9月13日(土)に栃木県栃木市のわたらせサイクルパーク内で「わたらせクリテリウム第2戦」が開催され、QNリーグのシリーズ第8戦が併催された。Nリーグ男子で優勝した渡邉公太(ブラウ・ブリッツエン U15)がリーダージャージの防衛に成功。QNリーグ主催者からのレポートで紹介する。



エスポワールBクラスでスタートする参加選手たち Photo:QNリーグ事務局

9月13日(土)、蒸し暑く、時折雨も降るコンディションのなかで栃木県栃木市・わたらせサイクルパーク内においてリーグ第8戦「わたらせクリテリウム第2戦」が開催された。

今大会は宇都宮ブリッツェン主催で2022年からシリーズ開催がスタートした、わたらせサイクルパークの完全クローズされた1周回=約1.1kmを走るクリテリウムレース。全4回の開催であるが、第2戦の今大会からコースが右回り(時計回り)になる。そのため広い道から狭い道に入ることが多く集団が縦に伸びやすい。また最終コーナーからゴールラインまでの距離が今までよりも若干遠いため、コーナーの立ち上がりのライン取りやスプリントを始めるタイミングも肝になりそうだ。

朝の試走時には宇都宮ブリッツェン小野寺選手と廣瀬GMによる初心者クリニックがおこなわれた Photo:QNリーグ事務局

「スキルアップ!スクール」はジュニア選手を中心に参加者が集まった Photo:QNリーグ事務局

会場は朝から天候が優れないながらも、逆回りになったことでメイン会場からゴール地点への出入りがしやすくなったこともあり、観戦がしやすくなった。レース以外の企画では、弊リーグ主催スクール企画「スキルアップ!ロードレーススクール」の併催などさまざまなイベントも実施され、会場では出展ブースやキッチンカー周辺も賑わい、ゲストには宇都宮ブリッツェンから小野寺 玲選手や廣瀬 佳正GMの登場もあって会場は盛り上がった。

午前9時30分から開始のレースと並行して、周回コース内側を利用してQNリーグ主催の「スキルアップ!スクール:まもなくシーズンイン!シクロクロスから学ぶコントロール術」を開講。今回は、女子と中学生以下のジュニアに合わせた内容でスクールを実施した。

スクール講師からの集団走行レクチャーを熱心に聞く参加選手たち Photo:QNリーグ事務局

まずは自転車に乗る準備が完了してからでもできる準備運動と、ヘルメットの位置合わせや自転車のブレーキなど走行前チェックの手順を指導。その後はUターンを含めた走行で集団走行を指導。特にブレーキだけでなくペダリングでもスピードを調整するコツを覚えてもらった。さらにシクロクロスレースでも重要な2列や3列走行もUターンを行ないながら、注意ポイントを実感させた。

集団走行後には、シクロクロスのレーススタートと同じ整列方法でスタンバイしてのスタートダッシュを実施。素早くペダルをキャッチし、下を向かずに真っ直ぐ前方を見てスムーズにスタートするコツを掴んでもらった。また繰り返しスタート練習をすることで、発進しやすいギア比の把握も含め上手なスタート方法を会得してもらえた。

ボトル渡しやサコッシュ渡しも実施しながら、自転車を上手にコントロールするコツを覚えてもらった Photo:QNリーグ事務局

ゲームのようにおこなうことで、遊び感覚で学べるのも大事 Photo:QNリーグ事務局

その後、乗車中におけるペダル加重、および体重を自転車の上で前後・左右に移動させる感覚を覚えてもらい、休憩の後には弊スクール名物にもなっている「ボトル渡し」や「サコッシュ渡し」のコツを指導しながら、何度もスムーズに渡せるように反復練習。

スクールは休憩を挟みながら約2時間で実施。自転車レースを将来にわたり⻑く楽しんでもらえるよう、今後も上手にコントロールするコツをゲーム感覚で覚えられるスクールを続けていきたい。

厚い雨雲が垂れ込める中、スタートに着くエスポワールCの参加選手たち Photo:QNリーグ事務局

2周目から形成された先行集団。ブラウ斎藤を先頭にして5名で回して後続を引き離す Photo:QNリーグ事務局

午後からはさらに気温が上がるなか、いよいよNリーグの中学生男子(N)と女子(NW)対象のエスポワール各レースがスタートとなる。各クラスは、Cが小学4と5年生の男女、Bが小学6年生と中学1年、Aが中学2・3年生と細かく分かれており、Nリーグでは中学 1 年生が対象の「エスポワールB」、そして中学2・3年生が対象の「エスポワールA」の2つに分かれるため、それぞれのレース完走者にリーグポイントを付与することにしている。これにより、わたらせクリテリウムでは、特に中学1年のNリーグ登録選手にとって大量ポイント獲得のチャンスとなるのだ。なお今大会は女子の単独クラス設定が無いため、Qリーグは対象レースから除外している。

