2024/07/19(金) - 08:19
アルプス山脈の5つの山岳が詰め込まれたツール・ド・フランス第18ステージで3名スプリントをヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)が制す。元アワーレコード保持者が得意の逃げから自身初のツール勝利に涙した。
7月18日(木)第18ステージ
ギャップ〜バルスロネット 179.5km(丘陵)
第19、20ステージは本格山岳で争われ、最終日は個人TTのため最後の逃げ切りチャンスと目されたツール・ド・フランス第18ステージ。アルプスの真ん中にあるギャップからバルスロネットまでのコースは179.5kmで、5つの3級山岳が満遍なく散りばめられた獲得標高差3,100mの丘陵ステージだ。
逃げ切りの鍵を握るであろう山岳は4つ目のサン・アポリネール(距離7km/平均5.5%)の登りと急勾配な下り坂。ラストはドモワゼル・コイフェ峠(距離3.6km/平均5.4%)を越え、ジワジワと登りながらフィニッシュ地点のバルスロネットを目指す。
アクチュアルスタート直後からクリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエル・プレミアテック)のアタックによってレースは動き出す。これにアルカンシェルを着たマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)などが追従し、約30kmをかけて36名の逃げグループが形成。その中には先の2名に加え、前日勝者のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)やオイエル・ラスカノ(スペイン、モビスター)など強力クライマーが入った。
総合3位のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)でもトップから5分9秒遅れのため、逃げに警戒する選手がいないメイン集団のUAEチームエミレーツはこれを容認。1つ目の3級山岳ではマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を目指すラスカノがトップ通過(2ポイント)し、続く3級もカラパスを退けラスカノが獲った。
6分半のリードを得た逃げグループは3つ目の3級山岳に入り、ここでもラスカノとカラパスが争う。星条旗があしらわれたアメリカ王者ジャージのショーン・クイン(EFエデュケーション・イージーポスト)がカラパスをリードアウトしたものの、ここもラスカノが先頭通過。そして勝負所と予想された4つ目の3級サン・アポリネール(距離7km/平均5.5%)に入り、ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックした。
この動きは逃げの人数を絞りたい選手たちを刺激したため、クインやミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)が呼応。山岳手前ではトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が飛び出し、頂上をトップ通過した。
一方、9分後方を走るプロトンでは終始UAEが牽引を担当する。粒状のチョコレートが入った袋を選手間で回して食べる和やかなシーンもありながら、マイヨジョーヌを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や総合2位のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)ら総合上位勢は翌日から始まるアルプス2連戦に向けて脚を休ませた。
逃げ集団では登りで遅れた選手たちが急勾配の下りで先頭に合流する。しかし最終3級山岳の頂上手前(残り40.6km)でクフィアトコフスキがアタックすると、得意の下りに入った元世界王者にはヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)とマッテオ・ヴェルシェ(フランス、トタルエネルジー)しかついていくことができない。また4番手につけていたヨハンネセンが下りコーナーで落車し、その影響で後続が脚を止めたため3名による先頭集団が形成された。
残り35kmで先頭集団を形成した3名
ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)
マッテオ・ヴェルシェ(フランス、トタルエネルジー)
ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)
後続ではジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)やラスカノ、初出場のバルト・レメン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)ら5名が10秒前後の差で追いかける。しかし綺麗にローテーションを回す先頭集団は少しずつ秒差を重ねていき、ヒンドレー・グループに対し25秒差でフラムルージュ(残り1km)を通過。勝負は先頭の3名に絞られた。
ツールで過去2度のステージ勝利を飾り、時にはスプリンターを退けるスピードの持ち主であるクフィアトコフスキが先頭のまま残り距離を縮めていく。その背後からスルスルと先頭に出た23歳のヴェルシェが残り850mでスプリントを開始。クフィアトコフスキがその差を詰める後ろで、カンペナールツは飛び出すタイミングを窺う。
ここまでローテーションしていた3名がフィニッシュ手前500mでようやく牽制に入り、残り300mからの連続コーナーでクフィアトコフスキが再び先頭に立つ。何度も後ろを振り返るクフィアトコフスキに対し、残り150mの標識からカンペナールツが踏み込む。頭を振りながらペダルに力を込めるカンペナールツのスピードにはヴェルシェとクフィアトコフスキは及ばず、カンペナールツがフィニッシュして両手を拡げた。
平坦ステージではエーススプリンターであるアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・デスティニー)のため集団牽引に徹し、ようやく得た逃げのチャンスをものにしたカンペナールツ。「真のプロフェッショナルはツール・ド・フランスを走り、完走しなければならない。ここでの勝利は選手全員の夢。もうネオプロではない僕は長きに渡りこの瞬間を夢見てきた」と涙ながらに語り、「今年はチームと契約延長の交渉でいざこざがあり、春のクラシックシーズンの後は辛い時期を過ごした。だが子供が生まれたことで青い空が見えた。満足なトレーニングも出来なかった僕が、気持ちよくバイクに乗れるようになったんだ。この勝利は素晴らしい雰囲気のチームが導いてくれた結果だと思っている」と念願のツール初勝利を喜んだ。
総合首位ポガチャルやヴィンゲゴーを含むプロトンは13分40秒遅れでフィニッシュ。そのため総合順位に動きはないまま、2つの超級山岳と1級山岳イゾラ2000(距離16.1km/平均7.1%)を駆け上がる翌日の山岳決戦に臨む。
7月18日(木)第18ステージ
ギャップ〜バルスロネット 179.5km(丘陵)
第19、20ステージは本格山岳で争われ、最終日は個人TTのため最後の逃げ切りチャンスと目されたツール・ド・フランス第18ステージ。アルプスの真ん中にあるギャップからバルスロネットまでのコースは179.5kmで、5つの3級山岳が満遍なく散りばめられた獲得標高差3,100mの丘陵ステージだ。
逃げ切りの鍵を握るであろう山岳は4つ目のサン・アポリネール(距離7km/平均5.5%)の登りと急勾配な下り坂。ラストはドモワゼル・コイフェ峠(距離3.6km/平均5.4%)を越え、ジワジワと登りながらフィニッシュ地点のバルスロネットを目指す。
アクチュアルスタート直後からクリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエル・プレミアテック)のアタックによってレースは動き出す。これにアルカンシェルを着たマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)などが追従し、約30kmをかけて36名の逃げグループが形成。その中には先の2名に加え、前日勝者のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)やオイエル・ラスカノ(スペイン、モビスター)など強力クライマーが入った。
総合3位のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)でもトップから5分9秒遅れのため、逃げに警戒する選手がいないメイン集団のUAEチームエミレーツはこれを容認。1つ目の3級山岳ではマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を目指すラスカノがトップ通過(2ポイント)し、続く3級もカラパスを退けラスカノが獲った。
