「あまり家族の前で勝てていなかったので嬉しい」と逃げ切り勝利を飾ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)は語る。「悔しいが悪くない結果」と言うパシェなど、ブエルタ10日目を選手たちのコメントで振り返ります。



ステージ優勝&マイヨプントス ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)

積極的に逃げを目指し、形成された5名の逃げに乗ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

何度も家族に迎えられたことはあるのだが、これまであまり勝利を見せられていなかった。今回はたまたま時間ができた家族が駆けつけてくれたのだが、今日のステージは僕に適したレイアウトではなかった。だから勝つには運が必要と思っていた。2人の息子と共に表彰台に上がる、忘れられない勝利となったよ。

―個人タイムトライアルや集団スプリントで勝利を狙い、この山岳ステージを制した。

それが自転車ロードレースの好きな所。集団スプリントは興奮するし、TTは準備と細部に至るまでの集中が必要だ。そして今日のようなステージは、敵の動きを読むピュアなレースが繰り広げられる。まさにユースの時に学ぶ技術だ。

区間3勝目を手に入れたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

1つ目の登りの前に、逃げるために脚を使った。頂上の手前で最後のアタックを仕掛け、約50km地点でようやく強い選手を含む集団が形成された。もしプロトンに吸収されれば僕のレースは終わりだと思っていた。逃げが成立して自由が与えられたのだが、皆疲れているように見えた。だからこそ自分に有利な状況になったと思ったよ。

5名集団になってから全員がスプリントが得意な僕のことを見ていた。だからこそ保守的にならず、攻めた方がいいと判断したんだ。カンタン(パシェ)を2人になってからも協調することができた。彼は先頭交代を躊躇わなかったので彼もまたスプリントに自信があるのだと思った。彼を一切過小評価することなかったよ。彼はすごく強かった。

2人の子どもと表彰台に上がったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

―なぜこれまでブエルタに出場しなかったのか?

キャリア初期の頃はシクロクロスに注力しており、その後はクラシックレースとツール・ド・フランスがターゲットとなった。その2つに集中するとブエルタは選択肢から外れてしまう。だが今年は春の怪我もあり、イレギュラーなシーズンとなったから出ることができた。

―ブエルタの後のレーススケジュールは?

母国ベルギーで行われるヨーロッパ選手権に出場し、9月末の世界選手権でまだ良いコンディションであることを願っている。そこではエヴェネプールというエースがいるが、集団で脅威となることはできる。コースは僕向きではないものの、勝利を狙いにいくつもりだよ。

ステージ2位 カンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)

ファンアールトに追従したカンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos

ワウト(ファンアールト)は全てができる、倒すのが難しい選手。だからフィニッシュまで力を尽くした。もちろん彼とスプリントになれば2位になることは分かっていた。だが悪くない結果だよ。

登りもスプリントも強い彼を相手に、僕ができることはあまりない。2年前のブエルタでも2位になり、この総合(山岳)ステージで勝ちたかった。今年はツールでも逃げを狙い(第2ステージで3位)、ここでも勝利を目指した。大会はあと2週間もあるのでまた狙いに行きたい。

―ファンアールトがアタックした瞬間、どう思ったか?

最初、中間スプリントだけを狙いに行ったのだと思った。だが逃げにスプリントポイントを狙う選手がいなかったので、登りの前にリードがほしいのだろうと考えたんだ。「いま彼を追わなければ2度と追いつくことはできない」と思ってチェイスした。

プロトンの中でフィニッシュするよりも、彼と戦い負ける方がいい。だからあまり考えずにフィニッシュを目指したよ。

ステージ3位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)

逃げから3位に入ったマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) photo:UAE Team Emirates

今日のステージで何か前向きなことを言うのであれば、調子が良いということ。動き(ファンアールトのアタック)があった瞬間は力を出せず、2人についていくことができず残念に思っている。

とても厳しいレースかつ、逃げ集団が形成されるまでハードな戦いが続いた。幸運にも適切な動きに乗ることができた。最後の登りに集中していたのだが、その前にファンアールトにやられてしまった。

マイヨロホ ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)

マイヨロホを着てプロトンを走るベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) photo:CorVos

今日は完璧なレースとなった。総合トップ10に入る選手たちも逃げに興味を示し、逃げ集団が形成されるまで長い時間がかかった。でも僕らチームは良いマネジメントができたよ。5分前後の差となった理由は僕らだけでなく、他のチームが2つ目の山岳でペースを上げたから。でもその動きは突然止まったんだ。

明日の終盤に登場する登り(3級山岳)は厳しく、もっと決定的な動きが起こるだろ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos