2023/10/25(水) - 18:39
10月22日、千葉県九十九里町の片貝中央海岸でBEACH CROSS Crit 99・通称「ビーチクロス」が初開催された。砂浜を走るユニークなタイヤやバイクの工夫も必要で、レースは走りごたえバッチリ。シクロクロスに似て非なる新しいイベントを紹介します。
秋晴れの晴天に恵まれた千葉県は外房、九十九里浜。サーフィンや海水浴のメッカとして知られる片貝中央海岸で初めてのBEACH CROSS Crit 99が開催された。「ビーチクロス」とは砂浜を自転車で走るレース。日本では初開催となる新しい形態のレースで、主催はシクロクロス東京や稲城クロスでおなじみのチャンピオンシステム・ジャパン。仕掛け人は代表の棈木(あべき)亮二さんだ。
ビーチクロスがイメージとしてホームページに掲載しているレース動画は、シクロクロスワールドカップで有名なベルギーの「コクサイデ(Koksijde)」のすぐ隣、デ・パン(De Panne)で開催されたビーチレースのもの。その映像やレース概要の情報を頼りに、棈木さんが日本でも開催したいと企画したイベントだ。
大会はNPO法人日本ビーチ文化振興協会の協力を得て「Beach Life in 九十九里町」というイベントと一緒に併催された。会場となった片貝海水浴場ではビーチバレーやサッカー、ゲートボール、ダンス、ビーサン飛ばし大会など様々なイベントが同時開催されており、九十九里町の提供で焼き蛤(はまぐり)の無料配布があったりと、大勢のお客さんで賑わっていた。かつサーフィンに訪れたサーファーや散歩の人など、日光浴を楽しみながら海岸を訪れた人が多くいた。
ビーチレースのレース形態としては1周3.7kmのビーチ周回コースを用いての競走で、決められた周回数を制限時間内に走ること。オープンレースで8周、90分以内というもの。速く走るか、あるいは完走を目指すこと。速くても遅くても、周回数未達はDNFとなってしまう。
そして特別規則というか、前提としてはサーファーや散歩している人がコースを横切っていたとしてもビーチクロス参加者であるレーサーのほうが避けなくてはいけないということ。ビーチの専有使用でなくシェアが前提であり、マナーに気をつけなければいけない。
使用バイクの規定は33C以上の太さのタイヤを使用することだけで、シクロクロス、ロードバイク、MTBなどどんなタイプのバイクでも良い。推奨タイヤは40C~60Cの、ブロックの少ないスリックに近いものとされた。
AJOCCカテゴリーは関係なく、マスターやユース、キッズなど年齢・性別にカテゴリーが分けられた。Open&Juniorは 8.5周回 / 制限時間150分で、参加費はジュニアで1500円、キッズは500円など家族連れにやさしい設定。つまり誰でもウエルカムということ。
コースの路面状況の割合はビーチ(砂浜)が85%、グラベル(砂利)が10%、Road(舗装)が5%で、ビーチ偏重の割合。海水浴場に設定されたスタート・フィニッシュ地点から砂浜に沿ってコースが引かれ、見渡しきれないほど。砂浜の波打ち際は水分があるため固く締まっているため、風の抵抗を軽減するためにロードレースのように集団で走行するケースも。内陸側は砂が厚く堆積して緩く、悪路で柔らかい。砂や砂利道などはマウンテンバイクやシクロクロスバイクのテクニックを必要とする。
つまり砂の状態や走り方で機材を選ぶ必要もあり、それがレース結果にも結びつく。誰も経験がないため、試走で得た実感をもとにバイクやタイヤをセッティングし、レースに臨むことに。前日の夜に雨が降り、レース当日朝のビーチは良く締まった状態でとても走りやすかったという。しかし昼にかけて砂が乾いていった。それがもとで砂の状況は刻一刻と変化していったのだった。
第1レースのマスターズ男女年代別とユース男女が4.5周回 / 制限時間90分で開催。最速だったのはマスターズ40の3人のデッドヒートを制した遠藤積穂(NB会)。ちなみに遠藤選手はMTBを駆っての勝利だった。
続いて小学1〜6年生のキッズレースは0.5周回/制限時間なし 。併催の「Beach Life in 九十九里町」イベントも盛況。レース会場の脇のビーチにはステージが組まれ、子どもたちによるダンスコンテストやコンサートなどのステージイベントが切れ目なしに開催され、とても賑やか。その前の砂浜ではビーチバレーとサッカーが開催されており、楽しげな声が絶えない。
ビーチの方では暖かな日和に誘われて散歩する家族連れなどが増え、その人たちも珍しい自転車レースを眺めては声援を送るように。明るい日差しのなか、なかなかに良い雰囲気にあふれていた。
午後13時からのオープンクラス 男女とジュニア男女が8.5周回(29.6km)/制限時間150分の長丁場のレースに。出走はオープン男子35人、女子5人、ジュニア2人。昼にかけて徐々に気温が上がっていった。
