グロータックがEQUALのカーボンリムとディスクハブに、グロータックが用意するスポークとニップルがセットになったEQUAL手組ホイールキットを販売開始している。ロードレースやサイクリングで活躍してくれる手組ロードホイール3種を乗り比べインプレッションしていく。



グロータック EQUALカーボンホイール photo:Makoto AYANO

グロータックはインドアサイクリングでも実走感を感じられる4本ローラーをはじめ、リムやハブ、ペダル、コントロールレバー、ディスクブレーキキャリパーなどを展開しているEQUALシリーズなど、独創的なパーツづくりでコアなサイクリストから人気を集めるブランドだ。

EQUALシリーズのカーボンリム、そしてディスクハブは単品販売だけでなく、グロータックが用意するスポークとニップルがセットになった「EQUAL手組ホイールキット」というパッケージが用意され、販売店で組み上げることができるサービスが開始されている。

「オートプリロード機能」と「ケミカルラビリンスシール」を採用しているEQUALディスクハブ photo:Makoto AYANO

EQUALディスクハブは「オートプリロード機能」と「ケミカルラビリンスシール」を採用していることが特徴。「オートプリロード機能」とは、その名のとおりベアリングに自動で与圧がかかる構造で、この機能によってメンテナンス時に玉当たり調整をする必要から解放される。

もう一方の「ケミカルラビリンスシール」とはベアリングの前にラビリンス構造のシールリングを配置し、その間をグリスで埋めることで、構造とケミカル両方を利用して、防水防塵性を高める設計だ。シールリング部分は樹脂やゴムなど劣化しやすい材料を使用していないため、部品の交換をすることなくメンテナンスを行うだけで防水防塵性能を蘇らせられるという。

シマノHGとスラムXD-XDR、カンパニョーロ(~12S)の3種類のフリーボディが用意される photo:Makoto AYANO

搭載されるフリーボディはトラブル時でも動作できる冗長性の観点から、信頼性の高い「スタンダードな3爪・36ラチェット」タイプを採用している。シマノHG、スラムXD-XDR、カンパニョーロ(~12S)の3種類のフリーボディが用意され、バイクのコンポーネントを変更したときなどもフリーボディを差し替えるだけで、そのままホイールを使い続けることが出来る。

キャップレスの一体型シャフトを採用することで、ホイールの取り外し時などに予期せぬキャップ外れ、そして外れたキャップを紛失するといったトラブルを未然に防止。さらに、シャフトのエンド部の剛性も高まっている。堅牢性を備える一方で整備性にも優れており、六角レンチを使用するだけで簡単に分解できるため、メンテナンスも容易。

六角レンチを使用することで分解ができるため、簡単にメンテナンス可能 photo:Makoto AYANO

ハブのカラーはブルーとレッド、ゴールド、シルバー、グレー、ブラックの6色から選ぶことができる。スポークホール数は24H仕様のみ展開されていたが、28H仕様が近日中に追加予定となっている。価格はフロントが16,280円(税込)、リアが27,500円(税込)となっている。

続いてはEQUALカーボンリム。東レカーボンT700とT800を組み合わせ、軽量で剛性の高いバランスの取れたリムに仕上がっている。用意されるのはクリンチャーやチューブレス、チューブラーの25mm幅のロード用が3種類がラインアップされ、チューブレスではフックドとフックレス仕様も選択可能だ。また、シクロクロス専用にタイヤ接着面のアールを調整したシクロクロス用の28mm幅のリムも展開されている。

EQUALカーボンリムのリムハイトは30mmや40mm、45mm、50mmなどが展開される photo:Makoto AYANO

ホール数は24Hと28Hが展開され、リムハイトは30mmや40mm、45mm、50mmなどが展開される。フロントは30mmハイト、リアは50mmハイトなど前後異なるリムを選択することも可能だ。これらの仕様の組み合わせの結果、計14種類のEQUALカーボンリムが用意されている。価格はどのモデルも共通で、38,500円(税込)となっている。

