スコットが新型ADDICT RCを発表。5年ぶりのフルモデルチェンジを受ける軽量レーサーは、フレーム重量640g、完成車重量5.9kgをマーク。それでいて前作よりもエアロ性能も向上させ、死角の無いオールラウンダーとして新生を果たした。



スコット ADDICT RC ULTIMATE HMX SL (c)スコットジャパン

2008年にスコットがリリースした初代ADDICT。完成車重量5.9kgという数値は当時のサイクリストたちに驚きをもって迎えられ、以来"ADDICT"の名は軽量バイクの代名詞として今に至るまで受け継がれてきた。

そして、16年の時を越えてスコットが発表した最新世代のADDICT RC ULTIMATEの完成車重量もまた、5.9kg。ディスクブレーキ化、ケーブルフル内装、30CのTLタイヤ、そして優れたエアロダイナミクス。重量増に直結する、一方で現代のレーシングバイクに不可欠なこれらの要素を全て備えた上で、「あの」初代ADDICTと同じ重量に収めた。

山岳コースにおいて重量は常に重要なファクターだ (c)スコットジャパン

この重量を実現するために、スコットは様々なアプローチを取っているが、その中でも大きな比重を占めるのが新たな製造プロセスだ。カーボンフレームの製造工程において一般的な内部から圧力をかけるためのブラダーの代わりに、スコットはより硬質なポリプロピレン製のマンドレルを使用している。

この製法により、フレーム内部を正確に成型することが可能となり、余分な樹脂や充填剤、追加の補強材など排除することで大幅な軽量化を可能とした。最薄部では0.6mmという厚さのチュービングを実現するのも、この新プロセスの賜物だ。

圧倒的な軽量性を実現しつつ、他の性能も向上させた新型ADDICT RC (c)スコットジャパン

またマンドレルを成型後に引き抜く必要があるため、フレームは完全な中空構造となっていることも特徴。チューブとチューブの接合部は全て繋がっており、剛性に寄与しづらい隔壁は一つもない。

この製法はフォークにも採用されている。通常のフォークは、左右フォークブレード、コラム、クラウンという4つの部材を接合して作られるのに対し、新型ADDICTのフォークはブレードからコラムに至るまでワンピースで成形されており、カーボン繊維の流れを断ち切ることのない理想的な設計が施されている。

スキニーなシルエットのフォークブレード。実はワンピースで成形される画期的な工法を用いているという (c)スコットジャパン

前方投影面積を削減したヘッドチューブ。 (c)スコットジャパン
ダウンチューブ上部の設計はエアロを意識したもの。 (c)スコットジャパン



この製造工程での革新に加え、徹底的なFEAによるチューブ形状とカーボンレイアップの最適化を施すことで、新型ADDICTはスコット史上最軽量のフレーム重量を実現した。Mサイズのフレーム単体で640g、フォークは270g。フレームセットで1kgを切り、小物類も合わせたフレームキット重量では、前作から300gもの軽量化を果たしている。ハンガーはUDHを採用していないが、これは重量に起因する選択だという。

飛躍的な軽量化を果たす一方、最新のトレンドに対応しているのも新型ADDICTの特徴だ。前作が登場した5年前に対し、現在のレースシーンにおいて最も大きな変化として挙げられるのがタイヤのワイド化だろう。既に28Cは標準となり、30Cや32Cといったタイヤを使用する選手も多くなる中で、スコットは新型ADDICTを30Cタイヤを前提とし、最大34mmのタイヤクリアランスを確保したバイクとして設計した。

最大34mmのタイヤクリアランスを確保する。 (c)スコットジャパン

スコットは、ワイドタイヤを前提としたジオメトリーを再設計。ヘッド角をわずかに立てることで、トレイルを適正化。さらにリアセンターの距離を保つために、シート角を起こしつつ、シートポストに5mmのセットバックを与えることで、着座位置は変わらないように設計している。また、ハンガー下がりもわずかに増加している。