スタートから飛び出したのが斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)、松尾遊(Champion System Japan Test Team)、畑中勇介(KINAN Racing Team)の3人。序盤はこの3人のデッドヒートに。
40Cタイヤを履いたシクロクロスバイクを駆り、ビーチの波打ち際を快調に飛ばす斎藤、砂場を太いタイヤの29erMTBでラクラクと乗りこなす松尾。斎藤のスピードに徐々に松尾が遅れだし、斎藤の独走状態に。
しかし「大どんでん返し」は最終周回に起こった。独走逃げ切りが濃厚と思われた斎藤に代わってトップでフィニッシュしたのは松尾。時間が経つに連れて砂が乾き、フカフカになったため斎藤の40Cタイヤでは埋まるようになり、逆に松尾は太いMTBタイヤが有利に働き、脚を攣らせた斎藤を最後に追い込んだという。メイン会場に居た誰もが驚いた逆転劇。平均時速22.5kmという結果に。
斎藤はルーズになった砂に苦戦し、タイヤを取られ、それまで乗れた区間が乗れなくなったことで失速。最終周回は走れるラインが無くなるほどだったという。「すべてはタイヤの差です」と松尾は言う。斎藤が乗れなくなった砂の深い区間での有利さには気づいていて、最後に一気に追い込んだという。
ビーチレースは簡単に見えて奥が深く、かつシクロクロスよりもずっとキツイという感想が多かった。しかし完走自体に価値があることは制限時間ギリギリでフィニッシュラインにたどり着いた女子選手の嬉し涙が証明してくれた。3位相当でありながら、もし制限時間を超えれば表彰台はおろか完走さえ認められない。
もっと気軽なイベントかと思っていたが、想像以上に体力とテクニックを使う、バイクのセッティングも左右する面白さがあるイベントだった。レースとしても、ファンイベントとしても楽しめる、参加した誰もが満足の形態の新イベントだった。
ビーチを走るのってどんな感じ? それは下の動画レポートで観るのがいちばんわかりやすいので参照してほしい。イベントの楽しげな雰囲気もよくわかります。またバイクやタイヤの工夫については別記事で紹介します。
秋晴れの晴天に恵まれた千葉県は外房、九十九里浜。サーフィンや海水浴のメッカとして知られる片貝中央海岸で初めてのBEACH CROSS Crit 99が開催された。「ビーチクロス」とは砂浜を自転車で走るレース。日本では初開催となる新しい形態のレースで、主催はシクロクロス東京や稲城クロスでおなじみのチャンピオンシステム・ジャパン。仕掛け人は代表の棈木(あべき)亮二さんだ。
ビーチクロスがイメージとしてホームページに掲載しているレース動画は、シクロクロスワールドカップで有名なベルギーの「コクサイデ(Koksijde)」のすぐ隣、デ・パン(De Panne)で開催されたビーチレースのもの。その映像やレース概要の情報を頼りに、棈木さんが日本でも開催したいと企画したイベントだ。
大会はNPO法人日本ビーチ文化振興協会の協力を得て「Beach Life in 九十九里町」というイベントと一緒に併催された。会場となった片貝海水浴場ではビーチバレーやサッカー、ゲートボール、ダンス、ビーサン飛ばし大会など様々なイベントが同時開催されており、九十九里町の提供で焼き蛤(はまぐり)の無料配布があったりと、大勢のお客さんで賑わっていた。かつサーフィンに訪れたサーファーや散歩の人など、日光浴を楽しみながら海岸を訪れた人が多くいた。
ビーチレースのレース形態としては1周3.7kmのビーチ周回コースを用いての競走で、決められた周回数を制限時間内に走ること。オープンレースで8周、90分以内というもの。速く走るか、あるいは完走を目指すこと。速くても遅くても、周回数未達はDNFとなってしまう。
そして特別規則というか、前提としてはサーファーや散歩している人がコースを横切っていたとしてもビーチクロス参加者であるレーサーのほうが避けなくてはいけないということ。ビーチの専有使用でなくシェアが前提であり、マナーに気をつけなければいけない。
使用バイクの規定は33C以上の太さのタイヤを使用することだけで、シクロクロス、ロードバイク、MTBなどどんなタイプのバイクでも良い。推奨タイヤは40C~60Cの、ブロックの少ないスリックに近いものとされた。
AJOCCカテゴリーは関係なく、マスターやユース、キッズなど年齢・性別にカテゴリーが分けられた。Open&Juniorは 8.5周回 / 制限時間150分で、参加費はジュニアで1500円、キッズは500円など家族連れにやさしい設定。つまり誰でもウエルカムということ。
コースの路面状況の割合はビーチ(砂浜)が85%、グラベル(砂利)が10%、Road(舗装)が5%で、ビーチ偏重の割合。海水浴場に設定されたスタート・フィニッシュ地点から砂浜に沿ってコースが引かれ、見渡しきれないほど。砂浜の波打ち際は水分があるため固く締まっているため、風の抵抗を軽減するためにロードレースのように集団で走行するケースも。内陸側は砂が厚く堆積して緩く、悪路で柔らかい。砂や砂利道などはマウンテンバイクやシクロクロスバイクのテクニックを必要とする。
