登りを含む25.3kmの個人タイムトライアルで争われたツール・ド・フランス第7ステージ。TT世界王者のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が下馬評通りの走りでツール初勝利を飾り、区間2位(12秒遅れ)のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がマイヨジョーヌを守った。



7月5日(金)第7ステージ
ニュイ・サン・ジョルジュ〜ジュヴレ・シャンベルタン 25.3km(個人タイムトライアル)


家の中から観戦を楽しむファン photo:A.S.O.

第7ステージ ニュイ・サン・ジョルジュ〜ジュヴレ・シャンベルタン image:A.S.O.

マイヨジョーヌを争う選手たちにとって今大会2度目の勝負がやってきた。ツール・ド・フランス第7ステージは25.3kmの個人タイムトライアルで争われ、平坦基調のコース中央にはキュルテル・ヴェルジの丘(距離1.6km/平均6.1%)が登場。そのため登坂力はもちろん、コーナーのある下りでTTバイクを操る技術を求められた。

2日前にツール通算区間優勝の更新を果たしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)から1分間隔で選手たちがコースに飛び出していき、12番目のレニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ)がトップタイムをマークする。2022年の第1ステージでTT勝利を挙げマイヨジョーヌを射止めたイヴ・ランパールト(ベルギー、スーダル・クイックステップ)は全力で踏むことはなく、シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト)が30分6秒でマルティネスのタイムを更新した。

第1出走者として走り出したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) photo:CorVos
前半スタート組でトップタイムを出したシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos


チェーンが落ちながらもステージ10位に入ったシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) photo:A.S.O.

2022年のヨーロッパTT王者であるビッセガーのタイムはしばらく破られなかったものの、総合上位陣の登場を前に第2ステージで逃げ切り勝利を飾ったケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケアB&Bホテルズ)が30分を切る29分44秒の好タイムでフィニッシュ。しかし元アワーレコード保持者のヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)がわずか0.76秒上回り、そのタイムにはチェーン落ちの不運に見舞われたシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)や、いまだ状態が戻りきらないワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)も届かなかった。

また135番目にスタートしたジュリアン・ベルナール(フランス、リドル・トレック)が登り区間で足を止め、家族や友人から大歓声に応えながら妻にキスするシーンも。だがこれがUCI(国際自転車競技連合)の定める「不適切な言動」にあたるとし、ベルナールに対し200スイスフランの罰金を課している。

ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)に7秒差まで迫られたカンペナールツがホットシートに座り続けるなか、いよいよ総合上位陣が登場した。

ステージ5位:ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー) photo:CorVos

優勝候補に挙げられながらも振るわなかったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

前日の時点で総合首位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)と2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)との差は45秒。3位のヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)は50秒、5位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は1分14秒差のなか、ビッグ4のうちまずログリッチがスタートを切った。

東京五輪のTT金メダリストであるログリッチは丘の直前(8.6km)に設定された第1計測地点でトップタイムを更新。丘の頂上の第2計測(14.4km)、下ってフィニッシュまで続く平坦路の入口の第3計測(19.9km)でもこれまでの記録を大幅に塗り替え、カンペナールツのタイムを18秒更新する29分26秒(平均速度51.355km/h)でフィニッシュした。

ステージ3位:プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.

ステージ4位:ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

総合4位のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が区間15位(トップから1分18秒遅れ)とタイムをまとめ、昨年の登り基調の個人TTで異次元の強さを見せたヴィンゲゴーがスタートする。第1計測ではログリッチを10秒上回り、第2計測でも14秒と順調だったヴィンゲゴーは後半に失速。ログリッチから3秒遅れのタイムに甘んじ、4月の骨折からの調整不足を露呈した。

そして最後から2番目、現TT世界王者かつマイヨブラン(ヤングライダー賞)を着るエヴェネプールが走り出す。勢いの良いスタートを切ったエヴェネプールはスタート後2.6kmで一度踏み止め、チームカーにバイク交換を求めるため右手を上げる。「確実にパンクだと思ったが幸い何もなかった」とレース後振り返ったエヴェネプールは確かめるようにバイクを上下に振った後、再び力強く踏み始めた。

ログリッチやヴィンゲゴー、ポガチャルが60Tのフロントシングルを使用するなか、62Tを回したエヴェネプールは3つの中間計測地点の全てでトップタイムを更新。フィニッシュ地点でパートナーが見守る目の前で、平均速度を52km/hに乗せる28分52秒のトップタイムでフィニッシュした。

ステージ1位:レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

ステージ2位:タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

そして現地時間の午後5時、マイヨジョーヌを纏ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がスタートを切る。第1計測をエヴェネプールから2秒遅れで通過し、丘の頂上では10秒遅れとその差は拡大。得意の下りで攻めて6秒まで差を縮めたものの、平坦路で再び差を拡げられ、エヴェネプールのタイムから12秒遅い29分4秒でレースを終えた。

この結果、自身初となるツールでのステージ優勝を決め、3大ツール全てで勝利を飾ったエヴェネプール。「今日の調子は良くなく、登りでは苦しんだ。また限界の状態で駆けるダウンヒルにしてはテクニカルだった。だが楽しみながら走ることができ、勝利を掴んだことが信じられない。今日のステージはどうしても勝ちたく、その目標を達成できたので心から誇りに思う」と喜びを語った。

ポガチャルの総合首位は変わらず、2位エヴェネプールはその差を45秒から33秒まで縮小。3位ヴィンゲゴーは1分15秒、ログリッチは4位に順位を上げながらも1分36秒まで差が拡がった。

自身初となるステージ優勝を飾ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

区間2位でマイヨジョーヌを守ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos


ツール・ド・フランス2024第7ステージ
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 28:52
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +0:12
3位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:34
4位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +0:37
5位 ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー) +0:52
6位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケアB&Bホテルズ)
7位 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:54
8位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:57
9位 ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:59
10位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) +1:00
15位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +1:18
17位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +1:27
24位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) +1:51
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 27:16:23
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:33
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +1:15
4位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:36
5位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +2:16
6位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +2:17
7位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +2:31
8位 ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) +3:35
9位 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +4:03
10位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:36
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) 149pts
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 11pts
3位 ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) 87pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) 26pts
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 20pts
3位 ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) 16pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 27:16:56
2位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +1:43
3位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +1:58
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ 81:54:04
2位 スーダル・クイックステップ +6:04
3位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +7:41
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.