2024/09/30(月) - 08:24
その走りは圧巻の一言。9月29日(日)にスイス・チューリッヒで開催されたロード世界選手権男子エリートロードレースで、タデイ・ポガチャル(スロベニア)が51.6kmを独走。自身初となるアルカンシエル獲得と共に、史上3人目となるトリプルクラウン(同一年にジロ、ツール、世界選手権で優勝)を達成した。新城幸也は落車してDNFだった。
2024年の世界王者を決めるレースはヴィンタートゥールを出発し、チューリッヒを通る26.9kmコースを7周半する273.9km。周回コースには最大勾配17%のチューリッヒ・ベルフシュトラーセ(距離800m/平均7.1%)と最大20%のウィティコン(距離2.6km/平均5.3%)が含まれ、その他にも細かいアップダウンが獲得標高差は4,470mまで引き上げた。
連日降り続いた雨はなく、それでも気温は13度とジレやアームウォーマーが必要なほど肌寒い。単騎での出場となった新城幸也を含む195名が並んだスタート地点の先頭には、地元スイスチームが横並びとなり、女子ジュニアロードレースの落車で命を落としたミュリエル・フラー(スイス)への黙祷が捧げられる。そして現地時間の午前10時40分にスタートが切られた。
ヴィンタートゥールの北側に設定された33.5kmのコースでは、逃げを目指すアタックと吸収が繰り返される。周回コースへと南下する約40km地点でようやく地元スイス出身のシルヴァン・ディリエら6名の逃げグループが形成。その中には最後の世界選手権に臨むシモン・ゲシュケ(ドイツ)や2022年にTT世界選手権を制したトビアス・フォス(ノルウェー)が入り、メイン集団は優勝候補のタデイ・ポガチャルを擁するスロベニアが先導した。
いつもと異なるジャージを着て、いつもとは異なるチームで走る影響からか平坦路で複数の落車が発生する。それに巻き込まれたペリョ・ビルバオ(スペイン)が身体を痛めながらも再スタートする一方で、残り213km地点ではジュリアン・アラフィリップ(フランス)が落車。過去に連覇の経験があるアラフィリップはチューリッヒの周回コースに入る前に、レースを去る不運に見舞われた。
また出場選手の中で最多となる16回目の世界選手権に臨んだ新城も落車し、骨折はなかったものの膝や肩を負傷。そのままリタイアを選んでいる。
レッドブル・ボーラ・ハンスグローエに移籍するヤン・トラトニク(スロベニア)の集団牽引には、入れ替わるようにヴィスマ・リースアバイクへ加入するヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)が力を貸す。逃げとのタイム差は5分43秒を最大に、4分59秒差でチューリッヒの周回コースに突入。逃げ集団への合流を目指したマルクス・パジュール(エストニア)とロベルト・ゴンザレス(パナマ)が残り159km地点でプロトンに吸収される頃に、その差は3分21秒まで縮まった。
普段よりも身体を絞って臨んだマチュー・ファンデルプール(オランダ)が息を潜めるプロトンからは、残り129km地点でパブロ・カストリーリョ(スペイン)が飛び出す。今年のブエルタ・ア・エスパーニャで区間2勝とワールドチームへの移籍が噂されるカストリーリョの動きは決まらず、逃げとのタイムが一気に縮まったメイン集団からジェイ・ヴァイン(オーストラリア)の動きをキッカケに10名の追走集団を形成された。
残り104km地点で追走集団は先頭のディリエたちに合流。一方、2分8秒後方を走るプロトンからはカスパー・アスグリーン(デンマーク)が飛び出し、これが引き戻されると同時にポガチャルがアタック。反応したクイン・シモンズ(アメリカ)とアンドレア・バジオーリ(イタリア)を引き離したポガチャルは、先頭集団から下がったトラトニクに合流した。
トラトニクのアシストを受けたポガチャルは残り91kmで先頭集団に合流し、それを1分差で追うプロトンではカンペナールツやオランダがペースを作る。逃げ集団とプロトンは38秒差でラスト3周目に突入。そして逃げ集団を先導したトラトニクが残り78km地点で役割を終えると、ポガチャルがチューリッヒ・ベルフシュトラーセ(距離800m/平均7.1%)で加速した。
ポガチャルの登坂スピードに追従できたのは、同じUAEチームエミレーツに所属するパヴェル・シヴァコフ(フランス)ただ1人。逃げを捉え、プロトンというよりも追走集団となった後方の人数は16名まで絞られ、ファンデルプールが自ら積極的にペースを作る。その中にはレムコ・エヴェネプール(ベルギー)がアシストであるマキシム・ファンヒルスと共に入り、ライバルたちに追走の協力を要請した。しかしうまく協調態勢を築くことはできなかった。
順調に先頭交代を繰り返すポガチャルとシヴァコフはラスト2周回に突入。しかし直後のチューリッヒ・ベルフシュトラーセでシヴァコフが遅れ、残り51.6kmでポガチャルが単独先頭に立つ。
