風光明媚なドロミテが舞台のジロ・デ・イタリア19日目は、6つの山岳が詰め込まれたクイーンステージ。逃げ集団に入ったセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)が最終山岳で仕掛けて勝利。名アシストがグランツール全てでの区間優勝を達成した。
5月29日(金)第19ステージ
フェルトレ〜アッレーゲ 151km(山岳/山頂フィニッシュ)

スタートを待つチッコーネとヴィンゲゴー photo:RCS Sport

ジロ・デ・イタリア第19ステージ image:RCS Sport 第109回ジロ・デ・イタリアも残すところあと3日。最終日のローマが例年どおりパレード走行を含む周回コースとなるため、マリアローザが争われるのはこの日と翌日の2日間のみ。その総合争いの初日は、ドロミテを舞台とする獲得標高差5,000mに迫るクイーン(最難関)ステージだ。
ほぼ登りと下りだけで構成されているコースは、1級山岳パッソ・ドゥランから始まり、2つの2級山岳を立て続けにクリア。今大会のチーマ・コッピである超級山岳パッソ・ジャウ(距離9.9km/平均9.3%)、そして2級山岳を挟み、最後は2級山岳ピアーニ・ディ・ペッツェ(距離5km/平均9.6%)を駆け上がる。そんな過酷なステージに、おそらくツール出場に向けた調整のため出走しなかった17日目勝者、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)らを除く154名が挑んだ。
最初の1級山岳パッソ・ドゥラン(距離12.1km/平均8.2%)までの、この日唯一の平坦区間では数多くのアタックが繰り広げられた結果、16名の逃げ集団が形成される。一方、メイン集団ではジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG)が途中棄権する。マリアチクラミーノ(ポイント賞)ランキングで2位につけるナルバエスは前日のフィニッシュ後、チームバスに戻る途中に落車し、身体を傷めていた。そのため首位を争っていたポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ)のポイント賞獲得がほぼ確実となった。

ドロミテを望むフェルトレの街をスタートする選手たち photo:CorVos

逃げ集団を率いたアルベルト・ベッティオル(イタリア、XDSアスタナ) photo:CorVos
パッソ・ドゥランに入ると逃げは引き戻され、繰り下げでマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)を含む新たな逃げグループが出来上がる。その中にヴィスマ・リースアバイクはセップ・クス(アメリカ)を送り、ステージ優勝と同時に前待ち作戦もできる両睨みのプランを実施。また総合9位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が入ったことで、総合上位勢の動きも活発化した。
そのためここには総合6位のデレク・ジーウェスト(カナダ、リドル・トレック)や7位マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダープロサイクリング)も入る。頂上はチッコーネが先頭通過して40ポイントを加算。続く2級山岳で先頭集団は26名の大所帯となっており、それを嫌ったチッコーネとエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)が飛び出し、ここもチッコーネがトップで通過した。
そして今大会の最高標高2,233mの超級山岳パッソ・ジャウ(距離9.9km/平均9.3%)に突入。ここで逃げ集団は再編成され、チッコーネとルビオを引き戻した集団の先頭は、マッテオ・ソブレロ(イタリア、リドル・トレック)がチッコーネ、そしてジーのために牽引。頂上までは総合争いから脱落したジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)などによるアタックが繰り返され、ジーのペースメイクもあり、チッコーネが先頭通過を果たす。今大会最大となる50ポイントを獲得し、この時点でヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)からランキング首位を奪還した。

この日3つ目の2級山岳で飛び出したエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)とジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) photo:RCS Sport

プロトンは長い間、リーダーチームであるヴィスマ・リースアバイクが牽引した photo:CorVos 
2名のチームメイトのために、逃げ集団のペースを作るマッテオ・ソブレロ(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVos
急勾配の下りを経て、レースは最後から2番目の2級山岳に突入する。残り39.1km地点でヴィスマ・リースアバイクの牽引するプロトンとの差は2分50秒。登坂途中に設定されたレッドブルKMは、その賞で首位に立つルビオを退けたジーが先頭通過。これに異議を唱えたルビオは山頂でチッコーネのトップ通過を阻止し、すぐに仕返しを果たした。
怒りを露わにしたチッコーネは下りでルビオを引き離し、コーナーを攻めながら逃げ集団に対してリードを築く。そして1分3秒差で最終2級山岳ピアーニ・ディ・ペッツェ(距離5km/平均9.6%)に突入した。追走集団からはクスとペリツァーリが飛び出し、反応の遅れたカナダ王者ジーは「ディーゼルエンジン」と呼ばれる脚質に合わせたマイペース走法に切り替えた。
2分遅れで最終山岳に入ったプロトンでは総合2位のフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM)がアタック。その背後にヴィンゲゴーがぴったりとつく一方、総合3位のテイメン・アレンスマン(オランダ、ネットカンパニー・イネオス)や4位のジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が遅れていく。ガルのペースは19日目にして衰えず、次々と逃げから遅れた選手たちを追い抜いていった。