大きなチャンスとなるエスポワールBは午後2時にスタート。出走は18名で、コースインから約 3/4周回を小野寺選手の誘導でスタート地点へ、ゆっくりと走行しながらウォームアップ。そしてスタートラインに整列し、6周のレースが幕を切った。1周目は18名が1つの集団だったが、2周目に入って間もなく5名が飛び出す。そのなかには、前回のQNリーグ第7戦「しもふさクリテリウム 9月」小学生チャンピオンクラスで、2位以降を1分半近く引き離す圧勝を決めた#1-PRIMERA-所属の山田大夢も含まれており、この日も先行集団の頭を引っ張りメイン集団からタイム差が開いていく。

3周目からアタックを決め単独で先頭に出た PRIMERA 山田は、その勢いのままゴールし優勝 Photo:QNリーグ事務局

2位争い集団の満山(右)と⻑谷川(左)は、最終ストレートで飛び出した⻑谷川に軍配が上がる Photo:QNリーグ事務局
4位争いはブラウ同士の一騎打ち。ゴールスプリントで斎藤が4位に Photo:QNリーグ事務局


エスポワールBの表彰式。左より2位・⻑谷川、優勝・山田、3位・満山 Photo:QNリーグ事務局

3周目には積極的な走りを見せていたPRIMERAの山田が、一緒にメイン集団から抜け出したメンバーを置き去りで単独先頭に。その後ろを追いかける4名は、山田のペースが落ちないせいかさらにバラバラに崩壊し、⻑谷川誠(ブラウ・ブリッツェン U15)と満山塔亜の2名、そして少し離れて斎藤時成(ブラウ・ブリッツェン U15)と宗息吹(ブラウ・ブリッツェン U15)の2名に割れる。

残り2周の時点で、山田を追いかける⻑谷川と満山とのタイム差が10秒、その後ろの斎藤と宗とはさらに2秒差であったが、残り1周ではそれぞれ12秒と7秒差まで開いていき、その後方は集団が分かれていた。相当、山田のペースが速い。そしてゴール直前では、山田を追う⻑谷川が満山を切り離し6秒差まで迫ったものの、小学6年生の山田が単独で逃げ切りに成功し優勝した。Nリーグのブラウ⻑谷川は単独2位でゴール、満山が3位に入り表彰台を獲得。続いて4位にはNリーグの斎藤、5位に宗が入りランキングポイントを多く獲得することができた。

エスポワールAのスタートライン。前列には(左から)Komami 髙橋、FITTE 柬理、そしてバトルマリンジャージのブラウ渡邉などNリーグランキング上位選手たちも並ぶ Photo:QNリーグ事務局

続いてのスタートがエスポワールA。出走24名のなかには、先週のQNリーグ第7戦「しもふさクリテリウム 9月」でバトルマリンジャージを奪還したばかりの渡邉 公太(ブラウ・ブリッツェン U15)、現在 Nリーグ・ポイントランキング2位の柬理日楠詩(Team FITTE)、3位の髙橋 琉登(Komami.Racing)、4位の神戶 雅渡(保土ヶ谷.Bro)、5位の白石 大河(Komami.Racing)と、この時点でのランキング TOP5がスタートに並び、レース展開に期待が一層高まる。

スタート直後、最初に飛び出したのはFITTEの柬理。その勢いは凄まじく約半周まで単独で先頭をキープして走る。このペースアップで集団は1列棒状となって2周目に突入したころに雨が降り始めたタイミングで、今度は FITTE 柬理とブラウ渡邉の2名が集団から飛び出す。

先行する FITTE 柬理(右)とブラウ渡邉(左)は、先頭交代しながら後続を引き離していく Photo:QNリーグ事務局

先行する2名を追う3位争いの集団もペースが落ちず、大きくタイム差が開くことが無かった Photo:QNリーグ事務局

QNリーグスクールにも参加した板垣(中央)は、終始良いペースで走るもスリップしてしまい集団脱落 Photo:QNリーグ事務局
宮城県から参加した板垣は自転車コントロールに⻑けており、今後の注目株 Photo:QNリーグ事務局


このような先行が出現すると追う選手達はスピードアップを図りたいが、雨で少し暗くなり路面が滑りやすくなったことでコーナーのコントロールが難しくなり、追走集団は割れて先週の対象レースで3位入賞の活躍を見せたNリーグの佐谷 輝成(#1-PRIMERA-)にKomamiの髙橋と白石、保土ヶ谷.Bro 神戶、横田 壮一郎(Fine nova LAB)の5名が、柬理と渡邉の後方5秒の位置に残された。

この後は、最終周回まで先行する2名と追走集団5名のタイム差が5秒から10秒の間で変化しながらも、ほぼ状況は変わらず。一方、女子で唯一このクラスへ出走となった、Nリーグ中学生女子NWでポイントランキング2位の板垣美希(BELLE EQUIPE)は、後方集団の男子選手達と集団を形成し走行していたが、最終周回のコーナーで濡れた路面で滑ってしまい板垣は集団から脱落。

今レースも思いきりの良いスプリントで決めたブラウ渡邉が優勝しバトルマリンジャージを防衛 Photo:QNリーグ事務局

3位争いのゴールスプリントは、ハンドル投げを決めた横田が競り勝った Photo:QNリーグ事務局
エスポワールAの表彰式。左から優勝のブラウ渡邉と3位の横田。なおFITTE 柬理は翌日の秩父宮ロード、翌々日JBCF南魚沼ロードと連戦へ移動のため欠席となった Photo:QNリーグ事務局


途中では20位前後で推移したが、あと僅かでトップとの同一周回を逃す惜しい結果となった。しかしゴール後には「落車してしまいましたが、コース横の芝地に入ったので怪我は無く自転車も無事でした。次回のリーグ対象レースでも頑張ります!」と元気にコメントしてくれた。

さてトップでは、先頭2名が後続5名の追走から逃げ切ってゴールスプリントに。早めに仕掛けた渡邉が優勝を決め、柬理が2位となりバトルマリンジャージは渡邉が防衛に成功した。この2名に遅れること約7秒できた後方集団が5名のままゴールスプリントとなり、先頭でゴールした Fine novaの横田が見事なハンドル投げで3位となり表彰台を獲得。4位にKomamiの白石、5位が PRIMERAの佐谷、6位Komamiの髙橋、7位に保土ヶ谷.Broの神戶となった。このレース結果により、Nリーグポイントランキング3位がKomamiの白石に入れ替わった。

日本自転車レースの将来を担うジュニア選手へエールを贈ってくれた小野寺選手と笑顔の渡邉 Photo:QNリーグ事務局

Nリーグポイントリーダー授与式では、すっきりと頭を坊主に剃り上げた渡邉が副賞のアールエル賞品目録を手に、今回のレース展開の難しさを噛みしめながら「(柬理と)2人で逃げ続けたのは、とても楽しかった」と振り返った。

次戦の箱根ヒルクライムについては、ヒルクライムを得意とする柬理との比較を聞いてみたところ「僕はヒルクライムが苦手なので、頑張って練習して勝てるようにしたいです!」と抱負をコメントし、声援に応えた。そんな渡邉選手の活躍に、プレゼンターとして登壇いただいた小野寺選手からは「このエスポワールの各レースは非常に楽しみにしていまして、今回もプロさながらの熱いレース展開で楽しませてくれました」とコメント。渡邉選手は宇都宮ブリッツェンの育成組織であるブラウ・ブリッツェン所属であることにも触れ「将来、宇都宮ブリッツェン加入へのステップアップという道もありますので、今後の活躍に期待しています!」と熱いエールも送っていただいた。

昨年の同大会、中学生クラス・ゴールの様子 Photo: Kensuke Yada

次戦は第9戦の10月5日(日)に神奈川県小田原市・アネスト岩田ターンパイク箱根で開催される「箱根ヒルクライム 2025」となる。箱根ヒルクライムは普段、自転車では走行できないアネスト岩田ターンパイク箱根を、レース当日のみ特別に閉鎖して開催される大会。距離は 13.4km で平均勾配は7.2%という、日本国内で開催されているヒルクライムレースの中でも、かなり走りごたえのある登坂コースで、見通しの良い直線の急勾配が続くのが特徴。そのためいったん後続を引き離したとしても、なかなか視界から消えないので、ペース配分や折れないメンタルがポイントになるだろう。

またスタートから約10km地点までは斜度がきつい一方、後半には下りもあり、ゴール直前でスプリントになることもある。昨年の中学生クラス優勝はFITTEの柬理。スプリンターである現バトルマリンのブラウ渡邉が今年どう凌ぐか注目される。この箱根ヒルクライム以降は大磯、しもふさと平坦のクリテリウムレースが続くので、クライマーにとっては最後のチャンスでもあるので、そのレース展開と結果を楽しみにしていただきたい。

エスポワールC表彰。2位・高柳 聡太郎、優勝の岡本 楓大、3位・大和田 煌仁は豪華賞品を手に笑顔 Photo:QNリーグ事務局

エスポワールAのスタート前に健闘を誓う高橋と柬理 Photo:QNリーグ事務局

6年目の今シーズンも日本国内の女子やジュニア選手達の活躍の場を広げるため弊リーグ運営を行なってまいりますので、引き続きご注目とご声援のほど、よろしくお願い申し上げます。

photo:QNリーグ事務局
text:須藤むつみ(QN リーグ事務局)
協力:宇都宮ブリッツェン、わたらせサイクルパーク
リンク