2024/07/30(火) - 09:25
先頭争いから一転、メカトラブルからの追い上げ、そしてヴィクトール・コレツキー(フランス)との激しい一騎打ち。トーマス・ピドコック(イギリス)が劇的なストーリーで2大会連続のオリンピックチャンピオンに輝いた。
ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)による開催国金メダルの熱狂冷めやらぬ翌7月29日(月)に、エランクールの丘に設けられたパリ2024特設コースではMTBクロスカントリー男子レースが開催。合計8周回する1周4350mのスピードコースは、前日から続く好天によって完全なドライコンディションが保たれた。
東京2020覇者にして世界王者、優勝候補筆頭のトーマス・ピドコック(イギリス)ら、28カ国を代表する36名が14時10分(日本時間21時10分)にスタートダッシュ。出遅れて中盤に埋もれたピドコックを尻目にアラン・ハースリー(南アフリカ)らがレースを引っ張り、あまり時間を置かずに10度の世界王者ニノ・シューターとマティアス・フルッキガーのスイスコンビによるペースメイクが始まった。
「メダル確保を目指した」と言うフルッキガーを、シューター、母国フランスの期待を背負うヴィクトール・コレツキー、そしてポジションを回復させたピドコックがぴったりとマークする。今季序盤に好調を維持していたシモン・アンドレアッセン(デンマーク)、母国フランスの元世界王者ジョーダン・サルー、東京2020銅メダルのダヴィド・ヴァレロ(スペイン)といった面々は先頭争いに加わることができなかった。
人数が絞られ始めた3周目、コース序盤の中間計測ポイントを過ぎたタイミング。スイスとフランスの動きを注視していたピドコックが一気に仕掛けた。フルッキガーとシューターを振り落としてコレツキーとの一騎打ちを始めようとしたピドコックだったものの、前輪パンクに見舞われてペースダウン。幸いピットが近く、ロスを35秒程度に留めて勝負権を残したピドコックの快進撃が始まった。
圧倒的な登坂スピードを披露するピドコックは、まずはペースの上がらないシューターたちを一気に抜き去り、続いてフルッキガーやショートトラック世界王者のサムエル・ゲイズ(ニュージーランド)、ルカ・ブライド(イタリア)らが含まれる3位グループに合流して突き放す。ファステストタイムを刻みながら次々とライバル勢を料理するピドコックは、全8周回中の7周目、ついに独走を続けていたコレツキーの背中を捉えた。
しかし母国ファンの声援を浴びるコレツキーも対抗策を残していた。最終周回に入り、最高標高地点を目指す登坂区間でフルスロットルのアタックを仕掛け、続くロックセクションの下りでは両輪を滑らせながらリードを維持。脚を使っていたピドコックはたまらず距離を空けたものの、コレツキーのミスによって合流し、両者全力アタックで激しく火花を散らす。パワー勝負ならコレツキー有利かと思われたものの、立ち木を挟んでラインが1つに合流するポイントで両者のラインが交錯した。
イン側を選んで追い抜きを仕掛けたピドコックに対し、弾かれる形となったコレツキーはバランスを崩して失速。その瞬間に大きなリードを築き上げたピドコックが、コレツキーの金メダルを願ってやまなかったフランスファンの歓声とブーイングを浴びながらホームストレートに単独で現れた。
パンク後退からの圧倒的な追い上げと、コレツキーとの激しい一騎打ち。劇的な展開でピドコックが2大会連続の金メダルを獲得した。敗れたコレツキーは2位銀メダル、ピドコックの追走に喰らい付いたハースリーが南アフリカに初となる3位銅メダル。最後のオリンピック挑戦にして、4大会連続メダルを目指したシューターは9位。涙を流しながらファンの声援に応えつつ会場を去っている。
パリオリンピックへの準備のため、今季はロードレースに参戦しつつMTBレース出場を繰り返していたピドコック。ツール・ド・フランス完走後にMTBに切り替え、短い準備期間を経て大一番での勝負を制した。「今週はオリンピックに向けての準備で、感情やレースのシナリオなど頭の中はさまざまなことが渦巻いていたんだ。スタートラインに立つ頃には、すでに少し疲れ切っていたよ」とコメントする。ピドコックは8月3日(土)の男子ロードレースにもダブル出場を予定している。
敗れたコレツキーはピドコックの動きに対して不服申し立てをせず、最終的に「あの時アウト側のラインを選んだ自分のミスだった。あれはレースの一部。最後まで戦ったし、最後までチャンスを活かすことができたと思う。その点に関しては満足しているよ」と振り返っている。
ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)による開催国金メダルの熱狂冷めやらぬ翌7月29日(月)に、エランクールの丘に設けられたパリ2024特設コースではMTBクロスカントリー男子レースが開催。合計8周回する1周4350mのスピードコースは、前日から続く好天によって完全なドライコンディションが保たれた。