単独先頭で最終山岳に入ったジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVos

残り2.2kmでチッコーネを抜き、単独先頭に立った セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

ジロで自身初となる区間優勝を飾ったセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos
先頭では残り3kmを越えてもチッコーネが先頭を守っていたが、その後ろからはペリツァーリを引き離したクスが徐々に差を縮める。ついに残り2.2km地点で追いつくと、一拍を置いてアタック。今大会は最終アシストを若手のダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア)に任せ、チャンスを得たヴィンゲゴーの相棒が、クイーンステージで逃げ切り勝利を飾った。
3度目の出場となるジロで区間優勝し、これで3大ツール全てでの勝利となった、2023年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝のクス。「長い間夢見てきたことだけれど、達成は難しいと思っていた。毎年レベルは上がり、そんなチャンスはそう多くないと分かっていたからね。でも今日は全てが噛み合った。与えられたチャンスを最大限に活かさなければならないと思っていた。母親がフィニッシュ手前500mの所に立っていると分かっていた。だからフィニッシュラインを越えた瞬間、感情がこみ上げてきた」と、クスは涙をこらえながら喜びを語った。
区間2位には13秒遅れでジーが入り、ボーナスタイムを加算して総合5位にランクアップ。また3位のチッコーネはここでも山岳ポイントを加算し、表彰式でマリアアッズーラに袖を通した。4位はガルで、5位はチームメイトの勝利を喜んだヴィンゲゴー。総合3位だったアレンスマンが1分45秒遅れの区間12位と後退したため、区間6位のヒンドレーが総合3位に上がっている。

3大ツール全てでの区間優勝を果たしたセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

花束を受け取ったセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)の母 photo:CorVos 
この日もマリアローザを守ったヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos
5月29日(金)第19ステージ
フェルトレ〜アッレーゲ 151km(山岳/山頂フィニッシュ)


ほぼ登りと下りだけで構成されているコースは、1級山岳パッソ・ドゥランから始まり、2つの2級山岳を立て続けにクリア。今大会のチーマ・コッピである超級山岳パッソ・ジャウ(距離9.9km/平均9.3%)、そして2級山岳を挟み、最後は2級山岳ピアーニ・ディ・ペッツェ(距離5km/平均9.6%)を駆け上がる。そんな過酷なステージに、おそらくツール出場に向けた調整のため出走しなかった17日目勝者、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)らを除く154名が挑んだ。
最初の1級山岳パッソ・ドゥラン(距離12.1km/平均8.2%)までの、この日唯一の平坦区間では数多くのアタックが繰り広げられた結果、16名の逃げ集団が形成される。一方、メイン集団ではジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG)が途中棄権する。マリアチクラミーノ(ポイント賞)ランキングで2位につけるナルバエスは前日のフィニッシュ後、チームバスに戻る途中に落車し、身体を傷めていた。そのため首位を争っていたポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ)のポイント賞獲得がほぼ確実となった。


パッソ・ドゥランに入ると逃げは引き戻され、繰り下げでマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)を含む新たな逃げグループが出来上がる。その中にヴィスマ・リースアバイクはセップ・クス(アメリカ)を送り、ステージ優勝と同時に前待ち作戦もできる両睨みのプランを実施。また総合9位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が入ったことで、総合上位勢の動きも活発化した。
そのためここには総合6位のデレク・ジーウェスト(カナダ、リドル・トレック)や7位マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダープロサイクリング)も入る。頂上はチッコーネが先頭通過して40ポイントを加算。続く2級山岳で先頭集団は26名の大所帯となっており、それを嫌ったチッコーネとエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)が飛び出し、ここもチッコーネがトップで通過した。
そして今大会の最高標高2,233mの超級山岳パッソ・ジャウ(距離9.9km/平均9.3%)に突入。ここで逃げ集団は再編成され、チッコーネとルビオを引き戻した集団の先頭は、マッテオ・ソブレロ(イタリア、リドル・トレック)がチッコーネ、そしてジーのために牽引。頂上までは総合争いから脱落したジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)などによるアタックが繰り返され、ジーのペースメイクもあり、チッコーネが先頭通過を果たす。今大会最大となる50ポイントを獲得し、この時点でヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)からランキング首位を奪還した。