その後方では、追走集団から飛び出したトムス・スクインシュ(ラトビア)とオスカー・オンリー(イギリス)、ベン・ヒーリー(アイルランド)が38秒差で追いかけ、グループ・ファンデルプールは53秒差。個人TTモードへと移行したポガチャルは、大観衆からの声援を受けながら激走。最終ラップに入る頃に、オンリーが脱落した第1追走との差は1分2秒まで拡大した。
そして最後のベルフシュトラーセとウィティコンの登りを悠々とこなしたポガチャルは、テクニカルな下りも危なげなくクリアする。最終ストレートに突入すると、後ろを振り返り勝利を確信。何度もガッツポーズを繰り返しながら声援に応え、信じられないと手で口を覆い、最後は雄叫びを上げながらフィニッシュラインを通過した。
表彰台の位置を争う戦いは、残り1.5km地点でベン・オコーナー(オーストラリア)がアタック。それを追いかける選手はいなかったため、今年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合2位と躍進したオコーナーが2位。小集団のスプリントで先着したファンデルプールが3位で、2年連続の表彰台に上がっている。
1974年のエディ・メルクス(ベルギー)、1987年のステファン・ロッシュ(アイルランド)に続く、史上3人目となるトリプルクラウン(同一年にジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、世界選手権で優勝)を達成したポガチャル。
「信じられないことが起きた。(成功と言える)シーズンを送っていたこともあり、自分自身やチームからプレッシャーを感じていた。もちろん計画の上で実行した走りではない。レースが早い段階で動き、自分でも何を意図しての動きなのかわかっていなかった。だが流れに身を任せ、運良く勝つことができた。とてもタフなレースだったよ」と言うポガチャル。
また「何年もツールや他のレースを狙い、世界選手権を明確な目標にしたことはなかった。だが今年は全てがスムーズに進んだ。ナショナルチームの皆に感謝したい」と語ったポガチャル。表彰台の上で自身初となるアルカンシエルに袖を通し、スロベニア国歌を歌った。
2024年の世界王者を決めるレースはヴィンタートゥールを出発し、チューリッヒを通る26.9kmコースを7周半する273.9km。周回コースには最大勾配17%のチューリッヒ・ベルフシュトラーセ(距離800m/平均7.1%)と最大20%のウィティコン(距離2.6km/平均5.3%)が含まれ、その他にも細かいアップダウンが獲得標高差は4,470mまで引き上げた。
連日降り続いた雨はなく、それでも気温は13度とジレやアームウォーマーが必要なほど肌寒い。単騎での出場となった新城幸也を含む195名が並んだスタート地点の先頭には、地元スイスチームが横並びとなり、女子ジュニアロードレースの落車で命を落としたミュリエル・フラー(スイス)への黙祷が捧げられる。そして現地時間の午前10時40分にスタートが切られた。
ヴィンタートゥールの北側に設定された33.5kmのコースでは、逃げを目指すアタックと吸収が繰り返される。周回コースへと南下する約40km地点でようやく地元スイス出身のシルヴァン・ディリエら6名の逃げグループが形成。その中には最後の世界選手権に臨むシモン・ゲシュケ(ドイツ)や2022年にTT世界選手権を制したトビアス・フォス(ノルウェー)が入り、メイン集団は優勝候補のタデイ・ポガチャルを擁するスロベニアが先導した。
いつもと異なるジャージを着て、いつもとは異なるチームで走る影響からか平坦路で複数の落車が発生する。それに巻き込まれたペリョ・ビルバオ(スペイン)が身体を痛めながらも再スタートする一方で、残り213km地点ではジュリアン・アラフィリップ(フランス)が落車。過去に連覇の経験があるアラフィリップはチューリッヒの周回コースに入る前に、レースを去る不運に見舞われた。
また出場選手の中で最多となる16回目の世界選手権に臨んだ新城も落車し、骨折はなかったものの膝や肩を負傷。そのままリタイアを選んでいる。
レッドブル・ボーラ・ハンスグローエに移籍するヤン・トラトニク(スロベニア)の集団牽引には、入れ替わるようにヴィスマ・リースアバイクへ加入するヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)が力を貸す。逃げとのタイム差は5分43秒を最大に、4分59秒差でチューリッヒの周回コースに突入。逃げ集団への合流を目指したマルクス・パジュール(エストニア)とロベルト・ゴンザレス(パナマ)が残り159km地点でプロトンに吸収される頃に、その差は3分21秒まで縮まった。
普段よりも身体を絞って臨んだマチュー・ファンデルプール(オランダ)が息を潜めるプロトンからは、残り129km地点でパブロ・カストリーリョ(スペイン)が飛び出す。今年のブエルタ・ア・エスパーニャで区間2勝とワールドチームへの移籍が噂されるカストリーリョの動きは決まらず、逃げとのタイムが一気に縮まったメイン集団からジェイ・ヴァイン(オーストラリア)の動きをキッカケに10名の追走集団を形成された。
