ラストに2つの2級山岳を駆け上がったツール・ド・フランス・ファム第7ステージで、マイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)が逃げ切り勝利。フォレリングはニエウィアドマとのタイム差を1分15秒まで縮めている。



8月17日(土)第7ステージ
シャンパニョル〜グラン・ボルナン 166.4km(山岳/山頂フィニッシュ)


マイヨジョーヌで第7ステージに臨むカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:CorVos

ツール・ド・フランス・ファム2024第7ステージ コースプロフィール image:A.S.O.
ツール・ド・フランス・ファム・アヴェク・ズイフト(UCIワールドツアー)の第7ステージは山岳2連戦の初日。レマン湖近くの街シャンパニョルからグラン・ボルナンに向かうコースは今大会最長距離となる166.4kmで、最初の山頂フィニッシュだ。

コース前半に1級山岳を越え、4級、3級と低難易度の山岳をクリア。ラストは2級山岳コル・ド・サン・ジャン・ド・シクスト(距離5.4km/平均5.1%)と、2級山岳グラン・ボルナン(距離7km/平均5.1%)を連続して登坂する。逃げ切りに適しているのはもちろん、総合順位がシャフルされても不思議ではない難易度だ。

129名が出走したこの日は、スタート後わずか6kmでアニヤ・ロウ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル)を中心とする落車が発生する。これによりロウとパリ五輪のTTで銀メダリストに輝いたアンナ・ヘンダーソン(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)を含む3名がリタイア。不穏な雰囲気のなか逃げを目指したアタックが決まらず、2時間に渡りひと塊のままレースは進んだ。

6名の逃げに乗り、マイヨヴェールをほぼ確定させたマリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

最初の1級山岳ではマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)を、プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)が抑えて先頭通過。2位通過で山岳ポイントを8点加算したヘキエーレは下りで飛び出し、チームメイトのジュリー・ファンデフェルデ(ベルギー)やマリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)を含む6名で逃げ集団を形成した。

4級山岳はヘキエーレが先頭で通過し、ファンデフェルデが長時間牽引した逃げは5分のリードを得る。続く中間スプリントでは狙い通りフォスがトップ通過で25点をゲットし、序盤でシャーロッテ・コール(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)がリタイアしたため、フォスは着用するマイヨヴェール(ポイント賞)をほぼ手中に収めた。

フォレリングの様子を伺いながらプロトンの先頭に立ったカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:A.S.O.

プロトンではSDワークス・プロタイムやキャニオン・スラム、フェニックス・ドゥクーニンクを中心にペースを上げ、逃げとのタイムギャップを縮めていく。レース後半では第5ステージで落車し、マイヨジョーヌを失ったデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム)のためにロレーナ・ウィーベス(オランダ)が集団先頭で牽引するシーンも。しかし順調にローテーションを回す逃げのペースは落ちることなく、残り15km地点で3分22秒差をキープした。

最後から2つ目の2級山岳に入り、一人また一人と逃げから選手が遅れていく。そしてフィニッシュまで残り13kmでファンデフェルデが役割を終え、ヘキエーレが単独先頭に立った。

ヘキエーレは2級山岳を通過し、最後の2級山岳グラン・ボルナン(距離7km/平均5.1%)に突入する。プロトンではFDJスエズの作るハイペースに人数が絞られるなか、残り6.9kmでフォレリングがライバルたちの脚色を伺うようにアタック。しかしマイヨジョーヌのカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)らを引き離すことはできなかった。

残り13kmで単独先頭に立ったジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

頭を抱えながらフィニッシュしたジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

残り3km地点を過ぎてヘキエーレとプロトンとの差は1分54秒。パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)やフォレリングが散発的にアタックしたため集団のペースは上がらず、マイヨアポワを纏ったヘキエーレが涙を流しながらフィニッシュした。

「嬉しすぎて言葉がない。夢の中にいるような気分。本当にクレイジーだよ。チームメイトはもちろん、一緒に逃げたジュリー(ファンデフェルデ)に感謝したい。彼女のおかげで最後の山岳に向けて脚を溜めることができた。この勝利は彼女のものでもある」と、フィニッシュ直後に倒れ込みながら喜んだヘキエーレは語った。

ヘキエーレはベルギー出身の28歳で、総合優勝を除けばこれがプロ初勝利。今シーズンはボルタ・ア・カタルーニャ・フェミナとジロ・デ・イタリア・ウィメンで山岳賞に輝いたピュアクライマーだ。

ファンデフェルデと勝利を喜ぶジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

終盤にプロトンを飛び出したマエヴァ・スクィバン(フランス、アルケアB&Bホテルズ)が2位に入り、プロトンでは残り1kmでニエウィアドマがアタック。フォレリング以外を振り落とすことに成功し、フィニッシュ手前でフォレリングがスプリントで先着して3位に入った。

ボーナスタイム-4秒を獲得したフォレリングは、ニエウィアドマとのタイム差を4秒短縮することに成功(1分15差)。翌日の最終日は、超級山岳ラルプデュエズ(距離13.8km/平均8.1%)を駆け上がる山頂フィニッシュが待ち受ける。

マイヨアポワ(山岳賞ジャージ)でも表彰台に上がったジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

マイヨジョーヌを守ったカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:CorVos

ツール・ド・フランス・ファム2024第7ステージ
1位 ジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) 4:26:58
2位 マエヴァ・スクィバン(フランス、アルケアB&Bホテルズ) +1:15
3位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) +1:23
4位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)
5位 エヴィータ・ムジック(フランス、FDJスエズ) +1:27
6位 タリタ・デヨンフ(オランダ、ロット・デスティニー) +1:28
7位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)
8位 ジュリエット・ラブース(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
9位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)
10位 ガイア・レアリーニ(イタリア、リドル・トレック)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) 20:00:52
2位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:27
3位 セドリーヌ・ケルバオル(フランス、セラティツィット・WNTプロサイクリング) +0:37
4位 ジュリエット・ラブース(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +1:01
5位 タリタ・デヨンフ(オランダ、ロット・デスティニー) +1:09
6位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、リドル・トレック) +1:12
7位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +1:13
8位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) +1:15
9位 エヴィータ・ムジック(フランス、FDJスエズ) +1:25
10位 ジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) +1:27
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) 170pts
2位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) 86pts
3位 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム) 85pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) 41pts
2位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 25pts
3位 ヤラ・カステレイン(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 14pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 20:01:19
2位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、リドル・トレック) +0:45
3位 マリオン・ビュネル(フランス、サンミッシェル・マヴィック・オーベル93) +5:48
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 60:06:38
2位 AGインシュランス・スーダル +6:28
3位 FDJスエズ +9:27
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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