ポガチャルの総合優勝で幕を閉じた今年のツールでは、ヴィンゲゴーの復活勝利やカヴェンディッシュの区間優勝記録更新など、それぞれの物語が詰まった大会となった。総合上位勢や特別賞ジャージを掴んだギルマイやカラパスなど、第111回大会を選手たちのコメントで振り返ります。



ステージ2位&総合2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)

表彰台で握手するヴィンゲゴーとポガチャル photo:CorVos

今年の始めに「ツール・ド・フランスを総合2位で終える」と聞いていたら、きっと落ち込んでいただろう。でも落車した3ヶ月前に伝えられていたら信じられないと思うほど、これは素晴らしい結果だよ。もう2度とバイクに乗れないとすら思っていた状態から、このレベルまで戻ってくることができた。再び表彰台の上に上がり、ステージ優勝を掴んだ。数週間前ならば夢にも思わなかった結果だ。

集中治療室を離れ、退院したのが4月の半ば頃。ツール・ド・フランスはすぐそこまで迫っていた。ツール出場に間に合っただけで嬉しかった。心の底からタデイ(ポガチャル)を祝福したい。彼こそ今大会の総合優勝者に相応しい。僕らは特に第1、2週目に素晴らしい戦いを繰り広げた。ヴィスマ・リースアバイクの強さを見せつけて彼を苦しめた。だが、今年の彼は最強だった。

この結果にはとても満足しているし、この3週間苦しかった。だが家族やチームが力となり、この素晴らしいツール・ド・フランスを楽しむことができた。プロの自転車選手であることを名誉なことに感じているよ。

激戦を繰り広げたヴィンゲゴーと共に表彰台に向かうタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

ステージ3位&総合3位&マイヨブラン レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

マイヨブランを獲得したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)など4賞ジャージを獲得した選手たち photo:CorVos

いま、誇りと喜びを感じている。母国ベルギーでは僕のグランツールや登坂に対する疑念が持たれていた。でも僕はこの舞台を目指して努力を積み重ね、可能な限りベストな状態で臨んだ。イツリア・バスクカントリーでの落車もあり、ここまでの道のりは平坦ではなかった。またドーフィネの後も急ピッチでコンディションを整えなければならなかった。だが全てが上手くいき、総合3位に入ることができた。

総合4位との差は大きく、マイヨブランも獲得した。多くのステージ区間3位や2位に入り、ステージ優勝も挙げた。自分の走りに満足しているし、誇りに思う。

今日はツールの総合争いのレベルがいかに高いかを思い知らされた。タデイの走りは異次元だったし、登坂もあったので純粋な個人タイムトライアルというわけでもなかった。今日のコースはタデイ向きだったね。僕はベストを尽くし、最後は脚が空っぽだったのであれ以上速くは走れなかった。3週間を通した戦いに満足している。

マイヨヴェール ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)

マイヨヴェールを射止めたビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) photo:CorVos

本当に嬉しい。アフリカの自転車界にとっても喜びであると思っている。自転車競技が国際化することは良いことだからね。もっとプロトンの中に色んな国や大陸、肌の色をした選手が増えることを願っている。歴史的なことに関わることができて嬉しい。

マイヨアポワ&総合敢闘賞 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)

マイヨアポワ(山岳賞)と総合敢闘賞に輝いたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

とても辛いツールだったので今日は脚が痛かった。とても疲れているがハッピーだよ。開幕前の落車の影響もあり、不安のなかイタリアでの開幕を迎えた。でも大会を通して調子が良くなっていき、第2週目には調子を取り戻した。ステージ優勝を飾り、山岳賞にも輝くことができた。

今大会最大の思い出はステージ優勝。とても厳しい日だったが、狙っていたステージだったので勝てて本当に嬉しかった。

区間最多優勝記録を更新し、現役最後のツールを終えたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)

特別表彰を受けたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) photo:CorVos

昨日(の涙)で感情は出し尽くしたので、今日は楽しむことができた。簡単なコースではなかったが、登りの頂上にある程度のタイムでたどり着くことができれば制限時間内にフィニッシュできると思っていた。そこからは楽しみながら走っていたよ。残り距離が徐々に減っていくことを楽しみながら、最後のフラムルージュ(残り1km)を通過し、フィニッシュラインの向こう側に家族たちが待っていた。それはとても嬉しい瞬間だった。

自分の選手キャリアを幸運に思っている。選手人生を通して共に活動した人たちや、出会ってきた人たち、そして皆が見る夢の中を歩んできた。これまで僕が掴んできた成功の数々や勝利を収めた写真、映像は見ることができるが、その背後まで覗くことはできない。自転車競技は僕に自分自身のことを、また父親になる方法を教えてくれた。それはこのスポーツから学ぶことができるとても大きなものだった。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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