2023/12/22(金) - 17:00
カンパニョーロからついにリリースされた無線電子式コンポーネント、SUPERRECORD WIRELESS。イタリアの老舗が送り出した次世代コンポーネントのインプレッションをお届けしよう。
世界で初めてクイックレバーを開発して以来、近年においても12速化のさきがけとなるなど、ロードコンポーネント界においてリーディングブランドであり続けてきたカンパニョーロ。そのフラッグシップであるSUPER RECORDが、2018年以来5年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たし、次世代コンポーネントとして大きな一歩を踏み出した。
多くのアップデートが施されている新モデルだが、最も大きな変更点となるのは無線化されたこと。スラムが先鞭をつけ、シマノも半無線式にと続く中、ついにカンパニョーロもワイヤレス電子式コンポーネントとしてSUPER RECORD WIRELESSをデビューさせることとなった。
ケーブルフル内装コックピットが主流になった昨今のバイクとの組み合わせでは、コンポーネントのワイヤレス化は非常に大きなメリットとなる。このSUPER RECORD WIRELESSの開発にあたり、カンパニョーロはプロチームと緊密に協力し、最新のレーシングコンポに相応しい性能を実現したという。
ワイヤレス化にあたり、インターフェースも一新。機械式変速の操作体系を受け継いできたこれまでのEPSコンポーネントとは異なり、サムシフターを廃止しシフトレバー位置を一ヶ所に集約したデザインを採用したことが最も大きなポイントだ。
ブレーキレバー後方に上下に2分割されたシフトスイッチが配置され、ブラケットポジションでも下ハンドルを握った時でも素早い変速を可能に。エルゴパワーの伝統あるインターフェイスをガラリと変える改革を断行している。
バッテリーはエルゴパワーと変速機それぞれに装着される方式で、レバーにはボタン電池、ディレイラーは前後それぞれに専用設計(別形状)のバッテリーが用意されている。ブルートゥースによるペアリングも非常に簡単で、ほぼ自動でレバーとディレイラー間の通信を確立してくれるため、セットアップも非常に容易となっている。
専用のMyCampy3.0アプリも用意され、スマートフォンと接続することでシフトレバーの割り当てやバッテリーの状態確認といった設定も可能としている。
また、変速だけでなく、ドライブトレイン全体としても大きく思想を変えている。フロント、リアのギアをともにコンパクトにすることで、全体の重量を削減しつつワイドレンジかつクロスしたギアレシオを実現。
最新コンポーネントとして求められるスペックを全て身に着けたSUPER RECORD WIRELESS。注目集まるハイエンドモデルのインプレッションをお届けしよう。
インプレッション
「カンパニョーロらしい上質な操作感は無線化されても健在」綾野真(シクロワイアード編集長)
ワイヤレスとなってもカンパニョーロのコンポーネントらしさは薄れていませんね。ここ最近メインで使っているシマノDURA-ACEがキンキンとしたアルミの金属感のある使い心地だとすれば、このSUPER RECORD WIRELESSはしっとりとした滑らかなフィーリングが魅力です。
それは変速周りの加工精度の高さや素材の違いであったり、クランクがカーボンであったりといった部分が影響しているのでしょうが、変速した際のショックの少なさや踏んだ際の足当たりの滑らかさにカンパらしい上質感を感じますね。
変速スピードも前作からかなり向上していると感じました。グイグイとトルクを掛けながら変速しても、フロントリア共に滑らかに変速してくれます。特にリアのレスポンスは非常に速くなっていて、走りながら感動するほどでした。ワイヤレス化と言えば、反応が遅くなりそうなものですが、むしろこのSUPER RECORD WIRELESSに関してはあてはまらないですね。
フロント変速に関してはパワフルでありつつもチェーンを落とさないように確実に脱線させ、変速が完了するようにパンタグラフの動きがコントロールされているようで、ただ速いだけではない変速の妙を感じます。
皆さん気になっているのは新しい形状のエルゴパワーの使い心地でしょう。親指シフトスイッチが廃止されたレバーですが、ブラケットはちょっと大きめな印象を受けました。欧米人を基準に作っているからだと思いますが、手が小さめな私には下側の変速スイッチが若干遠く、ブラケットを持った状態だと少し指を伸ばす必要がありました。
ただ、シフトスイッチの形状は非常によく考えられていて、中指でも薬指でも非常に押しやすい。スイッチの凹みに指が収まりやすく、僅かな動きで操作できるのは好印象です。アプリと連携すればレバーの機能割当ても変更できますから、他のコンポーネントから乗り換えても違和感なく使えるはずです。
