第15ステージの超級プラトー・ド・ベイユで歴史的な戦いを繰り広げたタデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴー。第2週目の振り返りや最終週への展望など、南仏グリュイッサンで行われた2人の記者会見での言葉を紹介する。



ツール・ド・フランス第2週目が始まった時点で、マイヨジョーヌを着るポガチャルとヴィンゲゴーのタイム差は1分15秒。それが第11ステージで1秒縮まり、第14ステージで1分57秒、第15ステージで3分9秒まで拡がった。南フランスのグリュイッサンで第2休息日を過ごした2人。ポガチャルはオンライン記者でスタッフが代読した質問に答え、ヴィンゲゴーはマスク着用を義務とした記者会見を行った。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

第14、15ステージと2連勝したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

今日はチームメイトと軽く脚を回し、パン屋に寄って今までで一番美味しいブラウニー(チョコケーキ)を食べた。あっ、これは僕の栄養士には内緒ね(笑)。

昨日は山岳(プラトー・ド・ベイユ)で僕たちは、過去最高の戦いの目撃者となった。レース後に自分も出力値を確認したらクレイジーな数字が並んでいたよ。特にヨルゲンソンの牽引からヨナスがアタックした時の数値は、僕の選手人生で最も高いものだった。

ようやくヴィスマが”本気”で攻めてきた。チームとして見せた彼らの走りに脱帽だよ。麓から全力を出す、本当にクレイジーなステージだった。

ペースを上げたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)に追従するタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

自転車ロードレースはすごい速さで発展している。チームを悪く言いたくはないが、僕が加入した5、6年前と比べると別物になっている。たとえば1年目に走ったブエルタ・ア・エスパーニャのチームは、いま考えるとアマチュアチームのようだった。その時は”これがプロか”と思っていたが、その後チーム同士が切磋琢磨し、栄養やトレーニングプラン、高地合宿などを発展させた。ヴィズマとUAE、イネオス、トレック、クイックステップなどが競い合い、限界を押し上げていったんだ。

それが昨日の山岳での走りに繋がった。この光景は毎年見られるだろう。なぜなら皆がディテールにこだわり、食べ物のグラムやワット数まで神経を張り巡らせているからね。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

6年前はとりあえず炭水化物を多く食べることに注力していた。朝はパスタや白米にオムレツだったものが、いまはもっと”普通のもの”を食べている。おかゆやオートミール、オムレツ、パン、パンケーキなどなど。この食へのこだわりが差を作る。もう僕たちは朝にパスタを食べなくていいんだ。またチームが食べるものを適切なタイミングで用意してくれている。当時、新しく入った栄養士の指示する食事メニューに完全に移行できるまで約4年ぐらいかかった。実行するには精神的な強さが求められるからね。でもそれがいまは大きな違いとなった。

またバイクの面で言えば、6年前からタイヤが大きな変化と言える。その他にもホイールや空力性能の上がったフレームなど、素晴らしいほど進化したよ。

総合リードを3分9秒まで拡げたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

ヴィスマは金曜(第19ステージ)と土曜(第20ステージ)の両方で攻めてくることはせず、どちらか一つに絞ってくるはずだ。だから僕らはチーム一丸となり、彼らがクレイジーな走りができないようマイヨジョーヌを守るつもり。また昨日ヨナスが「まだ諦めていない」と言ったそうだが、彼の言うことは正しい。最終週は火花が散るタフな戦いとなるだろう。

ブエルタ・ア・エスパーニャ出場に関しては”100%出ない”のではなく、”99%”ということにしておこう。でもそれは今年のことで、来年であればその可能性は高まる。

ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)

3分9秒遅れの総合2位につけるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

昨日の最終山岳では過去最高の走りができた。しかし、タデイはそれを上回ってきた。第3週目ではその逆のことをしたい。僕らは最後まで諦めることなく、何かできると思っている。僕はツール・ド・フランスも2度総合優勝しているし、総合2位になるためにここにいるわけではない。総合優勝を目指して全力を目指す。それにタデイはバッドデイに陥った過去があり、それが第3週目に来るかもしれない。

昨日のステージでの走りを見て分かるように、僕の肺に問題はない。開幕前までは追い込んだ時にどうなるか分からなかったが、むしろいままでより強くなっている。

第11ステージでの勝利は予想していなかったことなのでいまだ驚いた。だからこそ感情が溢れてきたのだろう。落車後は12日間の入院を経て、大怪我から勝利するまで戻ってこれたことに感動した。

タデイの走りは僕を”遥かに”上回っているわけではない。だから今後、あるいは今大会中に改善できれば同じレベルまで持っていくことができるだろう。

拳を合わせるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

text:Sotaro.Arakawa
photo:A.S.O.

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