2024/03/18(月) - 16:30
3月17日、「ブラーゼンサイクリング倶楽部」の設立記者会見が、栃木県大田原市で行われた。JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)のJエリートツアーのチームとして登録済みで、3月23日に開催される「JBCF真岡芳賀ロードレース」からレース参戦を開始する。
那須ブラーゼンとは無関係の新チームとして発足
「ブラーゼンサイクリング倶楽部」は、栃木県北部の那須地域を拠点に活動するチームとして3月2日に設立されたクラブチーム。事実上活動停止となった「那須ブラーゼン」と、その運営会社であるNASPO(ナスポ)株式会社とは無関係の任意団体として設立された。
既にJBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)のJエリートツアーに登録済みで、3月23日、24日に栃木県真岡市と宇都宮市で開催されるJエリートツアーのE3カテゴリーに出場する。監督には、那須ブラーゼンOBの雨澤毅明氏が就任。現時点でロードレース選手2名、シクロクロス選手2名の所属が決まっている。主な体制は以下の通り。
那須ブラーゼンとは無関係の新チームとして発足
「ブラーゼンサイクリング倶楽部」は、栃木県北部の那須地域を拠点に活動するチームとして3月2日に設立されたクラブチーム。事実上活動停止となった「那須ブラーゼン」と、その運営会社であるNASPO(ナスポ)株式会社とは無関係の任意団体として設立された。
既にJBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)のJエリートツアーに登録済みで、3月23日、24日に栃木県真岡市と宇都宮市で開催されるJエリートツアーのE3カテゴリーに出場する。監督には、那須ブラーゼンOBの雨澤毅明氏が就任。現時点でロードレース選手2名、シクロクロス選手2名の所属が決まっている。主な体制は以下の通り。
ブラーゼンサイクリング倶楽部 所属選手と主なスタッフ
ロードレース選手 | シクロクロス選手 | 主なスタッフ |
---|---|---|
増子悠樹(22) | 水上央渉(17) | 監督 雨澤毅明 |
本多滉斗(16) | 石田祥大(33) | チームアテンダント 山崎洋一 |
任意団体会長 前田幸雄 |
※カッコ内は年齢
チームロゴとエンブレムは那須ブラーゼンが使用してきたものを元に、前に飛んで後ろに下がらない「勝ち虫」と言われるトンボの図柄を追加したデザインとなった。ロゴとエンブレムについては那須ブラーゼンと協議の上、使用許諾を得ているという。
那須ブラーゼンとの最大の違いは、選手と雇用契約を結ばず、仕事をしながら活動する選手にレース出場のサポートを提供するチームとなること。環境が整えばJプロツアーへ参戦するとしているが、その場合でも同様な活動を継続するという。
会見では、ブラーゼンサイクリング倶楽部の会長である前田幸雄氏が設立趣旨を説明。「那須ブラーゼンが事実上活動停止となったことは残念だが、今まで活動を支え応援して下さった皆様の想いと培ってきた自転車文化は守り引き継ぐものと考え、ブラーゼンサイクリング倶楽部を設立した。一番身近なツールとしての自転車を、観光・健康・コミュニケーションツールとして活用し、老若男女総ての年齢層の皆様に親しみ楽しんで頂ける活動を行い、地域の皆様に応援され、愛されるチームを目指したい」と語った。
雨澤毅明監督「ブラーゼンが存続しているところを見ていただきたい」
2020年をもって選手を引退した雨澤毅明氏。現在は栃木県庁職員として働いているが、監督を引き受けたのは那須ブラーゼンのOBというだけでなく、地域密着型チームについての考えがあったからだと言う。
「私の中で地域密着型チームがどうあるべきかを最近自問することがあって、NASPOの事業停止をきっかけにもう一度地域密着型チームのあるべき姿を作り直すことのお手伝いを出来たらと思い、監督を引き受けることにした。監督と言っても、例えば自分が選手だったらどういうサポートを受けたいと思っていたかとか、レースの勝ち方やそのためのトレーニングとか、自分が持ってるノウハウでアドバイスしていく、言わば「お手伝いさん」みたいなものと思っている。
