2024/09/17(火) - 13:55
9月16日(月・祝)、全日本大学対抗選手権自転車競技大会(インカレ)のロードレースが群馬サイクルスポーツセンターで開催された。男子は残り2周まで逃げ続けた森本凜太郎(日本大学)を吸収してのスプリント勝負を渡邉和貴(順天堂大学)が制して優勝。女子は池田瑞稀(早稲田大学)が渡部春雅(明治大学)を下して優勝した。大学総合は、男子は日本大学、女子は早稲田大学が優勝した。
全日本大学対抗選手権自転車競技大会(通称インカレ)のロードレースは、当初9月1日に長野県の大町市美麻地区での開催が予定されていた。しかし台風の接近が予想されていたため延期となり、9月16日に群馬サイクルスポーツセンターの6kmサーキットで開催されることになった。同地でのインカレロード開催は2021年以来3年ぶりとなる。
朝は青空が広がっていたものの、午前8時の女子のレーススタートに合わせるかのように濃霧が立ち込め、その後一度は晴れ間が戻った。しかし男子のレーススタートに合わせて雨が降り出し、レース中は断続的に降り続けた。
女子 池田瑞稀が早稲田大学に10年ぶりのロード優勝をもたらす
女子のレースは10周60km。先頭から1分という厳しい制限時間もあって、1周目から毎周回人数が減っていく展開となり、レース半ばの4周目までに集団は10名未満まで絞られた。その後さらに人数が絞られ、レース後半に入った時点で残ったのは渡部春雅(明治大学)、大蔵こころ、石田唯、池田瑞稀(以上早稲田大学)の4名。
終盤、大蔵が遅れて3名となって最終周回へ。石田が落車して遅れるも、大蔵が追いついて3名で残り1kmへ。最後は池田と渡部のスプリント勝負となり、池田が先着して優勝。早稲田大学が2014年の合田祐美子以来10年ぶりのロードレース優勝となった。
池田瑞稀 コメント
「終盤まで絞られて4人になったところから(石田)唯さんが引いてくれてペースを上げてくれた。自分も脚を使ってレースを展開したかったけれど、最後のスプリントだけになってしまったのは自分的には残念。腰が限界になっていてラスト1周もなんとかこらえてという感じで粘りきれたのは良かったけれど、もっと実力をつけなければと思った。最後のスプリントは獲るしかないと思って最後の最後まで踏み切った。
早稲田大学が一丸となって総合優勝を勝ち取ることが出来て、みんなに感謝。(垣田)真穂ちゃんは今1人で頑張ってると思うけれど、真穂ちゃんならやっていけると思うし、自分も頑張ろうと思う。今は怪我なく頑張って欲しいという気持ち」
男子 渡邉和貴が順天堂大学に12年ぶりのロード優勝をもたらす
4月に行われたJプロツアーと同じ25周150kmで行われた男子ロードレースは、直前に降り始めた大雨の中スタート。直後に飛び出した森本凜太郎(日本大学)が後続との差を広げて単独先行していく。
「誰も行かないようだったので、自分から行こうと飛び出した。先行で行ける自信があった」と言う森本は、雨でスリッピーな路面を警戒してかペースのあがらないメイン集団をよそに、9分20秒台のラップタイムを刻みながら周回。「タイムトライアルのようなずっと踏む系の走り方は得意。この天気なら逃げたら絶対決まると思ったし、1人でも自信があった」と言うように、レース中盤までに5分ものタイム差…およそ半周のリードを築いた。レース距離100kmを経過しても森本のペースは衰えず、他校の監督から驚愕の声も聞かれた。
残り7周となる19周目、メイン集団からは追走の動きが出始める。渡邉和貴(順天堂大学)、中島渉(立教大学)、山田拓海(早稲田大学)、森田叶夢(京都産業大学)ら8名の追走集団が形成され、森本とのタイム差を縮め始める。その後メイン集団から宇田川塁(法政大学)らが合流し、追走集団は10名以上まで人数を増やす。
追走集団には日本大学の北嶋桂大と鎌田晃輝がチェックに入るものの、縮小し始めた差は止められず、残り6周時点で森本との差を2分台まで詰める。メイン集団は追走にメンバーを送り込めなかった明治大学が中心となってペースアップしていく。