6分半のリードを得た逃げグループは3つ目の3級山岳に入り、ここでもラスカノとカラパスが争う。星条旗があしらわれたアメリカ王者ジャージのショーン・クイン(EFエデュケーション・イージーポスト)がカラパスをリードアウトしたものの、ここもラスカノが先頭通過。そして勝負所と予想された4つ目の3級サン・アポリネール(距離7km/平均5.5%)に入り、ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックした。
この動きは逃げの人数を絞りたい選手たちを刺激したため、クインやミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)が呼応。山岳手前ではトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が飛び出し、頂上をトップ通過した。
一方、9分後方を走るプロトンでは終始UAEが牽引を担当する。粒状のチョコレートが入った袋を選手間で回して食べる和やかなシーンもありながら、マイヨジョーヌを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や総合2位のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)ら総合上位勢は翌日から始まるアルプス2連戦に向けて脚を休ませた。
逃げ集団では登りで遅れた選手たちが急勾配の下りで先頭に合流する。しかし最終3級山岳の頂上手前(残り40.6km)でクフィアトコフスキがアタックすると、得意の下りに入った元世界王者にはヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)とマッテオ・ヴェルシェ(フランス、トタルエネルジー)しかついていくことができない。また4番手につけていたヨハンネセンが下りコーナーで落車し、その影響で後続が脚を止めたため3名による先頭集団が形成された。
残り35kmで先頭集団を形成した3名
ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)
マッテオ・ヴェルシェ(フランス、トタルエネルジー)
ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)
後続ではジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)やラスカノ、初出場のバルト・レメン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)ら5名が10秒前後の差で追いかける。しかし綺麗にローテーションを回す先頭集団は少しずつ秒差を重ねていき、ヒンドレー・グループに対し25秒差でフラムルージュ(残り1km)を通過。勝負は先頭の3名に絞られた。
ツールで過去2度のステージ勝利を飾り、時にはスプリンターを退けるスピードの持ち主であるクフィアトコフスキが先頭のまま残り距離を縮めていく。その背後からスルスルと先頭に出た23歳のヴェルシェが残り850mでスプリントを開始。クフィアトコフスキがその差を詰める後ろで、カンペナールツは飛び出すタイミングを窺う。
ここまでローテーションしていた3名がフィニッシュ手前500mでようやく牽制に入り、残り300mからの連続コーナーでクフィアトコフスキが再び先頭に立つ。何度も後ろを振り返るクフィアトコフスキに対し、残り150mの標識からカンペナールツが踏み込む。頭を振りながらペダルに力を込めるカンペナールツのスピードにはヴェルシェとクフィアトコフスキは及ばず、カンペナールツがフィニッシュして両手を拡げた。
平坦ステージではエーススプリンターであるアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・デスティニー)のため集団牽引に徹し、ようやく得た逃げのチャンスをものにしたカンペナールツ。「真のプロフェッショナルはツール・ド・フランスを走り、完走しなければならない。ここでの勝利は選手全員の夢。もうネオプロではない僕は長きに渡りこの瞬間を夢見てきた」と涙ながらに語り、「今年はチームと契約延長の交渉でいざこざがあり、春のクラシックシーズンの後は辛い時期を過ごした。だが子供が生まれたことで青い空が見えた。満足なトレーニングも出来なかった僕が、気持ちよくバイクに乗れるようになったんだ。この勝利は素晴らしい雰囲気のチームが導いてくれた結果だと思っている」と念願のツール初勝利を喜んだ。
総合首位ポガチャルやヴィンゲゴーを含むプロトンは13分40秒遅れでフィニッシュ。そのため総合順位に動きはないまま、2つの超級山岳と1級山岳イゾラ2000(距離16.1km/平均7.1%)を駆け上がる翌日の山岳決戦に臨む。
ツール・ド・フランス2024第18ステージ
1位 | ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー) | 4:10:20 |
2位 | マッテオ・ヴェルシェ(フランス、トタルエネルジー) | |
3位 | ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ) | |
4位 | トムス・スクインシュ(ラトビア、リドル・トレック) | +0:22 |
5位 | オイエル・ラスカノ(スペイン、モビスター) | |
6位 | バルト・レメン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
7位 | クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエル・プレミアテック) | |
8位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
9位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:37 |
10位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 74:45:27 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +3:11 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +5:09 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +12:57 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +13:24 |
6位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +13:30 |
7位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +15:41 |
8位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +17:51 |
9位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +18:15 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +18:35 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 387pts |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 354pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 188pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 77pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 58pts |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 42pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 74:50:36 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +8:21 |
3位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +13:26 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 224:41:24 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +27:57 |
3位 | イネオス・グレナディアー | +52:14 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
Amazon.co.jp