ツアー・オブ・ジャパン第7ステージが神奈川県の相模原市内で行われ、終盤に抜け出した3名での勝負を制したマックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)が今大会2勝目を挙げた。山岳賞は中井唯晶(シマノレーシング)がほぼ確定させ、ポイント賞は寺田吉騎(シマノレーシング)が維持した。



第7ステージの相模原市は今年市政施行70周年を迎える ©️TOJ2024
「これ何のマーク?」 photo:Satoru Kato


ツアー・オブ・ジャパン7日目は相模原市でのステージ。JR橋本駅に近い相模原市の中心部をスタートし、東京五輪のロードレースコースの一部をパレード走行。宮ヶ瀬湖沿いを走る1周13.8kmの周回コースを7周し、鳥居原ふれあいの館前にフィニッシュする107.5kmのレースだ。

第7ステージの各賞ジャージ photo:Satoru Kato

前日の第6ステージで個人総合優勝の行方はおよそ決まったものの、各賞ジャージ争いは加熱が予想された。特に山岳賞が設定されるのはこのステージが最後になるため、逆転のラストチャンスとなる。山岳賞トップの中井唯晶(シマノレーシング)と、同2位のニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)との差は14ポイント。この日は2級山岳が3回設定されるため、3回全て1位通過すれば15ポイント獲得で逆転は可能だが、中井が計2ポイント獲得出来れば山岳賞維持となる。

ポイント賞争いはさらに複雑だ。この日は3回のスプリント賞とフィニッシュをあわせて計40ポイント獲得することが可能。ポイント賞トップの寺田吉騎(シマノレーシング)から40ポイント以内には24名がひしめく僅差で、下位からの逆転の可能性もある。さらにはボーナスタイムを獲得して総合順位を上げたい選手やチームの思惑が絡み、激しい争いが予想された。

新旧小倉橋を背に集団が進む ©️TOJ2024

序盤からアスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチームがレースを展開していく photo:Satoru Kato

宮ヶ瀬湖沿いを長く伸びた集団が進む photo:Satoru Kato

旧小倉橋を渡ってリアルスタートが切られると、アタック合戦が続いていく。周回コースに入り、1周目のスプリント賞争いには小林海(マトリックスパワータグ)が参戦し、寺田を抑えて1位通過。3周目に設定された2回目のスプリント賞では寺田に次ぐ2位通過となったものの、小林はこれで4秒のボーナスタイムを獲得。個人総合順位を8位から7位に上げることに成功する。

先行しかけた集団に喰らいつく中井唯晶(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

一方、山岳賞争いは「疲労で体が動かなかった」という中井に代わって、チームメイトの入部正太朗(シマノレーシング)が動き、2周目に設定された最初の山岳賞を1位通過。ニコラス・ヴィノクロフはポイントを取れず、この時点で中井の山岳賞トップはほぼ確定する。

3周目に形成された6名の先頭集団 photo:Satoru Kato

レースは3周目、2回目のスプリント賞のあと6名が先行する。メンバーは、アドネ・ファン・エングレン(ルージャイ・インシュアランス)、孫崎大樹(キナンレーシングチーム)、織田聖(マトリックスパワータグ)、草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)、入部正太朗、風間翔眞(以上シマノレーシング)。

メイン集団はJCLチーム右京がコントロール photo:Satoru Kato

最終周回目前、マックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)がアタック photo:Satoru Kato

後続のメイン集団は、リーダージャージを擁するJCLチーム右京がコントロールし、1分から1分30秒差を維持。終盤に入ると日本ナショナルチームが牽引し、差を一気に縮めていく。

残り2周となる6周目、先行する6名と集団との距離が詰まったところで、マックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン)と兒島直樹(日本ナショナルチーム)が先頭集団に合流。最終周回に入る直前、登り区間でウォーカーがアタックすると、先頭集団は崩壊。エングレンと兒島が追従し、3名の先頭集団が新たに形成される。

先行して最終コーナーを立ち上がったマックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)後方に集団が迫る photo:Satoru Kato

マックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム)が今大会2勝目 photo:Satoru Kato

後続集団との差は30秒前後まで開き、差を詰めきれないままフィニッシュへ。最後はウォーカーが先頭で最終コーナーを立ち上がって先着し、今大会2勝目。兒島が3位に入った。

第7ステージ優勝 マックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム) photo:Satoru Kato