このジオメトリーでスコットが目指したのは、タイトなコーナーにも機敏に対応するハンドリングと突風や路面の変化といった外的要因に乱されづらい安定性の両立だ。

現在ではいかに山岳を主眼に置いた軽量モデルであろうともエアロダイナミクスをないがしろにしたレーシングバイクは存在しない。スコットはFOILやPLASMAの開発で培ったエアロダイナミクスをADDICTへ応用し、空力性能を高めている。

スコット ADDICT RC (c)スコットジャパン

基本的には重量剛性比に軸足を置いて設計されている新型ADDICTであるが、エアロダイナミクスも考慮にいれたデザインが施されている。例えば、ヘッドチューブからダウンチューブへと繋がる部位や、シートチューブからシートステーへと繋がる部位には、FOILの影響が見て取れる。

更に、フォークのテーパーコラム上部を27.2mm(1-1/16インチ)とし、新たに設計されたヘッドセットとケーブル内装システムを採用することで、ヘッドチューブの前方投影面積を削減している。これらの空力的改善により、新型ADDICTは前作に対し45km/h走行時に12Wの出力削減を実現しているという。登りだけでなく、下りや平坦においても活躍するオールラウンダーとして、進化を遂げた。

新型のシンクロス製IC-R100-SLコックピット。 (c)スコットジャパン

クランプ部も一新され、さらに軽量化を果たした (c)スコットジャパン
専用の3Dプリントコンピューターマウントも用意される (c)スコットジャパン



もちろんコックピットも新型ADDICTに合わせて新規開発されている。シンクロスが新たに用意した"IC-R100-SL"は、コラムクランプ部の設計を見直すことなどにより前作より同じ強度と剛性を保ちつつ約40gの軽量化を実現。さらに、ドロップ部にはわずかにフレアが与えられ、空力性能とハンドリングを同時に向上させている。

このコックピットに対応する専用のサイクルコンピューターマウントも開発されている。3Dプリントで作られたマウントはわずか12gという重量で、スコットのこれまでのマウントに対し7割近い軽量化を果たした。

新型のSP-R100-SLシートポスト。前作より1割の重量削減を実現。 (c)スコットジャパン

同時にシートポストも新設計とされている。スコットはライダーのニーズに合わせた2モデルをADDICTに用意した。一つは軽量なSP-R100-SLシートポスト。カーボンレイアップを最適化し、前作より10%の軽量化を実現した。

もう一つが快適性を向上させたSP-R101-CFシートポスト。シートポストヤグラの下部分がくびれた形状により、SLモデルに対して快適性を30%向上させている。このくびれ部分にはマグネットが内蔵されており、専用のリアライトを装着することも可能。バイクのシルエットを一切崩さず、リアライトを装着できる。

臼式のシートクランプも新たに設計し直されており、より高い固定力を発揮するように。また、フレーム側と嵌合するような溝が切られることで、シートポストを外した状態でもシートクランプがフレームに落下してしまうことが無くなっている。また、クランプボルトも前側へと傾けられることで、工具がシートポストに当たりづらくなり作業性も向上している。

バーエンドにユニバーサルツールが搭載される (c)スコットジャパン

シートクランプをはじめ、各部のボルトは全てT25とされる (c)スコットジャパン
6mmヘックスも搭載しスルーアクスルの脱着も可能 (c)スコットジャパン



作業性という側面も、新型ADDICTが考え抜かれているポイントの一つ。スルーアクスルを除き、新型ADDICTに使用されるボルトは全てT25のトルクス仕様となっている。ハンドルバーエンドに内蔵されたT25と6mmヘックスを搭載したユニバーサルツールがあれば、ステムやハンドルバー、シートクランプ、シートヤグラ、そしてスルーアクスルの脱着も含め、フレームのあらゆる部位を調整可能となっている。