私自身、ブラウ・ブリッツェンでJエリートツアーを走り、那須ブラーゼンに加入してJプロツアーにステップアップしたが、若い選手に同じような場を提供出来るようにしたいと考えている。ブラウ・ブリッツェンもアマチュアチームでありながら地域密着チームとして活動していた。このチームも現在はプロのチームではないけれども、地域のために出来る事はあるのではないかと思う。正解があるわけではないから試行錯誤する必要もあるし、自分の中でも固まっていない部分もあるので、考えながらやっていくしかないと思う。
まずは今週末の地元開催レースで「ブラーゼン」が存続しているところを皆さんに見ていただきたい」
金子大介「外野の立場からアドバイスを」
会見にはセブンイレブン・ロードバイク・フィリピンズに所属する金子大介の姿もあった。那須ブラーゼンOBとして、協力していきたいと話す。
「所属していたチームが無くなるというレアな経験となったが、那須ブラーゼンを全力で応援してくれてきた地域の皆さんの感情を思うと残念でならない。今も那須地域に住んでいて、自転車にとって本当に良い場所だと思っているからなおさら残念に思っていたところ、新しいチームを作ると聞いて協力できることがあるのではないかと考えている。
まだ具体的にどう関わっていくかは決まっていないが、個人的に開催してきたサイクリングガイドなどで得たことや、那須ブラーゼン所属時の経験を元に、あくまで外野の立場からアドバイスやコーチングなど出来ることを伝えていければと思っている」
地域密着型チームが抱える課題と難しさ浮き彫りに
鹿児島でJプロツアー開幕2連戦が開催された翌日の2月26日、さいたま那須サンブレイブは、那須ブラーゼンとの提携を2月いっぱいで解消し、チーム名を「さいたま佐渡サンブレイブ」に改めると発表した。その1週間後の3月5日、栃木県内のメディアを中心に、那須ブラーゼンの運営会社NASPO株式会社が事業停止したことが報道された。
さいたま那須サンブレイブは2024年のJプロツアーチームとして登録していたが、那須地域所属選手は吉岡直哉1名となっていた。吉岡はさいたま佐渡サンブレイブ所属となって活動を継続。3月2日、3日に行われた富士クリテリウムチャンピオンシップに出場している。(さいたま那須サンブレイブ発足時の記事は下記リンク参照)
3月17日現在、NASPO株式会社から事業停止についての発表は何も出されていない。「本来であれば、NASPOの正式発表の後にチーム設立の発表をしたかったが、地元開催の大会を前に新しいチームを知ってもらうにはこのタイミングしか無かった」と、ブラーゼンサイクリング倶楽部の前田会長は話す。那須ブラーゼン発足時に運営会社の代表を務めていた前田氏の言葉の端々には、もどかしさが滲み出る。
2009年に宇都宮ブリッツェンが発足して以降、各地に地域密着型チームが誕生してきたが、経営の面では順風満帆と言えるチームは決して多くない。那須ブラーゼンは「ブラサポ」と呼ばれる多くのサポーターが大会やイベントの運営を支えており、ブラサポ無しでは栃木県内の自転車イベントは開催出来ないとまで言われていた。それだけ多くのサポーターがいながらも事実上活動停止に追い込まれてしまったことは、地域密着型チームの運営の難しさを浮き彫りにしたと言えよう。レースで勝利を挙げることは重要だが、それが必ずしも経営面でプラスにならないことも自転車競技特有の課題だ。
前述の通り、ブラーゼンサイクリング倶楽部が今後Jプロツアーに参戦することになっても、従来の那須ブラーゼンのようなチームになることは無く「『イナーメ信濃山形』のような、JBCF大会でほぼ全てのカテゴリーで選手が走っているようなチームを目指したい」と、前田会長は話す。
とは言え、従来のようなプロチームを持たず、地域密着型チームとしてどのように活動していくのかは今後の大きな課題だろう。雨澤監督は、「今年は準備期間となるが、もしかしたら来年も準備期間になってしまうかもしれない」と言う。「私の名前で注目してくれる人が増えるなら、もっと使ってもらっていい」とも。
チームの目標として、2022年以来となる那須塩原クリテリウムの復活開催を挙げる。その暁には、全カテゴリーで新生ブラーゼンのジャージで走る選手が見られるようになるだろうか?
