3つの1級山岳で争われたパリ〜ニース最終日は、マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)が12km独走勝利。自ら仕掛けたマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)が区間2位に入り、2年連続の総合優勝に輝いた。



晴天に恵まれたパリ〜ニース最終日 photo:A.S.O.

パリ〜ニース第8ステージ コースプロフィール photo:A.S.O.
レース名の通り、パリ近郊からニースを目指す第83回パリ〜ニースは最終第8ステージを迎えた。そのコースは例年通りニース市街地を発着点に、北側の山岳地帯を巡る山岳ステージ。119.9kmのショートコースには3つの1級山岳と中間スプリントが設定された丘(コル・デズ)が詰め込まれ、フィニッシュ地点は最後の1級山岳コル・デ・キャトル・シュマン(距離3.6km/平均8.8%/最大16%)から下った先にある。

連日続いた悪天候から一転、晴天に恵まれたレースは37秒のリードで総合首位に立つマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)を先頭にスタート。その直後にブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツXRG)が集団から遅れ、リタイアを選択。総合7位につけていたマクナルティはここ数日間、体調不良が続いていたと明らかになっている。

イネオス・グレナディアーズがプロトンを先導する photo:A.S.O.

中間ポイントを目指し、プロトンを飛び出したマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

最初の1級山岳であるコル・ドゥ・ラ・ポルトでは、ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG)やポイント賞ジャージを着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)などが先頭集団を形成する。しかしイネオス・グレナディアーズの先導するメイン集団が引き戻し、頂上を通過。中間スプリント(コル・デズ)を先頭通過してポイント賞を確定させたいピーダスンが、その下りで飛び出した。

先頭をいくピーダスンに1分差をつけられ、30名程度に絞られたプロトンからはアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が仕掛ける。2つ目の1級山岳でウラソフはピーダスンを追いかけ、後続では総合2位のフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が加速し、ジョーゲンソンにプレッシャーをかける。しかしこれは決まらず、直後にフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール)が集団を抜け出した。

ガルはウラソフと共に、頂上手前でピーダスンに合流。コル・デズに入ると更にマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)が加わり、先頭は4名となる。37秒後方のプロトンでは「攻撃は最大の防御」と言わんばかりに、マイヨジョーヌと同じ黄色のリーダージャージを着るジョーゲンソンがアタック。そのまま単独で先頭に迫っていく。

残り12.3km地点で単独先頭に立ったマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.

最大勾配13%のコル・デズでは、ピーダスンがこの日最大の目標だった先頭通過を果たし、ポイント賞ジャージを確定させる。そのままピーダスンはシェフィールドと共に先頭でレースを進めると、最後の1級山岳コル・デ・キャトル・シュマン(距離3.6km/平均8.8%/最大16%)の麓に到達。シェフィールドは登りでピーダスンを引き離し、頂上まで3.3km、フィニッシュまで残り12.3km地点で単独先頭に立った。

後続ではジョーゲンソンがガルとウラソフに合流し、遅れてきたピーダスンを吸収。シェフィールドは頂上を21秒のリードで通過し、フィニッシュまで続く下りに入る。ジョーゲンソンはダウンヒルでガルを引き離し、先頭をひた走る同じアメリカ人のジョーゲンソンを追走。しかし、その差は最後までゼロになることはなかった。

残り2km地点で勝利を確信し、早くもガッツポーズを繰り返すシェフィールド。そのままフィニッシュし、22歳がニースでワールドツアー初勝利を手に入れた。

ワールドツアー初勝利を飾ったマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

インタビューで嬉し涙を流したシェフィールド。「これまで何度も2位と悔しい結果に終わっていた。そしてようやくワールドツアーで勝利を得ることができた。この勝利が意味するものは大きい。なぜならこの競技は本当に勝つことが難しいからね。本当に嬉しいよ」と、心からの喜びを語った。

そして総合優勝は、シェフィールドと同じアメリカのクラブチーム、ホットチューブ・ディベロップメントチーム出身であるジョーゲンソンが輝く。「ヨナス(ヴィンゲゴー)が不在のなか(ライバルたちによる)総攻撃は予想していた。だがチーム一丸となり、戦術的に上手く走ることができた。そして掴んだパリ〜ニースでの2年連続総合優勝。本当にクレイジーと呼べる結果だよ」とコメントした。

ジョーゲンソンは今年、ヴィンゲゴーと共にクリテリウム・デュ・ドーフィネからツール・ド・フランスへの出場を予定している。

区間2位で総合優勝を決めたマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

4賞ジャージ獲得者が表彰台に上がる photo:A.S.O.

パリ〜ニース2025第8ステージ結果
1位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) 2:48:37
2位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:29
3位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) +0:35
4位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) +1:01
5位 クレモン・シャンプッサン(フランス、XDSアスタナ)
6位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
7位 テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)
8位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:04
9位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +1:40
10位 オレリアン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)
個人総合成績
1位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) 26:26:42
2位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:15
3位 テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) +1:58
4位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) +2:17
5位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) +3:03
6位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) +3:57
7位 クレモン・シャンプッサン(フランス、XDSアスタナ) +4:00
8位 アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ) +4:53
9位 トビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ) +4:59
10位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +5:26
その他の特別賞
ポイント賞 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
山岳賞 トマ・ガシニャール(フランス、トタルエネルジー)
ヤングライダー賞 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
チーム総合成績 イネオス・グレナディアーズ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.