残り104km地点で追走集団は先頭のディリエたちに合流。一方、2分8秒後方を走るプロトンからはカスパー・アスグリーン(デンマーク)が飛び出し、これが引き戻されると同時にポガチャルがアタック。反応したクイン・シモンズ(アメリカ)とアンドレア・バジオーリ(イタリア)を引き離したポガチャルは、先頭集団から下がったトラトニクに合流した。
トラトニクのアシストを受けたポガチャルは残り91kmで先頭集団に合流し、それを1分差で追うプロトンではカンペナールツやオランダがペースを作る。逃げ集団とプロトンは38秒差でラスト3周目に突入。そして逃げ集団を先導したトラトニクが残り78km地点で役割を終えると、ポガチャルがチューリッヒ・ベルフシュトラーセ(距離800m/平均7.1%)で加速した。
ポガチャルの登坂スピードに追従できたのは、同じUAEチームエミレーツに所属するパヴェル・シヴァコフ(フランス)ただ1人。逃げを捉え、プロトンというよりも追走集団となった後方の人数は16名まで絞られ、ファンデルプールが自ら積極的にペースを作る。その中にはレムコ・エヴェネプール(ベルギー)がアシストであるマキシム・ファンヒルスと共に入り、ライバルたちに追走の協力を要請した。しかしうまく協調態勢を築くことはできなかった。
順調に先頭交代を繰り返すポガチャルとシヴァコフはラスト2周回に突入。しかし直後のチューリッヒ・ベルフシュトラーセでシヴァコフが遅れ、残り51.6kmでポガチャルが単独先頭に立つ。
その後方では、追走集団から飛び出したトムス・スクインシュ(ラトビア)とオスカー・オンリー(イギリス)、ベン・ヒーリー(アイルランド)が38秒差で追いかけ、グループ・ファンデルプールは53秒差。個人TTモードへと移行したポガチャルは、大観衆からの声援を受けながら激走。最終ラップに入る頃に、オンリーが脱落した第1追走との差は1分2秒まで拡大した。
そして最後のベルフシュトラーセとウィティコンの登りを悠々とこなしたポガチャルは、テクニカルな下りも危なげなくクリアする。最終ストレートに突入すると、後ろを振り返り勝利を確信。何度もガッツポーズを繰り返しながら声援に応え、信じられないと手で口を覆い、最後は雄叫びを上げながらフィニッシュラインを通過した。
表彰台の位置を争う戦いは、残り1.5km地点でベン・オコーナー(オーストラリア)がアタック。それを追いかける選手はいなかったため、今年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合2位と躍進したオコーナーが2位。小集団のスプリントで先着したファンデルプールが3位で、2年連続の表彰台に上がっている。
1974年のエディ・メルクス(ベルギー)、1987年のステファン・ロッシュ(アイルランド)に続く、史上3人目となるトリプルクラウン(同一年にジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、世界選手権で優勝)を達成したポガチャル。
「信じられないことが起きた。(成功と言える)シーズンを送っていたこともあり、自分自身やチームからプレッシャーを感じていた。もちろん計画の上で実行した走りではない。レースが早い段階で動き、自分でも何を意図しての動きなのかわかっていなかった。だが流れに身を任せ、運良く勝つことができた。とてもタフなレースだったよ」と言うポガチャル。
また「何年もツールや他のレースを狙い、世界選手権を明確な目標にしたことはなかった。だが今年は全てがスムーズに進んだ。ナショナルチームの皆に感謝したい」と語ったポガチャル。表彰台の上で自身初となるアルカンシエルに袖を通し、スロベニア国歌を歌った。
ロード世界選手権2024 男子エリートロードレース結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) | 6:27:30 |
2位 | ベン・オコーナー(オーストラリア) | +0:34 |
3位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ) | +0:58 |
4位 | トムス・スクインシュ(ラトビア) | |
5位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー) | |
6位 | マルク・ヒルシ(スイス) | |
7位 | ベン・ヒーリー(アイルランド) | +1:00 |
8位 | エンリク・マス(スペイン) | +1:01 |
9位 | クイン・シモンズ(アメリカ) | +2:18 |
10位 | ロマン・バルデ(フランス) | |
DNF | 新城幸也 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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