急勾配の下りを経て、レースは最後から2番目の2級山岳に突入する。残り39.1km地点でヴィスマ・リースアバイクの牽引するプロトンとの差は2分50秒。登坂途中に設定されたレッドブルKMは、その賞で首位に立つルビオを退けたジーが先頭通過。これに異議を唱えたルビオは山頂でチッコーネのトップ通過を阻止し、すぐに仕返しを果たした。
怒りを露わにしたチッコーネは下りでルビオを引き離し、コーナーを攻めながら逃げ集団に対してリードを築く。そして1分3秒差で最終2級山岳ピアーニ・ディ・ペッツェ(距離5km/平均9.6%)に突入した。追走集団からはクスとペリツァーリが飛び出し、反応の遅れたカナダ王者ジーは「ディーゼルエンジン」と呼ばれる脚質に合わせたマイペース走法に切り替えた。
2分遅れで最終山岳に入ったプロトンでは総合2位のフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM)がアタック。その背後にヴィンゲゴーがぴったりとつく一方、総合3位のテイメン・アレンスマン(オランダ、ネットカンパニー・イネオス)や4位のジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が遅れていく。ガルのペースは19日目にして衰えず、次々と逃げから遅れた選手たちを追い抜いていった。



先頭では残り3kmを越えてもチッコーネが先頭を守っていたが、その後ろからはペリツァーリを引き離したクスが徐々に差を縮める。ついに残り2.2km地点で追いつくと、一拍を置いてアタック。今大会は最終アシストを若手のダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア)に任せ、チャンスを得たヴィンゲゴーの相棒が、クイーンステージで逃げ切り勝利を飾った。
3度目の出場となるジロで区間優勝し、これで3大ツール全てでの勝利となった、2023年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝のクス。「長い間夢見てきたことだけれど、達成は難しいと思っていた。毎年レベルは上がり、そんなチャンスはそう多くないと分かっていたからね。でも今日は全てが噛み合った。与えられたチャンスを最大限に活かさなければならないと思っていた。母親がフィニッシュ手前500mの所に立っていると分かっていた。だからフィニッシュラインを越えた瞬間、感情がこみ上げてきた」と、クスは涙をこらえながら喜びを語った。
区間2位には13秒遅れでジーが入り、ボーナスタイムを加算して総合5位にランクアップ。また3位のチッコーネはここでも山岳ポイントを加算し、表彰式でマリアアッズーラに袖を通した。4位はガルで、5位はチームメイトの勝利を喜んだヴィンゲゴー。総合3位だったアレンスマンが1分45秒遅れの区間12位と後退したため、区間6位のヒンドレーが総合3位に上がっている。



ジロ・デ・イタリア2026第19ステージ結果
| 1位 | セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | 4:28:33 |
| 2位 | デレク・ジーウェスト(カナダ、リドル・トレック) | +0:13 |
| 3位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +0:36 |
| 4位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM) | +0:39 |
| 5位 | ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | |
| 6位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +0:43 |
| 7位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:06 |
| 8位 | ダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:11 |
| 9位 | エイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター) | +1:19 |
| 10位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダープロサイクリング) |
マリアローザ(個人総合成績)
| 1位 | ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 75:13:16 |
| 2位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM) | +4:03 |
| 3位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +5:04 |
| 4位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、ネットカンパニー・イネオス) | +5:33 |
| 5位 | デレク・ジーウェスト(カナダ、リドル・トレック) | +6:31 |
| 6位 | アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) | +7:26 |
| 7位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダープロサイクリング) | +7:50 |
| 8位 | ダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) | +8:29 |
| 9位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +9:01 |
| 10位 | エガン・ベルナル(コロンビア、ネットカンパニー・イネオス) | +11:19 |
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
| 1位 | ポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ) | 195pts |
| 2位 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 103pts |
| 3位 | ギリェルモ・シルバ(ウルグアイ、XDSアスタナ) | 82pts |
マリアアッズーラ(山岳賞)
| 1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | 273pts |
| 2位 | ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 216pts |
| 3位 | エイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター) | 164pts |
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
| 1位 | アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) | 75:20:42 |
| 2位 | ダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:03 |
| 3位 | マティス・ロンデル(フランス、チューダープロサイクリング) | +4:15 |
チーム総合成績
| 1位 | ヴィスマ・リースアバイク | 226:06:29 |
| 2位 | レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ | +18:05 |
| 3位 | ネットカンパニー・イネオス | +32:58 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, RCS Sport
photo:CorVos, RCS Sport