12月7日(日)に、栃木県宇都宮市のろまんちっく村でJCXシリーズ第9戦のUCIレース「宇都宮シクロクロス Day2」が開催された。男子エリートはDay1を制した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が優勝し、JCX6連勝。女子エリートはジュニアから飛び級の日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team)が勝利を挙げた。



女子エリート:日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team)が優勝

女子エリートは、僅差で小林あか里(Liv Racing Japan)がホールショットを獲得 photo:Makoto AYANO

女子エリートのフロントローには、Day1で優勝し、JCXで5勝を挙げて好調な石田唯(TRKWorks)と現日本チャンピオンの小林あか里(Liv Racing Japan)、前全日本チャンピオンの渡部春雅(OlandaBase)らが揃った。そして12時40分の号砲で一気に選手たちがスタート。僅差で小林あか里がホールショットを獲得し、それに小林碧(AX cyclocross team)と竹村舞葉(SHIDO-WORKS)が続いた。

サンドセクションを小林あか里(Liv Racing Japan)と日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team)、石川七海(八千代松陰高等学校)の順でクリアしていく photo:Makoto AYANO

三段坂では先頭が詰まり、ほぼ全員がバイクを押して登る photo:Makoto AYANO

スタートループを回り、サンドセクションを先頭で駆け抜けてきたのは日本王者ジャージをまとった小林あか里だった。2番手には日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team)、3番手に石川七海(八千代松陰高等学校)と、Day1で活躍した2名が一気にポジションを上げる。しかし三段坂に入ると、小林あか里がバイクを押しながら登ったため、後ろから乗車のまま勢いをつけた石川が小林を抜き、トップに立った。

しかしテクニカルな森林区間の出口からは、16歳の日吉が先頭に躍り出る。それぞれ得意なセクションが異なる日吉と石田、石川の3名が先頭パックを形成し、キャンバー区間に突入していく。

キャンバーは朝の霜が解け始め、Day1とは異なり乗車ではクリアできないマッドコンディションになっていた。そのため先頭の3名皆がバイクを降りて、ランで駆け上がっていった。

滑りやすいキャンバー区間をバイクを押してクリアしていく先頭パック photo:Makoto AYANO

キャンバーをいち早く駆け抜けた日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team)が一気にペースを上げて独走開始 photo:Makoto AYANO

2位パックとなった石田唯(TRKWorks)と石川七海(八千代松陰高等学校)は先頭を追い続ける photo:Makoto AYANO
追い上げる小林あか里(Liv Racing Japan)が3位にポジションアップ photo:Makoto AYANO


そのキャンバーを一早く駆け抜けたのは日吉だった。日吉はその後のシケインや平坦な砂利区間で一気にペースを上げて、石田と石川との差を広げる。独走を開始した日吉に対し、2位パックの石田と石川が追い続けるが、そこから石川が脱落。その後続からは小林あか里が迫り、そして石川を抜き、表彰台圏内にポジションを上げた。

安定した走りで後続を寄せつけず、終始ハイペースで駆け抜けた日吉が両手を広げたガッツポーズでフィニッシュ。2位には53秒差で石田、続いて1分52秒差まで追い上げた小林あか里が3位でレースを終えている。

先頭を独走する日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team) photo:Makoto AYANO

日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team)がガッツポーズをして優勝を決めた photo:Makoto AYANO

「1周目から自分のペースで上げていけたので、良かったです」と言う日吉は、本来はジュニア1年目の選手だが、今大会ではあえてエリートを選択してエントリーしていた。

そして、これまでのシクロクロス全日本選手権ではU15とU17で3回の日本王者を経験している日吉は、来週の全日本選手権でも宇都宮CX同様、あえてエリートにエントリーしている。

「コースに登りがあると得意なのですが、(全日本選手権の)二色浜の砂コースは不得意。でも表彰台の一番てっぺんに立ちたいので頑張ります」と、日吉は来週に迫る全日本選手権に向けて、意気込みを語った。

女子エリートの表彰式 photo:Makoto AYANO



男子エリート:織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)がJCX6連勝

スタートを待つ男子エリートの選手たち photo:Makoto AYANO

前日同様の快晴のなか、14時にスタートを切った男子エリート。柚木伸元(日本大学)と副島達海(TRK Works)が肩を並べて第1コーナーへ。ホームの周回を経てサンドセクション、そして三段坂へと駆け上がる。

連日の好天で乾ききった路面は、猛スピードで走る選手たちによって砂塵が舞い上がり、長く伸びた集団後方では前が見えないほどとなった。登り急坂区間では渋滞が発生する。

柚木伸元(日本大学)がホールショットを獲得 photo:Makoto AYANO

三段坂を副島達海(TRKWorks)、柚木伸元(日本大学)の順でクリアしていく photo:Makoto AYANO

Day1は4位に終わった沢田時(Astemo宇都宮ブリッツェン)がリードしながらキャンバーをクリア photo:Makoto AYANO
シクロクロス黎明期からの野良MC・インチキ商店古賀さんがガヤを飛ばす photo:Makoto AYANO


副島達海(TRKWorks)がシケインをバニーホップでクリアしていく photo:Makoto AYANO

Day1は4位に終わった沢田時(Astemo宇都宮ブリッツェン)がリードし、意欲を見せる。織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は序盤で位置を下げて手こずったものの、徐々に順位を上げていく。

前日表彰台に登った成田光志(OLIVE)はDay2には出走せず。代わって勢いを見せたのが松本一成(W.V.OTA)だ。2周目を迎える頃には沢田、織田、副島、松本の4名のリーディングパックが形成された。

