途中、「マルシェよもぎだ」で休憩を挟みつつ、更に北へと走っていくと、あっという間にむつ湾フェリーの発着所となる蟹田港のある外ヶ浜町へと到着だ。

フェリーの出航まではまだしばらく時間があるとのことで、一旦お昼ご飯を確保しに蟹田駅前に。駅前にある「ヴェル蟹」という市場では、外ヶ浜の地産の魚や野菜などが売られており、焼き干しラーメンが名物の食堂も併設されている。

蟹田駅前市場「ウェル蟹」

地産の海産物などが並んでいた
この日のランチを調達したのは「とりやす」さん



ボリュームたっぷりの焼き鳥弁当。満腹で眠くなっちゃいそうでした笑

今回はその少し先の焼き鳥屋「とりやす」さんで焼き鳥弁当をゲット。これがまたボリューミーで、サイクリストにはぴったり。5本の焼き鳥にみっちりと詰まったご飯がセットになった一品だ。

他にも蟹田港の至近にある「マツオスーパー」では、でも買い出し可能。こちらはただのスーパーではなく、コミュニティカフェや寄贈本の図書館など、様々な活動を行っている地域を盛り上げるハブ的な存在として知られる名所なのだとか。

地域密着型のマツオスーパー

移動図書館も運営しているのだとか
小さなねぶたも展示されていた



蟹田港へ到着だ

お昼を確保したら2つ目のチェックポイントである風のまち交流プラザ「トップマスト」で証拠写真をパシャリ。フェリーの乗船券発売所でもあり、レストランも併設されているため、こちらでお昼という手もある。

なんと嬉しいことに、むつイチロゲイニングライド参加者であることを窓口で伝えると、500円引きクーポンがもらえるキャンペーンも実施中。しかも、こういったクーポン券って、大体がリピートさせるために「次回利用時に」という条件が付いているものだが、これは即日使用可能という太っ腹っぷりである。

津軽半島最後のチェックポイントとなる風のまち交流プラザ「トップマスト」

むついちロゲイニングライド参加者には500円割引クーポンが用意されている

ありがたくクーポンを使わせていただくと、更なるプレゼントが。青森ならではのリンゴジュース、そして新造船「かけはし」のアクリルスタンドかハンカチを記念品としていただけるのだ。

思わぬプレゼントに頬を緩めながら、いざ乗船。自動車が乗りこんだ後に自転車ごと船内へと入っていく。「かけはし」では、自転車を船員さんがしっかりと固定してくれるので、揺れて愛車が傷つく心配もない。

新造船「かけはし」に乗り込んでいきます

スタッフの方がしっかりと自転車を固定してくれるので安心
むついちロゲイニングライド参加者はリンゴジュースに加え、ハンカチかアクスタのどちらかがもらえるのだとか



船内は竣工間もないということもあり、どこもかしこもピカピカだ。ゆったり座れる船内の椅子だけでなく、寝そべることが出来るフラットなエリア、そして風を感じられる甲板上の席もあり、思い思いに航海を楽しむことができる。船内の内装には青森の様々な名所や文化をモチーフとした意匠が施されており、郷土愛に満ちた一隻だ。ちなみに船内や航海中の風景もチェックポイントとなっているので撮影を忘れないように。

いざ出航すると、驚かされるのが揺れなさ。これまで、小笠原や佐渡など様々な航路のフェリーに乗船したことがあるが、同じ船とは思えないほど全く揺れない。湾内ということももちろんあるのだろうけれど、新造船の性能も大きいのではないだろうか。

広々とした船内。至る所に青森のモチーフがちりばめられているのだとか

しばしの海旅を楽しんだ

もし、船酔いが心配で、むついちを敬遠している方がいるのであれば、心配は無用とお伝えしたいほどだ。とはいえ天候によってはもちろん揺れることもあるだろうし、酔い止めは用意しておくに越したことはないだろう。ただ、乗船時間も1時間未満と短いのでそこまで構える必要はないと感じた。

このむつ湾フェリーのもう一つの魅力が、イルカに出会えるかもしれないということ。2つの半島を結ぶ交通手段としての顔だけでなく、イルカを観察できるドルフィンウォッチング船としての顔をもっているのがこのむつ湾フェリーなのだ。

ただ残念ながら、今回はイルカの姿を拝むことは出来ず。しかし、基本的には高確率でイルカと出会えるとのことで、航海中はぜひ周りの海を観察してみてほしい。

車が下りたあとに下船していく

あちらが鯛島。確かに鯛の泳ぐ姿に似ているかも

しばしの船旅を満喫したところで、あっという間に目的地となる脇野沢港へと到着。津軽半島から下北半島へ、あっという間にワープ完了だ。

脇野沢港から遠くに見えるのがチェックポイントとなる「鯛島」。まるで泳いでいる鯛のような形だということから名付けられた島で、確かに鯛の頭と尾ひれのように見える。

鯛島をバックにパシャリ。

大きなビルが建つのかな、と思っていたら漁礁なのだという。魚用のタワマンだ
下北半島側のフェリー港となる脇野沢



愛車と共に写真を撮影し、いざ下北半島へ走り出した!

text&photo:Naoki Yasuoka

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