「特殊なコース状況とプレッシャーで動きが固かった。コンスタントにW杯完走を続け、世界選に準備しないといけない」と織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は振り返る。過酷な世界選手権を戦った4人の日本人選手のコメントを紹介します。



織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム):男子エリート 40位

「身体が固かった」と言う織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Nobuhiko Tanabe

色々と準備不足でしたが、なんとかスタート時間までにバイクが2台稼働する状態でレースに臨めました。

スタートからミスってしまい、ペダルキャッチしたものの、そのままクリートが抜けてしまった。「ああ、緊張しているな」と自分で感じていました。1コーナーで(前の集団が)ごちゃついていたので追いつけましたが、本来なら良いスタートを切って、その混乱の前でコースに入りたかった。そこから耐えながら走る展開で、2周目まで自分のペースで走ることができませんでした。

トレーニング面ではしっかりと自分のやることをやってきました。1ヶ月前にヨーロッパに来ていたのでレースに順応し、泥レースでも完走できたことで自信を持って世界選手権に臨みました。

声援を浴びながら走る織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Nobuhiko Tanabe

ただやっぱり、僕が出てきたベルギーレースは毎日雨で泥。今回のような低温で、地面が凍り、表面だけが溶けているようなコース状況は経験できておらず、表面は泥、轍の中は氷という状況にビビっていましたね。もちろん強い選手は実力通りのリザルトを出しましたが、特殊な条件だったように思います。

そんな中で僕自身はコースに翻弄されてしまった部分が否めなかった。普段の「日本チャンピオン」という以上にナショナルジャージを着て走る世界選手権はプレッシャーが強いですし、それで動きが固かった感は正直あるかもしれません。

また来シーズン、ヨーロッパに戻ってしっかりと走れるようになりたいと感じています。今回は遠征中で2度完走だったので、もっと、コンスタントに完走できるように。世界選手権も大切ですが、個人的な目標は、ワールドカップや欧州の普段のレースでコンスタントに完走していくことも大切。世界選はその先にあるものですから。

河川敷に造られたフルストのコース。高低差の大きなキャンバーと登り下りを名物にする photo:CorVos

(来年)世界選手権が開催されるフルストは本当に難しくて厳しいコース。僕も一度走った経験がありますが、あの下りを一体何人の日本人選手が下れるのか。特に女子選手は厳しいと思いますし、ナショナルチームとしてしっかり対策をしないと、今回完走が(石川)七海ちゃんだけだったという結果以上に日本ナショナルチームは厳しい戦いになってしまう。走った経験を持つ僕が率先して伝えていくべきですし、自分自身しっかり準備したいと感じます。



渡部春雅(明治大学):女子U23 33位

完走まで僅かに届かなかったという渡部春雅(明治大学) photo:Nobuhiko Tanabe

スタートが成功して一時的に14番手くらいまで順位が上がったんです。(優勝した)バックステッドの位置も見えていて「これはアツい!」と思っていたんですが、一気にタレてしまった。キャンバーの急勾配で落車してしまったりと、そこからズルズル落ちてしまいました。

でも、自分の中では去年よりも上手く走れていたので成長はあったと思います。前の前で足切りに遭って最終周回には入れなかったのが悔しいですね。

トレランで鍛えた走力で欧州選手と互角に戦った渡部春雅(明治大学) photo:Nobuhiko Tanabe

今日はフェム(ファンエンペル)のパパに挨拶しに行ったら「また来年ね」って言われました。彼女のメカやお母さんも私のことを覚えてくれていて。来年はエリートに上がるのでレベルは上がります。女子カテゴリーの中で一番出走人数が少ないので(チャンスはある)、また頑張りたいと思います。



日吉愛華(中京大学/Teamまるいち):女子U23 44位

ジュニアカテゴリーとの差を痛感した日吉愛華(中京大学/Teamまるいち) photo:Nobuhiko Tanabe

今回のヨーロッパ遠征は世界選手権を含めて3レース走りましたが、中でも今日が一番調子良く走れたレースでした。結果的にはたった2周しか走れませんでしたが、スタートが決まったのは良かった点ですね。ただその後の2コーナーの混乱でミスをして、どんどん後ろに下がってしまった。(周りの選手たちと比べて)単純なパワーやテクニックの差が大きいと感じています。

上手く走れすぎた去年と比べると、あまり今年は良くなかったかな、と。カテゴリーが(ジュニアからU23に)上がったのでペースも速かったですし、緊張具合も増してしまった。ジュニアとの違いは大きくて「ああ、こんなに違うんだ」と思い知らされるほどでした。めっちゃ大きくて分厚い壁が出てきたように感じています。また来年もこの舞台に挑戦できるように頑張りたいと思います。



山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム):男子ジュニア 58位

氷ついた下りの轍をこなす山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Nobuhiko Tanabe

本当にキツいレースでした。スタートの落車で足止めされて前を追いました。追いかけても追いかけても誰もいなくて、焦ってる自覚はなかったんですがどうしてもミスをしてしまう。もっとやれたかな、というか、あの時こうすれば良かった、と思うことが多いレースでした。

色々思うところはありますが、一番感じたのは周りの選手との差。ほんの小さなことの連続だと思うんですが、一緒にレースを走っていても、そんな難しいところでなくても少しずつ差が開いてしまう。その積み重ねの結果、あっという間に差が開いてしまって...というのをすごく感じましたね。今は悔しい、またチャレンジしたいという思いを強く感じています。

これからの課題としては、まずは、この場所にまたチャレンジできるようにすることです。そのためには今回レースを走って得た反省点を潰していかないと次に進めない。またこの大舞台に戻って来たいと強く感じています。

text:So Isobe
photo:Nobuhiko Tanabe