弘法も筆の誤り。竹之内悠(/slash - PINARELLO)がシケインでミスしてクラッシュ photo:Makoto AYANO

3周目を迎える頃には沢田・織田・副島・松本の4人のリーディングパックが形成された photo:Makoto AYANO

徐々に後続との差を開いていく4名。先頭のラップタイムからレースは前日と同じ10周に決まる。均衡が崩れたのはレース5周目を終えてから。副島が砂利グラベルの直線路でパンクし、遅れる。さらにバイクチェンジしてからの追走に焦ったか、激しく落車してしまう。

「誰も観ていないところで杭に引っかかって前転、派手に転んでしまいました。今までにないミスです」とレース後に明かした副島のレースはここで終わってしまう。

パンク、落車のダブルトラブルで遅れた副島達海(TRK Works) photo:Makoto AYANO
松伏シクロクロスで優勝し、昇格した岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)が後方から追い上げる photo:Makoto AYANO


織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)がハイペースで飛び出し、独走開始 photo:Makoto AYANO

沢田時(Astemo宇都宮ブリッツェン)単独で先頭を追いかける photo:Makoto AYANO

副島が遅れたのと同じタイミングでペースアップしたのはDay1を制した織田聖。日本王者が刻むハイペースに、沢田と松本もバラけながら追走することに。

その後は終始安定したペースで、しかし容赦なく攻めながら走った織田が危なげなく勝利した。

織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)がJCX6連勝を達成 photo:Makoto AYANO

地元の声援に答えながら、2位でフィニッシュした沢田時(Astemo宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO
3位でフィニッシュした松本一成(W.V.OTA)「時さんには届かなかった」 photo:Makoto AYANO



織田は言う。「昨日のレースを終えた後、蓄積する疲労で体調が落ちた感じがあって、今日は無理せず走ろうと考えていました。エンジンがかかるまで時間がかかりました。中盤、皆のペースが落ちたので、このままのペースだと自分に不利になると判断してペースアップ。残り40分、ここから全開で走ってみようと」。

宇都宮CX連日優勝、国内UCIレース3戦制覇、JCXシリーズ6連覇となった織田。連戦連勝の圧倒的な走りのまま、来週の”4連覇がかかる”シクロクロス全日本選手権へとつなげることになる。

男子エリートの表彰式 photo:Makoto AYANO

「UCIポイントがもっとも多く穫れるのが全日本選手権。その後に続くヨーロッパ遠征が僕にとっては大事なので、そのために重要になるUCIポイントをしっかり稼ぐべく走りたい」と言う織田には、もはや優勝以外の選択肢は無いだろう。



その他のレース結果

男子ジュニアは山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)が独走優勝 photo:Makoto AYANO

WU15は飯島花怜(Team CHAINRING)が制す photo:Makoto AYANO
WMは林口ゆきえ (gufo cycleworks) がホールショットのまま逃げ切り photo:Makoto AYANO


織田聖オリジナルの「ハイスピードダート」トレーナーを着て応援! photo:Makoto AYANO
シクロクロス箱推しのファンも駆け付けた photo:Makoto AYANO


UCI男子ジュニアは昨日優勝した松村拓弥(群馬県工業高等専門学校)と山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)の競り合いになったが、松村がメカトラで遅れ、山田が優勝。WU17は阿部怜奈、WU15は飯島花怜(Team CHAINRING)が優勝した。マスターズカテゴリーのWMは林口ゆきえ (gufo cycleworks) が勝利を挙げた。

ME2は熱戦を繰り広げた松下直暉(SHIDO-WORKS)、ME3は宇都宮ブリッツェンで走る秋元碧(明治大学)、WE2+3は戸田順子(SCCX)、ME4は本間康真(埼玉大学自転車競技部)が優勝し、上位カテゴリーへ昇格を果たした。

ME3はAstemo宇都宮ブリッツェン所属の秋元碧(明治大学)が地元で優勝 photo:Makoto AYANO
2位の小野寺玲はプロ選手最後のレースをオノデライダーポーズでフィニッシュ photo:Makoto AYANO


「憧れの小野寺玲さんとワンツー・フィニッシュで嬉しい!」と秋元碧 photo:Makoto AYANO
Di2ケーブル切断でリア固定で走ったという小野寺玲のバイク photo:Makoto AYANO


ME2は松下直暉(SHIDO-WORKS)が優勝 photo:Nobumichi Komori
ME2の表彰式 photo:Makoto AYANO


ブリッツェンが手がける新興パーツブランドのVRECORDブースではホイールを展示 photo:Makoto AYANO
日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team)と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)に宇都宮餃子30人前が贈呈された photo:Makoto AYANO

男子エリートリザルト
1位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) 1:01:04
2位 沢田時(Astemo宇都宮ブリッツェン) +0:43
3位 松本一成 (W.V.OTA)  +0:49
女子エリートリザルト
1位 日吉彩華(Asia Union TCS Racing Team) 48:58.6
2位 石田唯(TRKWorks) +0:53
3位 小林あか里(Liv Racing Japan) +1:52
その他のレース結果
男子ジュニア 山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)
WU17 阿部怜奈
WU15 飯島花怜(Team CHAINRING)
WM 林口ゆきえ (gufo cycleworks)  
ME2 松下直暉(SHIDO-WORKS)
ME3 秋元碧(明治大学)
WE2+3 戸田順子(SCCX)
ME4 本間康真(埼玉大学自転車競技部)
photo:Makoto AYANO
text:Makoto AYANO& Michinari TAKAGI