残り4周、ここまでペースを維持してきた森本だったが、「2時間30分を越えたあたりから脚が重くなって回らなくなってきた」と振り返るように、ラップタイムが10分台まで落ち、後続との差が一気に縮まる。残り3周、追走集団を吸収したメイン集団が森本との差をさらに縮めて50秒とする。そして残り2周、140km以上に及ぶ森本の逃げが吸収され、勝負は振り出しに戻った。
最終周回、鎌田が前年優勝の阿部源(日本大学)を連れて集団先頭で残り1kmを通過。その後ろでは各大学がポジション争いをしながら最後のスプリント勝負へ。残り100m、ホームストレートに先頭で現れたのは渡邉。右から中島、左から阿部が並びかけるも、勝利を確信した渡邉がフィニッシュライン直前で両腕を広げた。順天堂大学としては2012年の中尾佳祐以来12年ぶりとなるインカレロード優勝となった。
渡邉和貴 コメント
「森本選手の逃げは順天堂大としては予想通りの展開だったが、5分も差が開いたのは予想外だった。集団から追走の集団が必ず出来ると思っていたので、終盤にうまく飛び出して毎周回30秒ずつくらい縮めていった。出来れば追走の10人くらいの集団で行きたかったが、メイン集団のペースが速くて追いつかれてしまった。
集団がひとつになることは望んでいない展開だったが、スプリントは自信があったので落ち着いて臨んだ。最後は日大の鎌田選手が先頭固定でかなり速いペースで引いていたので、その後ろ3番手あたりを維持し、ラスト100mくらいで阿部選手の後ろから早めに仕掛けた。左右から迫られていたが半車身以上離れていたので、勝ちを確信した。
美麻に向けて1年間準備してきたので、群馬に変更になって正直気が乗らないところもあった。でもこの2週間気持ちを切り替えてスプリントの練習もして臨んだ。順天堂大学としてはこれまで2位、3位はあったが、タイトルを獲れて嬉しい。今4年生なので、卒業後も選手として続けていきたい。4年のインカレ最高っす」
森本凜太郎 コメント
「1人でも自信はあったが、何人かが合流してくれて最後に抜けだすようなイメージを考えていた。昨年のインカレロードでも100km過ぎまで逃げ集団に入っていたので、今年こそと思っていた。アップダウンのあるコースやヒルクライムが得意なので、出来れば群馬よりも大町のコースの方が良かった。3年生なので来年こそ逃げて優勝したい。ヴェロリアン松山に所属しているので、JプロツアーやUCIレースでも表彰台に登ることが今後の目標」
男子は日本大学が総合4連覇達成 女子は早稲田大学が初優勝
ロードレース終了をもって2024年のインカレ自転車競技の全日程が終了し、大学対抗の総合成績が確定した。男子は日本大学が2021年以来4連覇を達成。女子は早稲田大学が優勝した。
日本大学はトラック競技では短距離・中距離を問わず選手層の厚さを感じさせ、ロードレースでは優勝こそ逃したもののレースをリードして5位以内に3名を送り込んで他校を圧倒して見せた。今年の4年生が抜けたとしても、少なくとも現時点ではその強さに陰りが見える予感はしない。
早稲田大学はパリ五輪代表の池田瑞稀と垣田真穂が原動力となって女子総合初優勝。先日EF・オートリー・キャノンデールへの加入が発表された垣田は残念ながらロードレースを欠場したが、トラック種目で築いたリードを守り切った。一方で、水谷彩奈(日本体育大学)ら1年生が強さを見せる場面もあり、今後の大学女子選手の活性化が期待される。
全日本大学対抗選手権自転車競技大会(通称インカレ)のロードレースは、当初9月1日に長野県の大町市美麻地区での開催が予定されていた。しかし台風の接近が予想されていたため延期となり、9月16日に群馬サイクルスポーツセンターの6kmサーキットで開催されることになった。同地でのインカレロード開催は2021年以来3年ぶりとなる。