つまり砂の状態や走り方で機材を選ぶ必要もあり、それがレース結果にも結びつく。誰も経験がないため、試走で得た実感をもとにバイクやタイヤをセッティングし、レースに臨むことに。前日の夜に雨が降り、レース当日朝のビーチは良く締まった状態でとても走りやすかったという。しかし昼にかけて砂が乾いていった。それがもとで砂の状況は刻一刻と変化していったのだった。
第1レースのマスターズ男女年代別とユース男女が4.5周回 / 制限時間90分で開催。最速だったのはマスターズ40の3人のデッドヒートを制した遠藤積穂(NB会)。ちなみに遠藤選手はMTBを駆っての勝利だった。
続いて小学1〜6年生のキッズレースは0.5周回/制限時間なし 。併催の「Beach Life in 九十九里町」イベントも盛況。レース会場の脇のビーチにはステージが組まれ、子どもたちによるダンスコンテストやコンサートなどのステージイベントが切れ目なしに開催され、とても賑やか。その前の砂浜ではビーチバレーとサッカーが開催されており、楽しげな声が絶えない。
ビーチの方では暖かな日和に誘われて散歩する家族連れなどが増え、その人たちも珍しい自転車レースを眺めては声援を送るように。明るい日差しのなか、なかなかに良い雰囲気にあふれていた。
午後13時からのオープンクラス 男女とジュニア男女が8.5周回(29.6km)/制限時間150分の長丁場のレースに。出走はオープン男子35人、女子5人、ジュニア2人。昼にかけて徐々に気温が上がっていった。
スタートから飛び出したのが斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)、松尾遊(Champion System Japan Test Team)、畑中勇介(KINAN Racing Team)の3人。序盤はこの3人のデッドヒートに。
40Cタイヤを履いたシクロクロスバイクを駆り、ビーチの波打ち際を快調に飛ばす斎藤、砂場を太いタイヤの29erMTBでラクラクと乗りこなす松尾。斎藤のスピードに徐々に松尾が遅れだし、斎藤の独走状態に。
しかし「大どんでん返し」は最終周回に起こった。独走逃げ切りが濃厚と思われた斎藤に代わってトップでフィニッシュしたのは松尾。時間が経つに連れて砂が乾き、フカフカになったため斎藤の40Cタイヤでは埋まるようになり、逆に松尾は太いMTBタイヤが有利に働き、脚を攣らせた斎藤を最後に追い込んだという。メイン会場に居た誰もが驚いた逆転劇。平均時速22.5kmという結果に。
斎藤はルーズになった砂に苦戦し、タイヤを取られ、それまで乗れた区間が乗れなくなったことで失速。最終周回は走れるラインが無くなるほどだったという。「すべてはタイヤの差です」と松尾は言う。斎藤が乗れなくなった砂の深い区間での有利さには気づいていて、最後に一気に追い込んだという。
ビーチレースは簡単に見えて奥が深く、かつシクロクロスよりもずっとキツイという感想が多かった。しかし完走自体に価値があることは制限時間ギリギリでフィニッシュラインにたどり着いた女子選手の嬉し涙が証明してくれた。3位相当でありながら、もし制限時間を超えれば表彰台はおろか完走さえ認められない。
もっと気軽なイベントかと思っていたが、想像以上に体力とテクニックを使う、バイクのセッティングも左右する面白さがあるイベントだった。レースとしても、ファンイベントとしても楽しめる、参加した誰もが満足の形態の新イベントだった。
ビーチを走るのってどんな感じ? それは下の動画レポートで観るのがいちばんわかりやすいので参照してほしい。イベントの楽しげな雰囲気もよくわかります。またバイクやタイヤの工夫については別記事で紹介します。
オープン男子リザルト 8.5周回 / 制限時間150分
1位 | 松尾遊(Champion System Japan Test Team) | 1:19:04 |
2位 | 斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT) | |
3位 | 畑中勇介(KINAN Racing Team) | |
4位 | 太田好政(AX cyclocress team) | |
5位 | 高橋和大(RIDELIFE GIANT) | |
6位 | 山崎雅典(Champion System Japan Test Team) | |
7位 | 半田子竜(DRAGONLING CX) | |
8位 | 増田謙一(SHIDO Works) | |
9位 | 宮川啓巳 | |
10位 | 藤平悠介(バイシクルサナエレーシング) |
photo:Yuki Asato
report&photo:Makoto AYANO
report&photo:Makoto AYANO
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