2024/07/22(月) - 08:51
その走りは圧巻の一言。モナコからニースを結ぶ33.7km個人タイムトライアルで争われたツール・ド・フランス最終日で、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がステージ6勝をマーク。3年振り3度目の総合優勝と共に、1998年以来となるジロ・デ・イタリアとのダブルツールを達成した。
7月21日(日)第21ステージ
モナコ〜ニース 33.7km(個人タイムトライアル)
ツール・ド・フランス史上初となる「パリ以外でのフィナーレ」に選ばれたのはヨーロッパ屈指のリゾート地ニース。それもパレード走行を含む平坦ステージではなく、グレッグ・レモン(アメリカ)が総合大逆転を飾った1989年以来となる個人タイムトライアルだ。
33.7kmコースのスタート地点はタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)など多くのスター選手が居を構えるモナコ。序盤の平坦路はわずか3kmで終わり、いきなり2級山岳(距離8km/平均5.8%)を登坂する。短い下りを挟んでからパリ〜ニースでお馴染みのエズ峠(距離1.6km/平均8.1%)を駆け上がり、最後はニースのフィニッシュ地点まで下りと平坦路が続くレイアウトだ。
総合成績が最下位のダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)から1分半の間隔で140名の選手たちがスタート(総合71位以降は2分間隔)。2番目には前日の山岳ステージを制限時間内にフィニッシュし、大粒の涙を流したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)が走り出し、大歓声を受けながら最後のツールを走り終えた。
序盤スタート組で好タイムを出したのはレニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ)。マイヨブラン(ヤングライダー賞ジャージ)の候補に挙げられながらも初日から遅れ、なんとか最終日にたどり着いた21歳は得意の登りで飛ばし、48分24秒のトップタイムをマークする。その後は区間3勝&マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を確定させたビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)など、今大会を盛り上げた選手たちが続々とフィニッシュした。
マルティネスからホットシートを奪う選手はその後1時間以上現れず、67番手のアロルド・テハダ(コロンビア、アスタナ・カザクスタン)がようやく10秒更新。そのタイムには、手首を骨折しながら完走したニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)やカンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)も届かない。パリ五輪の個人TT(7月27日)に出場予定のワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)は調子を整えるようなスローペースでフィニッシュし、いよいよ総合上位陣に出番が回ってきた。
2級山岳(距離8km/平均5.8%)頂上に設定された第1中間計測(11.2km)のトップタイムを更新したのは、総合9位のデレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)。ツールデビューで総合エースを任されたジーは第2中間計測(17.1km)も最速で通過し、テハダのタイムを19秒更新。最終的に区間6位で総合トップ10入り(総合9位)を果たした。
続く総合8位のマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)はコーナーで落車しながらも素早いリカバリーでジーを上回るタイムをマーク(47分32秒)する。このタイムにはアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)やミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)など総合上位陣は届かず、またジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)も10秒及ばない。
そして現地時間の午後18時41分、現個人TT世界チャンピオンであるレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が走り出す。フロント60-44T、リア11-34Tを回すエヴェネプールは第1計測でジーの最速タイムを36秒更新。第2計測では46秒上回り、ベルギー代表としてパリ五輪の個人TTに出場するエヴェネプールは平均スピードを43km/hに乗せる、46分38秒を叩き出した。
しかしフィニッシュ直後に涙を流した世界王者はホットシートに座ることなく、その後スタートした2人によって最速タイムは塗り替えられた。
総合2位を守るべく序盤から飛したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)は、フロント56T×リア11-33Tのギアを使い第1計測をエヴェネプールよりも19秒早く通過する。その差は第2計測で27秒まで拡がり、下りコーナーでヒヤッとさせるシーンもありながら世界王者より11秒早い46分27秒でフィニッシュ。だが、このタイムをマイヨジョーヌが圧倒的なタイムで上回った。
最終出走者として走り出したポガチャル(フロント60-46T、リア11-34T)は序盤から力強くペダルを踏み込む。F1のモナコグランプリで知られるオートモービルクラブをスタートしたポガチャルは「最初の登りから調子が良かった」と言う通り、2級山岳の頂上でヴィンゲゴーのタイムを7秒更新。「(パートナーで自転車選手である)ウルシュカ(ジガート)が嫌がるほど何度も試走した」と語るコースで、ポガチャルはヴィンゲゴーとのタイム差を拡げていき大観衆の待つニースに到着。
身体の後ろでピースサインを作り、最終ストレートでは両手を拡げてガッツポーズをする余裕を見せながらトップタイムを1分3秒更新する、45分25秒でフィニッシュ。21日間走り続けてきたとは思えない圧巻の走りで、今大会6勝目を手に入れた。
レース直後のインタビューに「ツールで2年に渡る厳しい時期を越え、この結果には言葉がないほど嬉しいよ」と答えたポガチャル。2021年以来となる自身3度目の総合優勝に加え、マルコ・パンターニ(イタリア)が達成した1998年以来となるジロ・デ・イタリアとのダブルツールを達成した。