朝は青空が広がっていたものの、午前8時の女子のレーススタートに合わせるかのように濃霧が立ち込め、その後一度は晴れ間が戻った。しかし男子のレーススタートに合わせて雨が降り出し、レース中は断続的に降り続けた。
女子 池田瑞稀が早稲田大学に10年ぶりのロード優勝をもたらす
女子のレースは10周60km。先頭から1分という厳しい制限時間もあって、1周目から毎周回人数が減っていく展開となり、レース半ばの4周目までに集団は10名未満まで絞られた。その後さらに人数が絞られ、レース後半に入った時点で残ったのは渡部春雅(明治大学)、大蔵こころ、石田唯、池田瑞稀(以上早稲田大学)の4名。
終盤、大蔵が遅れて3名となって最終周回へ。石田が落車して遅れるも、大蔵が追いついて3名で残り1kmへ。最後は池田と渡部のスプリント勝負となり、池田が先着して優勝。早稲田大学が2014年の合田祐美子以来10年ぶりのロードレース優勝となった。
池田瑞稀 コメント
「終盤まで絞られて4人になったところから(石田)唯さんが引いてくれてペースを上げてくれた。自分も脚を使ってレースを展開したかったけれど、最後のスプリントだけになってしまったのは自分的には残念。腰が限界になっていてラスト1周もなんとかこらえてという感じで粘りきれたのは良かったけれど、もっと実力をつけなければと思った。最後のスプリントは獲るしかないと思って最後の最後まで踏み切った。
早稲田大学が一丸となって総合優勝を勝ち取ることが出来て、みんなに感謝。(垣田)真穂ちゃんは今1人で頑張ってると思うけれど、真穂ちゃんならやっていけると思うし、自分も頑張ろうと思う。今は怪我なく頑張って欲しいという気持ち」
男子 渡邉和貴が順天堂大学に12年ぶりのロード優勝をもたらす
4月に行われたJプロツアーと同じ25周150kmで行われた男子ロードレースは、直前に降り始めた大雨の中スタート。直後に飛び出した森本凜太郎(日本大学)が後続との差を広げて単独先行していく。
「誰も行かないようだったので、自分から行こうと飛び出した。先行で行ける自信があった」と言う森本は、雨でスリッピーな路面を警戒してかペースのあがらないメイン集団をよそに、9分20秒台のラップタイムを刻みながら周回。「タイムトライアルのようなずっと踏む系の走り方は得意。この天気なら逃げたら絶対決まると思ったし、1人でも自信があった」と言うように、レース中盤までに5分ものタイム差…およそ半周のリードを築いた。レース距離100kmを経過しても森本のペースは衰えず、他校の監督から驚愕の声も聞かれた。
残り7周となる19周目、メイン集団からは追走の動きが出始める。渡邉和貴(順天堂大学)、中島渉(立教大学)、山田拓海(早稲田大学)、森田叶夢(京都産業大学)ら8名の追走集団が形成され、森本とのタイム差を縮め始める。その後メイン集団から宇田川塁(法政大学)らが合流し、追走集団は10名以上まで人数を増やす。
追走集団には日本大学の北嶋桂大と鎌田晃輝がチェックに入るものの、縮小し始めた差は止められず、残り6周時点で森本との差を2分台まで詰める。メイン集団は追走にメンバーを送り込めなかった明治大学が中心となってペースアップしていく。
残り4周、ここまでペースを維持してきた森本だったが、「2時間30分を越えたあたりから脚が重くなって回らなくなってきた」と振り返るように、ラップタイムが10分台まで落ち、後続との差が一気に縮まる。残り3周、追走集団を吸収したメイン集団が森本との差をさらに縮めて50秒とする。そして残り2周、140km以上に及ぶ森本の逃げが吸収され、勝負は振り出しに戻った。
最終周回、鎌田が前年優勝の阿部源(日本大学)を連れて集団先頭で残り1kmを通過。その後ろでは各大学がポジション争いをしながら最後のスプリント勝負へ。残り100m、ホームストレートに先頭で現れたのは渡邉。右から中島、左から阿部が並びかけるも、勝利を確信した渡邉がフィニッシュライン直前で両腕を広げた。順天堂大学としては2012年の中尾佳祐以来12年ぶりとなるインカレロード優勝となった。
渡邉和貴 コメント
「森本選手の逃げは順天堂大としては予想通りの展開だったが、5分も差が開いたのは予想外だった。集団から追走の集団が必ず出来ると思っていたので、終盤にうまく飛び出して毎周回30秒ずつくらい縮めていった。出来れば追走の10人くらいの集団で行きたかったが、メイン集団のペースが速くて追いつかれてしまった。
集団がひとつになることは望んでいない展開だったが、スプリントは自信があったので落ち着いて臨んだ。最後は日大の鎌田選手が先頭固定でかなり速いペースで引いていたので、その後ろ3番手あたりを維持し、ラスト100mくらいで阿部選手の後ろから早めに仕掛けた。左右から迫られていたが半車身以上離れていたので、勝ちを確信した。
美麻に向けて1年間準備してきたので、群馬に変更になって正直気が乗らないところもあった。でもこの2週間気持ちを切り替えてスプリントの練習もして臨んだ。順天堂大学としてはこれまで2位、3位はあったが、タイトルを獲れて嬉しい。今4年生なので、卒業後も選手として続けていきたい。4年のインカレ最高っす」
森本凜太郎 コメント
「1人でも自信はあったが、何人かが合流してくれて最後に抜けだすようなイメージを考えていた。昨年のインカレロードでも100km過ぎまで逃げ集団に入っていたので、今年こそと思っていた。アップダウンのあるコースやヒルクライムが得意なので、出来れば群馬よりも大町のコースの方が良かった。3年生なので来年こそ逃げて優勝したい。ヴェロリアン松山に所属しているので、JプロツアーやUCIレースでも表彰台に登ることが今後の目標」
男子は日本大学が総合4連覇達成 女子は早稲田大学が初優勝
ロードレース終了をもって2024年のインカレ自転車競技の全日程が終了し、大学対抗の総合成績が確定した。男子は日本大学が2021年以来4連覇を達成。女子は早稲田大学が優勝した。
日本大学はトラック競技では短距離・中距離を問わず選手層の厚さを感じさせ、ロードレースでは優勝こそ逃したもののレースをリードして5位以内に3名を送り込んで他校を圧倒して見せた。今年の4年生が抜けたとしても、少なくとも現時点ではその強さに陰りが見える予感はしない。
早稲田大学はパリ五輪代表の池田瑞稀と垣田真穂が原動力となって女子総合初優勝。先日EF・オートリー・キャノンデールへの加入が発表された垣田は残念ながらロードレースを欠場したが、トラック種目で築いたリードを守り切った。一方で、水谷彩奈(日本体育大学)ら1年生が強さを見せる場面もあり、今後の大学女子選手の活性化が期待される。
全日本大学対抗選手権自転車競技大会ロードレース 結果
男子ロードレース(150km) | ||
1位 | 渡邉和貴(順天堂大学) | 3時間54分11秒 |
2位 | 中島 渉(立教大学) | +0秒 |
3位 | 阿部 源(日本大学) | |
4位 | 岡本勝哉(日本大学) | |
5位 | 柚木伸元(日本大学) | |
6位 | 宇田川塁(法政大学) | |
7位 | 末吉陽生(京都産業大学) | |
8位 | 山田拓海(早稲田大学) | |
9位 | 大室 佑(中央大学) | |
10位 | 津留 崚(鹿屋体育大学) | |
女子ロードレース(60km) | ||
1位 | 池田瑞紀(早稲田大学) | 1時間45分23秒 |
2位 | 渡部春雅(明治大学) | +0秒 |
3位 | 大蔵こころ(早稲田大学) | |
4位 | 石田 唯(早稲田大学) | +55秒 |
5位 | 日吉愛華(中京大学) | +3分25秒 |
6位 | 新沼杏菜(順天堂大学) | +3分40秒 |
全日本大学対抗選手権自転車競技大会 総合成績
男子 | 女子 | |
1位 | 日本大学 114p | 早稲田大学 65p |
2位 | 中央大学 73p | 鹿屋体育大学 31p |
3位 | 早稲田大学 51p | 日本体育大学 27p |
text&photo:Satoru Kato
フォトギャラリー
Amazon.co.jp