2023年も残すところあと3日。年の瀬恒例の海外ロードシーズンのプレイバック前編は、3年振りの開催となったツアー・ダウンアンダーからファンデルプールがパリ〜ルーベを制した春のクラシック、そしてログリッチが初総合優勝を飾ったジロ・デ・イタリアまでを振り返ります。

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2年の中止期間を経て、UCIワールドツアーの初戦に戻ってきたサントス・ツアー・ダウンアンダー。真夏のオーストラリアで行われた灼熱のレースは2日目に今年引退のローハン・デニス(ユンボ・ヴィスマ)が勝利し、総合優勝はジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)と地元オーストラリア人選手たちが盛り上げた。

TDU最終日はサイモン・イェーツが制し、総合優勝はヴァインが掴んだ photo:Santos Tour Down Under

3月に入りヨーロッパ各地でロードシーズンが本格化。白い土煙舞うストラーデビアンケではトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が初戴冠。そしてモニュメント(5大クラシック)の初戦であるミラノ~サンレモを制したのは、シクロクロスで世界王者を奪還したばかりのマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)だった。

勝負所であるポッジオ頂上手前で踏み込んだファンデルプールにタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)は離され、ファンデルプールが亡き祖父レイモン・プリドールに続く制覇を成し遂げた。

ストラーデビアンケ初制覇を遂げたトーマス・ピドコック photo:CorVos
ミラノ〜サンレモを初制覇したファンデルプール photo:CorVos


ロンド初制覇を成し遂げたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

ユンボ・ヴィスマがE3サクソ・クラシック、ヘント〜ウェヴェルヘム、ドワルス・ドール・フラーンデレンでベルジャンクラシックを席巻するなか、2つ目のモニュメントであるロンド・ファン・フラーンデレンを制したのはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)だった。オウデ・クワレモントで精鋭集団からアタックを決めたポガチャルはファンアールトやファンデルプールを引き離し、独走で自身3つ目となるモニュメント制覇を成し遂げた。

ファンアールトがレース終盤にパンクで遅れを喫したパリ〜ルーベは、石畳適性を見せたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)のアシストを受けたファンデルプールが初優勝。そして続くアムステルゴールドレースでは28kmの独走、ラ・フレーシュ・ワロンでは激坂ユイの壁でライバルを蹴散らしたポガチャルが制し、改めてその強さを見せつけた。

パリ〜ルーベ制覇を成し遂げたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

アムステルゴールドレース2023表彰台:2位ヒーリー、1位ポガチャル、3位ピドコック photo:CorVos
ラ・フレーシュ・ワロンヌを初制覇したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos


大会2連覇を達成したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

そして春のクラシックを締めくくるリエージュ~バストーニュ~リエージュで圧巻の走りを見せたのは、世界王者の証であるアルカンシエルを身に纏ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)。新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が6年振りの出場を果たした雨のレースで、エヴェネプールは残り30km地点から独走で2連覇を達成。初制覇を狙うジロ・デ・イタリアに向けて弾みをつけた。

イタリア中部フォッサチェジーアで開幕したジロで注目されたのは、前年のブエルタ・ア・エスパーニャ覇者エヴェネプールと、ティレーノ〜アドリアティコを制したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)の直接対決。初日の個人タイムトライアルでエヴェネプールが勝利と共にマリアローザを着用すると、その後は初出場ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)の勝利や急遽出場したチームメイト新城の好走もありながら、エヴェネプールの区間2勝目(個人TT)で第1週目が幕閉じた。

大会初日で勝利を飾ったレムコ・エヴェネプール photo:CorVos
新城と勝利を喜ぶジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos


3年前の悪夢を払拭し、ステージ優勝を飾ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

しかしその直後、エヴェネプールは新型コロナウイルス感染によりリタイア。そのためマリアローザは総合2位のゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の手に移り、ドロミテ山塊での山岳決戦でも総合順位に大きな変動はなく、トーマスが総合首位のまま勝負は第20ステージの個人TTに持ち込まれた。

この時点でトーマスと総合2位ログリッチとの差は26秒。距離7.3km/平均12.1%の登坂が用意された個人TTで、ログリッチは途中チェーンが落ちるトラブルに見舞われながらもトップタイムを叩き出して区間優勝。マリアローザを着て出走したトーマスに40秒差をつけ、大粒の涙を流したログリッチが逆転で総合優勝に輝いた。

ジロ最終日はローマでのスプリントバトルに持ち込まれ、大会中に今年限りの引退を発表したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)が区間優勝(後に引退を撤回)。そしてログリッチが自身初となるトロフェオ・センツァフィーネを高々と掲げた。

チーム総合優勝を挙げ、表彰台で喜ぶ新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
ジロ最終日で勝利したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン) photo:CorVos


ジロ・デ・イタリア2023総合表彰台:2位トーマス、1位ログリッチ、3位アルメイダ photo:CorVos

プレイバック後編ではツール・ド・フランスやブエルタ、そしてイル・ロンバルディアを中心に振り返ります。
2023年シーズン男子ロード 上半期海外主要レース結果
1月17-22日 ツアー・ダウンアンダー 総合優勝:ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)
3月4日 ストラーデビアンケ トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
3月5-12日 パリ〜ニース 総合優勝:タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
3月6-12日 ティレーノ〜アドリアティコ 総合優勝:プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
3月18日 ミラノ〜サンレモ マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
4月2日 ロンド・ファン・フラーンデレン タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
4月9日 パリ〜ルーベ マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
4月16日 アムステルゴールドレース タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
4月19日 ラ・フレーシュ・ワロンヌ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
4月23日 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
5月6-28日 ジロ・デ・イタリア 総合優勝:プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
text:Sotaro.Arakawa

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