「ジロですらバッドデイがあったのに、グランツールで初めて全ステージで自信を持って走ることができた。ジロでの総合優勝が”ツールで結果を残せなかった時の保険”だと思った人もいただろう。もちろんツールで勝てなくてもジロだけで十分嬉しいが、連続してツールを勝つのはレベルが違うこと。本当に嬉しいし誇りに思う。この後の目標はアルカンシエルを着ること。(現世界王者である)ファンデルプールを倒すのは難しいだろうが、まだ時間があるのでこれから準備するよ」。
またビッグフォーと呼ばれた今大会の総合争いについて、「総合争いで言えば自転車ロードレース史上、いまが最高の時代だと言うことができる。レムコ(エヴェネプール)とヨナス(ヴィンゲゴー)、プリモシュ(ログリッチ)による争いに若手選手も台頭してきている。本当に素晴らしい時代であると思っている」と語った。
区間2位のヴィンゲゴーは総合2位を守り、エヴェネプールはツールデビューながらマイヨブラン(ヤングライダー賞)獲得に加え、ベルギー人として14年振りとなる総合表彰台(総合3位)に上がった。そしてマイヨヴェールはギルマイが獲得し、マイヨアポワ(山岳賞)を手に入れたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)は総合敢闘賞にも選ばれている。
6月29日にイタリア・フィレンツェをスタートしてニースにたどり着いた141名の選手たち。シャンゼリゼではなく、地中海を臨むニースの表彰台で選手たちを称えるセレモニーが行われ、、21日間に及ぶ第111回ツール・ド・フランスの幕が下りた。
7月21日(日)第21ステージ
モナコ〜ニース 33.7km(個人タイムトライアル)
ツール・ド・フランス史上初となる「パリ以外でのフィナーレ」に選ばれたのはヨーロッパ屈指のリゾート地ニース。それもパレード走行を含む平坦ステージではなく、グレッグ・レモン(アメリカ)が総合大逆転を飾った1989年以来となる個人タイムトライアルだ。
33.7kmコースのスタート地点はタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)など多くのスター選手が居を構えるモナコ。序盤の平坦路はわずか3kmで終わり、いきなり2級山岳(距離8km/平均5.8%)を登坂する。短い下りを挟んでからパリ〜ニースでお馴染みのエズ峠(距離1.6km/平均8.1%)を駆け上がり、最後はニースのフィニッシュ地点まで下りと平坦路が続くレイアウトだ。
総合成績が最下位のダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)から1分半の間隔で140名の選手たちがスタート(総合71位以降は2分間隔)。2番目には前日の山岳ステージを制限時間内にフィニッシュし、大粒の涙を流したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)が走り出し、大歓声を受けながら最後のツールを走り終えた。
序盤スタート組で好タイムを出したのはレニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ)。マイヨブラン(ヤングライダー賞ジャージ)の候補に挙げられながらも初日から遅れ、なんとか最終日にたどり着いた21歳は得意の登りで飛ばし、48分24秒のトップタイムをマークする。その後は区間3勝&マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を確定させたビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)など、今大会を盛り上げた選手たちが続々とフィニッシュした。
マルティネスからホットシートを奪う選手はその後1時間以上現れず、67番手のアロルド・テハダ(コロンビア、アスタナ・カザクスタン)がようやく10秒更新。そのタイムには、手首を骨折しながら完走したニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)やカンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ)も届かない。パリ五輪の個人TT(7月27日)に出場予定のワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)は調子を整えるようなスローペースでフィニッシュし、いよいよ総合上位陣に出番が回ってきた。
2級山岳(距離8km/平均5.8%)頂上に設定された第1中間計測(11.2km)のトップタイムを更新したのは、総合9位のデレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)。ツールデビューで総合エースを任されたジーは第2中間計測(17.1km)も最速で通過し、テハダのタイムを19秒更新。最終的に区間6位で総合トップ10入り(総合9位)を果たした。
続く総合8位のマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)はコーナーで落車しながらも素早いリカバリーでジーを上回るタイムをマーク(47分32秒)する。このタイムにはアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)やミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)など総合上位陣は届かず、またジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)も10秒及ばない。
そして現地時間の午後18時41分、現個人TT世界チャンピオンであるレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が走り出す。フロント60-44T、リア11-34Tを回すエヴェネプールは第1計測でジーの最速タイムを36秒更新。第2計測では46秒上回り、ベルギー代表としてパリ五輪の個人TTに出場するエヴェネプールは平均スピードを43km/hに乗せる、46分38秒を叩き出した。
しかしフィニッシュ直後に涙を流した世界王者はホットシートに座ることなく、その後スタートした2人によって最速タイムは塗り替えられた。
総合2位を守るべく序盤から飛したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)は、フロント56T×リア11-33Tのギアを使い第1計測をエヴェネプールよりも19秒早く通過する。その差は第2計測で27秒まで拡がり、下りコーナーでヒヤッとさせるシーンもありながら世界王者より11秒早い46分27秒でフィニッシュ。だが、このタイムをマイヨジョーヌが圧倒的なタイムで上回った。
最終出走者として走り出したポガチャル(フロント60-46T、リア11-34T)は序盤から力強くペダルを踏み込む。F1のモナコグランプリで知られるオートモービルクラブをスタートしたポガチャルは「最初の登りから調子が良かった」と言う通り、2級山岳の頂上でヴィンゲゴーのタイムを7秒更新。「(パートナーで自転車選手である)ウルシュカ(ジガート)が嫌がるほど何度も試走した」と語るコースで、ポガチャルはヴィンゲゴーとのタイム差を拡げていき大観衆の待つニースに到着。