全方位に進化を果たした新型ADDICT RCは、HMX-SLカーボンを使用したULTIMATEグレードと、HMXカーボンを使用したPROグレードの2つのフレームが用意される。国内においては、ULTIMATEグレードはフレームセット(770,000円)のみの展開となる。なお、フレームセットにハンドルは付属しない。

スコット ADDICT RC ULTIMATE HMX SL(フレームセット) (c)スコットジャパン
スコット ADDICT RC PRO HMX(フレームセット) (c)スコットジャパン



スコット ADDICT RC10(Sunbeam Black) (c)スコットジャパン

スコット ADDICT RC 20 (CARBON BLACK) (c)スコットジャパン
スコット ADDICT RC20(HUSHED PINK) (c)スコットジャパン



PROグレードのHMXフレームはHMX-SLフレーム比で約76gの重量増となる(フレーム+フォーク)。PROグレードはフレームセット(550,000円)に加え、3つの完成車をラインアップ。

Ultegra DI2とシンクロス Capital 1.0ホイールに、一体型コックピットのIC-R100-SL仕様のADDICT RC 10(1,155,000円/7.1kg)、同様の構成でコックピットを別体式としたADDICT RC 20(1,045,000円/7.3kg)、105 DI2とシンクロス Capital 1.0ホイール、別体式コックピットのADDICT RC 30(880,000円/7.7kg)が用意される(価格は全て税込)。

スコット ADDICT RC 30 (CARBON BLACK) (c)スコットジャパン

スコット ADDICT RC30(WHALE GREY) (c)スコットジャパン
スコット ADDICT RC30(ASH PINK) (c)スコットジャパン





スコット ADDICT RC ULTIMATE HMX SL フレームセット
サイズ:XXS/45-XS/47-S/52-M/54-L/56
重量:フレーム 640g / フォーク 275g
価格:770,000円(税込)

スコット ADDICT RC PRO HMX フレームセット
サイズ:XXS/45-XS/47-S/52-M/54-L/56
重量:フレーム 690g / フォーク 300g
価格:550,000円(税込)

スコット ADDICT RC 10
カラー:SUNBEAM BLACK
サイズ:S/52-M/54
重量:7.1Kg
コンポーネント:シマノ Ultegra Di2 Disc 24 Speed
ホイール:シンクロス Capital 1.0 Tubeless Disc Wheels
ハンドル:シンクロス IC-R100-SL Carbon combo
タイヤ:シュワルベ ONE TLE-Tires 700x30C
価格:1,155,000円(税込)

スコット ADDICT RC 20
カラー:CARBON BLACK、HUSHED PINK
サイズ:XS/47-S/52-M/54-L/56(56はCARBON BLACKのみ)
重量:7.3Kg
コンポーネント:シマノ Ultegra Di2 Disc 24 Speed
ホイール:シンクロス Capital 1.0 Tubeless Disc Wheels
ハンドル:シンクロス HB-R100-CF
タイヤ:シュワルベ ONE TLE-Tires 700x30C
価格:1,045,000円(税込)

スコット ADDICT RC 30
カラー:CARBON BLACK、WHALE GREY、ASH PINK
サイズ:XXS/45-XS/47-S/52-M/54-L/56(※56はCARBON BLACK、WHALE GREYのみ)
重量:7.7Kg
コンポーネント:シマノ 105Di2 Disc 24 Speed
ホイール:シンクロス Capital 1.0 Tubeless Disc Wheels
ハンドル:シンクロス HB-R100-CF
タイヤ:シュワルベ ONE TLE-Tires 700x30C
価格:880,000円(税込)

シンクロス IC-R100-SL
ハンドル幅:360mm、380mm、400mm
ステム長:80mm - 90mm - 100mm - 110mm - 120mm
(※120mmは380mmのみ、400mmは100mm-110mmのみ)
重量:275g
価格:115,500円(税込)


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