フードのラバー素材はやや硬めで、グローブ着用を前提として設計されているように感じましたね。ブラケット形状も少し太めになっていて、指で握りこむというよりは、掌全体で抱え込んで引くようなイメージのグリップの仕方がマッチするでしょうね。
マイクロコンパクトのドライブトレインですが、歯数が小さくなったことによる駆動ロスは全く感じなかったですね。それよりも、アウターを積極的に使っていけるシーンが多くなることの方がメリットだと感じます。アウター✕ローを使っても、チェーンに無理な負荷がかかったり、外れそうな気配も無いですね。
見慣れないほどずんぐりと大きなリアディレイラーですが、動き方がユーモラスで、ロングケージ化することなく幅広いレンジを実現する新たな設計であることを感じます。それが素材と形状の最適化で全体の軽量化に繋がっているとともに、バイク全体とも調和してバランス良く見えます。
駆動抵抗に関してはプーリーが非常に良い役割を果たしているように感じました。テンションプーリーが非常に厚みのある独特な造りになっているのですが、この回転が非常に軽いこともあり、全体として抵抗感の少ない乗り味になっているのではないかと思います。スプロケットが小さく、チェーンがギアに巻き付く量が多いのに、回転抵抗が少ない。このSUPER RECORD WIRELESSにもはやビッグプーリーのカスタムは必要無いほどに造りこまれているように感じます。
ブレーキは定評のあるカンパニョーロフィーリングですね。キャリパーも素晴らしいですが、ローターの出来も非常に良いですね。剛性感も高くて、ハードブレーキングでも歪むような感覚はゼロ。制動力の立ち上がり方が優れている感覚はカンパならではで、スピードコントロールが非常にやりやすい。
無線化を果たすことで最新バイクとのマッチングも良くなったSUPER RECORD WIRELESSは、カンパニョーロの美点である操作感の良さ、上質な使い心地といった部分にも磨きがかかり、単なるレース機材の範疇を越えた存在となりました。
ただ速く走りたいというのではなく、ロードバイクを走らせるという行為一つ一つを楽しみたい、操作することの愉悦を感じたいという方には、カンパニョーロしかないでしょう。あとは他に抜きん出た価格についてどう捉えるかということだけ。
今回日本で1台目として組みつけられたバイクはデローザの創設70周年記念モデル、Settanta(セッタンタ)。ともにイタリアが生み出したプロダクツの最高峰の組み合わせで完成したロードバイクを目の前にすると、まさに至高という言葉が浮かんできます。
impression&photo:Makoto Ayano
text&photo:Naoki Yasuoka
世界で初めてクイックレバーを開発して以来、近年においても12速化のさきがけとなるなど、ロードコンポーネント界においてリーディングブランドであり続けてきたカンパニョーロ。そのフラッグシップであるSUPER RECORDが、2018年以来5年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たし、次世代コンポーネントとして大きな一歩を踏み出した。
多くのアップデートが施されている新モデルだが、最も大きな変更点となるのは無線化されたこと。スラムが先鞭をつけ、シマノも半無線式にと続く中、ついにカンパニョーロもワイヤレス電子式コンポーネントとしてSUPER RECORD WIRELESSをデビューさせることとなった。
ケーブルフル内装コックピットが主流になった昨今のバイクとの組み合わせでは、コンポーネントのワイヤレス化は非常に大きなメリットとなる。このSUPER RECORD WIRELESSの開発にあたり、カンパニョーロはプロチームと緊密に協力し、最新のレーシングコンポに相応しい性能を実現したという。
ワイヤレス化にあたり、インターフェースも一新。機械式変速の操作体系を受け継いできたこれまでのEPSコンポーネントとは異なり、サムシフターを廃止しシフトレバー位置を一ヶ所に集約したデザインを採用したことが最も大きなポイントだ。
ブレーキレバー後方に上下に2分割されたシフトスイッチが配置され、ブラケットポジションでも下ハンドルを握った時でも素早い変速を可能に。エルゴパワーの伝統あるインターフェイスをガラリと変える改革を断行している。
バッテリーはエルゴパワーと変速機それぞれに装着される方式で、レバーにはボタン電池、ディレイラーは前後それぞれに専用設計(別形状)のバッテリーが用意されている。ブルートゥースによるペアリングも非常に簡単で、ほぼ自動でレバーとディレイラー間の通信を確立してくれるため、セットアップも非常に容易となっている。
専用のMyCampy3.0アプリも用意され、スマートフォンと接続することでシフトレバーの割り当てやバッテリーの状態確認といった設定も可能としている。
また、変速だけでなく、ドライブトレイン全体としても大きく思想を変えている。フロント、リアのギアをともにコンパクトにすることで、全体の重量を削減しつつワイドレンジかつクロスしたギアレシオを実現。