text:Satoru Kato
チームロゴとエンブレムは那須ブラーゼンが使用してきたものを元に、前に飛んで後ろに下がらない「勝ち虫」と言われるトンボの図柄を追加したデザインとなった。ロゴとエンブレムについては那須ブラーゼンと協議の上、使用許諾を得ているという。
那須ブラーゼンとの最大の違いは、選手と雇用契約を結ばず、仕事をしながら活動する選手にレース出場のサポートを提供するチームとなること。環境が整えばJプロツアーへ参戦するとしているが、その場合でも同様な活動を継続するという。
会見では、ブラーゼンサイクリング倶楽部の会長である前田幸雄氏が設立趣旨を説明。「那須ブラーゼンが事実上活動停止となったことは残念だが、今まで活動を支え応援して下さった皆様の想いと培ってきた自転車文化は守り引き継ぐものと考え、ブラーゼンサイクリング倶楽部を設立した。一番身近なツールとしての自転車を、観光・健康・コミュニケーションツールとして活用し、老若男女総ての年齢層の皆様に親しみ楽しんで頂ける活動を行い、地域の皆様に応援され、愛されるチームを目指したい」と語った。
雨澤毅明監督「ブラーゼンが存続しているところを見ていただきたい」
2020年をもって選手を引退した雨澤毅明氏。現在は栃木県庁職員として働いているが、監督を引き受けたのは那須ブラーゼンのOBというだけでなく、地域密着型チームについての考えがあったからだと言う。
「私の中で地域密着型チームがどうあるべきかを最近自問することがあって、NASPOの事業停止をきっかけにもう一度地域密着型チームのあるべき姿を作り直すことのお手伝いを出来たらと思い、監督を引き受けることにした。監督と言っても、例えば自分が選手だったらどういうサポートを受けたいと思っていたかとか、レースの勝ち方やそのためのトレーニングとか、自分が持ってるノウハウでアドバイスしていく、言わば「お手伝いさん」みたいなものと思っている。
私自身、ブラウ・ブリッツェンでJエリートツアーを走り、那須ブラーゼンに加入してJプロツアーにステップアップしたが、若い選手に同じような場を提供出来るようにしたいと考えている。ブラウ・ブリッツェンもアマチュアチームでありながら地域密着チームとして活動していた。このチームも現在はプロのチームではないけれども、地域のために出来る事はあるのではないかと思う。正解があるわけではないから試行錯誤する必要もあるし、自分の中でも固まっていない部分もあるので、考えながらやっていくしかないと思う。
まずは今週末の地元開催レースで「ブラーゼン」が存続しているところを皆さんに見ていただきたい」
金子大介「外野の立場からアドバイスを」
会見にはセブンイレブン・ロードバイク・フィリピンズに所属する金子大介の姿もあった。那須ブラーゼンOBとして、協力していきたいと話す。
「所属していたチームが無くなるというレアな経験となったが、那須ブラーゼンを全力で応援してくれてきた地域の皆さんの感情を思うと残念でならない。今も那須地域に住んでいて、自転車にとって本当に良い場所だと思っているからなおさら残念に思っていたところ、新しいチームを作ると聞いて協力できることがあるのではないかと考えている。
まだ具体的にどう関わっていくかは決まっていないが、個人的に開催してきたサイクリングガイドなどで得たことや、那須ブラーゼン所属時の経験を元に、あくまで外野の立場からアドバイスやコーチングなど出来ることを伝えていければと思っている」
地域密着型チームが抱える課題と難しさ浮き彫りに
鹿児島でJプロツアー開幕2連戦が開催された翌日の2月26日、さいたま那須サンブレイブは、那須ブラーゼンとの提携を2月いっぱいで解消し、チーム名を「さいたま佐渡サンブレイブ」に改めると発表した。その1週間後の3月5日、栃木県内のメディアを中心に、那須ブラーゼンの運営会社NASPO株式会社が事業停止したことが報道された。
さいたま那須サンブレイブは2024年のJプロツアーチームとして登録していたが、那須地域所属選手は吉岡直哉1名となっていた。吉岡はさいたま佐渡サンブレイブ所属となって活動を継続。3月2日、3日に行われた富士クリテリウムチャンピオンシップに出場している。(さいたま那須サンブレイブ発足時の記事は下記リンク参照)
3月17日現在、NASPO株式会社から事業停止についての発表は何も出されていない。「本来であれば、NASPOの正式発表の後にチーム設立の発表をしたかったが、地元開催の大会を前に新しいチームを知ってもらうにはこのタイミングしか無かった」と、ブラーゼンサイクリング倶楽部の前田会長は話す。那須ブラーゼン発足時に運営会社の代表を務めていた前田氏の言葉の端々には、もどかしさが滲み出る。
2009年に宇都宮ブリッツェンが発足して以降、各地に地域密着型チームが誕生してきたが、経営の面では順風満帆と言えるチームは決して多くない。那須ブラーゼンは「ブラサポ」と呼ばれる多くのサポーターが大会やイベントの運営を支えており、ブラサポ無しでは栃木県内の自転車イベントは開催出来ないとまで言われていた。それだけ多くのサポーターがいながらも事実上活動停止に追い込まれてしまったことは、地域密着型チームの運営の難しさを浮き彫りにしたと言えよう。レースで勝利を挙げることは重要だが、それが必ずしも経営面でプラスにならないことも自転車競技特有の課題だ。
前述の通り、ブラーゼンサイクリング倶楽部が今後Jプロツアーに参戦することになっても、従来の那須ブラーゼンのようなチームになることは無く「『イナーメ信濃山形』のような、JBCF大会でほぼ全てのカテゴリーで選手が走っているようなチームを目指したい」と、前田会長は話す。
とは言え、従来のようなプロチームを持たず、地域密着型チームとしてどのように活動していくのかは今後の大きな課題だろう。雨澤監督は、「今年は準備期間となるが、もしかしたら来年も準備期間になってしまうかもしれない」と言う。「私の名前で注目してくれる人が増えるなら、もっと使ってもらっていい」とも。
チームの目標として、2022年以来となる那須塩原クリテリウムの復活開催を挙げる。その暁には、全カテゴリーで新生ブラーゼンのジャージで走る選手が見られるようになるだろうか?
text:Satoru Kato
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