4名に絞られた集団から、残り3kmで飛び出したクリステン・フォークナー(アメリカ)が独走。2020年にプロデビューした遅咲きの31歳がパリ五輪女子ロードレースで金メダルを手に入れ、フォスは銀、コペッキーは銅メダルを獲得。3度目の五輪に挑んだ與那嶺恵理は5分遅れの26位だった。



フォスやウィーベス、フォレリングなど強力メンバーで臨んだオランダ photo:CorVos
ロッテ・コペッキーを中心とするベルギー photo:CorVos


8月4日に行われた パリ2024オリンピックのロードレース女子 photo:CorVos

パリの中心地にあるトロカデロ広場をスタートし、西にある幾つもの丘を越え、最後はパリの18.4kmコースを2周する158kmコースで行われたパリ2024オリンピックの女子ロードレース。気温22度/湿度53%というスタート前の選手たちがアイスベストを着用する暑さのなか、55カ国/92名の選手たちがスタートを切った。

アクチュアルスタートの直後にアワ・バモゴ(ブルキナファソ)がアタックし、単独逃げを試みる。しかしわずか14kmでメイン集団に掴まり、アジア大陸王者のキム・ミンジが前輪のパンクに見舞われるなかキム・カゾー(ニュージーランド)などが仕掛ける。慌ただしい序盤の末、スロバキアのロード&TT国内王者であるノラ・ジェンキュショバが単独逃げを決めた。

明確にコントロールを担うチームが現れないプロトンからは、妹のファリバと共に出場するユルドゥズ・ハシミ(アフガニスタン)が飛び出す。そこにロテム・ガフィノビッツ(イスラエル)やファリバ、ティタット・グエン(ベトナム)が遅れて合流。残り108km地点で逃げ集団は6名となった。

序盤に6名の逃げが形成され、それをオランダを中心とするプロトンが追った photo:CorVos

過去3度のタイムトライアル世界王者に輝いたエレン・ファンダイク(オランダ)が先導するプロトンからは、今大会最年長である44歳オルガ・ザベリンスカヤ(ウズベキスタン)が飛び出す。2012年のロンドン五輪ではロード&TTで銅メダルを獲得したザベリンスカヤの動きは実らず、残り78kmで吸収。ファンダイクの牽引によって集団の人数が絞られるなか、パリに帰還する直前の登りでマビ・ガルシア(スペイン)が速度を上げた。

この動きはマリアンヌ・フォス(オランダ)などが引き戻し、集団後方では東京五輪の金メダリストであるアンナ・キーセンホーファー(オーストリア)が遅れていく。背の低い丘を越えパリに戻ってきたプロトンからは、地元フランス代表のヴィクトワール・ベルトーやTTで銀メダルを獲得したアンナ・ヘンダーソン(イギリス)、フォスなどが散発的にアタックを仕掛ける。その後もプロトンから飛び出しを試みる動きは続き、残り55km地点で逃げとの差は1分を切った。

逃げ集団ではファリバ・ハシミとハンナ・ツェラフ(個人の中立選手)の2名が粘るなか、10秒差まで追い詰めたメイン集団の前方で落車が発生する。TTの銅メダリストであるクロエ・ダイガート(アメリカ)とエリーズ・シャベイ(スイス)は素早くレースに復帰し、落車を回避した選手たちは1度目のモンマルトル(距離1km/平均6.5%)で逃げをキャッチ。石畳の登り坂でガルシアが再びペースアップを敢行し、落車の影響で減った人数を更に絞っていった。

1度目のモンマルトルで逃げを捉え、レースは振り出しに戻った photo:UCI

ロッテ・コペッキー(ベルギー)を含む12名による精鋭集団が形成された photo:UCI

落車と登りでのペースアップによりフォスやエリザベス・ダイグナン(イギリス)、エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)など12名の精鋭集団が形成され、そこに遅れを取った現世界王者ロッテ・コペッキー(ベルギー)が単独でジョイン。一方、オランダのデミ・フォレリングやロレーナ・ウィーベスは遅れたため追走を強いられる。先頭ではフォスが先頭交代を拒否してチームメイトの合流を図ったものの、最後までフォレリングたちの追走は叶わなかった。

