ツール通算35勝目を挙げ、区間優勝記録を更新したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)。本人の喜びの声やチームカーから支えたマーク・レンショー監督、祝福するGトーマスやポガチャルなどの言葉を紹介します。



ステージ優勝 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)

集団スプリントを制し、大記録を作ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) photo:CorVos

レース後インタビュー

ちょっと信じられない。アスタナは今年、ツール・ド・フランスで結果を残すために大きな賭けに出た。少なくとも1つは勝つつもりで、僕らはアレクサンドル・ヴィノクロフと共に賭けに出た。元選手である彼は「全てを賭けなければツールでは勝てない」と知っていた。ここでの勝利にはUCIランキングでトップになるよりも価値がある。なぜならツールは自転車競技よりも大きいものなのだからね。

苦しむのは好きではないが、全ては気のせいだとわかっている。思っていたようなリードアウトトレインは組めなかったが、チームメイトが良いポジションへと導いてくれた。他の選手たちに比べ身体的に劣っているならば、勝つために少し頭を使わなければならないんだ。

チームメイトと喜びを分かち合うマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) photo:CorVos

表彰式後インタビュー

正直、いまは早く家族やチームメイトに会いたい。選手キャリアの終盤を本当に助けてもらったからね。だから皆との時間を過ごしたい。

理想的なリードアウトではなく終盤にモルコフを見失ってしまった。ただ他の選手たちが状況に上手く対応し、集団前方での位置を守ってくれた。ケース(ボル)とバッレリーニが予定よりも早く集団先頭に立ってしまい、その後はアルペシン(フィリプセン)の背後を狙った。その後はアッカーマンの背後に移り、彼がどちらから飛び出すか分からなかったので待つ必要があった。

家族と共に表彰台に上がったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) photo:A.S.O.

スプリント中に35勝を狙うなんて気持ちはなく、フィニッシュに向かって全力で踏み込んだだけ。一番先にフィニッシュラインに達したら人生は変わるが、2番だったらそれで終わり。だからこそ勝利は美しいんだ。

パスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック)

残り250mから踏み込んだのだが、向かい風もあり少し早すぎたみたいだ。でもトライしないと結果は分からないから良いチャレンジだったと思う。

マイヨヴェールを手に入れたビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)

区間9位でマイヨヴェールを獲得したビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) photo:Intermarché - Wanty

今日の目標だったマイヨヴェールを手に入れることができた。もちろん思い描いていた順位(9位)ではないものの、最低限の目標は達成できた。このジャージは僕のモチベーションを高めてくれるよ。僕には失うものなんて何もないので、全力でこのジャージを守りに行く。

僕が9〜10歳の頃、初めて観たのが2010年のツール・ド・フランスだった。その時カヴェンディッシュは既に勝ち星を重ねていた。だから彼は僕のアイドルだ。自転車競技を始めた頃から彼のようになりたかった。同じレースで彼は35勝目、僕はマイヨヴェールを獲得できて嬉しいよ。

マイヨジョーヌ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

カヴェンディッシュを祝福するタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

―落車しかけたシーンは何があった?

集団の中で走っていたら突然(中央分離帯が)現れたんだ。僕の前の選手がブレーキを握り、後輪に触れた。肩もぶつかりながらも落車を避けることができた。でも平坦ステージではよくあることだ。落車の危険性はいつだって静かで何も無いところに潜んでいる。

マークがツールで35勝目を挙げたなんて信じられない。彼は僕「この記録を破らないでくれ」と言ってきたんだ。本当に素晴らしい結果だよ。

カヴェンディッシュを祝福するゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)

本当に嬉しいよ。彼がレースを続けてきた成果だ。39歳にもなれば遅くなっていくという定説をこの勝利によって否定した。僕は彼の勝利を信じていたし、僕のポッドキャスト番組でもそう言った。彼はいつも山岳ステージで苦しむが、良いチームが彼をサポートした。最多区間優勝記録を誰かと分け合うのではなく、単独となったことは喜ばしい。

実は彼に「もし勝ったらそのままバイクを置いて帰ってしまえばいい」って伝えたんだ。でも彼は「もし1勝したらもっと勝ちたくなる」と答えた。だから僕たちはまだ、彼のスプリントを観ることはできるはずだ。

アスタナ・カザクスタンのマーク・レンショー監督

アレクサンドル・ヴィノクロフGMの祝福を受けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) photo:A.S.O.

フィニッシュしてから5秒くらいは彼が勝利したかどうか分からなかった。その後勝利を知り、本当に素晴らしい気持ちで満たされた。彼はまるで高級ワインのように歳を重ねる毎に良くなっていく。

チームとして彼の勝利には自信があった。ヴィノクロフはこの(カヴェンディッシュの記録更新という)計画を支持し、彼が勝つ可能性を少しでも高めるため(モルコフなど)素晴らしい選手を獲得した。その計画にマークはコミットし、今年はろくに家族との時間を過ごせていないはずだ。

第3ステージを終えた後も「いつか全てがハマるはず」と思っていた。正直、明日のステージの方が彼に適しているので、それが今日になるとは思っていなかった。僕は彼に自信を与え、皆にミーティングやチームカーからコースの情報を与えることしかできない。だから今日の結果は、彼らの力によって得たものだ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos