新チーム「ヴェロリアン松山」には、地域密着型チームの経験を持つベテラン選手や有望な若手選手らが揃った。その中からチームの要となる清水裕輔監督と、ベテラン選手の鈴木譲と阿部嵩之のふたりに話を聞いた。



清水裕輔監督「5年先が見えているチームにしたい」

再び地域密着型チームの指揮を取ることになった清水裕輔監督兼GM photo:Satoru Kato

新規チームなのでどうしても色々なものを揃えるまでに時間がかかってしまい、ウェアも自転車もギリギリで用意することが出来ました。普通のチームなら早ければ11月には翌年のことが揃っていますからね。

僕は元々浅田(顕)さんの下で海外レースに出場するチームに関わることをしていたので、宇都宮ブリッツェンに来た時は逆に国内はどうやったらいいんだろう?と思っていたほどでした。昨年はJCLチーム右京として海外レースを転戦しましたが、次の世代に繋げていくという点が課題であることは同じだと感じていました。それでブリッツェンで9年やってきて、僕なりに地域密着活動しながらも選手を育成するというスタンスでもっと出来ることがあるのではないかという想いがあって、それが松山で出来るのではないかと感じました。

地元の若い選手が自ら望んで来てくれたのもありがたいのですが、元ブリッツェンの選手4名の加入は心強いと感じています。若手選手を育てるには現場をわかっている人間が必要です。それには、地域活動を理解してる選手がいれば手本になるし、自分がやろうとしている事も伝わりやすいから、すでに助かっています。

地元メディアの取材を受ける清水監督 四国初のチームにかかる期待は大きい photo:Satoru Kato

僕が加入した時点ではUCIコンチネンタル登録する方向ですでに動いていたのですが、初年度から登録は思い切った判断だと思います。クラブチームよりも国際レースに出られるチームなら出しやすいというスポンサー様やサプライヤー様もあるので、その点は良いのではないでしょうか。

海外レース出場に向けての交渉は進めていますが、今はアジアツアーよりもヨーロッパのレースの方が出やすい場合もあります。実はヨーロッパで1レース出場の確約を頂いたのですが、こちらの予算の都合でお断りすることになってしまった大会がありました。アジアのレベルは上がってきているけれど、枠が狭くて大変になっているので、必ずしもアジアツアーでとは考えていません。

今年は22チームが参戦するJプロツアー(写真は2023年群馬CSC大会) photo:Satoru Kato

新設のチームで個々の選手の脚質などもよくわからないので、まずはトップ争いをしてどこでもいいから勝つぞと選手には言ってます。シーズン中に動きが見えてきたら具体的に狙えるレースが見えてくると思います。とは言え、今年のJプロツアーは22チームもあるので、簡単には勝てないと思っています。

チーム初年度の責任は重いと感じています。住民票をこちらに移して家も構えましたので、覚悟を決めて臨んでいます。今シーズンを終えたあと5年先が見えているチームにしたい、次のステップに進めるイメージが見えるようにしたいですね。それはレースの結果だけでなく、地域の受け入れとか、色々なことが波に乗るようにしていきたいです。



鈴木譲 阿部嵩之「また同じチームでやるとは思っていなかった」

これまでシマノレーシングと宇都宮ブリッツェンでチームメイトだった鈴木譲と阿部嵩之の2人が、ヴェロリアン松山で三たびチームメイトとなった。その2人に揃って話を聞いた。

初代キャプテンとなる鈴木譲 photo:Satoru Kato

-ゼロからの立ち上げになるチームは加入は初めてですね?

鈴木:そうですね。これまではある程度軌道にのったチームにいることが多かったので、新規発足で手探りで立ち上げるチームは初めてです。ある程度の形はこれまでの経験でわかっていても、地域のことはこれから知っていく部分も多いので、周りの人にも話を聞きながら地域とのつながり方をこれから模索していく感じです。

-ゼロからとは言え、これまで地域密着チームでやってきたことを活かせる場と思いますが?

阿部:チームのスタイルは地域密着で変わらないが、それがゼロから始まる点が宇都宮ブリッツェンとの差だと思っています。本当にゼロからのチームの経験は初めてなので、これからどうなるのかは楽しみでもあり不安でもあり、ですね。僕のレースでの走りは「見せる走り」王道のやり方なので、それをチーム全体で表現していければと思っています。今日の会見での立ち居振る舞いも含め、僕もブリッツェンに入るまでは出来ていなかったけれど、若手選手も学んでいってほしいと思います。

選手16年目の阿部嵩之 photo:Satoru Kato

-揃ったメンバーを見ると、今年どこかで勝てるのではと期待しますが、いかがでしょう?

阿部:外国人選手が増えるようですし、正直大変だと思います。「ラッキーパンチ」が当たらないと勝てないかなと。でもそれが出来る若い選手もいるので、そういうテクニックも含めて伝えていきたいですね。

鈴木:5月の「おんたけヒルクライム(JBCF主催 5月19日開催)」は、ヒルクライムに強い森(海翔)とか森本(凛太郎)がいけるのではと思っています。彼のヒルクライマーとしての強さはヴェロリアン松山が無ければ埋もれていた才能かもしれないと思っています。松山には松山学院という自転車強豪校があって、エリート街道進める選手は放っておいても上に進んで行ける。でも地元にプロチームがあることで埋もれてしまった才能を拾い上げてチームとして盛り立てていくことも出来る。それを今年どこかで見せられればいいなと思います。

宇都宮ブリッツェン在籍時の阿部嵩之(左)と鈴木譲(右)2018年撮影

-清水監督含め、元ブリッツェンのメンバーが揃ったことに注目しているファンもいるようですが?

阿部:正直同窓会です(笑)。そんな気楽でいいのかと怒られるかもしれないけれど、メンツだけ見れば監督しかり、譲さんしかり、気心しれたチームで真っ白から作り上げるというのは僕にとっても素晴らしい経験になるだろうし、五里霧中で何から手をつけたらいいか判らないよりもはるかに良い経験を若い選手にしてあげることが出来ると思います。

鈴木:アベタカと同じチームになるとは思ってなかったですね(笑)。シマノ、宇都宮、松山と3チーム目で、こっちから入っていくわけでじゃなくてですから。ブリッツェンにいた時、これからもっと良いチームにしたいと思っていたところで離れることになって、巡り巡って元ブリッツェンのメンバーが揃って、地元にいる若い選手も入ってきて、その時の盛り上がりを松山で再現出来たら良いなと思っています。

ジャパンカップに出られるような強いチームになることが宇都宮への恩返しになると思います。そこまでキャリアを続けられればベストかなと。監督は今年出ると言ってるけれど、良い目標にはなりますね。

阿部:自分もジャパンカップには出たいと思っているけれど、簡単でなはいですよね。でもその原動力になれればいいなと思っています。


text&photo:Satoru Kato

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