終盤の落車でフォレリングが総合首位から陥落したツール・ド・フランス・ファム第5ステージ。カタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム)が小集団スプリントを制し、惜しくも敗れたニエウィアドマがマイヨジョーヌに袖を通した。



8月15日(木)第5ステージ
バストーニュ〜アンネヴィル 152.5km(平坦)


後半戦に突入したツール・ド・フランス・ファム photo:CorVos

ツール・ド・フランス・ファム2024第5ステージ コースプロフィール image:A.S.O.
全8ステージで行われるツール・ド・フランス・ファム・アヴェク・ズイフト(UCIワールドツアー)も後半戦に突入した。第5ステージの舞台はベルギー・バストーニュを出発し、フランスのアンネヴィルに至る152.5km。分類は平坦ステージだが低難易度のカテゴリー山岳など無数のアップダウンが設定されているため、ピュアスプリンターには厳しいレイアウトだ。

雨に見舞われた前日から一転、晴天に恵まれたレースは137名がスタートを切る。序盤は集団が逃げを許さず、約25km進んだ地点でルース・アドヘースツ(オランダ、FDJスエズ)がようやく飛び出す。しかしスピードスケートから自転車選手に転向したアドヘースツはすぐに捉えられると、残り81km地点で再び仕掛け単独逃げに成功した。

第3ステージの個人タイムトライアルで長時間ホットシートに座り、区間3位に
入ったアドヘースツには遅れてジュリー・ファンデフェルデ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)とフェム・ファンエンペル(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)が合流。その後もマーイケ・コルエ(オランダ、アルケアB&Bホテルズ)など散発的にプロトンを飛び出す選手が現れたものの、いずれも先頭に追いつくことはできず、残り40km地点を過ぎても逃げは2分46秒のリードを保った。

2度目のアタックを逃げに繋げたルース・アドヘースツ(オランダ、FDJスエズ) photo:CorVos

大会5日目にしてようやくフランスに入国した選手たち photo:A.S.O.

初日から2連勝したシャーロッテ・コール(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が遅れたプロトンは、SDワークス・プロタイムが先頭に人数を固める。その後モビスターやリドル・トレックがペースを作り、この日最後のカテゴリー山岳である4級(残り15km地点)で逃げとの差は20秒。ヨーロッパ王者のミーシャ・ブレーデウォルツ(オランダ)などSDワークスが再び先頭で牽引を始め、スプリントに向け徐々にスピードを増していくなかプロトンで集団落車が発生した。

ラウンドアバウトを抜けた残り6.3km地点で行った大規模落車には、マイヨジョーヌを着るデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム)が巻き込まれる。すぐさま立ち上がったフォレリングは腰に手を当て、ゆっくりとバイクに跨り走り出す。一方、ファイファー・ジョルジ(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)とマグドレーヌ・ヴァリエール(カナダ、EFオータリー・キャノンデール)は身体を打ちつけレースを去った。

アドヘースツにジュリー・ファンデフェルデ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)とフェム・ファンエンペル(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)が合流 photo:CorVos

プロトンが混沌と化すなか、レース先頭ではアドヘースツが最後まで粘る。しかし落車によって形成されたカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)ら7名の集団が残り3kmでアドヘースツをキャッチ。その1分35秒後方でタイムロスを最小限にしようと試みるフォレリングには、ブレーデウォルツがジョインして力を貸した。

フラムルージュ(残り1km)の手前に登場した短い登りでニエウィアドマが仕掛ける。これにより先頭はニエウィアドマとクリステン・フォークナー(アメリカ、EFオータリー・キャノンデール)、リアヌ・リッパート(ドイツ、モビスター)、カタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム)の4名に絞られ、勝負はスプリントに持ち込まれた。

リッパートが先にスプリントを開始し、フォークナーが遅れるなかニエウィアドマとヴァシュが追従する。最後まで踏み込めなかったリッパートが遅れるなか、ニエウィアドマとヴァシュが横並びでスプリント。そして第5ステージの勝者はハンガリー王者ジャージを着るヴァシュが輝いた。

スプリントで競り合うカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム)とカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:A.S.O.

小集団スプリントを制したカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

「本当に信じられない。今日はレースを通して調子が悪く、自分が勝つことなど考えていなかった。そんな中ロレーナ(ウィーベス)が”自分を信じれば大丈夫”と励ましてくれ、それが力になった。無線が故障していたのでフォレリングが遅れたことは知らず、マイヨジョーヌを失ったので複雑な気持ちだ」とヴァシュは心の内を語った。

ロードと平行してシクロクロスやマウンテンバイクも走るヴァシュは22歳のクライマー。今年6月のハンガリー選手権で5連覇を達成後、臨んだパリ五輪ロードレースではメダル争いに敗れ、4位という悔しさをツール・ファムで晴らした。

1分47秒遅れでフィニッシュしたフォレリングは総合9位(1分19秒遅れ)に後退し、手放したマイヨジョーヌは前日に3位、この日は2位と勝利に迫ったニエウィアドマが着用した。翌日の丘陵ステージを挟み、第7、8ステージの山岳&山頂フィニッシュ。そこでフォレリングがどう巻き返すかが注目される。

パリ五輪のロードで4位という悔しさを晴らしたカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

勝利を逃しながらも、マイヨジョーヌに袖を通したカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:CorVos
1分47秒遅れでフィニッシュし、マイヨジョーヌを失ったデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos


ツール・ド・フランス・ファム2024第5ステージ
1位 カタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム) 3:46:51
2位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)
3位 リアヌ・リッパート(ドイツ、モビスター)
4位 クリステン・フォークナー(アメリカ、EFオータリー・キャノンデール)
5位 エマセシル・ノルスゴー(デンマーク、モビスター) +0:08
6位 ルシンダ・ブラント(オランダ、リドル・トレック) +0:11
7位 セドリーヌ・ケルバオル(フランス、セラティツィット・WNTプロサイクリング)
8位 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム) +0:28
9位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)
10位 エヴィータ・ムジック(フランス、FDJスエズ)
50位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) +1:47
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) 11:27:29
2位 クリステン・フォークナー(アメリカ、EFオータリー・キャノンデール) +0:19
3位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:22
4位 セドリーヌ・ケルバオル(フランス、セラティツィット・WNTプロサイクリング) +0:47
5位 ジュリエット・ラブース(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +0:56
6位 タリタ・デヨンフ(オランダ、ロット・デスティニー) +1:04
7位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、リドル・トレック) +1:07
8位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +1:08
9位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) +1:19
10位 リアヌ・リッパート(ドイツ、モビスター) +1:20
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 シャーロッテ・コール(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) 120pts
2位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) 95pts
3位 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム) 79pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 12pts
2位 シルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ) 11pts
3位 ヤラ・カステレイン(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 8pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 11:27:51
2位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、リドル・トレック) +0:45
3位 マリオン・ビュネル(フランス、サンミッシェル・マヴィック・オーベル93) +3:39
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 34:26:01
2位 モビスター +1:50
3位 AGインシュランス・スーダル +2:28
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos