2023/11/05(日) - 18:45
11月5日に開催されたツール・ド・フランスさいたまクリテリウムは、終盤に形成された精鋭グループ内の勝負に。ペテル・サガンを振り切り、セップ・クスとのスプリントを制したタデイ・ポガチャルがフィニッシュラインで両手を広げた。
日中は半袖でも大丈夫な、11月とは思えないイベント日和。さいたま新都心を舞台にした第9回ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムは絶好のコンディション下で開催され、ツール・ド・フランス本戦を沸かせたトップ選手がワールドクラスの走りを日本のファンの前で披露した。
オープニングセレモニーとパレードランを経て、13時35分に始まったチームタイムトライアルレースを制したのはバーレーン・ヴィクトリアスだった。「シンガポールで3位だったからチームの士気は高く、きちんと先頭交代の順番などを決めて臨みました」と言う新城幸也に率いられたバーレーントレインは、3.5kmの特設コースを3分43秒42、実に平均スピード56.502km/hで駆け抜けた。3秒遅れの2位は3人で臨んだUAEチームエミレーツ、5秒遅れの3位はコフィディス。全日本TT王者の小石祐馬率いるJCLチーム右京は10秒遅れの6位で国内チーム最上位にランクイン。
豪華な前座レースを終え、午後2時55分には本戦であるクリテリウムメインレースがスタート。2020&2021年ツール総合優勝+2022&2023年総合2位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を筆頭に、今年山岳賞を獲ったジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)、ブエルタ総合優勝のセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)、さらにはクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)、エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)、ステージ通算34勝を誇るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)、今回がラストロードレースとなるペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)…...。ツールの歴史を作ったベテラン、これからを担う若手選手、さらに国内のトップ選手たちがコースへと飛び出した。
レースは2ヶ所のヘアピンコーナーを通過し、さいたまスーパーアリーナの中を横切る3.5kmコースを合計17周する59.5km。スタート直後の180度コーナーを抜けると、最前列スタートだったフルームがスルスルと加速。「参加選手の中で一番家が近い(上尾市出身)」藤田涼平(さいたま那須サンブレイブ)と畑中勇介(キナンレーシングチーム)もこの動きに同調した。
2、6、10、14周目のフィニッシュライン上に用意されたスプリントポイントを最も積極的に狙ったのはカヴェンディッシュだった。フルームの動きを飲み込んだ後に迎えた初回は新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)を下し、2回目はかつてスプリント中の落車事故で大騒動となったサガンのリードアウトを受けて先着。これまでステージ34勝を挙げてエディ・メルクスの記録に並んだものの、引退を胸に背水の陣で記録更新を狙った今年は登り調子だったにも関わらず、落車骨折で涙のリタイア。引退撤回を選び、来年大会で大記録樹立に挑むカヴは3回目、そして4回目も先着してポイントを総取り。全盛期より衰えつつもなお険しい道を選ぶ38歳はレース後に「来年もまた貪欲に勝ちを狙いたい」と言う言葉を残している。
スプリントポイントと並び、観客を沸かせたのが4、8、12、16周目に用意された山岳ポイントだ。線路のアンダーパスを潜って登る、緩やかな登坂路で輝いたのはチッコーネ。鋭い加速で3回目までを連続奪取し、ツール山岳王の証であるマイヨアポワを輝かせる。シーズン終盤の落車によってジャパンカップをDNFしたものの、それを感じさせない回復ぶりで今回の総合山岳賞を決めている。
序盤のスローペースから一転、レースは終盤に入るとペースを上げ続けた。終始プロトンの先頭にいたのはUAEチームエミレーツのイヴォ・オリベイラ(ポルトガル)とダヴィデ・フォルモロ(スペイン)。プロトン最強チームの一つであるUAEが、ここさいたまでも出入りの激しい逃げをコントロールし、ユンボ・ヴィスマやバーレーンもコントロール役を分担していく。
西日が照らす終盤戦。決定的な動きを作ったのはサガンだった。最終スプリントポイント直前に集団から抜け出し、逃げるフルームたちを抜き去ってポイントを得るとともにアタックを継続。かつてツールでマイヨヴェールを実に7回、世界選手権で3度優勝をさらった偉大な王者が逃げ、メイン集団からは最もスピードが乗る高架下の下りでポガチャルがアタック。背後にいたクスを引き連れて残り6.5kmでサガンに合流を果たした。
ラスト2回の登坂区間ではクスのアタックでサガンが脱落、しかし冷静に追いかけたポガチャルは千切れない。メイン集団を置き去りにした2人がフィニッシュラインめがけてアンダーパスの登りを駆け上がりながらスプリント。来年のマイヨジョーヌ奪還を目指すポガチャルが、登坂力はもちろんのこと、スプリント力でも抜きん出るそのフィジカルでさいたまクリテリウムを制した。
ブエルタ覇者クスが2位、目立つ走りで自らロード引退の花道を飾ったサガンが3位。カヴェンディッシュはアクセル・ザングル(フランス、コフィディス)を抑えて集団の頭を獲り4位に入った。レースを作った一人、フルームは敢闘賞に輝いている。
優勝したポガチャルは記者会見で「日本に来ることができて、そしてこの素晴らしい雰囲気の中で走ることができて本当に嬉しい。皆の前で勝つことができて一生忘れることができない思い出となった」とコメント。アブダビでのチームキャンプを経て、シンガポールを経由した長い旅路の最後に表彰台の真ん中に立った。
日中は半袖でも大丈夫な、11月とは思えないイベント日和。さいたま新都心を舞台にした第9回ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムは絶好のコンディション下で開催され、ツール・ド・フランス本戦を沸かせたトップ選手がワールドクラスの走りを日本のファンの前で披露した。
オープニングセレモニーとパレードランを経て、13時35分に始まったチームタイムトライアルレースを制したのはバーレーン・ヴィクトリアスだった。「シンガポールで3位だったからチームの士気は高く、きちんと先頭交代の順番などを決めて臨みました」と言う新城幸也に率いられたバーレーントレインは、3.5kmの特設コースを3分43秒42、実に平均スピード56.502km/hで駆け抜けた。3秒遅れの2位は3人で臨んだUAEチームエミレーツ、5秒遅れの3位はコフィディス。全日本TT王者の小石祐馬率いるJCLチーム右京は10秒遅れの6位で国内チーム最上位にランクイン。
豪華な前座レースを終え、午後2時55分には本戦であるクリテリウムメインレースがスタート。2020&2021年ツール総合優勝+2022&2023年総合2位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を筆頭に、今年山岳賞を獲ったジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)、ブエルタ総合優勝のセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)、さらにはクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)、エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)、ステージ通算34勝を誇るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)、今回がラストロードレースとなるペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)…...。ツールの歴史を作ったベテラン、これからを担う若手選手、さらに国内のトップ選手たちがコースへと飛び出した。
レースは2ヶ所のヘアピンコーナーを通過し、さいたまスーパーアリーナの中を横切る3.5kmコースを合計17周する59.5km。スタート直後の180度コーナーを抜けると、最前列スタートだったフルームがスルスルと加速。「参加選手の中で一番家が近い(上尾市出身)」藤田涼平(さいたま那須サンブレイブ)と畑中勇介(キナンレーシングチーム)もこの動きに同調した。
2、6、10、14周目のフィニッシュライン上に用意されたスプリントポイントを最も積極的に狙ったのはカヴェンディッシュだった。フルームの動きを飲み込んだ後に迎えた初回は新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)を下し、2回目はかつてスプリント中の落車事故で大騒動となったサガンのリードアウトを受けて先着。これまでステージ34勝を挙げてエディ・メルクスの記録に並んだものの、引退を胸に背水の陣で記録更新を狙った今年は登り調子だったにも関わらず、落車骨折で涙のリタイア。引退撤回を選び、来年大会で大記録樹立に挑むカヴは3回目、そして4回目も先着してポイントを総取り。全盛期より衰えつつもなお険しい道を選ぶ38歳はレース後に「来年もまた貪欲に勝ちを狙いたい」と言う言葉を残している。