身体の後ろでピースサインを作り、最終ストレートでは両手を拡げてガッツポーズをする余裕を見せながらトップタイムを1分3秒更新する、45分25秒でフィニッシュ。21日間走り続けてきたとは思えない圧巻の走りで、今大会6勝目を手に入れた。
レース直後のインタビューに「ツールで2年に渡る厳しい時期を越え、この結果には言葉がないほど嬉しいよ」と答えたポガチャル。2021年以来となる自身3度目の総合優勝に加え、マルコ・パンターニ(イタリア)が達成した1998年以来となるジロ・デ・イタリアとのダブルツールを達成した。
「ジロですらバッドデイがあったのに、グランツールで初めて全ステージで自信を持って走ることができた。ジロでの総合優勝が”ツールで結果を残せなかった時の保険”だと思った人もいただろう。もちろんツールで勝てなくてもジロだけで十分嬉しいが、連続してツールを勝つのはレベルが違うこと。本当に嬉しいし誇りに思う。この後の目標はアルカンシエルを着ること。(現世界王者である)ファンデルプールを倒すのは難しいだろうが、まだ時間があるのでこれから準備するよ」。
またビッグフォーと呼ばれた今大会の総合争いについて、「総合争いで言えば自転車ロードレース史上、いまが最高の時代だと言うことができる。レムコ(エヴェネプール)とヨナス(ヴィンゲゴー)、プリモシュ(ログリッチ)による争いに若手選手も台頭してきている。本当に素晴らしい時代であると思っている」と語った。
区間2位のヴィンゲゴーは総合2位を守り、エヴェネプールはツールデビューながらマイヨブラン(ヤングライダー賞)獲得に加え、ベルギー人として14年振りとなる総合表彰台(総合3位)に上がった。そしてマイヨヴェールはギルマイが獲得し、マイヨアポワ(山岳賞)を手に入れたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)は総合敢闘賞にも選ばれている。
6月29日にイタリア・フィレンツェをスタートしてニースにたどり着いた141名の選手たち。シャンゼリゼではなく、地中海を臨むニースの表彰台で選手たちを称えるセレモニーが行われ、、21日間に及ぶ第111回ツール・ド・フランスの幕が下りた。
ツール・ド・フランス2024第21ステージ
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 45:25 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:03 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +1:14 |
4位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +2:08 |
5位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +2:18 |
6位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +2:31 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +2:41 |
8位 | アロルド・テハダ(コロンビア、アスタナ・カザクスタン) | +2:50 |
9位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +2:53 |
10位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +2:56 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 83:38:56 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +6:17 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +9:18 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +19:03 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +20:06 |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +24:07 |
7位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +25:04 |
8位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +26:34 |
9位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +27:21 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +29:03 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 387pts |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 354pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 208pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | 127pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 102pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 70pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 83:48:14 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +15:46 |
3位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +17:16 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 251:36:43 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +31:51 |
3位 | スーダル・クイックステップ | +1:33:06 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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