最新コンポーネントとして求められるスペックを全て身に着けたSUPER RECORD WIRELESS。注目集まるハイエンドモデルのインプレッションをお届けしよう。
インプレッション
「カンパニョーロらしい上質な操作感は無線化されても健在」綾野真(シクロワイアード編集長)
ワイヤレスとなってもカンパニョーロのコンポーネントらしさは薄れていませんね。ここ最近メインで使っているシマノDURA-ACEがキンキンとしたアルミの金属感のある使い心地だとすれば、このSUPER RECORD WIRELESSはしっとりとした滑らかなフィーリングが魅力です。
それは変速周りの加工精度の高さや素材の違いであったり、クランクがカーボンであったりといった部分が影響しているのでしょうが、変速した際のショックの少なさや踏んだ際の足当たりの滑らかさにカンパらしい上質感を感じますね。
変速スピードも前作からかなり向上していると感じました。グイグイとトルクを掛けながら変速しても、フロントリア共に滑らかに変速してくれます。特にリアのレスポンスは非常に速くなっていて、走りながら感動するほどでした。ワイヤレス化と言えば、反応が遅くなりそうなものですが、むしろこのSUPER RECORD WIRELESSに関してはあてはまらないですね。
フロント変速に関してはパワフルでありつつもチェーンを落とさないように確実に脱線させ、変速が完了するようにパンタグラフの動きがコントロールされているようで、ただ速いだけではない変速の妙を感じます。
皆さん気になっているのは新しい形状のエルゴパワーの使い心地でしょう。親指シフトスイッチが廃止されたレバーですが、ブラケットはちょっと大きめな印象を受けました。欧米人を基準に作っているからだと思いますが、手が小さめな私には下側の変速スイッチが若干遠く、ブラケットを持った状態だと少し指を伸ばす必要がありました。
ただ、シフトスイッチの形状は非常によく考えられていて、中指でも薬指でも非常に押しやすい。スイッチの凹みに指が収まりやすく、僅かな動きで操作できるのは好印象です。アプリと連携すればレバーの機能割当ても変更できますから、他のコンポーネントから乗り換えても違和感なく使えるはずです。
フードのラバー素材はやや硬めで、グローブ着用を前提として設計されているように感じましたね。ブラケット形状も少し太めになっていて、指で握りこむというよりは、掌全体で抱え込んで引くようなイメージのグリップの仕方がマッチするでしょうね。
マイクロコンパクトのドライブトレインですが、歯数が小さくなったことによる駆動ロスは全く感じなかったですね。それよりも、アウターを積極的に使っていけるシーンが多くなることの方がメリットだと感じます。アウター✕ローを使っても、チェーンに無理な負荷がかかったり、外れそうな気配も無いですね。
見慣れないほどずんぐりと大きなリアディレイラーですが、動き方がユーモラスで、ロングケージ化することなく幅広いレンジを実現する新たな設計であることを感じます。それが素材と形状の最適化で全体の軽量化に繋がっているとともに、バイク全体とも調和してバランス良く見えます。
駆動抵抗に関してはプーリーが非常に良い役割を果たしているように感じました。テンションプーリーが非常に厚みのある独特な造りになっているのですが、この回転が非常に軽いこともあり、全体として抵抗感の少ない乗り味になっているのではないかと思います。スプロケットが小さく、チェーンがギアに巻き付く量が多いのに、回転抵抗が少ない。このSUPER RECORD WIRELESSにもはやビッグプーリーのカスタムは必要無いほどに造りこまれているように感じます。
ブレーキは定評のあるカンパニョーロフィーリングですね。キャリパーも素晴らしいですが、ローターの出来も非常に良いですね。剛性感も高くて、ハードブレーキングでも歪むような感覚はゼロ。制動力の立ち上がり方が優れている感覚はカンパならではで、スピードコントロールが非常にやりやすい。
無線化を果たすことで最新バイクとのマッチングも良くなったSUPER RECORD WIRELESSは、カンパニョーロの美点である操作感の良さ、上質な使い心地といった部分にも磨きがかかり、単なるレース機材の範疇を越えた存在となりました。
ただ速く走りたいというのではなく、ロードバイクを走らせるという行為一つ一つを楽しみたい、操作することの愉悦を感じたいという方には、カンパニョーロしかないでしょう。あとは他に抜きん出た価格についてどう捉えるかということだけ。
今回日本で1台目として組みつけられたバイクはデローザの創設70周年記念モデル、Settanta(セッタンタ)。ともにイタリアが生み出したプロダクツの最高峰の組み合わせで完成したロードバイクを目の前にすると、まさに至高という言葉が浮かんできます。
impression&photo:Makoto Ayano
text&photo:Naoki Yasuoka
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