スプリントポイントと並び、観客を沸かせたのが4、8、12、16周目に用意された山岳ポイントだ。線路のアンダーパスを潜って登る、緩やかな登坂路で輝いたのはチッコーネ。鋭い加速で3回目までを連続奪取し、ツール山岳王の証であるマイヨアポワを輝かせる。シーズン終盤の落車によってジャパンカップをDNFしたものの、それを感じさせない回復ぶりで今回の総合山岳賞を決めている。
序盤のスローペースから一転、レースは終盤に入るとペースを上げ続けた。終始プロトンの先頭にいたのはUAEチームエミレーツのイヴォ・オリベイラ(ポルトガル)とダヴィデ・フォルモロ(スペイン)。プロトン最強チームの一つであるUAEが、ここさいたまでも出入りの激しい逃げをコントロールし、ユンボ・ヴィスマやバーレーンもコントロール役を分担していく。
西日が照らす終盤戦。決定的な動きを作ったのはサガンだった。最終スプリントポイント直前に集団から抜け出し、逃げるフルームたちを抜き去ってポイントを得るとともにアタックを継続。かつてツールでマイヨヴェールを実に7回、世界選手権で3度優勝をさらった偉大な王者が逃げ、メイン集団からは最もスピードが乗る高架下の下りでポガチャルがアタック。背後にいたクスを引き連れて残り6.5kmでサガンに合流を果たした。
ラスト2回の登坂区間ではクスのアタックでサガンが脱落、しかし冷静に追いかけたポガチャルは千切れない。メイン集団を置き去りにした2人がフィニッシュラインめがけてアンダーパスの登りを駆け上がりながらスプリント。来年のマイヨジョーヌ奪還を目指すポガチャルが、登坂力はもちろんのこと、スプリント力でも抜きん出るそのフィジカルでさいたまクリテリウムを制した。
ブエルタ覇者クスが2位、目立つ走りで自らロード引退の花道を飾ったサガンが3位。カヴェンディッシュはアクセル・ザングル(フランス、コフィディス)を抑えて集団の頭を獲り4位に入った。レースを作った一人、フルームは敢闘賞に輝いている。
優勝したポガチャルは記者会見で「日本に来ることができて、そしてこの素晴らしい雰囲気の中で走ることができて本当に嬉しい。皆の前で勝つことができて一生忘れることができない思い出となった」とコメント。アブダビでのチームキャンプを経て、シンガポールを経由した長い旅路の最後に表彰台の真ん中に立った。
ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム2023結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 1:23:03 |
2位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | +0:01 |
3位 | ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー) | +0:16 |
4位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン) | +0:20 |
5位 | アクセル・ザングル(フランス、コフィディス) | |
6位 | マティアス・ヴァチェク(アメリカ、リドル・トレック) | |
7位 | ゲオルギオス・バグラス(ギリシャ、マトリックスパワータグ) | |
8位 | 岡篤志(JCL TEAM UKYO) | |
9位 | 佐藤健(愛三工業レーシングチーム) | |
10位 | アスビャアン・ヘレモース(デンマーク、リドル・トレック) |
その他の特別賞
ポイント賞 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン) |
山岳賞 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) |
ヤングライダー賞 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) |
敢闘賞 | クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック) |
チーム総合成績 | ユンボ・ヴィスマ |
日本人1位チーム | 愛三工業レーシングチーム |
チームタイムトライアル | バーレーン・ヴィクトリアス |
text:So Isobe
photo:Makoto AYANO, Yuichiro Hosoda
photo:Makoto AYANO, Yuichiro Hosoda
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