スポークは「SAPIM CX-RAY」と「SAPIM RACE 14G」の2種類から選択可能。カラー展開はエアロスポークの「SAPIM CX-RAY」はブラックとシルバーの2種類、丸スポークの「SAPIM RACE 14G」はシルバーのみが展開される。

EQUAL チューブレスリムテープを装着することでチューブレスホイールとして運用できる photo:Makoto AYANO

ニップルは「SAPIM Polyax Aluminium Secure Lock #14 14mm」が用意される。カラーはブラックとシルバー、レッド、ブルー、グリーン、オレンジ、ゴールド、パープルの8色展開で、前後で異なるカラーを選択可能となっている。

現状では取扱販売店経由のみで販売されている。将来的に近くに取扱販売店がない方向けにWebオーダーシステムが稼働され、完成モデルをCGで確認しながら、好みのカスタマイズをする事が可能となる予定とのこと。それでは、編集部インプレションに移っていこう。



―編集部インプレッション

多種多様な完組みホイールをインプレッションしてきたCW編集部員の高木がグロータック EQUALカーボンホイールをテストしていく photo:Gakuto Fujiwara

今回は、これまで多種多様な完組ホイールをインプレッションしてきたCW編集部員の高木が、グロータック EQUALカーボンホイールのテストを行っていく。

グロータックがテーマに掲げるのは「手組・ルネサンス」。以前のインタビューで木村代表は「完組ホイールが全盛期ではあるが、各社のホイールが画一的になってしまったことで個性がなくなった。だからこそ今、ライダー一人ひとりに合わせてハンドビルドする手組みホイールの良さを改めて知ってもらいたい」とこのプロダクトに込めた思いを語っていた。

大学生の頃ハードなトレーニングを行っていた時期に、完組みのホイールのスポークが折れていた経験が多くあった。その時、トレーニングホイールにはスポーク本数が多く頑丈でありながらレーシーな走りをしてくれる手組ホイールという選択肢に辿り着いた。

カンパニョーロ RECOADのハブに、サピムのCX RAY、マヴィックのOPEN PROのCDセラミックカラーを組み合わせた32ホールの手組ホイール。当時、自分で組み上げていたこともあり、手組ホイールの魅力や奥深さは良く知っている。しかし、ディスクブレーキが主流となった今、手組ホイールに興味はあれども、リムブレーキ時代と比べると選択肢は激減している。

30mmリムハイトは瞬発力に優れ、登りで飛び道具として使用できる photo:Gakuto Fujiwara

特にハブはその問題が顕著だと言える。リムブレーキ時代であればDURA-ACEやRECORDで組めば間違いなかった。しかし、完組ホイールがメインとなっている昨今、ディスクブレーキ対応手組ハブの世界で定番と言えるようなモデルはあるのだろうか。そして、グロータックのEQUALハブはそのポジションに就くだけのポテンシャルを秘めたプロダクトであると感じる。

今回はロードレースからヒルクライムレース、普段のサイクリングで活躍してくれる30mmと40mm、50mmの3種類のリムハイトのEQUALカーボンホイールを、それぞれインプレッション。テストホイールはクリンチャー仕様リム「RMCD-292240-A」。装着したタイヤはパナレーサーのAGILESTの700×28C、チューブは軽量で耐パンク性に優れるエクサー TPUチューブの組み合わせでテストを実施していく。

リムハイト30mmはゼロ発進で加速が良く、街中の信号でストップアンドゴーを繰り返していても、苦に感じることなく軽快感を強く感じとれる。低速からスムーズに加速し、35km/hくらいまでの速度域での巡航もお手の物。

関東近郊の峠をいくつか走ってきたが、ヒルクライムでは緩斜面はもちろん急斜面も気持ちよく走り続けられる。ヒルクライムレースに参戦する方も、週末サイクリングで山々を駆け巡る走り方を楽しむ方にもお勧めできる、山岳系ホイールとしてこの30mmハイト仕様は見た目通りの性能を発揮してくれる。