第7ステージ優勝 マックス・ウォーカー コメント
「京都ステージ以来の表彰台に立ててとても嬉しい。自分もチームも調子を上げてきていて毎ステージトライしてきて今日勝つことが出来た。今日のステージは逃げが決まることが予想されたので、メンバー全員が逃げに乗り損ねないように動いた。最後の3人になった中に入って、自分も強いが他の2人も強かったので最後まで逃げ切ることが出来た。2人には感謝したい。

ステージが進むにつれて他のチームが疲れてきていることもあるけれど、日本のレース展開に慣れてきたことが結果に出てきていると思う。普段はヨーロッパのレースを走っているが、日本のレースは違うところが多く、特にこのツアー・オブ・ジャパンは各ステージが短距離だけれどハードでパワーが必要なコースが多い。レース展開も違うので、予想していたものと違うことも多い。それを理解してきたように思う」

ポイント賞 寺田吉騎(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

ポイント賞 寺田吉騎 コメント
「ポイントを取れるのであれば取りに行く方針でスタートした。アタック合戦が激しかったが、自分もチームも調子が良く、1回目2位、3回目1位通過でポイントを獲ることが出来た。フィニッシュも粘ったけれど、集団のトップは難しくて、でもなんとか4ポイント取れていたので良かったと思う。小林海(マトリックスパワータグ)選手が中間スプリントに絡んできたのは意外だったけれど、ポイント賞ではなくボーナスタイムを獲るための別の戦いをしていたと思う。でも海選手は強くて、普通に差されてしまった。

まだひっくり返される可能性もあるので、明日も気を引き締めて笑顔でフィニッシュできるようにしたい」

山岳賞をほぼ確定させた中井唯晶(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

山岳賞 中井唯晶 コメント
「連日行っていたので疲れが溜まって体が動かず、ニコラス・ヴィノクロフ選手の動きに対応できなかったけれど、入部(正太朗)さんが2回も1位通過してくれて本当に助かった。山岳賞ジャージが確定して本当に嬉しいし、ホッとしている。明日は寺田(吉騎)選手のコマになってポイント賞を確定させ、2人揃ってジャージを着て終わりたい」
ツアー・オブ・ジャパン 第7ステージ・相模原 結果(107.5km)
1位 マックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム、イギリス) 2時間24分45秒
2位 アドネ・ファン・エングレン(ルージャイ・インシュアランス、オランダ) +0秒
3位 兒島直樹(日本ナショナルチーム) +2秒
4位 ダヴィデ・トネアッティ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム、イタリア) +5秒
5位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム)
6位 ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京、イタリア)
7位 リース・ブリットン(セント・パイラン、イギリス)
8位 クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム、エリトリア)
9位 ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム、カザフスタン)
10位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム、カザフスタン)
個人総合成績 第7ステージ終了時
1位 ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京、イタリア) 16時間41分34秒
2位 クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム、エリトリア) +2分7秒
3位 ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島、オーストラリア) +2分12秒
4位 ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム、カザフスタン) +2分28秒
5位 アドネ・ファン・エングレン(ルージャイ・インシュランス、オランダ) +2分36秒
6位 ザッカリー・マリッジ(チームブリッジレーン、オーストラリア) +2分53秒
7位 小林 海(マトリックスパワータグ) +2分58秒
ポイント賞 第7ステージ終了時
1位 寺田吉騎(シマノレーシング) 65p
2位 ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京、イタリア) 62p
3位 マックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム、イギリス) 56p
山岳賞 第7ステージ終了時
1位 中井唯晶(シマノレーシング) 32p
2位 ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム、カザフスタン) 18p
3位 ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京、イタリア) 15p
チーム総合成績 第7ステージ終了時
1位 チーム・ブリッジレーン 50時間18分20秒
2位 JCLチーム右京 +1分37秒
3位 キナンレーシングチーム +4分59秒
明日は東京での最終ステージ。最大の注目点はポイント賞争いだろう。ここまで耐えてきたスプリンター達が最後のステージ優勝を狙い、個人総合順位のジャンプアップを狙う選手とチームの思惑も絡んで今日以上に混沌としたレースが予想される。個人総合、山岳賞はほぼ確定とは言え、明日完走することが条件。最終日はどのようなレース展開となるか?


text:Satoru Kato
photo:Satoru Kato, TOJ2024


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