東京2020覇者にして世界王者、優勝候補筆頭のトーマス・ピドコック(イギリス)ら、28カ国を代表する36名が14時10分(日本時間21時10分)にスタートダッシュ。出遅れて中盤に埋もれたピドコックを尻目にアラン・ハースリー(南アフリカ)らがレースを引っ張り、あまり時間を置かずに10度の世界王者ニノ・シューターとマティアス・フルッキガーのスイスコンビによるペースメイクが始まった。
「メダル確保を目指した」と言うフルッキガーを、シューター、母国フランスの期待を背負うヴィクトール・コレツキー、そしてポジションを回復させたピドコックがぴったりとマークする。今季序盤に好調を維持していたシモン・アンドレアッセン(デンマーク)、母国フランスの元世界王者ジョーダン・サルー、東京2020銅メダルのダヴィド・ヴァレロ(スペイン)といった面々は先頭争いに加わることができなかった。
人数が絞られ始めた3周目、コース序盤の中間計測ポイントを過ぎたタイミング。スイスとフランスの動きを注視していたピドコックが一気に仕掛けた。フルッキガーとシューターを振り落としてコレツキーとの一騎打ちを始めようとしたピドコックだったものの、前輪パンクに見舞われてペースダウン。幸いピットが近く、ロスを35秒程度に留めて勝負権を残したピドコックの快進撃が始まった。
圧倒的な登坂スピードを披露するピドコックは、まずはペースの上がらないシューターたちを一気に抜き去り、続いてフルッキガーやショートトラック世界王者のサムエル・ゲイズ(ニュージーランド)、ルカ・ブライド(イタリア)らが含まれる3位グループに合流して突き放す。ファステストタイムを刻みながら次々とライバル勢を料理するピドコックは、全8周回中の7周目、ついに独走を続けていたコレツキーの背中を捉えた。
しかし母国ファンの声援を浴びるコレツキーも対抗策を残していた。最終周回に入り、最高標高地点を目指す登坂区間でフルスロットルのアタックを仕掛け、続くロックセクションの下りでは両輪を滑らせながらリードを維持。脚を使っていたピドコックはたまらず距離を空けたものの、コレツキーのミスによって合流し、両者全力アタックで激しく火花を散らす。パワー勝負ならコレツキー有利かと思われたものの、立ち木を挟んでラインが1つに合流するポイントで両者のラインが交錯した。
イン側を選んで追い抜きを仕掛けたピドコックに対し、弾かれる形となったコレツキーはバランスを崩して失速。その瞬間に大きなリードを築き上げたピドコックが、コレツキーの金メダルを願ってやまなかったフランスファンの歓声とブーイングを浴びながらホームストレートに単独で現れた。
パンク後退からの圧倒的な追い上げと、コレツキーとの激しい一騎打ち。劇的な展開でピドコックが2大会連続の金メダルを獲得した。敗れたコレツキーは2位銀メダル、ピドコックの追走に喰らい付いたハースリーが南アフリカに初となる3位銅メダル。最後のオリンピック挑戦にして、4大会連続メダルを目指したシューターは9位。涙を流しながらファンの声援に応えつつ会場を去っている。
パリオリンピックへの準備のため、今季はロードレースに参戦しつつMTBレース出場を繰り返していたピドコック。ツール・ド・フランス完走後にMTBに切り替え、短い準備期間を経て大一番での勝負を制した。「今週はオリンピックに向けての準備で、感情やレースのシナリオなど頭の中はさまざまなことが渦巻いていたんだ。スタートラインに立つ頃には、すでに少し疲れ切っていたよ」とコメントする。ピドコックは8月3日(土)の男子ロードレースにもダブル出場を予定している。
敗れたコレツキーはピドコックの動きに対して不服申し立てをせず、最終的に「あの時アウト側のラインを選んだ自分のミスだった。あれはレースの一部。最後まで戦ったし、最後までチャンスを活かすことができたと思う。その点に関しては満足しているよ」と振り返っている。
パリ2024オリンピック 男子MTB結果
1位 | トーマス・ピドコック(イギリス) | 1:26:22 |
2位 | ヴィクトール・コレツキー(フランス) | +0:09 |
3位 | アラン・ハースリー(南アフリカ) | +0:11 |
4位 | ルカ・ブライド(イタリア) | +0:34 |
5位 | マティアス・フルッキガー(スイス) | +1:20 |
6位 | サムエル・ゲイズ(ニュージーランド) | +1:41 |
7位 | ライリー・アイモス(アメリカ) | +1:46 |
8位 | チャーリー・アルドリッジ(イギリス) | +2:10 |
9位 | ニノ・シューター(スイス) | +2:22 |
10位 | ダヴィド・ヴァレロ(スペイン) | +2:27 |
text:So Isobe
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