エアロスポークの「SAPIM CX-RAY」を使用し、反応性に優れる乗り味に photo:Gakuto Fujiwara

続いてはラインアップでは中間となる40mmハイトモデル。平坦での加速感も良く、巡航性能も良い。登りにおいても軽快さは失っておらず、下りでは程よくスピードが伸びていき、コーナーリングもしやすい。総じてトータルバランスに優れたホイールだと感じた。

アップダウンが多く様々なコースのロードレースに対応してくれるためオールラウンドな脚質のレーサーにおすすめしたい。また、週末に登りも平坦もあるバラエティーに富んだコースを走り、登りに比重を置きつつも、下りや平坦でもエアロ効果を求めたい。そんなサイクリストにもお勧めだ。

40mmリムハイトは、平坦では加速感と巡航性能に優れ、登りでは軽さが武器になる photo:Gakuto Fujiwara

最後に50mmハイトモデルについて。ラインアップでもっとディープリムである50mmはスピードの伸びが特に良い。初速からエアロ効果を感じつつ気持ちよく加速してくれるが、特に30~40km/hから更にスピードが伸びるため、気持ちよく高速巡航やスプリントができる。

このホイールが活躍するのは、平均時速が速いロードレースやクリテリウム、サーキットエンデューロなどだろう。また、普段のライドにおいても、サイクリングロードや平坦なコースを走ることの多い方はこのホイールがぴったり。

重量に関して、チューブレス・クリンチャー仕様では30mmは1,334g、40mmは1,386g、50mmは1,458g。チューブラー仕様の30mmは1,174g、40mmは1,256g、50mmは1,298gとなっており、より軽量なカーボンホイールが欲しいという方は、チューブラー仕様も視野に入ってくるだろう。

グロータックのホイールオーダーシステムを利用すれば、EQUAL手組ホイールキットはハブは6色から、リムは14種類から、ニップルは8色から、スポークは2種類からオーダーできる。愛車のフレームカラーに合わせたり、フレームカラーがホワイトやブラックであれば、あえて挿し色になるカラーを選択したり、オリジナルカラーのホイールを作ることもできる。

30~40km/hからの更なるスピードの伸びが特徴の50mmリムハイト photo:Gakuto Fujiwara

また、完組みホイールではなく手組みホイールであるため、スポークテンションを高くも低くも設定できる。スポークテンションを高めれば、反応性が良くレーシーな走りができるホイールになる。その一方で、スポークテンションを低くすれば、しなやかかつマイルドな乗り味になるため、週末サイクリングにぴったりなホイールになってくれるだろう。組み合わせるフレームの剛性感に応じた味付けも自由自在だ。

EQUALカーボンホイールのコンセプトである「多くの選択肢を用意し、一人ひとりに合ったホイールを作ってもらう」とあるように、自分好みの乗り味にカスタマイズしながらホイールを組み上げることが可能だ。

前後で異なるリムハイト、例えばフロントは40mmハイト、リアは50mmハイトといった組み合わせでオーダーすることも可能で、ユーザーのニーズに寄り添っていることもポイント。価格はオープン価格となっている。

それぞれの性格もはっきりしているので、複数本のホイールを用意し、状況に合わせて履き替えるといった遊び方も楽しみやすい。ホイールは走りに大きな影響を与えるパーツであり、作業のしやすさという側面では最も交換しやすいパーツでもある。

価格面で手が届きやすいこのシリーズは、パーツ交換による走りの変化を楽しむというスポーツバイクの醍醐味の一つを体感させてくれるという意味で大きな役割を果たしてくれるのではないだろうか。



グロータック EQUALカーボンホイール
リムハイト:30mm、40mm、50mm
重量(クリンチャー・チューブレスレディ仕様)1,334g(30mm)、1,386g(40mm)1,458g(50mm)
重量(チューブラー仕様):1,174g(30mm)、1,256g(40mm)、1,298g(50mm)
価格:オープン価格
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