コペッキーとフォス、ロンゴボルギーニら優勝候補たちが単独での戦いを強いられるなか、イギリスはダイグナンとヘンダーソン、ファイファー・ジョルジの3名と有利な状況に持ち込む。2度目のモンマルトルでガルシアが仕掛けるものの決定的な動きには繋がらず、下りでジョルジがアタック。引き戻された後に今度はダイグナンが仕掛け、フォスとカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)が反応した。

その後ダイグナンが遅れ、フォスとヴァシュが先頭に立つ。この2名は残り15km地点でコペッキーら後続との差を35秒まで拡げ、3度目にして最後のモンマルトルをクリア。追走集団は登坂でコペッキーとクリステン・フォークナー(アメリカ)の2名に絞られた。

サクレ・クール寺院の立つ、モンマルトル頂上を通過するクリステン・フォークナー(アメリカ) photo:UCI

現世界王者のコペッキーとアメリカロード王者のフォークナーはローテーションを回し、残り3.5km地点で先頭にジョイン。先頭が4名になり、一度緊張感が緩んだ隙をついてフォークナーが加速した。

飛び出したフォークナーにヴァシュが反応したものの、スプリント力で上回るフォスを警戒したヴァシュは脚を緩める。またフォスとコペッキーも牽制したため、残り3kmでフォークナーが単独先頭に立つ。追走の3名は協力関係を築くことはできなかったため、1分までリードを拡げたフォークナーがイエナ橋を通過して最終ストレートに突入。エッフェル塔が見下ろすフィニッシュラインをフォークナーが先頭で通過した。

残り3kmで独走に持ち込み、そのままフィニッシュしたクリステン・フォークナー(アメリカ) photo:CorVos

本格的に競技スタート後、わずか5年で金メダリストとなったクリステン・フォークナー(アメリカ) photo:CorVos

「夢を追うため数年前に大きなリスクを犯し、夢を叶えることができた。人生で最も素晴らしい瞬間で、この気持ちは言葉で表現できない。タフなレースとなることは分かっていが、(トラックの)チームパシュートで一緒に走るチームメイトに”勝利のために走る”と約束していた」と、フォークナーは金メダル獲得をそう喜んだ。

フォークナーはアメリカのハーバード大学を卒業後、投資会社に勤務。しかし2000年のシドニー大会で抱いた五輪出場の夢を追い求めるため、2020年に退社して自転車キャリアをスタートさせた。その後は2021年にワールドツアー初勝利を掴み、2022年にはジロ・デ・イタリア・ドンネでステージ2勝と山岳賞を獲得するなど才能を開花。そして今年アメリカ選手権ロードを制した好調を、夢の舞台での成功につなげた。

銀メダル争いは3名がハンドルを投げる接戦の末、フォスが先着。銅メダルはコペッキーが獲得した。また3大会連続の五輪出場となった與那嶺恵理は5分遅れの26位でフィニッシュしている。

銀メダル争いはマリアンヌ・フォス(オランダ)が制す photo:CorVos
3度目の五輪を26位で終えた與那嶺恵理 photo:CorVos


パリ2024オリンピック ロードレース女子表彰台:2位フォス、1位フォークナー、3位コペッキー photo:CorVos
パリ2024オリンピック ロードレース女子結果
1位 クリステン・フォークナー(アメリカ) 3:59:23
2位 マリアンヌ・フォス(オランダ) +0:58
3位 ロッテ・コペッキー(ベルギー)
4位 カタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)
5位 ファイファー・ジョルジ(イギリス) +1:21
6位 マビ・ガルシア(スペイン) +1:23
7位 ノエミ・リュエッグ(スイス) +2:04
8位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド) +2:44
9位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア) +3:05
10位 マルタ・ラフ(ポーランド) +3:27
26位 與那嶺恵理 +5:00
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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