38歳のゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が、今シーズン限りでの引退を発表した。トラックでの2大会連続五輪金メダル獲得から2018年ツール総合優勝と、輝かしいキャリアを築き上げたベテランがプロトンを去る決断をした。



引退を発表したゲラント・トーマス(イギリス) photo:Kei Tsuji

「そろそろ発表するべきだと思った。今年はプロとして走る最後の年になる。悪くない現役生活だったんじゃないかな。まさか19年もプロとして走るとは思わなかった」と、トーマスはSNSでコメントを発表。今年臨む数々のビッグレースを前に、引退の決意を明かした。

ウェールズ出身のトーマスはまずトラック競技でその才能を開花させ、2008年北京、2012年ロンドン五輪とチームパシュートで金メダルを獲得。その後ロードレースでは2007年にプロデビューし、同年にはツール・ド・フランスに初出場を果たす。そして2010年にイギリス初のワールドチームであるスカイプロサイクリング(現イネオス・グレナディアーズ)に移籍し、長らくチームの中心選手として活躍した。

ロンドン五輪で金メダルを獲得したトーマス photo:CorVos
2017年ティレーノ〜アドリアティコで独走勝利したトーマス photo: TDWsport / KT


ウェールズの旗を掲げ、2018年ツールの総合優勝を喜ぶゲラント・トーマス(イギリス) photo:Makoto.AYANO

そして2016年のパリ〜ニース総合優勝をきっかけに、トーマスは徐々に総合系選手としての力を伸ばしていく。そして2018年のクリテリウム・デュ・ドーフィネを制覇すると、その勢いのまま挑んだツール・ド・フランスで山岳ステージを2連勝。その後も得意のタイムトライアルを含め安定した走りで、念願の総合優勝を掴み取った。

「これは結婚と並ぶ人生のハイライトだ。長年の献身が報われた」と語った優勝スピーチ、そしてマイクドロップは、ツール史に残る名シーンとして語り継がれている。

ツール制覇後も、トーマスは翌2019年のツール・ド・フランスでは総合2位、2022年には総合3位に入る。また近年でも2023年のジロ・デ・イタリアで総合2位、2024年にも総合3位と、衰えぬ力を見せつけていた。しかし「ただの(よくいる)不機嫌なベテランにはなりたくなかった」という持ち前のシニカルなユーモアを交え、引退を決断した理由を語った。

現役ラストシーズンを迎えるゲラント・トーマス(イギリス) photo:CorVos

競技活動以外にも、著書の出版やポッドキャストへの出演など、幅広い分野で活躍しているトーマス。いまだ今年どのグランツールに出場するかは不明であるものの、直近ではヴォルタ・アン・アルガルヴェ(2月19日〜)からティレーノ〜アドリアティコ(3月10日〜)に出場予定だ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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